いま読まれている記事

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】

article-thumbnail-170713

1

2

ドームでRezを体験! 第一印象は?

というわけで、VR上映イベント「VR to Dome 実験: Rez Infinite」にやってきました。

まず、このイベントを簡単に説明すると、科学未来館の中にあるドームにPS4 Pro【※】を繋いで、『Rez』をプレイしているところを皆で見ようという体験です。水口哲也さんが「これこそ本物のVR体験だ」と推していたので、「一体どんなものだろう」と思って見に来ました。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_015
当日の様子1

※PS4 Pro
2016年に発売された、「PlayStation4(プレイステーション4)」の高性能版。CPUやメモリなどスペックの改善があったほか、4K出力に対応しており、画質が大きく向上した。

光と音がぶわーと出てくる体験がとても気持ちよかったですね。みなさんの第一印象はどうでしたか?

いやあ良かったですね。素晴らしかったですね。何がよかったかと言うと……うーん、何がよかったんでしょうね、言葉にできない(笑)。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_016
当日の様子2。ドームいっぱいに映し出された『Rez Infinite』

興奮しすぎて混乱してる(笑)。

いや、ひとつひとつの要素を褒めることはできるんです。「サラウンド環境で音が良かった」とか、「視界全面を覆う半球状スクリーンの没入感がすごい」だとか、「『Rez』っていいゲームだよね」とか。でも、この感動はそういうことじゃないんですよね。総合的な体験としての良さがあるというか……全体は部分の総和に勝るわけですよ!

な……なるほど(苦笑)。

感覚全部が乗っ取られて、「光の中を揺蕩ったなぁ」みたいな感じがすごいので、「特定のこの部分が」とかじゃないんですよね。暗いフィールドの中をきらびやかなパーティクルに囲まれて飛んでいって、すごくいい雰囲気でした。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_017
当日の様子3

お酒が飲めたらさらに最高でしたね(笑)。科学館というよりは、クラブとかの雰囲気でしたね。

昔、知り合いがバーに『Rez』を持ち込んで遊んでいたのですが、それに近いものがあるのかもしれないですね。

そうそう、方向性としては似てる。ただまあ、さすがに「とにかくよかった」だけだとレビューとして失格だと思うので(笑)、ドームでよかったところはちょっと話しておきたいです。

とにかく視野が広い!

ではまず、普段のPS VRとの一番大きな違いはなんでしたか?

視野がとにかく広いんです。PS VRをはじめとした現行のVRヘッドセットは、視野角が前方110度くらいしかない、たとえるならスキーのゴーグルを被っているような視界なんです。もちろんそれでゲームを遊ぶのに困ることはないんですけど、やっぱり自然な視界ではないですし、没入感はどうしても少し減ってしまいます。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_018
PS VRの視野角は最大で90度
(画像はAmazonより)

なるほど。

それと比較すると、今回のドーム上映では本当に視界すべて……というより視界より広い範囲をゲーム世界が埋め尽くすんです。もう見える範囲のすべてが光で包まれていて素晴らしかったです。

普通のVRと違って、周りにも人がいるんですよね。そこは安心感があるし、そういう意味でもクラブイベントとかに近いな、と。

HMDでは味わえないシェアする体験

つまり他人と同じ体験をシェアできる、ということですね。

みんなで見るVRというのは本当に初めての体験でした。

他の人のプレイをVRで見るというのはものすごく新鮮ですよね。現状のVRは、普通のゲームみたいに現実の同じ場所にいる家族や友達と、一緒かつ同時にVRの世界に入るってことができないので。複数人が同時にVRの世界の中に没入できる手段としてのドームというのは本当に革命的だと思います。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_019
当日の様子4

現状のVRはやっぱりプレイ人数に制限を受けるんですよね。そうした、どうしてもバラバラで個別の体験になってしまうところを皆で共有できて、一括で体験できるのはすごいいいですよね。

あれよかったよねー。皆で同じ画面を同じVRの世界に入れたっていうのは。

そういう意味では、『Rez』が乗り物に近い雰囲気があるからかもしれないけど、今回のドームには「助手席感」があると思いました。他のプレイヤーがプレイしているのを共有しながら、「おーここはこうやるのか」というのを眺められますからね。

臨場感のある音響

あと、音響は最高でしたねー。

5.1チャンネルと言ってましたが、真の意味でのサラウンドでしたね。ちゃんと、敵を倒してパンッって光がはじけた瞬間、その位置から音が聞こえるという。あれはもう、無限に気持ちがよかったですね。

もっとウーファー【※】きかせて爆音でもよかったのに(笑)。

※ウーファー
重低音を出すためのスピーカー・ユニット。オオカミやトラなどの鳴き声から名付けられたとされている。

立川シネマシティの爆音上映【※】みたいな感じで。

※立川シネマシティの爆音上映
東京都立川市にある映画館で開催される、特殊な音響システムを用いた映画上映のこと。同館は「KICリアルサウンドシステム」というシステムを導入していて、爆音が生み出す大迫力が人気を博している。機材は度々アップデートされており、最近では2017年春に音響システムが一新されている。

そこはプラネタリウムとしての常識としての範疇なのかも(笑)。

もしかしたらこれは、プラネタリウムの次のキラーコンテンツになり得るのかもしれませんね。

もうとにかく最高だったので、常設で上映してほしいですね!

というか、いっそシナスタジア・スーツを全員に着せてほしかった(笑)。

どれだけお金がかかるんだって話ですが(笑)、それはぜひやってほしかったですね。

これはVRなの? VRとはそもそも何なの?

で、最後に最大の疑問を一つ言ってしまうと……「これはVRじゃねーだろ!」という読者の当然の疑問があるかと思うのですが(笑)、皆さんはどうでしょうか?

「VRは立体視できることが最低条件」という人からすれば、今回のドーム上映はVRとして認めづらいかもしれません。ただ、私はそれでも体験の質として、これはVRだと思います。

私もVRでいいと思います。まさに体験の質ということで言えば、映画館もVRの一種と言えます。ある状況を再現して、それを追体験してもらうという意味で、広義のVR施設なんですよ。

なるほど……。

例えば「写真」もある意味そうなんですよね。本当は周りを全部記録に残したいけど、全部は撮れないから一部を切り取ったものを保存する。でもそれを全部再現できるようになったなら、すべてを写し取り、ドームに再現するというのは「先祖返りしたVR」と言えると思います。

私はそんな歴史的なことを考えて言ったわけじゃなくて(笑)、PS VRを被ったときの体験と今回のドーム上映で、体験の質に差がなかったんですよ。一方でPS VRとテレビの平面で体験する「Area X」は全然別物ですよね。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_020
当日の様子5

それは「Area X」に囲まれてる感が近いって話ですよね。

そうですね。かなりいいところまでPS VRに近いし、一部においてはヘッドセットを凌駕しているところもあるという意味で、VRだと思います。

それは首を右に振ると右に行くといった操作感が、全天周映像にすることでカバーできているということですか?

そうですね。逆に言えば、全天周で全部レンダリングできて遊べるんだったらそれでいいんですよ。でもそれは大変だし、レンダリングコストもめちゃめちゃかかるし、そんな丸くて大きいモニターは大変なので、ヘッドマウントディスプレイをかぶって追っかける形で頑張ってるわけです。

そう、話が逆なんですよ。皆そういうのを最初は作ろうと思ってたはずなんですよね。でも、すごくお金もかかるし、技術的に難しい。そこにパルマー・ラッキー【※1】という天才が現れて、「全周モニター【※2】とか作らなくても、慣性センサーと小型液晶パネルとプラスチックレンズを組み合わせれば、いまの技術でも安く実現できるよ!」という大発明をした、というのが近年のVRブームなんですよ。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】_021
※1 パルマー・ラッキー……1992年生まれ。Oculus創業者。2012年、若干19歳にして米クラウドファンディングサイト・KickstarterでOculus Riftを発表し話題となり、以降VRの普及に努める。2017年3月からはフリーのエンジニアとして活動中。
(Photo by Getty Images)

※2 全周モニター
今回のドームのように、人間の視野を覆うほど大きなモニターのこと。

なるほど、水口さんの言う「これはVRであり、ある意味で実験なのだ」というのは、あったかもしれないVRの歴史の中の分岐点を、ここでもう一回再現しようという試みなんですね。

そうですね、歴史的に見てもやっぱり似たような実験はあり、それをちゃんとこう今の技術でやり直してみたらどうなるでしょうという実験だと思うんですよ。

なので「これは実験です」、「帰る前に必ずアンケート書いてください」と水口さんが最初から言っているのは、研究者として誠実だと思うんですよね。「こういう形のVRもあると思うんですけど、みなさんどう思います?」っていうことですよね。その姿勢は本当に尊敬に値すると思います。

アンケートは我々二人ともがっつり書かせていただきました(笑)。

じゃあ、このVRバカお二人のフィードバックを受けて、水口さんと『Rez』にはぜひ次の世界を見せてもらいたいですね!(了)

関連記事:

水口哲也のハチャメチャ人生が『Rez』で人類を進化(?)させるまで。「制約が創造を生む」なんて、もう言い訳しない【ゲームの企画書:水口哲也氏】

VRの中で死にたい……傑作『Rez Infinite』は誰も体験したことのない “電子ドラッグ”だった【ドワンゴVR部体験レポ】

先進的すぎるVR版『Rez』の到達点…VRの可能性であり、困難への先回りした解答さえ示す“傑作中の傑作”:「なんでゲームは面白い?」第七回

インタビュアー・著者
電ファミニコゲーマー編集部員。映画を観るのとアナログゲームをするのが好き。
Twitter:@_k18

1

2

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

Amazon売上ランキング

集計期間:2024年3月29日01時~2024年3月29日02時

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ