久しぶりに、ゲームでガチ泣きした。
「泣いた」なんてものではなく、「泣き散らかした」とでも表現した方が正しいほどに、いい歳こいた男が情けないぐらいに涙を流した。
きっかけは、『ヘブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)を熱っぽく布教されたので、いまさらながらに始めて、メインストーリーを進めたんです。
前々から気になっていたし、おすすめしてくる人が口を揃えて「とにかく泣ける」と語るので、そこまで言うのなら見せてもらおうか、“泣きゲー”ブランド「Key」の新作の実力とやらを!と、某赤い人のような気持ちで臨みましたが、まあ第2章のラストで戦艦並みのビーム砲のような威力のエモ演出火力に打ちのめされてしまいました……。
どうしてこんなにも泣けるのか、感情を刺激されるのかといったら、もちろんシナリオのよさ、演出のよさ、キャラクターの魅力など諸々あるが、なんといっても麻枝准氏の手がける楽曲の力が非常に大きい。
いい音楽は、いい音で聴けば感動の度合いが何倍にも、何十倍にも跳ね上がる。
『ヘブバン』の楽曲をもっといい音で聴きたい……そんな欲求がムクムクと湧き上がり、スマホゲームの音質を手軽に、かつ劇的にグレードアップできる製品を導入することにした。
というわけで、今回は『ヘブバン』の魅力をお伝えするとともに、『ヘブバン』の感動をさらに引き立たせてくれる逸品、iFi Audioのスティック型DAC・アンプ「GO bar」を紹介したいと思う。
文/Leyvan
※本稿では『ヘブバン』の重大なネタバレとなるような記載は避けていますが、それでもストーリー展開を仄めかす内容が含まれていますので、「ネタバレ断固拒否!これから『ヘブバン』を完全にまっさらな状態で始めたい!」という人は、『ヘブバン』をインストールして第2章までクリアしてから読むことを推奨します。
泣きゲーこそいい音で体験すべきだと、心で理解できた
まずは、そもそも『ヘブバン』とはどんなゲームなのか?というところから紹介させていただきたい。
『ヘブンバーンズレッド』は、『アナザーエデン 時空を超える猫』などスマホ向けの遊びごたえのあるRPGを手がけたWright Flyer Studiosと、『AIR』や『CLANNAD』といった名作恋愛アドベンチャーゲームを世に送り出したKeyがタッグを組んだ作品。Keyのシナリオライター麻枝准氏が原案・シナリオ・音楽を担当した、麻枝氏の15年ぶりの完全新作ゲームである。
「最後の希望を託された少女たちの物語」を描くスマートフォン向けドラマチックRPG、と銘打っている本作だが、まずはこのPVをチェックしてほしい。
ビジュアルとか、音楽とか、なんとなく雰囲気がイイな……と感じた人は、“適性アリ”なので、なんならもうこれ以上この記事を読まなくてもいいから、すぐに『ヘブバン』をインストールしてプレイしよう。それがいい。
この、どこか儚く哀愁漂う世界観や、繊細なタッチで描かれるゆーげん氏のキャラクターデザイン、美しく切なく、それでいて力強さや希望を感じさせる音楽……などなど。あらゆる要素が高次元でまとまっているのは、本作の大きな特徴の一つだろう。
ストーリーパートは、勢いとノリツッコミなギャグ成分多めで進行していくことが多いのだが、締めるところは締めるといった具合で、特に各章のラストは、燃える展開、切ない演出、哀しい現実がまるで集中豪雨のように押し寄せてくる。
そこで、重要な役割を担うのは、冒頭でもお伝えした「音楽の力」。
とにかく絶妙なタイミングで、本当にこれ以上はないというタイミングで、いい音楽が流れるのだ。
筆者も、チュートリアル戦闘ではじめて流れる「Everlasting Night」で、「お…なんかBGMいいな」と思わされるところから始まって、第1章の、いいところで流れ始める「きみの横顔」を聞くにつけ、「このゲーム、音楽が良すぎる!!!」と、確信を得るに至った。
しかし、しかしである。
スマートフォン本体のスピーカーや、本体に直挿しした付属品レベルのイヤホンでは、この楽曲の素晴らしさが十分に伝わらないのではないか。感動を体験しきれてないのではないか? だとしたならば、それはもったいなさすぎるではないか……。
というわけで。はい、ようやく本題です。
気持ちが高まった結果、この頃流行りのスティック型DAC・アンプ「GO bar」で、スマートフォンの音質強化を行ってみた。
これに、ちょっといいイヤホン&ヘッドホンを使って、『ヘブバン』の音楽をめっちゃいい音で聴きましょう!!!
スマホの音を良くしてくれる「GO bar」とは?
まず、DACとはなんぞ?アンプとはなんぞ?というところだが、イヤホンやヘッドホンで聴くときに、本体にそのまま繋ぐよりも、質のいいDAC・アンプ【※】を通して聴くと、余分なノイズが減って音がクリアになったり、音の質感や空間表現にグッと深みが出る。
※DAC・アンプ:DACとは、デジタル・アナログ・コンバーター(Digital to Analog Converter)の略称。DAコンバーターとも表記される。デジタル信号をアナログ信号に変換して出力するための回路、または機器。音声品質に影響を及ぼし、同じヘッドホンやスピーカーでもDACによって音質、音色は大きく変わる。PCパーツで例えるならGPU・ビデオカードのような役割。アンプは、出力する音声信号を増幅するもので、駆動力が必要なヘッドホンなどは、アンプの有無で音量、使用感が大きく変わる。
それだけでそんなに変わるんかいな、と思うかもしれないが、それなりのイヤホンやヘッドホンを使っていると、これが結構変わる。
ポケモンにたとえると、テキトーにそのへんで捕まえただけのポケモンと、厳選しまくった個体値が最高の、いわゆる6Vポケモンぐらいの違いが出る。
ただ、DACやアンプは高品質なものだと筐体が大きく、重くなりがち。いくら音がよくなるといっても、スマートフォン本体よりも大きいようだと、なかなか常用するのは難しい。
そこで、GO barのようなコンパクトなスティック型DAC・アンプの出番となる。スマホにも手軽に接続できて、必要以上にかさ張らないので、とにかく使い勝手がいい。そのうえで、GO barは、この手のスティック型DAC・アンプとしては最高峰ともいえるほど音質と機能性にこだわった製品だ。
たとえば、AKGの名機「K701」なんかは、透き通るような高音で響きが美しい美音系ヘッドホンだが、音圧感度が低く、スマホでは十分な音量を出すことが難しい機種。何よりも駆動力が足りないと弱々しく、痩せ細った音になってしまう。しかし、GO barを通せば、活き活きとした音でしっかりと鳴らすことができる。
GO barとK701で『ヘブバン』をプレイすると、BGMがいちいち綺麗で澄み渡っていて、ついつい手を止めて聴き入ってしまうはず。それどころか、ちょっとした効果音や、移動中の足音すらも異様にクリアに聴こえて、思わず笑いが出てくるほどだ。
そんな環境でクライマックスシーンを体験したらどうなるか、想像に難くないだろう。
例えば、第2章のラスト。いい音で「White Spell」を聴きながら、蒼井の勇姿を目にしたならば、心を打ち抜かれること間違いなし。眩しさで、あるいは、溢れる涙で、何も見えなくなるほど、こみ上げてくる想いが伝わるはずだ。
美しく力強い『ヘブバン』の楽曲をこだわりの音で聴く
いい音で体験する『ヘブバン』の尊さ、エモさについてお伝えしたところで、次は極私的ではあるが、『ヘブバン』の楽曲と相性がいいと感じた機種を、代表的な楽曲とともに紹介したい。
まず、メインテーマ曲の「Before I Rise」から。タイトル画面で流れるおなじみの曲だ。
幻想的で、静かに、荘厳に始まるイントロから徐々に曲調が強まり、サビで堰を切ったようにアップテンポになるこの曲は、『ヘブバン』の世界に溢れる美しさと儚さ、それと相反するような力強さ、厳しさが表現された、まさにテーマ曲に相応しい楽曲。
この曲の魅力を引き出すには、パワフルな低音と気持ちよく伸びる高音を併せ持った機種がよさそうだと思い、見つけたのが、このUnique Melody「2HT」という有線イヤホン。
Unique Melodyは、ハイエンドなカスタムIEM【※】を手がける中国のメーカーで、代表的な機種は、オーディオファンではない人からすると、目ん玉が飛び出そうになるほど高価だが、この2HTはエントリーモデルなので、比較的手が届きやすい機種だ。
※カスタムIEM:IEMとは、インイヤーモニターの略。通称イヤモニ。ミュージシャンがステージ上で演奏中の楽曲を正確に聴き取るためのイヤホンで、装着感と遮音性を重視するため、耳にピッタリと密着する構造になっている。オーダーメイドで個人の耳型をとって制作するため、世界に一つの専用機となる。
音質的な特徴は、グルーヴ感のある低音の響きと、くっきりとした鮮やかな中高域、しっかりと伸びる閉塞感のない高音。小気味よく鼓膜を刺激する低音の圧があり、これが絶妙に音楽を楽しく、ノリ良く聴けるのが最大の魅力。
それでいてボーカルなど中音域を侵さないタイトな音なので、全体として明瞭で見通しのいい元気な音色が『ヘブバン』の楽曲を華やかに鳴らしてくれる。
筐体の綺麗な赤色も、本作のタイトル(『HEAVEN BURNS RED』)の“レッド”となんとなく重なって、勝手に気に入っている。
次は、本作のもうひとつの象徴的な楽曲、「White Spell」。
この曲については、あまり多くは語らないが、第2章クリア後に歌詞を意識すると、とても切ない気持ちになる。
そんな切なさをとびきりの美音で表現してくれるのが、先ほども登場したAKG「K701」。
気品ある美しい外観と高品位なサウンドを両立したモニターヘッドホンで、2005年に発売されて以来、いまなお売れ続けているロングセラーの名機。軽量で装着時の負担が少ないのもいい。
アニメ『けいおん!』のブームで秋山澪さんが着用していたことからも有名になり、“澪ホン”の愛称でも親しまれているK701だが、その実力は本物中の本物。
現在の国内販売価格は、なにかの間違いなんじゃないかと思うほど手頃なお値段で、驚くべきコストパフォーマンスのヘッドホンだと個人的には思っている。
開放型でガッツリと音漏れするヘッドホンなので出先で使うのは難しいが、そもそもこんな美音ヘッドホンでうっかりストーリーでも進めようものなら、公衆の面前で涙を流しかねないので、おうちでじっくり腰を据えて使うことをおすすめしたい。
一度聴いたら戻れない高音質の世界へ
本当なら、作中で主人公たちが結成するバンド「She is Legend」の楽曲も含めて、『ヘブバン』の楽曲をすべて紹介したいぐらいなのだが、今回はここまで。
とにかくお伝えしたいのは、良い音で『ヘブバン』を、ゲームを体験してみてほしいということだ。
サウンドの質、情報量が増すことで、こんなにもゲームの感じ方が変わるのかということを、ぜひ一度体験してみてほしいと思っている。
本稿では、スティック型DAC・アンプのGO barに合わせる機器として、有線イヤホン、ヘッドホンを使った例を取り上げているが、日常生活やテレワークなどに便利な完全ワイヤレスイヤホンも、もちろんおすすめである。
オーディオは突き詰めようとすると非常にディープな世界ではあるが、一度、「高音質とはどういうものか」を体感してみると、多くの人を魅了し続ける”オーディオの面白さ”が理解できるのではないかと思う。
端末やPCのスペック、周辺機器にこだわるように、音質にもこだわってみると、きっとこれまでは気がつかなかったゲームの良さ、細部のこだわりなど、新たな発見があるはず。
ガチ泣きするほどの感動を与えてくれた『ヘブバン』は、これからも新しいメインストーリー、イベントストーリーが配信されていく(そして、新曲も!)ので、今後の動向にも注目していきたい。
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生で聴く「きみの横顔」が最高すぎた。目に涙を浮かべながら語る出演者たちの姿が印象的だった「ヘブンバーンズレッド Half Anniversary Party!」について語ろう!感極まって目に涙を浮かべる出演者たち、待望の新スタイル登場に大きく沸く会場、さらに大きな規模でやってほしいと期待が高まるスペシャルライブなどなど「ヘブンバーンズレッド Half Anniversary Party!」がとてもよかった。