『RPGタイム!』のデスクワークスとアニプレックスによる新作スマホRPG『ワールド・ツー・ワールド』は「対となる2つの冒険」を同時に遊ぶ2画面分割RPGだった。ユニークなアイデアの秘訣に迫るディレクターインタビューをお届け

 8月19日に企画が発表され、9月15日にタイトルが明かされたスマートフォン向けRPG『World ⅡI World(ワールド・ツー・ワールド)』。本作は『RPGタイム!~ライトの伝説~』を9年かけて開発したデスクワークスとアニプレックスが共同開発する新規のRPGプロジェクトだ。

 8月19日の発表では「2対の世界とキャラクター」が同時に描かれた3枚のアートボードのみが明かされ、9月15日の発表では「2 つで 1 つの物語/1 つで 2 つの物語」というキャッチコピーを添えてタイトルとメインキャラクター、声優などの情報が公開された。

『ワールド・ツー・ワールド』ディレクター藤井トム氏インタビュー_001

 しかし、本作の具体的なゲームシステムやシナリオといった詳細な情報は明かされていない。象徴的なアートワークを中心に、余白と謎を残したプロモーションが展開しているのだ。

 そこで本記事では『ワールド・ツー・ワールド』のディレクターを務めるデスクワークスの藤井トム氏にお話を伺い、ヴェールに包まれた本作の詳細をお届けする。

 先に結論を述べておくと、本作はスマホの1画面を2画面に分割し、「2人の対となるキャラクターで同時に冒険」するユニークなRPGゲームとなっていた。さらに、ひとりプレイ専用で基本料金は無料、シナリオは定期的に更新される「週刊連載」形式と、『RPGタイム!~ライトの伝説~』でみられた独自性のあるアイデアがこれでもかと詰め込まれている。

 さらにはソリッドなアイデアのみではなく、キャラクタービジュアルをはじめとするキャッチーな要素も用いられており、スマホゲームの形式を拡張する予感を充分に感じられるだろう。

『ワールド・ツー・ワールド』ディレクター藤井トム氏インタビュー_002
ⓒDeskWorks / Aniplex

『ワールド・ツー・ワールド』とは?スマホの画面をフル活用する“ニコイチRPG”

──さっそくですが、本作は公開されている情報が限られているため、本作の概要を教えて頂きたいです。

藤井トム氏(以下、藤井氏):
 はい、本作は『ワールド・ツー・ワールド』というタイトルで、ジャンルは「ニコイチRPG」としています。対応プラットフォームはスマートフォンですが、マルチプレイ要素はなく、ひとりでじっくり遊べるタイプのRPGです。

 なかでも最大の特徴は、スマートフォンの画面を上下で区分して遊ぶ形式です。その2画面を活用し、分断された3つの世界を舞台に、世界をひとつに導くRPGとなっております。

 ゲームプレイはターン制のコマンドバトルをベースとしており、3つの世界でそれぞれ異なる体験が用意されています。

──正式発表より以前のプロモーションで公開された3枚の美術ボードは、3つの世界と画面分割のシステムを示唆していたんですね。

 スマホ向けタイトルということからソーシャルゲーム形式の作品を想像していましたが、スマートフォンという端末の性質を利用した作品になると。

藤井氏:
 そうですね。本作のアイデアはスマホゲームで遊んでいる際に、スマートフォンの画面を持て余しているように感じたことがきっかけです。画面を有効活用する案として「画面を二分割し、上下で別々のゲームが遊べたら面白いのではないか」というアイデアを思いつきました。

 スマートフォンであれば直観的に触った画面が動くため、2つのゲームを同時に遊ぶデザインに適していると考え、縦持ちのスマートフォンを活用した唯一無二のRPGになると考えております。

──ひとり用のスマホゲームになるとのことで、価格や運営形式はどのようになるのでしょうか?

藤井氏:
 まず、本作の価格は基本プレイ無料でアイテム課金有りとなっており、運営形式は3つの世界のシナリオがそれぞれ週ごとに更新される「週刊連載」のような形式となります。

 いっぽうで、更新されるシナリオは全て無料で体験でき、アイテム課金はRPGにおける戦闘要素などを対象としております。

ユニークな作風のルーツはまさかの「ワンコ蕎麦」インディー経験者ならではのアイデア勝負

──本作はオーソドックなRPGをベースにしながらも、勝負に出ている要素はやはり「2画面」や週刊連載といったユニークなアイデアであるように感じます。

 その姿勢は『RPGタイム!~ライトの伝説~』が「小学生の自由帳」という外連味のあるアイデアを活かした作品となっていたように、デスクワークスさんイズムであるようにも感じました。

 この、ユニークなアイデアで勝負するスタイルはどのように生まれたのでしょうか。 

藤井氏:
 その由来は、チーム構成にあると思います。本当なら我々も高精細で美麗なグラフィックや複雑なシステムを携えたハイエンドな作品を作りたいのですが、小規模のゲーム開発では不可能です。我々に出来ることは、思いついたアイデアを作品に組み込むことのみです。

 そこで、いかにお客さんたちを「おもてなし」するかを考えたとき、我々に出来ることは「ワンコそば」だったんですよ。

──どういうことでしょうか?(笑)

藤井氏:
 「ワンコそば」の発祥は山奥で、客人を豪華な食事でもてなしたいものの、ウチには蕎麦しかない。そこで唯一提供できる蕎麦を沢山提供しようというかたちになったものです。

 まさに「これだ!」と思いました。僕らが提供できるものはアイデアのみ。それをたくさん提供しようと、“アイデアをギュウギュウにつめ込む”作風になっているんだと思います。

 もちろん突飛なアイデアを詰め込み過ぎると混沌としやすいため、RPGというジャンルの包容力でまとめる点もスタイルのひとつとなっています。

──制作する上での制約が、むしろ作品の魅力や強みを生んでいると。

藤井氏:
 この点はやはり、インディーゲームという限られた環境で開発してきたからこそ、身に付けられた賜物ですね。

──デスクワークスさんの強みはアイデアであるいっぽう、本作は3つ世界が存在するため、3つの世界の固有の物語やギミックといった固有の要素を作らなければならない。そのうえ「週刊連載」形式であるため、多大なアイデアを要求されるのではないでしょうか。

藤井氏:
 幸いなことに、僕らがアイデア出しで困ることはないんですよ(笑)。しかし、そのためにアイデアが出しやすい取り組みを行っています。

 その取り組みは『RPGタイム!~ライトの伝説~』の開発時に気付いたもので、「アイデアの土台を作る」ということです。

 たとえば、『RPGタイム!~ライトの伝説~』の土台は「鉛筆とノート」であり、「鉛筆とノート」を題材にすることで様々なシーンや場面、表現を描くことが可能になりました。

 『ワールド・ツー・ワールド』における土台は「2画面」という要素であり、「2画面」は独自のゲームシステムを産むだけではありません。たとえば、2画面を活用して対立する2つの勢力を同時に描けば、ひとつの出来事をより多面的に描くことができるようになる。といったように、アイデアを膨らませる良い題材を見つけられたように思います。

 このほかにも「2画面」のシステムを活用した簡単なインタラクションを、3つの異なる世界にあわせて実装予定です。各システムは難易度を上げすぎず、あくまでもカジュアルに楽しめる作風を意識しています。

──なるほど。

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(画像はWorld Ⅱ World(ワールド・ツー・ワールド)Twitterより)

藤井氏:
 このほかに、本作には最終的に160のキャラクターを用意しているのですが、土台がない状態で160体分のバリエーションを出そうとなると、やはり枯渇してしまいます。そうならないために、6つの属性と3つの世界という土台を用いることで、アイデアは出しやすくなり、尽きることがないんです。

インディーからメジャーへ。開発規模の変化

──9年と長い年月をかけたインディーゲームに続く作品がアニプレックスのパブリッシングの元でリリースされるスマホゲームになり、開発規模のギャップが大きいように感じます。

 実際に『ワールド・ツー・ワールド』を開発する上で、どのような変化を感じますか?


藤井氏:
 やはり、自分たちだけで開発していた時に比べて、すごく恵まれているなと思います。

 『RPGタイム!~ライトの伝説~』はふたりのプランナーを中心にはじまり、全てをデスクワークスで開発しました。そこで、自分たちのみで開発する際には抽象的に良い感じのグラフィックが欲しいと思うと、それを自ら解決しなければなりません。開発の際は「良い感じ」にすることの労力と負担を身にしみて感じました。 

 しかし、今回はそれぞれの分野をプロにお願いするため、想像以上のものが帰ってくる。特に開発規模が変わることでデメリットは殆どありませんでした。

 デスクワークスはグラフィックとプログラムが出来ないチームだったため、今回はアニプレックスさんのご協力のもと、プログラムは北海道の会社、グラフィックは東京の会社、企画とシナリオはデスクワークスで開発する形となっています。

 それぞれが得意とする分野を担当する、良い開発体制を築けていると感じています。

──近年では個人や数人の開発チームで制作するインディーゲームが増えてきていますが、個人ならではの要素の足し算をおこない、開発が引き延ばされるというケースも多く耳にします。

 いわゆるインディーゲームである『RPGタイム!~ライトの伝説~』から、スムーズに大きな開発規模に移行できた理由はありますか?

藤井氏:
 そうですね、正直我々の取り組み以上に、協力いただいてるグラフィックやプログラムを担当していただいている会社さんが多分苦労していただいてると思います(笑)。

 いっぽうで、我々もインディーゲームを開発する前には、それぞれ本作と同じような規模の開発を経験しているため、その経験はかなり活かされていると思います。

3つの世界で表現する3つの異なる物語

──本作には3つの世界が用意されており、3つの異なる体験が味わえる作品だと伺いました。週刊連載のような形式を採用する本作ではゲームプレイのみならず、シナリオの重要性も高いと想像されます。

 それぞれの世界では、どのように異なる物語が描かれるのでしょうか?

藤井氏:
 まず、おおまかな概要としては、3つの世界のうち一つの世界だけでも楽しめるような形式になります。たとえば、「週刊少年ジャンプ」の読者でも、漫画全体を読む人もいれば、そのうちの一部の作品のみを楽しむ人もいますよね。

 そんな単行本派のように、ひとつの世界のシナリオのみを体験して充分に遊びごたえ、読み応えのある物語を用意しています。

 シナリオの詳細に関しては9月17日の22時に予定している公式生放送にて紹介させて頂く予定ですが、本作の「2 つで 1 つの物語/1 つで 2 つの物語」というキャッチコピーのように、「2画面」を活用した対になる要素が共通した特徴と見どころになっています。

 また、3つのシナリオは硬派なバトルものコミカルさもある異世界転生ものがあり、それぞれ得意なライターにシナリオを執筆して頂いております。この点においても3つの世界で明確に異なる体験をじっくりと味わえるのではないかと考えております。

──ティーザービジュアルではそれぞれ対になる6体のキャラクターのほか、ひとり独立している魔法少女の様なキャラクター「ウィーブ」が描かれています。彼女はどのような立ち位置なのでしょうか?

藤井氏:
 前作の『RPGタイム!~ライトの伝説~』ではゲームマスターのような「けんたくん」というキャラクターが居ましたが、「ウィーブ」も同じように世界を俯瞰するキャラクターとなっており、世界の分断を解決に導くナビキャラクターのような立ち位置となっております。

──この「ウィーブ」が用意されているということは、それぞれの世界が交わる機会も設けられるのでしょうか。

藤井氏:
 はい、週刊で更新する3つの世界の物語のほか、本作には月刊で更新する全体のシナリオが用意されます。我々としては全ての物語を楽しんで頂きたいことから、全てを楽しむことで得られるメリットも用意しております。

『ワールド・ツー・ワールド』ディレクター藤井トム氏インタビュー_009

──それぞれ異なるライターが手掛け、固有のシステムを用意した個性あるシナリオを、ひとつのシナリオで描くことは、なんらかのギミックが必要であるのではないでしょうか?

藤井氏:
  その点に関しては、ぜひ本作を実際にプレイし、ご自身の目で確かめて頂きたいです。本作には我々が『RPGタイム!~ライトの伝説~』で培った、ストーリーを魅力的に演出するノウハウも活かされるため、毎週読みたくなる物語に是非ご期待ください。

──本日はありがとうございました!


 2画面で2つの冒険を同時に行うニコイチRPG『World ⅡI World(ワールド・ツー・ワールド)』は、発売時期は未定で、対応プラットフォームはiOSおよびAndroidのスマートフォン。価格は基本料無料で、ソーシャル要素のないひとり用RPGとなる。

  シナリオをはじめとする本作の概要は、9月17日(土)22 時より放送される「東京ゲームショウ 2022」公式番組内にて告知予定だ。

 番組にはディレクターの藤井トム氏、ウィーブ役の武田羅梨沙多胡さん、フジョー役の梶原岳人さん、マルママック役の加隈亜衣さんが登場する。

 YouTube Liveニコニコ生放送で視聴できるため、興味がある読者はぜひ番組を視聴しよう。

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ライター
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。
編集
ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a
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