10月12日は『逆転裁判』シリーズが生まれた日だ。
シリーズ最初の作品は、2001年10月12日にゲームボーイアドバンス向けに発売された『逆転裁判』。プレイヤーは成歩堂龍一(なるほどう りゅういち)、通称「ナルホドくん」と呼ばれる新米弁護士となり、罪を着せられた無実の依頼人を無罪に導くのがストーリーの流れとなっている。
ナルホドくんとなったプレイヤーは「探偵パート」と「法廷パート」を交互に繰り返して事件の全容をつかみ、解決へと導いていく。探偵パートでは足を使って証拠品を探し出し、法廷パートでは証人の証言と手元の証拠品のムジュンを見つけ、依頼人の無罪判決を勝ち取っていく。
絶体絶命に見える状況であっても、ムジュンさえ突き止めれば、「異議あり!」の一声で形勢逆転する爽快感が『逆転裁判』の大きな魅力だ。個性的なキャラクターや演出、臨場感を盛り上げる音楽によってもたらされる緊張感と、審理が進むにつれてムジュンが暴かれ、事件の謎が紐解かれていくテンポの良さが、『逆転裁判』シリーズのやみつきになる持ち味となっている。
『逆転裁判』シリーズは法廷パートだけでなく、探偵パートでのキャラクター同士のやり取りにも魅力がある。事件に関係がない証拠品を突きつけても、そのキャラクターなりの感想を返してくれることが多く、全編を通してテキストを読むことが非常に楽しい作りになっている。
『逆転裁判1』はキャラクターの人気も非常に高く、主要な登場人物は『逆転裁判2』に引き続き登場している。
2002年10月18日、ゲームボーイアドバンス向けに『逆転裁判2』が発売。ゲームの流れは基本的に前作と同じだが、探偵パートに「サイコ・ロック(心理錠)」という新たな要素が追加された。
サイコ・ロックは、暴露されたくない情報をキャラクターが抱えている時に表示される錠前で、法廷パートと同様に証拠品などを「つきつける」ことで打ち壊すことができる。
前作はキャラクターにつきつけられるものは証拠品のみだったが、『2』では「人物ファイル」もつきつけることが可能になった。そのため、探偵パートではキャラクター同士のやり取りがさらに豊富になり、法廷パートでは事件の推理を奥深くしている。
2004年1月23日、ゲームボーイアドバンス向けに『逆転裁判3』が発売。前作まではプレイ可能なエピソードがそれぞれ4話収録されていたが、『逆転裁判3』では全5話が収められた。
シリーズの伝統として、第1話はチュートリアルを兼ねた法廷パートで開幕するが、『逆転裁判3』は第1話が綾里千尋(成歩堂龍一の師匠)の初めての法廷を舞台とする。
『逆転裁判3』は過去の綾里千尋の法廷をプレイヤーが追体験する構成となっており、成歩堂龍一と綾里千尋のふたりが主人公と呼べる内容となっている。
2005年9月15日、ニンテンドーDS向けに『逆転裁判 蘇る逆転』が発売。『逆転裁判1』に新規エピソードを1話加えた移植タイトルで、時系列として新規エピソードは『逆転裁判1』と『逆転裁判2』の間に位置する。
新規エピソードでは、ニンテンドーDSのタッチペンとタッチパネルの操作を活かし、指紋や血痕などが検出できる「カガク捜査」をプレイすることができる。
『逆転裁判 蘇る逆転』も含む『逆転裁判1』から『3』は、現在『逆転裁判123 成歩堂セレクション』として1本のソフトにまとめられて展開されている。
成歩堂龍一が逆転無罪をつかみ取り、新米弁護士から法曹界のエースへと成長していく姿を描いた全14話をひとつなぎで体験することを可能にしている。
2007年4月12日、ニンテンドーDS向けに『逆転裁判4』が発売。『逆転裁判3』から7年後が舞台で、主人公は新米弁護士の王泥喜法介(おどろき ほうすけ)になり、ヒロインやライバルなど主要な登場キャラクターが一新されたタイトルとなった。
タッチペンを使用するカガク捜査は本作にも登場し、現場検証や証拠品の検出に一役買っている。
また、『逆転裁判4』では特定の状況下で「みぬく」という新たなアクションが追加された。王泥喜法介の体質による一種の特殊能力のため、他の主人公の法廷では体験できない流れが法廷パートに追加されている。
2013年7月25日、ニンテンドー3DS向けに『逆転裁判5』が発売。舞台は『逆転裁判4』から1年後となっている。「成歩堂なんでも事務所」の所長であり弁護士に復帰した成歩堂龍一、事務所の後輩の王泥喜法介、新人の希月心音(きづき ここね)が法廷に立つ。
『逆転裁判5』はグラフィックが一新されており、今までドット絵だったキャラクターや背景は全て3DCGに替わった。シリーズお馴染みの「異議あり!」などのポーズは変更されておらず、キャラクターの表情や動きなどの演出面も2Dグラフィックと比べて遜色がないため、違和感のないプレイが可能となっている。
また、ボイス付きのアニメーションムービーがストーリーの合間に追加されており、各話の繋ぎ目でストーリー全体を盛り上げる役割を果たしている。
本作から新たに法廷に立つ希月心音は、「モニ太」と呼ばれる精神状態を映し出す機械を胸元に付けており、当人の意思に反してモニ太が本音をあらわにしてしまうといったコミカルな描写がされている。
法廷パートではモニ太を使用した新システム「ココロスコープ」が追加されており、証人をカウンセリングして落ち着かせるために、モニ太が映し出す感情(喜怒哀楽)の情報からムジュンを見つけ出すパートが追加されている。
2016年6月9日、ニンテンドー3DS向けに『逆転裁判6』が発売。前作と同様に、法廷に立つ弁護士は成歩堂龍一、王泥喜法介、希月心音となっている。
『逆転裁判6』は日本だけでなく、「クライン王国」という本作オリジナルの国の法廷も舞台にしている。主に日本の法廷には王泥喜法介と希月心音が、クライン王国の法廷には成歩堂龍一が立つ。
クライン王国の司法は日本と大きく異なり、法廷では「御魂の託宣」「霊媒ビジョン」といった新要素を駆使してムジュンを見つけ出すことになる。
2024年1月25日、『逆転裁判4』『5』『6』の3作は、『逆転裁判456 王泥喜セレクション』のタイトルで1本のソフトにまとめられて発売された。
対応ハードはNintendo Switch、PlayStation4、Xbox One、Windows、Steamだ。
現在に至るまで『逆転裁判』シリーズは、宝塚、映画、舞台、アニメ、マンガ、小説、脱出ゲームなど、メディアミックスが多種多様に展開されている。『逆転裁判』シリーズの核をなすスリリングな緊張感と逆転がもたらす爽快感には、ゲーム以外にもさまざまな味わい方があることがうかがえる。
『逆転裁判』シリーズはスピンオフタイトルも展開しており、『逆転裁判1』で検事として登場した御剣怜侍が主人公となって事件を究明していく『逆転検事』と『逆転検事2』。レベルファイブの『レイトン教授』シリーズとコラボし、独自の法廷パートと街中での探偵パートに謎解きパートが加わった『レイトン教授VS逆転裁判』。そして明治時代の日本と英国を舞台にした、シャーロック・ホームズも登場する『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』と『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』がある。
DS向けタイトルの『逆転検事』『逆転検事2』は現在、iOS、Android向けに移植され配信されているほか、『逆転検事1&2 御剣セレクション』のタイトルでPS4、Nintendo Switch、Xbox One、Steam向けにリメイクされたものが展開中。
『逆転検事1&2 御剣セレクション』のグラフィックやBGMには、オリジナル版からアレンジされた追加要素があるが、オプション設定でオリジナル版に切り替えてプレイすることもできる。他にも、チャプターセレクトや自動文字送り機能の追加など、システム面で遊びやすさがリメイクされている。
3DS向けタイトルの『大逆転裁判』シリーズも同様にiOS、Androidでそれぞれ単品アプリとして配信されており、PS4、Nintendo Switch、Xbox One、Steam向けにはシリーズ2作を1本にまとめた『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』が展開されている。
「法廷」でのバトルを主軸としながらも、リアリティとフィクションの絶妙なさじ加減で悲劇から喜劇まで描き分け、魅力的なキャラクターとエピソードを生み出してきた『逆転裁判』シリーズ。多様なメディアを横断してきた『逆転裁判』シリーズに、この先どのような展開が待っているのか、今後も期待していきたい。