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いくつになっても「中二臭いお話」に心躍る同志に『SOULVARS』をオススメしたい。“もうひとつの魂”を宿す主人公が異形と戦う物語にクールなドット絵アート、何から何までカッコいい…!

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 いくつになっても「中二臭いお話」というのは良いものだ。

 そんな“男の子”的な感性を持ち続ける筆者にとって、今回ご紹介する『SOULVARS』のシナリオは最高にワクワクさせてくれるものだった。

 人を襲う異形“ドミネーター”や、それに対抗するための民間組織“DDO”、生まれながらにしてもうひとつの魂を宿す“ソウルベアラー”の主人公……など、読み上げるだけでも心躍る設定の数々。そしてゲーム中で彼らを描き出すクラシカルなドットのアート。とにかく、何から何までカッコいい。

 プレイしていく中で本作に「ジャンプ漫画」的なかっこよさを感じた筆者だが、何を隠そう本作のパブリッシャーは集英社ゲームズ。以前にご紹介した『ONI – 空と風の哀歌』もたびたび話題になるなど、今の日本で勢いをもってゲーム業界に進出してきている存在だ。

 もちろん『SOULVARS』も、『ONI』とは一味も二味も違う個性的な作品に仕上がっている。中二感溢れるストーリーテリングや奥深いデッキビルドシステムに代表される、本作の魅力を本稿ではお伝えしていきたい。

文/植田亮平
編集/久田晴

※この記事は『SOULVARS』の魅力をもっと知ってもらいたい集英社ゲームズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


ドットアートと中二感溢れるシナリオが生み出すシナジー

 『SOULVARS』のアートは2Dのドットスタイルで表現されている。主人公である「ヤクモ」をはじめ、キャラクターや背景に至るまで、ゲーム内のすべての要素が丁寧にドットで描かれている。

『SOULVARS』インプレ:「中二臭いお話」が最高なカードバトルRPG_001

 個人的に、これには近年のインディーゲームにおける「スタイルとしてのドット表現」というよりも、むしろ「クラシカルなRPGへの回帰」という印象を持った。その理由には、キャラクター自身がドットを基準にデザインされていないことがある。

 本作のキャラクターはゲーム中においてドットで表現されているが、パッケージイラストやステータス画面では2Dの専用イラストが用意されており、これは等身も普通の人間と同じ高さで描かれている。

 つまり、あくまでドットはデフォルメのために用いられているにすぎず、プレイヤーはゲーム画面から「ドット絵というフィルター」を通して、実際の場面を想像し補完する作業を行う……といった具合だ。

『SOULVARS』インプレ:「中二臭いお話」が最高なカードバトルRPG_002

 これは現代のゲーム制作環境の充実ぶりを考えれば奇妙な話だ。現在のゲームの一般的な容量を考えればキャラクターの等身をそのままドット絵に起こすことも可能だろうし、より多くのバジェットを用意すれば3Dモデルを用意することだって可能だったはず。
 しかしあえてこのスタイルが選択されているということは、制作側は何らかの意図を持って、デフォルメされたドット絵という表現を選んだこととなる。それは一体なぜなのか?

 その疑問を解決する答えを、私はグラフィック設定の項目に発見した。「クラシックスクリーン」という、画面全体にかけるフィルターの設定項目である。

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 こちらをONにすると、画面全体に若干のノイズがかかり、ゲーム画面がブラウン管テレビのような質感になる。このようなオプションはレトロゲームを収録したハードやリマスター作品に搭載されることが多く、「Nintendo Online ファミリーコンピュータ」等のゲームでも似たような機能が存在する。

 この設定の存在により、先ほど湧きあがった「なぜ?」が解決される。すなわち、このゲームのアートスタイルは明らかに往年の日本製RPGへの回帰という側面を含んでいるのである。そしてそのスタイルから生み出される情感は、後述するシナリオと上手くかみ合い、非常に良いシナジーを生んでいるように感じた。

 さて、では肝心なそのシナリオ面について語ろう。「男の子はいつだって中二臭いお話が好き」という思想をあなたが持っているならば、このゲームは”買い”だ。

 『SOULVARS』のシナリオはいつまでも私をワクワクさせてくれるものだった。話の内容は主人公である「ヤクモ」が、突如として現れた異形”ドミネーター”と戦うというシンプルな構造だが、その構造の中に登場するキャラクターや組織の設定が一々中二臭くて非常によろしい。

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 「ヤクモ」は”ソウルベアラー”と呼ばれる特異な体質の持ち主で、一時的に異形のような姿に変身することが出来る。そしてこのソウルベアラーはヤクモ以外にも複数登場するのだが、登場するソウルベアラー達がどいつもこいつも強キャラ感を出しているおかげで、こちらに「能力系バトル漫画を読んだ時のワクワク感」を思い出させてくれる。

 また、ドミネーターと戦うために作られた”DDO(ディード)”と呼ばれる組織の存在も目が離せない。DDOは『呪術廻戦』における高専、『チェンソーマン』における公安のような立ち位置だが、主人公・ヤクモはDDOに所属することはなく、あくまでドミネーターを倒すために協力しているだけ……という設定で話は進行していく。

 そこで繰り広げられるヤクモとDDO職員の絡みがとても良い。DDO職員たちはいわゆる“組織の人間”的な雰囲気を醸し出すコテコテのキャラクターが多く、思わず笑顔になれる。上で挙げた『呪術廻戦』や『チェンソーマン』のストーリーを好む人ならば、きっと好きになれるシナリオのはずだ。

 本作のシナリオには「ジャンプ漫画」のようなかっこよさ、特別感が常に付随していたのが非常に良かった。

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 ここまで紹介した「ドットのアートスタイル」と「中二感溢れるシナリオ」は、本作を構成する上で素晴らしいシナジーを生み出している。というのも、このふたつの要素はある種の相反する、ギャップの関係になっているからだ。

 「優れたキャラクターや物語」がある一方で、それを表現するアートはデフォルメされた可愛らしいドットの世界。これはスーパーファミコン等の旧世代機で発売されたRPGを遊んだ世代にとってはさほど珍しいことではないが、それを現代のユーザーに向けて行うことの意味は想像以上に大きいと言えるのではないだろうか。

 ゲームのグラフィックが進歩するにつれ、ビジュアルと内容の乖離は少なくなる傾向にある。それはある意味では良いことなのかもしれないが、時には乖離した表現が新鮮さやインスピレーションを与える原動力となっていたのもまた事実であろう。とにかく、私はこの強調されたアートとシナリオの関係性に、非常に新鮮で素晴らしいものを感じた。

「ソウルビットシステム」が奥深すぎる!

 アートとシナリオの話はこれくらいにしておいて、次は本作のバトルシステムについて語ろう。

 本作は従来のRPGのようなコマンドバトルではなく、自身が組んだデッキを用いて戦う「ソウルビットシステム」で戦ってゆく。近年流行りのローグライトゲームのシステムを踏襲したものに近いが、もっとも似たところで思いつくのは「ロックマンエグゼ」シリーズだ。しかし根本的なシステム自体はどのようなゲームとも異なるので、今回は『SOULVARS』で固有の部分について焦点を当てていこう。

 まず、本作は自身でデッキを組んで戦っていくゲームだと述べたが、実際にはデッキを組む専用の画面はない。デッキを組む際の「カード」の役割を果たす「ソウルビット」は全てキャラクターの「装備」に紐づけられており、装備を付け替えるとそのまま「カード」もつけ変わるという訳だ。

 ちなみに装備にはそれぞれステータスが設定されており、装備自体のステータスを重視するか、それとも装備に付属するソウルビットを重視するかで装備選択が大きく変わってくる。また、専用のアイテムを使えば装備に追加のソウルビットを付与することも可能なので、カスタマイズの自由度はかなり高い。

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 戦闘ではそのソウルビットを駆使して戦っていく。プレイヤーはランダムに表示されるソウルビットを選択し、キャラクターの行動を決定する。

 ここで重要なのが「選べるソウルビットの数」だ。戦闘開始時は1ターンに選べるソウルビットが1つまでとなっているが、敵の弱点を突く攻撃を行うと次のターンにもう一つ追加でソウルビットを選択できるようになる。

 1ターンに複数のソウルビットを選択できるようになると、キャラクターが複数回行動できるようになると同時に、特定のソウルビットの組み合わせで発動する必殺技「アーツ」を使うことが可能になる。

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 このアーツは特に強力で、雑魚敵であれば一瞬で屠るほどの火力を備えているうえに、アーツが敵の弱点属性を突くものなら次のターンでさらに「選べるソウルビット数が増える」という破格の性能だ。なので戦闘でプレイヤーがまず目指すべき戦術は「いかに敵の弱点を突いて選べるソウルビットの数を増やすか」ということになってくる。
 
 この「弱点を突けば突くほど有利になる」システムがいやらしく、そして奥深い。

 このシステムは裏を返せば、「敵の弱点を突けなければずっと弱いまま」であることを意味する。それ故プレイヤーは敵の弱点を突くために満遍なくソウルビットを組み込もうと考えるのだが、そうすると今度は狙ったソウルビットを引き辛くなり、弱点を突くソウルビットが引けない、弱点を突いてもアーツが撃てない等の自体に直面する。

 アーツはシナリオを進めていく中でバリエーションが増えてゆき、自由に付け替えることが可能になるのだが、そうした状況になってもやはり毎回スムーズにアーツを撃つのは困難であった。

 では逆に、ひとつかふたつの属性に特化させて装備をビルドした場合はどうだろう。この場合、そのキャラクターは「特定の敵に対しては強いが、苦手な敵に対してはとことんキツイ」状況になる。弱点をつけず、ソウルビットを複数選択することが出来ないからだ。

 カスタマイズが豊富になるタイミングまで、プレイヤーは常にこのジレンマに悩まされることになるだろうが、ゲーム側もそうした状況を緩和するために、パーティキャラクターをチャプターごとに変化させるというシステムで解決させている。

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 以上、奥深くてやりこみがいのあるシステムとなっている本作だが、キャラクターが次々とコンボをチェインして火力の底上げを行うチェインシステムや、”ソウルベアラー”の体力が低くなったときに発動可能な特殊なスキルの存在、特定のソウルビットをデッキから引いてくるキャラクター固有のスキル等、初心者でも遊びやすくなるシステムは多数用意されているので、難易度について過度に心配する必要はなさそうだと感じた。

 キャラクターの装備、そこに付属するソウルビット、そしてソウルビット同士の組み合わせで発動するアーツ、これらすべてがプレイヤー次第でいかようにもカスタマイズできるようになっているのはかなり好印象だ。どのような戦い方をするか、プレイヤー自身が自由自在に決定することができる優れたシステムと言えるだろう。

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 今回は『SOULVARS』について、アート面・シナリオ面・そしてバトル面の三方向から語ってきたが、その他にもサブクエストの存在や音楽など、多くの素晴らしい要素がそろっている本作。トレイラーやシステムを見て少しでも気になったのなら、ぜひとも遊んでみてほしい。その期待に応えてくれるほどの品質は保証しよう。個人的には、これから作られるであろうファンアート等の二次創作も楽しみである。

©ginolabo / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES

ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。
編集者
オーバーウォッチを遊んでいたら大学を中退しており、気づけばライターになっていました。今では格ゲーもFPSもMOBAも楽しんでいます。ブラウザはOpera

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