スキューバダイビング漁寿司屋経営ゲーム。これが、今回ご紹介する『デイヴ・ザ・ダイバー』のゲームジャンルです。これは私が勝手につけたジャンル名ではありますが、本作を端的に表現するならば、これが最も適しているような気がします。ちなみに、公称はハイブリッド・海洋アドベンチャー。
このジャンル名の長さからもお分かり頂けますように、本作の魅力は唯一無二のゲームシステムにあると言っていいでしょう。
大海原へ潜って海底を探索し、そこで獲った魚を使って寿司屋を経営する。理にかなった流れではありますが、ゲームジャンルとして考えるとごった煮感があります。このゲーム概要を最初に聞いた時は、「面白そうだけど欲張りすぎじゃない?看板だけ立派で中身はボロボロみたいなことになってたりしない?」という不安感も抱いたというのが正直なところなのですが、実際にプレイをしてみると、数十分後にはこの不安は杞憂であったということが分かりました。
ゲームの内容を大まかに理解したころにはこのゲームの虜になっている。この時点でも、本作のクオリティの高さが理解できましたが、そのことを裏付けるかのように、『デイヴ・ザ・ダイバー』は正式リリースから数週間で、売り上げ100万本を達成。プレイを続ける中で芽生えた、「このゲームは神ゲーなのではないだろうか」という私の思いは、ここで確信へと変わりました。
そこで今回は、要素が盛り沢山でありながら、その全てがハイクオリティに仕上げられているゲーム『デイヴ・ザ・ダイバー』に深くもぐりこみ、本作の魅力をお伝えできればと思います。
文/DuckHead
軽いノリから始まる冒険
___物語の始まりは、爽やかに晴れ渡る空の中で燦然と輝く太陽に照らされた青く美しい大海原から。
そんな楽園とも言える海岸で綺麗な足を晒しているのが、本作の主人公の……
デイヴです。彼は今、バカンスを楽しんでいる真っ最中。
そんな彼のもとに、友人のコブラから突然着信が。その電話でコブラは、デイヴをとある海へと誘います。休暇を満喫していた彼でしたが、コブラに「美味い寿司屋がある」と言われては居ても立っても居られず、すぐさま現地へ駆けつけます。
そんな突然の連絡を受けてデイヴがやってきたのは、大きなブルーホールがあるという海。一足先にこの地を訪れていたコブラは、様々な魚たちが住まうこの海に大きなビジネスチャンスを見出し、デイヴを召集したのでした。
「美味しい寿司屋はどこにあるのか」とコブラに尋ねてもはぐらかされてしまい、どうも雲行きが怪しくなってきたと気乗りしないデイヴでしたが、大金をつかみ取れるビッグビジネスチャンスを前にすっかり目の色が変わってしまったコブラの圧には勝てず、彼の指示に従い、海に潜ってダイビング漁をすることに。
デイヴが潜った海には、世界各地の魚たちが生息。彼がここで獲った魚たちは、デイヴと同じ様にコブラに招集された寿司職人のバンチョが立ち上げたばかりの寿司屋 「バンチョ寿司」へと卸されます。コブラがデイヴを誘い出すときに言っていた美味しいお寿司屋とは、このバンチョ寿司のことだったのです。
他の土地では見られないような一風変わった魚で握られる寿司とあれば、人気がでないはずがないというのがコブラの考え。コブラは寿司業界に風穴をあける気満々です。ヒューッ!
こうして、昼はダイビング漁師、夜は寿司屋という、デイヴの二足の草鞋生活が幕をあけることとなります。
以上が、『デイヴ・ザ・ダイバー』の大まかなストーリー。冒頭でご紹介しましたように、本作は、ダイビング漁と寿司屋経営の両方を交互に行う、スキューバダイビング漁寿司屋経営ゲームとでも評すべき内容となっています。
ですので、ここからは本作の根幹をなすスキューバダイビング漁と寿司屋経営について、それぞれ細かくお話していきたいと思います。
美しき海底でのダイビング漁
それでは、まずはスキューバダイビング漁について見ていきましょう。
本作は、デイヴに課されるメインミッションをクリアしていくことでストーリーが進行するのですが、それらのメインミッションの多くは、このスキューバダイビング中にこなしていくことになります。
しかも、このダイビングの間に魚が一匹も捕まらなかった場合、バンチョの寿司屋に食材が一切届けることができず、店が回らなくなってしまいます。そのため、タイトルも『デイヴ・ザ・ダイバー』となっていますように、このスキューバダイビングこそが、本作の肝であると言えます。
さて、日中にデイヴがダイビングすることができるのは、午前と午後に1回ずつの計2回で、彼が潜るブルーホールは、潜る度に地形と生態系が変わる不思議な海につながっています。
つまり、本作では、潜るたびにダンジョンの地形や登場するモンスターが毎回変化する “ローグライク” というゲームジャンルの要素が取り入れられており、ダイビングの度に新鮮な気持ちで漁に取り組むことができるのです。
こういったローグライク要素があるとなると、『デイヴ・ザ・ダイバー』のゲームジャンルも改める必要があるでしょう。本作は、スキューバダイビング漁寿司屋経営ゲームではなく、ローグライクスキューバダイビング漁寿司屋経営ゲームと言ったところですね。
「このゲームにはローグライク要素もあるんだ」という気持ちで改めてデイヴを見てみると、『ドラゴンクエストⅣ』の登場キャラクターで、『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』シリーズでは主人公となった商人、トルネコのようにも見えてきました。
さて、そんな不思議の海で漁に挑む彼が魚相手に使用する武器の中でも主力となるのが、スピアガンです。
このスピアガンは、魚に銛を打ち込む武器。その名前にガンという単語が入っていますが、弾薬を使用する武器ではないため、銛を打つ回数に制限はありません。いつでも好きなタイミングで魚に狙いをつけ、発射することができます。
銛を遠くまで発射することができるので、近づくと逃げてしまう魚に有効なスピアガンですが、これを1発打ち込めば必ず魚が捕獲できるというわけではなく、魚の体力が十分に減っている必要があります。
一度スピアガンを打ち込んで捕まえられなかった魚は、当然ですが、更にスピアガンを打ち込み続けるか、別の武器でダメージを与えてからスピアガンを打ち込まなければいけません。
そんな感じでスピアガンを使って魚と格闘していると、魚に急接近されるなどして、スピアガンで狙いをつけて銛を撃つ時間が無い場合があります。
そんな時に使いやすいのが、サブ武器の近接武器です。これらの武器はリーチこそ短いものの、スピアガンと違って狙いをつける必要が無く、ノータイムですぐに魚を攻撃することができるため、眼前で振るうことで、海中を泳ぐ魚を素早く仕留めることができます。
そして、ストーリーを進めていくと使えるようになる武器、銃器もダイビング漁においては非常に有用です。
銃器は海底に沈んでいる武器ボックスの中に格納されており、ここから取り出して装備することで武器として使用することができるのですが、海中で拾った武器は地上で装備する武器と違い、水上に上がると壊れて使えなくなってしまいます。つまり、海中の銃器は、そのダイビングをしている間だけしか使えないというわけです。
ちなみに、武器ボックスには近接武器やスピアガンの強化パーツが入っていることもあるのですが、これらもその場限りの武器。ダイビング中にしか使用することができません。
水上に上がると壊れてしまい、再度使用することが出来ない銃器ですが、ご安心ください。地上にはコブラの知り合いの武器職人、ダフがいます。
彼はデイヴの持ち帰った銃器から設計図を新たに用意してくれ、ダイビング中に入手した必要素材を手に依頼をすれば、水中でも水上でも壊れない武器を作ってくれるのです。
このようにして作った武器は強化することも可能で、素材を集めてくれば、ダフは単純に威力を強化した銃器や、毒や麻痺などといったバッドステータスを魚に与えることのできる、特殊な銃を作ってくれます。
ただ、魚をその場で射殺してしまうと、食材として持ち帰ることのできる部分が少なくなってしまうので、注意しなくてはいけません。銃で体力を削ってスピアガンで仕留める。そんなイメージですね。
そして、魚をその場で射殺してしまうという通常の銃器のデメリットを補ってくれるのが、麻酔効果のある銃器です。確定ではなく確率ではありますが、麻酔弾を打ち込んだ魚はしばらくすると眠りにつきます。その隙に近づいて捕獲すれば魚にほぼ傷をつけることなく回収できるため、通常の銃器やスピアガンを使った捕獲と比較して、漁獲した魚のランクが上がります。
ちなみに、デイヴ1人の力では到底回収できないような巨大魚に関しては、その一部を切り取って持ち帰るか、ドローンを呼び寄せて丸々一匹回収してもらうことになります。回数制限があるので、使いどころが大事ですね。
このように、本作では様々な方法を使って漁をすることができるのですが、これらの手法を駆使して魚と格闘する時間はかなり楽しく、知らぬ間に時間泥棒の被害にあうこともよくある話。気が付けば、プレイを始めてから長時間が経過しているのです。
さて、食材や資材を求めてダイビングを行うデイヴですが、本作の大きな魅力の1つは、なんと言ってもその海底世界の描写でしょう。
画像で見ると、画面中央に映るデイヴの姿がかなり小さいように感じられるかもしれません。ですが、このように画面上でのデイヴの姿が小さくなっていることで、その対比として彼の潜る海の雄大さをを強く感じることができ、この海を冒険するワクワク感やドキドキ感が一気に増幅されるのです。
また、デイヴが画面上で小さく表示されていることにより、小さい魚は本当に小魚だなと思うレベルの小ささで、巨大魚は身の危険を感じるほどの大きさに見えるのがまた素晴らしいと思います。特に、海底へと深く潜っていく中で巨大魚が見えてきた時の恐怖感は別格。思わずその場から逃げ出したくなってしまうほどです。
得てして世の中の絶景というものは、写真だけで判断せずに実際に見たほうがいいもの。『デイヴ・ザ・ダイバー』のゲーム画面の素晴らしさは、画像だけでは伝えきれない部分があります。文章の限界を認めるかのような敗北宣言ではありますが、やはりいくら言葉を尽くしても、実際にプレイ画面を見た時の感動には劣ってしまう部分があるのは否めません。現に今、撮りためたスクショを見ながら「もっとゲーム画面は綺麗で感動的なのに、なんでこんな微妙な感じのスクショしか撮れないんだよ!」と嘆きに嘆いています。
そんな『デイヴ・ザ・ダイバー』の海中表現、晴れている日の海の美しさは言わずもがなですが、私が好きなのは雨の日の描写。これは海面付近を泳いでいるときにしか分からないのですが、本作では雨が海中に入り込んでいる様子が丁寧に描写されています。こういう細かさがまた堪らないですね。
自然の雄大さをずっと感じて居たいところではありますが、そんなことばかりは言っていられません。デイヴが海底に潜り続けるには、あまりにも酸素が足りなさすぎるのです。
本作における酸素量は、体力ゲージのようなもの。潜り続けているだけでも、時間経過とともに少しずつ消費されていき、0になるまでに水上に上がることができなければ、デイヴの意識はブラックアウト。
こうなってしまうと、そのダイビングの間に入手したものの内、1つのアイテムしか持ち帰ることが出来ません。これは魚も素材も含めて1つだけなので、そのダイビングがほぼほぼ無かったことになるという、かなりの痛手を負うことになってしまいます。可能な限りこの状況に陥ることは避けなければなりません。
ブラックアウトにならないようにするためには、酸素量をしっかりと確保しておくことが大切。海の中には酸素タンクが時折置かれており、これを開けることで、酸素量を最大値まで全回復させることができます。利用しない手はありません。
そして、ダイビングを終えて水上に戻る方法は、主に自力で水上に戻るやり方と、無線ポイントで脱出ポッドと連絡を取って救出してもらうやり方の2種類があります。
自力で水上に戻る方法が一番確実ではありますが、ゲームを進めていくと、デイヴはかなり深いところにまで潜っていくことになるので、脱出ポッドと連絡を取る方法が現実的でしょう。
そのため、ダイビングをする際には、脱出ポッドと連絡を取れるポイントをしっかりと頭に入れながら探索を進めていくことも大切です。安全なダイビングのためにも、退路の確保は重要なのです。
要するに、脱出艇連絡ポイントにさえたどり着ければ、無事にダイビングを終えることができるというわけなんですが、こうなってくると、海中でのデイヴのスピードにも注意を払わなければなりません。
彼の遊泳スピードは、集めた魚や素材の総重量が彼の積載適正重量を超えると、とたんに遅くなってしまうので、注意が必要です。ただ、適正重量を超えたとしても、積載限界重量まではまだまだ魚を獲ったりすることはできるので、泳ぐスピードが遅くなることを考慮に入れて半ば無理矢理に欲しいアイテムを持ち帰ることも可能。どのようにダイビング計画を立てていくのかは、各々のプレイヤーの手に委ねられています。
ちなみに、デイヴが適正積載重量や限界積載重量を超えている場合、彼の頭上にアイコンが表示されます。一目でデイヴの状態が分かる。そういったプレイヤーへの優しさも、本作の魅力ですね。
また、先程デイヴの酸素は時間経過と共に徐々に減少していくというお話をしましたが、この酸素量は、魚などから攻撃を受けることでも大きく減少してしまいます。酸素量が体力ゲージのようなものと表現したのは、これが理由。
デイヴを攻撃してくる魚は、デイヴを視認した瞬間に敵と認識し、積極的に攻撃を仕掛けてくる野蛮さを本能的に持ち合わせています。このような野蛮魚は、その頭上に赤いアイコンが表示されているため、遠目からでもすぐに判別することができます。仕留めてやるという覚悟が無い場合は、可能な限り接触を避けた方がいいでしょう。
こういった巨大魚はタフで中々倒れてくれないため、格闘する時間が長くなってしまうこともしばしば。当然その間も酸素は少しずつ確実に減少していくので、狩りに時間をかけすぎた結果、倒した後に酸素が足りなくなりブラックアウト……という虚しいパターンになってしまうこともあります。上の画像は普通に巨大ザメにトドメを刺されたデイヴですが、命あっての物種、引き際はしっかりと弁えましょう。
さて、デイヴがこの海に潜るのは、漁や素材確保のためだけではありません。時には、大学院に通う学生のエリーからフィールドワークの手伝いとして、海洋生物の調査を頼まれることも。これは余談になりますけれど、私の妹が大学院で生物系の研究をしているんですが、話を聞く限り、フィールドワークって本っ当に大変な肉体労働なんですよね。
それはそれとして、彼女からの依頼は “生態ミッション” と呼ばれ、スマートフォンのエコウォッチャーというアプリで一括管理されています。その内容は、生態系の把握や環境分析のために貝殻や海藻を集めたり、生態系のバランスを整えるために魚やクラゲを捕獲したりといったもの。
これらのミッションを達成した際には、エコウォッチャーから納品や報告をすることでポイントが蓄積され、このポイントが一定値に達すると研究&保護レベルが上がり、報酬を獲得することができます。このミッションもゲームを構成する大切な要素の1つですから、本作は、ローグライクスキューバダイビング漁寿司屋経営海洋生物調査生態系保護ゲームですね。
漁に海洋生物の調査と生態系の保護。この辺はまだ、ダイバーの手がける仕事として現実にもありそうな範囲内ですが、本作の特異なところが、魚人俗文明の権威であるDr.ベーコンから魚人族文明に関する調査を依頼されることもあるということ。
急な新用語の登場となってしまいましたが、魚人族文明とは、遥か昔、デイヴが潜る海の近辺に存在したとされる伝説上の海底文明。
この文明を築き上げた魚人族は魚を崇拝し、エラを使っての水中呼吸が可能であったとされており、生活圏を海底に得たことで侵略されずに繁栄してきたものの、突如として発生した海底の地殻変動によって瞬く間に滅んでしまったと現代には語り継がれてきているんだとか。
ゲームの中にでも出てきそうなこの魚人族文明伝説を本気で信じるものなどいるはずもなく、長年おとぎ話として捉えられてきましたが、Dr.ベーコン曰く、つい最近になって、その文明が実在していた痕跡が発見されたとのこと。
その話を聞いたコブラは、ここが幻の海底文明ゆかりの地になれば、より一層寿司屋の客足が伸び、大繁盛間違いなしと太鼓判を押します。いつものように目の色を変えて、デイヴにDr.ベーコンの海底文明研究に協力をするよう命じました。
この海底文明探索は、本作のストーリーにも密接に関わってくる重要なもの。ですから、ローグライクスキューバダイビング漁寿司屋経営海洋生物調査生態系保護魚人族文明探求ゲームというのが、本作の正しい呼び名かもしれません。
ここまでお話してきたものだけでも、お腹いっぱいになってしまいそうなくらいの物量だったかとは思いますが、本作ではこの他にも、イルカとの交流や、
ナイトダイビング
海賊との死闘
巨大生物
大企業には抗議活動をせず、個人事業主や中小企業ばかりに文句を言ってくる「黒い交際の噂も絶えない怪しい環境保護団体との軋轢」などといった、様々なイベントが待ち構えています。
この海には、多種多様な楽しさと恐ろしさが潜んでいるのです。
しかし、これだけの要素に取り囲まれてしまうと、ダイビングに疲れてしまうこともあるかもしれません。
でも大丈夫。本作は、ローグライクスキューバダイビング漁寿司屋経営養殖場運営海洋生物調査生態系保護魚人族文明探求ゲーム。もしもダイビング漁に疲れてしまったのなら、養殖業に力を入れて、こちらからバンチョ寿司へ魚を卸すこともできます。気楽に気長にゲームを楽しんでいきましょう。
……養殖に必要不可欠な卵は、ダイビングをしないと集められませんけれど。
さて、海に潜ることを生業とするデイヴにとって、自身の潜水装備を強化していくことは非常に重要です。
本作における潜水装備は、スマートフォンの “iDiver” というアプリを起動し、所定のお金を支払うことでその場で即座にアップグレードすることができます。アプリがあれば何でも出来る。とんでもない時代になったものです。
iDiverを使っての潜水道具のアップグレードにより、潜水深度・最大積載量・最大酸素量・スピアガンの攻撃力などが増加し、よりダイビング漁がやりやすくなったり、深海の新たな探索地へ足を踏み入れることができるようになったりします。
そして、これらのアップグレードで使用するお金をどこから集めてくるのかと言いますと、その多くは寿司屋での利益が中心となるでしょう。
お金はミッションを達成することでも貰えますが、寿司屋の営業は毎日のことですから、こちらの比重の方が大きくなるのではないかと思います。
ということで、次はダイビング漁と双璧を成す『デイヴ・ザ・ダイバー』の重要な要素、寿司屋経営について見ていきましょう。