友人から対戦で8時間フルボッコにされ続ける──。
これが、私が『ストリートファイター』に完全に挫折し、シリーズから遠ざかった理由でした。もう10年以上前、『ストリートファイターⅣ』をプレイしている時のことです。
それでも、格闘ゲームそのものは大好き。
『ストリートファイター』シリーズ挫折以降も、『Ultimate Marvel vs. Capcom 3』『GUILTY GEAR -STRIVE-』『ドラゴンボール ファイターズ』『鉄拳77』『SOULCALIBUR VI』『Skullgirls 2nd Encore』『アカツキ電光戦記』『エヌアイン完全世界』『サムライスピリッツ零スペシャル』『豪血寺一族』『幕末浪漫第二幕 月華の剣士』『ワールドヒーローズ』『わくわく7』『大江戸ファイト』『形意拳』……他にもまだまだあるのでこの程度に留めておきますが、色々な格闘ゲームをプレイだけはしていて、昨年には、CAPCOMの対戦ゲームを10タイトル収録した『CAPCOM FIGHTING COLLECTION』の記事も掲載していただきました。
……ただ、どのゲームについても、その実力の低さは折り紙付き。『Ultimate Marvel vs. Capcom 3』については、『ストリートファイターIV』で8時間ボコってきた友人に、同じように長時間ボコられています。
つまるところ、私は格ゲーが大好きなのに、格ゲーのセンスが圧倒的に不足しているというわけ。格ゲーを愛し格ゲーに愛されぬ男といったところです。要するに、ヘタクソなんです。
あと、先ほど列挙した格ゲーの無駄な幅広さからもその片鱗が見え隠れしていますが、1つのことをやり続けるという事が苦手で、広く浅く手を伸ばしてしまうというのも大問題ですね。
しかし今回、『ストリートファイター6』で約10年ぶりに私は『ストリートファイター』の世界へ舞い戻ってきました。そして結論からいうと……
『スト6』、ものすごく楽しんでいます!
購入のきっかけは例の友人から「俺と格ゲー界のために『ストリートファイター6』を買ってくれ!」という熱い誘いを受けたことでした。気が付けば購入することで話がまとまっていましたが、 我々のソフト購入直後に『ストリートファイター6』の売り上げが100万本を突破したというニュースが入り、「お前スト6買う必要無かったわ」と友人に言われるのは、また別のお話……。
ということで、今回はかつて『ストIV』で心折られた私が、なぜ『スト6』を楽しめているのか。友人はもちろん初心者の妹にさえ連戦連敗でボコボコにされつつ、それでも“楽しい”と感じられるのはなぜなのか? そんなお話ができればと思います。
文/DuckHead
まずは懐かしき“相棒”を引っ張り出す
まず、『ストリートファイター6』を起動する前に取り出したるは、Xbox360のアーケードコントローラー、通称アケコンです。
これは、例の友人に「普通のコントローラーで格ゲーやるなんてヤツはああたらこうたらどうたら……」と半ば強引に説得され、『ストリートファイター4』をプレイするために購入していたもの。
……というか、そもそもXbox360本体を買ったのも、「Xbox360はああたらこうたらどうたら……」と同じ友人に説得されて、『ストリートファイター4』をプレイするためでした。今も現役でゲームを楽しませてもらっているので、購入自体に後悔の念は全くないものの、彼には少々強引なところがあります。
さて、かなり久々に押入れから出してきたアケコンは、中々の汚れっぷり。普段からの管理の悪さの賜物といったところでしょう。生来の雑さが見え隠れしていますが、そもそもアケコンを持ち出してきたのも、「Xboxのアケコン、確かUSB接続だったよな。パソコンでも使えるっしょ」という雑な理由。10年という時の流れの中で、私のゲームスタイルは据え置きゲーム機からパソコンへと変貌を遂げましたが、テキトーな性格は変わらぬままのようです。
そんなどうでもいい話はさておき、アイコンをダブルクリックしてゲームを起動してみると、Xboxアケコンに反応がありました。どうやら、問題なく使うことができそうです。これで「新しいアケコンを買え」と友人にやいのやいの言われる心配はなくなり、一安心です。
技が出ない
チュートリアルを終え、全キャラクター共通の基本システムを学んだところで、キャラクターの基本戦法や必殺技の解説を見られるキャラクターガイドを参考に、対戦で使う持ちキャラを決めていきます。
遠距離攻撃が主体の、独自の戦闘スタイルを持つJP。
酔拳とブレイクダンスを合わせた武術を操り、対戦中に酔いレベルを上げていくことで技が変化するジェイミー。
古き良きポップカルチャーを愛し、『ストリートファイター』シリーズではお馴染みの武神流に自己流のアレンジを加えた武術を使いこなすキンバリー。
以上の3キャラを持ちキャラにすることを決めたところで、コンボ練習ができる “コンボトライアルズ” といったモードを使い、友人との対戦の日に備えます。
……そして、いよいよ訪れた友人との対戦の時。
10年前はボロッボロにやられてしまいましたが、今こそ当時の雪辱を果たす時です。いざ。
大事な初戦で私が選んだのは、一番使いこなせそうだったJP。それに対し友人が選んだのは、『ストリートファイターⅡ』の頃から操作キャラクターとして登場している、エドモンド本田です。
「……本田?使ってんの初めて見るけど。」
「俺はもう昔っから本田一筋よ。」
「いやいや、Ⅳの時はユンとかまことを使ってたろ。」
「んなことないよ、本田が出てる時は本田しか使ってねぇよ。」
「…………なるほど。今の環境では本田が強いんだな?」
「うーん…………どうだろ。」
「じゃあ、本田がどういうキャラか簡単に教えて。」
「初心者殺しの超絶不快キャラ」
「ふざけんなよ」
などといつも通りの小競り合いをしていると、本田の猛攻に次第に追い込まれ、JPの体力が危うくなってきました。
これはまずい。10年前と同じように大敗してしまう。そんな不安感と焦燥感に駆られた時、脳裏に響いたのがリュウ大先生のお言葉。
「困った時は、ドライブインパクト【※】で突破口を開け」
※ドライブインパクト:相手の攻撃に耐えつつ攻撃できる『ストリートファイター6』共通アクションのひとつ
(……そうだ、そうだった。よし、いけ!JP!ドライブインパクト!)
と、心の中で叫びつつ本田に向かってドライブインパクトを放つと、
「はい、読んでました!」
という友人の声が鼓膜に響き、見事にこちらのドライブインパクトにドライブインパクトを重ねられ、そこから更にスーパーアーツレベル3をぶち込まれました。
……ハッキリ言って、完敗です。よりにもよって、勝者が一番気持ちよくなるような勝ち方を許してしまいました。
私が深いため息をついていると、友人は「話にならんわ。こういう読み合いが基本中の基本なのよ、このゲームは」と、一言。
「昔からずっとそうだけど、対戦の時には絶対にお手軽不快キャラ使ってくるよな」
「お前との対戦の時だけだよ」
「特別感出すな」
「ってか、俺はお前の使ってるJPだって相当不快なキャラだと思ってるぞ」
「その不快を引き出せるほどのプレイヤースキルがないってとこを見せつけてやるよ」
などと舌戦を繰り広げているうちに、気が付けば友人のエドモンド本田を相手に連戦連敗。いやー、今でも立派に8時間ボッコボコにされ続けることができそうです。
不本意にも幸先の悪いスタートになってしまいましたが、切り替えていきましょう。ひょっとすると、JPでは分が悪いのかもしれません。今こそ、次のキャラクターを試す時です。
ゆけっ!ジェイミー!
もういい! もどれ!ジェイミー!
技を理解しきれていないのに、ガチ勢に太刀打ちできるわけないだろ!馬鹿め!
そして、ジェイミーに続いて出したキンバリーもボッコボコ。しかも、いつの間にか友人は持ちキャラではないキャラクターを使い始めています。それでも全く歯が立たない辺り、その実力差は圧倒的です。
その後、キンバリーは完全に切り捨て、JPやジェイミーで対戦し続けたものの、10戦中に1回くらい勝てればいい方という体たらく。
「仕事忙しくて全然練習できてない」とやり込みの浅さをアピールしつつ、コンボを伸ばす為に重要なドライブラッシュをしっかりと使いこなしてコンボをつなげてくるあたり、友人はしっかりやりこんでいる様子。
このまま新キャラクター勢にこだわっていては、勝つことは難しいでしょう。
……どうやら、あのキャラクターを出すしかないようです。
ご覧ください、満を持してガイルの参戦です。先ほどまでの新キャラの皆々様とは違い、彼の戦法はうろ覚えではなく、しっかりと私の頭の中に叩き込まれています。
正直なところ、その戦法も10年前のものではあるのですが、ガイルは10年前の時点で「20年近く戦法がほぼ変わっていない」と評されていたキャラクター。今作でもその部分は大きく変わっていない……はずです。
更にガイルは、レバーを特定の方向に一定時間倒し続けるコマンドで必殺技を出す “タメキャラ” と呼ばれるキャラクターであり、私が『ストリートファイターⅣ』の頃に1番の持ちキャラとしていたベガと同じカテゴリーに属しています。
そんなガイルの伝統戦法は、俗に “待ちガイル” と呼ばれるもの。
この戦法は、斜め後ろ下方向にレバーを倒して相手を待ち構えるという非常にシンプルなものとなっており、レバーを斜め後ろ下方向に倒すことで、ガイルのタメ技の要である「後ろタメ前パンチ」で繰り出すソニックブームと、「下タメ上キック」で繰り出すサマーソルトキックの2つを同時に準備しておくことができるのです。
そして、相手が歩いて近づいてきたらソニックブームを放ち、ジャンプで近づいてきたらサマーソルトキックで迎撃すればOK。無論、これだけやっていれば絶対に勝てるというわけではないですし、今もこの戦法が有用なのかは分かりませんが、ソニックブームやサマーソルトキックさえ出せれば、ある程度闘うことはできるので、現状においてはこれに頼るほかありません。
いざゆかん、輝ける闘いの舞台へ。
ソニックブームが出ない
後ろタメ前パンチ、 I can’t do it Impossible!
サマーソルトも出ない
だけど友人は容赦なきドラゴンダンス
何だこの不良品ガイル!
……ソニックブームとサマーソルトの技が出ない。僕の大好きなガイル、とっても大事にしてたのに、壊れて出ない技がある。
どうしようどうしようと頭を悩ませるも、ソニックブームを狙ったタイミングで出せているのは体感で2割程度。ソニックブームもサマーソルトキックすら出せない自分が怖くなってきました。
(いや、これは話にならんわ。)と、口に出すことなく焦っていると、いつもなら煽りに煽ってくる友人も「これに関しては煽りでもなんでもなく、マジで話にならん。」とガチトーン。
我ながら初歩の初歩すぎる部分での躓きに驚きが隠せません。トレーニングモードではあんなにも自然に出せていたのに。
あまりのことに、「お前が昔使ってたベガもタメキャラだろ。何でソニックブームすら出ないんだよ。」という友人の追及に対しても明確な答えを返せず、苦笑いをするばかり。
……これはまずいことになってきました。