特殊ルール対決でお茶を濁そう!
友人との対戦では圧倒的な実力差を見せ付けられ、ボッコボコにしてやるつもりで対戦相手を妹に変えるも、綺麗に返り討ちにあう……。
兄の威厳などというものはとうの昔に地の底に落ちているため、その点については全くのノーダメージですが、記事にしていくとなると、負けっぱなしではあまりにも見映えが悪すぎます。こうなったら、奥の手を出すしかありません。
その奥の手とは、特殊ルール。
本作では通常の対戦に加えて、いくつかの特殊ルールでも遊ぶことができるのですが、特殊ルールという概念を持ち込むことにより、本作は硬派な格闘ゲームからあっという間にパーティーゲームへとその姿を変えてしまうのです。
本作にどういった特殊ルールがあるのかはよく把握していませんが、ひょっとすると、これらのルールの中に、私が圧倒的に有利になるものがあるかもしれません。それに、特殊ルールであれば、連敗してしまったとしてもルールのせいにすることができますしね。
といった卑怯者のマインドを心に宿しつつ、まず最初に選んだのはチーム戦。これは、最大5人のキャラクターでチームを組んで闘うモードです。
1人のキャラクターだけならともかく、ほぼほぼ初めての格闘ゲームで5人ものキャラクターをちゃんと動かすのは難しいはず。ゲームのセンスは向こうの方が上手ですが、知識量はこちらに分があります。
ちなみに、ここでは対戦のルールを結構細かく設定することができるのですが、今回は、体力ゲージを次の対戦でもある程度持ち越すなど、『THE KING OF FIGHTERS』シリーズの多くの作品で見られるような形式をイメージしたルールでプレイすることにしました。
このチーム戦で選んだのは、もちろんモダンタイプ操作。必殺技も出しやすく、お互いの技が華麗に決まっていきます。
先ほどもお話しましたように、今回は体力ゲージを次の対戦にもそのまま引き継ぐというルールで試合をしたため、場合によっては大きな体力差がついた状態で対戦が始まることも。
そのおかげで、通常の対戦では中々お目にかかる機会がないであろう、一切体力を減らすことなく対戦に勝利する “PERFECT K.O.” の演出も見ることができました。
そして、必殺技の応酬だけでなく、ドライブインパクトの差し合いも白熱。
それに加えて、スーパーアーツも出し惜しみせずに頻繁に繰り出され、チーム戦はかなりの乱打戦に。初めて操作するキャラクターばかりとは思えない展開になってきました。
先程もお話したかもしれませんが、スーパーアーツのコマンドがキャラクターによって異なるクラシックタイプに対し、モダンタイプは全員のスーパーアーツコマンドが同じです。そのため、初心者同士の対戦でもこのような白熱の展開を楽しむことができたのです。改めて、本作の対戦はかなり面白いと思います。
なお、試合は妹チームの大将を引きずり出すことすらできずに敗北しました。
私が引きずり出せなかった大将キャラクターにカーソルを合わせたまま、「彼は何をされてる方なの?」と、和田アキ子を宿した瞳で最大級の煽り文句を繰り出す妹に返す言葉もなく、「ムカつくわー」と、ヘラヘラ笑うことしかできませんでした。
知識はセンスに劣るということと、この程度の特殊さでは下手さをカバーしきれないということを学んだところで、敗戦の勢いそのままに、本作で用意されている特殊ルールを一通り遊んでみることにしました。
相手に攻撃を加えることで変動するシーソーバーを、相手側に全て押し込めば勝ちというシーソーゲームを楽しめる、“シーソー・ファイト”。
とにかく早く相手を5回ダウンさせたら勝ちの “スリップ・マスター”。
画面内に表示されるミッションをこなすなどして、より早く指定されたスコアへの到達を目指す “ロールプレイ・バトル”。
各プレイヤーに対してそれぞれ個別に指定された4つのミッションを、どちらが先に全てクリアすることができるかを競う“パネル・トライ” といったモードで遊びます。
ちなみにですが、これらの特殊ルールでは、対戦中にギミックを導入して新たな味付けを加えることも可能です。
本作のギミックは、ステージ上を一定時間ごとに走り抜けていく闘牛を筆頭に、
時限爆弾
電流
メットール……にしか見えないメカなどが用意されています。
これらのギミックは振り幅が大きく、対戦に大きく影響しないものからゲーム性を大きく変化させてしまうものまで様々。特に牛は激ヤバです。
さて、これらのギミックを含めて特殊ルールをプレイしていく中で、特に盛り上がったのが、“ヘブン・アンド・ヘル”。
これは、プラス効果とマイナス効果を同時に付与された状態で闘うという極めてシンプルな特殊ルール。この時に与えられる効果はお互いに同じものというわけではないため、条件の組み合わせによっては、かなり不利な状態での闘いが求められることになります。こういった運要素も、このルールの面白いポイントです。
そして、何度かこのルールで対戦をする中で私が引き当てたのは、スーパーアーツゲージ無限。しかも、この時操作していたキャラクターは、画面映えするスーパーアーツを持つザンギエフ。この機を逃す手はありません。妹の操るエドモンド本田に、スーパーアーツを思う存分ぶちかましてやりましょう。
なんと、1ラウンドで計4回。過剰摂取とも言える量のスーパーアーツを叩き込むことに無事成功しました。これだけの回数を叩き込む方も叩き込む方ですが、叩き込まれる方も叩き込まれる方だと思います。
なお、試合には敗れました。
ヘタクソでも楽しい対戦
……さて、友人と妹にボッコボコにされ続け、記事としての見どころを全く作ることができないまま対戦を終えることになってしまった敗戦ガチ勢の私ですが、本作の対戦はかなり面白いと感じています。
連戦連敗でも楽しい。相反する要素が混じりあっているようにも聞こえますが、この楽しさ、面白さの源流がどこにあるのかと言いますと、それは、対戦での演出とゲームシステムではないかと思います。つまり、本作ではドライブゲージやスーパーアーツを使った攻防から繰り出される演出によって生み出される高揚感が非常に大きいのです。
この部分に関しては、シリーズ歴代作品の中でもトップクラスだと私は感じていますし、この高揚感が連敗のもたらす不快感を凌駕してくるからこそ、負け続けても楽しく遊ぶことができるというわけです。
また、これらの画面演出はシンプルに見栄えがいいですし、必殺技だけでなく通常攻撃にもモーションのカッコいい技が多いため、上手い人同士が対戦しているところを見てみたいという気持ちに自然となってきます。何とも情けない話ではありますが、自分では上手く動かせず、ゲームの面白さを最大限に引き出すことができないからこそ、せめて上手い人の対戦を見て楽しみたくなるのです。
この、「上手い人同士の対戦を見たくなる」という点は、私がこれまで様々な格闘ゲームを浅くプレイしてきた中で感じた、面白い格闘ゲームの条件の1つなのですが、本作はこの条件を完璧に満たしています。
eスポーツ的な観点から言っても、誰か別の人の対戦を見ているだけで熱く盛り上がれるというのは、格ゲーとしてかなりの長所になるのではないでしょうか。実際、先日開催されたばかりのEVOも、非常に楽しく観戦させていただきました。モダンタイプの操作で勝ち上がっている方もいらっしゃいましたね。
一度シリーズに挫折した、初心者に毛が生えた程度の実力者から言えることがあるとすれば、格ゲーを長く続けるコツは、無理せず楽しむこと。
『ストリートファイター6』対戦は、様々な実力のプレイヤーに対応した無理せずに遊べる工夫が随所に施されているため、私のような無駄に格ゲー歴だけが長いヘタクソでもしっかり楽しめます。
格ゲー初心者の方が格闘ゲームを始めるなら、『ストリートファイター6』はうってつけであると言えるでしょう。
格ゲー史における名作の1本として数えられる未来もそう遠くないであろう本作。少しでも興味のある方は、是非遊んでみてはいかがでしょうか。