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『百英雄伝』は『幻想水滸伝』のファンをマジで唸らせる新作RPGだった。3DCGと狂気的なボリュームの「ドット絵」表現が『幻想水滸伝』の魅力を現代に進化させ蘇らせる【TGS2023】

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 一種のリバイバル性やいわゆる“復刻”の側面を持つ作品においては、「かつての魅力」をいかにアップデートし、更なる魅力を与えているのかが課題であり、そこに改めて作品を制作するかどうかの意義があるのではないだろうか。

 このたび、名作RPG『幻想水滸伝』のクリエイターによる新作RPG『百英雄伝』の冒頭をプレイさせて頂いたが、本作はまさに「過去の名作の美学」を現代に呼び覚まし、更なる魅力の創出を目指す作品となっていた。

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 筆者が触れることが出来たのは『百英雄伝』のほんの一端だが、本稿では試遊の時点で味わえた本作の魅力をお届けする。

 発表から3年の歳月を経て初めての試遊ができる機会となっていたが、本作はズバリ「期待を決して裏切らない」完成度を獲得している。本稿が『百英雄伝』の発売を楽しみに待っている方の参考になれば幸いだ。

 『百英雄伝』は505Gamesがグローバルパブリッシングを担当し、PS5、PS4、Xbox Series X|S、 Xbox One(Xbox Game Pass対応)、PC、Nintendo Switch向けに2024年4月23日に発売予定。すでに予約受付を開始している。


 まず、本作の概要を紹介しておくと『百英雄伝』はコナミが1995年に発売したRPG『幻想水滸伝』に携わった村山吉隆氏河野純子氏『FRONTIER GATE』シリーズなどの作品を手がけた小牟田修氏が中心となり開発する新作のRPGだ。

 本プロジェクトは2020年に発表され、同年7月末より実施されたクラウドファンディングキャンペーンにて、4万6307人の支援者から約4億8000万円以上を調達している。キャンペーンの結果などから、『幻想水滸伝』のファンから大きな期待を向けられていることが伺えるだろう。

 物語の舞台はさまざまな価値観や文化を持つ国が集まるオールラーン大陸で、絶大な力を持つ「魔道レンズ」を取り巻く戦争を主軸に、人、獣人、エルフ、砂漠の民などさまざまな出自のキャラクターを交えた群像が描かれる。

 タイトルのとおり100人以上の英雄が登場し、主人公は辺境の村出身のノア、帝国の士官・セイ、ガーディアンの少女・メリサの3名となっている。今回の試遊ではノアとセイの出会いと交流が描かれていた。

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 まず、本作をプレイして目を引くのは、現代の技術を駆使して「新しいドット絵の美しさ」を提示している点だ。

 近年では「ドット絵」をノスタルジックなフレーバーや「少ない工数の表現」として採用する作品も多いが、本作は違う。『百英雄伝』は「優れたユニークなビジュアル」を実現するためにドット絵を採用しており、同時に狂気的な工数を要している。

 たとえば本作には100人以上の英雄が登場するが、戦闘やイベントシーンでのアニメーションはキャラクターの個性を踏まえて個別に用意されている。

 また、3DCGの立体的な空間の表現とドット絵を併用する手法自体は散見されるが、無数の高品質なドット絵とアニメーションと3DCGならではの陰影や「カメラの焦点距離」といった立体的な空間の表現が融合することで、本作のビジュアルは「固有の質」を間違いなく獲得していた。

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 ゲームシステムに関しては『幻想水滸伝』をかなり踏襲しており、オーソドックスなRPGらしいマップの探索と最大7人のパーティーで挑むターン性のコマンドバトルを中心としている。

 通常戦闘におけるキャラクターの固有スキル、物語を進めてキャラクター同士の友情が芽生えれば使用できる強力な合体技「英雄コンボ」のアニメーションはダイナミックで、作品全体を華やかにしているだろう。

 また、試遊では確認できなかったが、多人数での特殊な戦闘や「一騎打ち」といったコンテンツも用意されるという。

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 結果として、『幻想水滸伝』をベースにしたオーソドックスなRPGの形式を採用しているものの、全てが前述した「独自のビジュアル」で描写されることで「操作して動かすこと」そのものに快楽が生まれていた。

 ビジュアル面での達成は『幻想水滸伝』を知らない現代のプレイヤーの心を掴み、同シリーズのファンの心を今一度揺さぶる唯一無二の発明となっているはずだ。

 また、試遊では冒頭のストーリーも楽しむことができた。

 ゲームは田舎の村出身の少年・ノアが「連合諸国」の警備隊として獣人の古強者ガオウ、東方の国出身の侍・ミオ、新米のおてんば娘・リャンと共に初仕事へ挑む場面からスタートする。

 初仕事は「連合諸国」と、同国がかつて対立していた「カルディア帝国」との親善を兼ねた共同作戦となっており、絶大な力を誇る「原初の魔導レンズ」を手に入れるべく「ルーンの遺跡」を探し出し、その内部を探索するというものだ。

 「カルディア帝国」側の軍勢は主人公のひとりである「セイ」とその副官である「副官のヒルディ」となっており、特に冒頭では国家間の絶妙な緊張感やキャラクターごとの思想および立ち振る舞いの差異を描写している。

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(画像は 『百英雄伝』東京ゲームショウ2022 「特報」トレーラー / TOKYO GAME SHOW 2022 Trailer – YouTubeより)
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(画像は『百英雄伝』- 先行予約開始トレーラー – YouTubeより)

 『百英雄伝』では、100人以上の英雄が個別の物語を有していることが以前から明かされていた。とはいえ、実際にプレイすると全ての英雄に「明確な存在感がある」ことは途方もない情報量を有しており、作品世界のリアリティに説得力を生み出している。

 初期のパーティーメンバーのほか、破天荒な魔法少女、特攻服をきた義理硬い元「馬賊」のキャラクター、歴戦の傭兵といった英雄も物語の序盤に登場しており、筆者が体験した以上に物語が賑やかに展開していくことは確実だ。

 また、本作に登場する全英雄はフルボイスとなっており、パーティーでの協力を経て各キャラクターが打ち解けていくドラマは「王道なRPG」の冒険に有機的なキャラクターの息遣いを生み出していた。

 試遊では他者への優しさに溢れた「ノア」と個人主義的な考え方の「セイ」が冒険を介してそれぞれの出自を明かし、お互いのことを理解し合っていく「友情物語」も確認できた。いっぽうで「カルディア帝国」と「連合諸国」の不穏な関係性も描写されており、「戦争」がモチーフであるが故の切ないドラマにも期待が高まる。

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 なにより今回の試遊で確認できたのは最序盤でしかない。今回は触れることができなかった主人公のひとり「メリサ」や注目の「一騎打ち」、多人数戦は今後の続報にて詳細が明かされるため、引き続き『百英雄伝』の続報に期待したい。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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