「VR」といえば、やはりゲームの作品世界に没入するのにぴったりなハードウェアのひとつだ。でもVR機器を揃えるのは大変。魅力的なVR作品がリリースされていても、プレイまで至るにはけっこう大きなハードルがある。
LAM氏によるスタイリッシュなキャラクターデザインと下川輝宏氏によるシナリオで描き出される、美しく隅々まで行き届いているはずなのにどこか空虚にも思える管理社会。ゲーマーなら多くの人がグッとくるであろう、「犯罪発生率0.001%」の楽園を舞台にした『ディスクロニア クロノスオルタネイト』(以下、『ディスクロニア:CA』)は、MyDearestとイザナギゲームズによる、3つのエピソードから成るVRノンストップ捜査アクションだ。
プレイヤーは、犯罪発生率0.001%の楽園と呼ばれる海上都市「アストラム・クローズ」での「起きるはずのない事件」、そして都市を統べる管理AIへと立ち向かう。
Nintendo Switchへの移植版『ディスクロニア クロノスオルタネイト ディフィニティブエディション』では、この魅力的な物語をVR機器を揃えずに手軽に楽しむことができる。
本稿では、9月21日(木)より開催された「東京ゲームショウ」、イザナギゲームズさんのブースにて展示されていたNintendo Switch移植版、NON VR版である本作のプレイレポートをお送りする。
取材・文/anymo
ゲームの中に体があるような臨場感
今回プレイしたのは、物語の中盤で挑戦することになるスニークミッション。「アイリ・クローバー」が主人公を狭い部屋の中で追いかけるという、スリリングな場面だ。なお、画面を撮っている余裕がないほどに緊迫感のある場面だったため、試遊を終えてからスタッフさんに再度プレイを見せていただいた。
屈んだ姿勢で移動しながらアイテムを手に取って投げて意識を逸らし、その隙にドアのロックを解除し、部屋から脱出することが目標だ。
VRゲームということもあり、通常のゲームとは異なる空間認識能力が問われる。スタッフさんに「クリア率はかなり低いです」と告げられたとおり難易度は若干高めで、1回目はあえなく撃沈した。
通常のゲームにおいてこのようなミッションが提示されたとき、「ここで曲がって、アイテムを拾って……」と頭の中でなんとなく筋道を立てるだろう。筆者ももちろん脳内でシミュレーションしてから臨んだのだが、元がVRゲームであるからこその緊迫感で「あっ、ちょっと思ったより怖い」と逃げ腰になってしまい、ゲームオーバーとなった。
この緊迫感は「画面の中で起きている緊急事態」というよりは、より自身の身に迫るようなものだった。握っているのはJoy-conだけでゲーム画面をモニターで見ているのに、ゲームの中に体があるような感覚だ。
VR作品のNintendo Switchへの移植、思ったより相性がいい!
VR作品のNintendo Switchへの移植と聞いて、試遊するまでプレイ感の想像があまりできなかった。それは、VRのゲームで得られるリッチなプレイ体験と、Nintendo Switchの手軽さという利点があまり結びつかなかったからである。
が、今回の試遊でわかったのは「思っていたよりずっと相性がいい!」ということだ。
Nintendo Switchのコントローラー「Joy-con」は、専用の部品に差し込むことで両手で握るゲームパッドのように使うこともできるが、左右別に握ることでより自由な姿勢でプレイできる。今回試遊の際に使用したのは後者のモードで、これがVRのコントローラーに近しい形態であったことから本作ととても相性がよかった。
VRゲームの視点というのは一般的なゲームの一人称とはまた異なる、もっと肉眼に近いものだ。この視点と、左右で別々のコントローラーを握るという部分だけでも「VR感」は存分に感じられた。遮音性の高いヘッドホンをつけて大きめのディスプレイを用意すれば、さらにVRに近しい体験ができそうだ。
また、Nintendo Switchの大きな魅力として手軽さがある。モニターに繋いでしっかり腰を据えてプレイするのはもちろんだが、ベッドに寝転がってもプレイできる。VRという機材的にもスペース的にもどうしても敷居が高くなってしまう機器を揃えることなく、手軽にこのSF世界を楽しむことができるのはとっても嬉しいポイントだ。
移植版である本作には、すでにリリース済みの3つのエピソードにくわえてNintendo Switch限定のシナリオも付属する。通常版とあわせて、サウンドトラックや描き下ろし小説など豪華特典を同梱した「プレミアムボックス」の予約も受け付けている。
『ディスクロニア:CA』に興味がありながらもプレイする機会がなかったユーザーには、またとない機会の今回の移植。Nintendo Switchで体感できる「VR感」も、とても新鮮なものだったので、本作の設定やビジュアルが琴線に触れたならぜひプレイしてほしい。