膨大なデータを基にサッカークラブの運営をシミュレーションできる『フットボールマネージャー』シリーズ。20年の時を経て、待望の日本語版の展開、さらにJリーグの登場が発表された。
選手の移籍や獲得はもちろん、資金運用、トレーニング方法などに至るまでを指示することができる「全権監督」としてプレイする本作。日本語版が発表される前から、英語版でプレイを楽しむユーザーがいたり、有志による日本語化MODが公開されたり、日本国内でも愛されてきた作品だ。
11月7日(火)の発売を目前に、最新作である『フットボールマネージャー2024』(以下、『FM24』)の開発スタジオ・スポーツインタラクティブより、スタジオディレクターのマイルズ・ジェイコブソン氏への合同インタビューへ参加した。
プラットフォームごとの違いやクロスプレイ、前作『FM23』からのデータ移行などの気になるトピックはもちろんのこと、「Jリーグ」の登場までの軌跡や本作のコミュニティの素晴らしさなどに至るまで語ってくださった。
文・取材/anymo
■J1、J2、J3まで網羅した『フットボールマネージャー 2024』
マイルズ・ジェイコブソン氏(以下、マイルズ氏):
東京ゲームショウに来るのは初めてです、みなさんにお会いできることを非常に光栄に思っております。
『フットボールマネージャー』は世界で非常に人気のあるゲームですが、日本語版の登場が長らくできなくて申し訳ございませんでした。今回改めて日本でのデビューということでいろいろと乗り越えなければならない壁がありましたし、翻訳するテキストも大量にありましたが、頑張りました。
お詫びと言ってはなんですが、ニュースをひとつお持ちしております!
「Jリーグ」のライセンスを取得しました。J1からJ2、J3まで網羅しています。対象となるプラットフォームはPlayStation5、Nintendo Switch、Xbox、PC、モバイル、Netflixです。このリーグのライセンスの取得にも19年ほどかかっております、お待たせしました。
──『フットボールマネージャー』シリーズ20周年で待望の日本デビューとなりましたが、日本デビューを決断された理由は?
マイルズ氏:
日本でリリースしたいとかなり前からずっと考えていました。日本のフットボールに対する熱意や、先日もドイツに勝利するなど日本代表チームが最近うまくいっているなど、コミュニティの盛り上がりもありますね。(マイルズ氏の出身地である)イングランドの壁は高いと思っていますが(笑)。
元々PCメインで作っていたゲームなので、翻訳するにあたって日本語にすると文字が小さいなど、いろいろな問題もありました。
コンソールに移植することでプレイヤー層を広げるというのもありますが、それだけではやっぱり足りなくて。やはり、Jリーグという要素は非常に大事です。やっと交渉も進んだことで、日本のリーグをゲームに登場させることができます。
日本語版が正式にリリースされていない中で、熱心な国内の『フットボールマネージャー』ファンの方が英語版でプレイして頂いているということも認識していました。ただ、私としてはやっぱり「それじゃダメだ」ということで正式に翻訳をしてお届けするということを目指していました。
現状、国内のゲーム市場にフットボールのマネージメント系のシミュレーションゲームというのは『サカつく』などが存在していますが、それらとはゲーム性がかなり異なります。どんなシミュレーションゲームなのかというと、『フライトシミュレーター』のような、本当に現実に即したシミュレーションゲームとなっています。
本作には52カ国、50万人以上の選手データが含まれています。これは『フットボールマネージャー』の1500人以上のリサーチャーが出したデータに基づいています。
「このデータがどれだけ正確なのか」ですが、実際のプロのフットボールチームクラブが『フットボールマネージャー』のデータを見て、分析して移籍やスカウティングに使っているという例があります。
『フットボールマネージャー』をプレイすることによって、一般のユーザーが「リアルの監督よりも自分のがうまく指導できるぞ!」ということを証明できるほどにリアルです。
プレイヤーは全権監督のような扱いになるので、戦略や移籍、トレーニング方法などすべてを管理することができます。すべての要素を管理することに不安がある方は、ゲーム内でスタッフを雇ってトレーニングを担当してもらうといったようなアウトソーシングもできるようになっています。
マッチ中は、選手の思考を4分の1秒につき1回シミュレーションしています。選手それぞれに250項目ほどの能力値があり、そのパラメーターによって試合中にどのような動きをするのかをAIが判断、反映させて試合を動かしています。まるまる一試合マッチを流すことも可能ですし、ゴールシーンやペナルティシーン、チャンスシーンなどのハイライトに絞ったモードも搭載しています。
『フットボールマネージャー』というゲームはすべての要素がAIで管理されていて、自分の選択ひとつでチームの行く末などがすべて変わっていきます。ゲームにあるようなストーリーラインはなにひとつ存在しません。そして、対戦するAIのマネージャーも、自分と同じレベルの判断をしてクラブを運営しています。
『フットボールマネージャー』の説明が長くなって、申し訳ありません。30年の歴史をお伝えするのにこれだけの時間をいただいてしまいました。
──ファンコミュニティでは、有志による日本語翻訳がされていました。その方々にメッセージをいただけますか?
マイルズ氏:
そのような方がいるということはもちろん認識しています、本当にありがとうございます。今年からは正式に日本語でプレイできるので、翻訳の時間を『FM』のプレイに充てていただければと思っております。
翻訳の質はトップレベルを目指して、時間をしっかりかけて取り組んでいます。
──次回作移行、継続的な日本での展開は考えていますか?
マイルズ氏:
はい!もちろん単発ではなく、今後も継続して日本で展開していきます。
『フットボールマネージャー』の売り上げトップ5には、韓国が入っています。アジアマーケットで強く展開していけるという事例がありますので、日本の市場もそれと同じぐらいにしていきたいです。
また、女子サッカーもスポーツインタラクティブでは重要視しています。これらも踏まえて、毎年何かしらアップデート、改善していきたいです。
──Jリーグへの期待値は日本以外でも高かったのでしょうか?
マイルズ氏:
実は、Jリーグは日本だけではなく世界中で待望されているリーグのひとつです。私が来日していることをX(旧Twitter)に投稿したら、スレッドが「Jリーグ!」、「Jリーグ!」というようなお祭り騒ぎになって(笑)。
まだ情報解禁前なので「TGSに行っただけ、キットカットを買っただけだよ」と言いましたが、それくらい世界中でJリーグの登場というのは注目されています。
私としても正式に日本語でリリースして、Jリーグも登場するということが隠しきれないほどハッピーです!
──選手の移籍や獲得という要素が複雑かつ奥深い部分だと思います。最新作において、これらの要素について特に力を入れた部分はありますか?
マイルズ氏:
まず、前作の時点でスカウティングのシステムは大きく向上していたのですが、今年はより実際のプレイの部分を改善しました。
例えば、移籍のシステムをリアルにするために選手を売ることが楽になりました。エージェントを雇うことができ、彼らを通して選手と直接交渉したり、クラブと交渉したりということができます。ですが、簡単になったとはいえ、エージェントには料金が発生します。
今回、システム的なところではなく、Jリーグが新しくそのままゲーム内に登場するので、今まで誰も触ったことのない未知のスカウト市場が現れます。そういった意味で、本作のスカウト市場の拡張度合いというのはとても大きいと思います。
──さまざまなハードで日本語版が展開されますが、それぞれ違いはあるのでしょうか?
マイルズ氏:
まず、『フットボールマネージャー 2024』は3つの種類があります。
PCの『フットボールマネージャー 2024』がすべての要素、データが集約されていてすべてをシミュレーション可能なもの。
PlayStation 5、Xboxの『フットボールマネージャー2024 コンソール』は、内容はあまり変わりませんが、コンソールに対応させるにあたって一部をダウングレードすることでシミュレーションがスムーズに動くように調整されています。
Nintendo Switchではオンラインモードを除いた『フットボールマネージャー2024 タッチ』になります。
Netflixで配信されるのが『フットボールマネージャー2024 モバイル』になります。シミュレーションの部分では作り込んでいますが、本作の入門として非常にライトに作られています。
プラットフォームごとにいろいろな形式で出させていただいているのは、プレイヤーがどのコンソールを選ぶかによってプレイスタイルも変わってくると考えているからです。
PCユーザーでしたら、ゆっくりとシミュレーションをプレイすると思います。ですがコンソールのユーザーはテレビがないとプレイできませんよね。『コンソール』では限られた時間の中でできるだけプレイできるように、1シーズンのスピードを若干早めています。
『モバイル』は移動中や仕事の合間とかにプレイできます。もともと考えていたひとつのコンセプトは「トイレでプレイしやすい」でした。
『フットボールマネージャー タッチ』はモバイルよりも深くシミュレーションできるタイプで、もちろん移動中でもトイレでもプレイできます。なので、TGSの会場に向かうような長い時間には『モバイル』よりは『タッチ』の方が向いているかもしれませんね。
──今回、日本で展開するにあたって普段ゲームをしないサッカーファンなどは初めて本作に触れることと思います。そういった初心者におすすめのプレイスタイルはありますか?
マイルズ氏:
『フットボールマネージャー』を陸上競技に例えると、長距離走です。このゲームを理解するためには、時間をかけて考えてプレイしていくことが必要です。
まずは、自分が知っている強い大きなクラブで、選手も知っているようなチームを選んで運営していくことがいいと思います。強いチームにはやっぱりお金もありますので、他のチームの強い選手を連れてくるなどが比較的楽にできます。まずそういったチームを運営することで、ゲームの流れを理解して楽しんでいただきたいです。
慣れてきたら、リーグの下のチームを一番上まで連れていくといったようなプレイスタイルもおすすめです。
もしゲームを進めるのにちょっと手間取ってしまっても、問題ありません。国内でもそうですし、世界中に『フットボールマネージャー』の素晴らしいコミュニティがあります。他のプレイヤーが『フットボールマネージャー』をプレイして楽しんでもらえるように、好きになってもらえるように非常に協力的な人たちの集まりです。分からないことはそのコミュニティに聞いてくれれば、いろんな人が一気に助けに来てくれます。
今回『フットボールマネージャー』日本語版公式アカウントを作っているのも、より日本のコミュニティを強化するためです。
──すごくマニアックな質問なのですが、今までの『FM』ですとプレイヤーである監督が契約更改するときに年俸をあげるメリットが一切ありませんでした。本作ではイベントが追加されるなどのメリットはありますか?
マイルズ氏:
「低い給料の方でも得なのではないか」という点に関しては、間違いではないですが個人的には違います。
高い給料をいただくということは、クラブからの信頼とプレッシャーの現れです。本作にのめり込んでいるとき、クラブからの期待に応える、クラブを強くしていくんだという使命感に燃えると思います。
低い給料で「適当な選手を入れればいいや」といった感じでプレイしていると、気付いたらクビになっているということもあると思います。高い給料をもらうことで移籍に使えるお金も増えますし、交渉がうまく行きやすくなります。
──『FM2023』からゲームファイルが転用可能ということを伺ったのですが、どこまでのデータが引き継げますか?
マイルズ氏:
前作を終えたタイミングからスタートさせることができます。『FM24』のイントロダクションが始まって、そこから物語が始まります。
PlayStationやXboxのトロフィーとかアチーブメントといったものはシステム的に難しく、残念ながら引き継がれません。
前々から、セーブデータの移行についてコミュニティの中でも強い要望がありました。
去年、ようやくシステムがうまく運用できるようになりました。ですが、ちゃんと運用できるかというチェックに時間をかけたかったのです。現状の開発ロムで私もデータを移行してプレイしていますし、そのくらい慎重に対応しています。
──初めてのプレイヤーにおすすめのプラットフォームはありますか?
マイルズ氏:
シミュレーションゲームをやったことがない方におすすめなのは『FM モバイル』です。Netflixのアカウントがあれば追加料金なしでプレイできます。
日本ではPlayStationやNintendo Switchの市場も大きいですし、『FM コンソール』もおすすめです。マッチエンジンも搭載していますし、シミュレーションゲームとして作り込まれています。本作を気に入ったら、さらに情報の多いPC版をプレイしていただければと思います。また、パッケージ版の発売も予定しています。
この質問は、「我が子の中で誰がいちばんかわいい」か聞かれたようで難しかったです(笑)。
──マルチプラットフォームでの対戦には対応していますか?
マイルズ氏:
「キャリアモード」はプラットフォーム別のクロスプレイはできませんが、PlayStation同士、XBOX同士、PC同士という形でいっしょにプレイすることができます。
「バーサスモード」はマイクロソフトのアカウントがあれば、XBOXのユーザー同士と、PCのユーザーがいっしょにプレイすることができます。またPlayStationには対応していないのですが、今後できるようにしていこうと考えています。
『FM モバイル』についてはNetflixに加入していただいている方のみプレイできますが、来年にこの契約内容がどうなっているかはわかりません。
前作はアップルストアやGoogle Storeなどそれぞれのストアで購入できるようになっていたんですけれども、今回Netflixと独占契約することになってそれぞれのストアで販売していた購入者の数よりも、圧倒的に多くのプレイヤー数を見込んでおり、プレーヤーの裾野を広げることを考えています。
にこやかに、そしてジョークを交えながら終始和やかなムードで進んだ今回のインタビュー。その語り口からは、日本での本作の展開をファンと同じか、それ以上なほどに喜ばしく思っているマイルズ氏の心境が伝わってきた。
継続的な日本での展開も明言され、これからますます盛り上がりを見せそうな本作。『フットボールマネージャー 2024』(デジタル版)は、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Xbox One、Nintendo Switch、PC(Steam・Epic)、モバイル向けに11月7日(火)に発売予定、PlayStation 5、Nintendo Switchパッケージ版は1月12日(金)に発売予定だ。