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『Rise of the Ronin』は超カッコよく幕末を描く一作。銃弾を刀で弾くと刀が燃えたり、ワイヤーアクションで敵にダイブしたり、「あり得るかもしれないロマン」とリアリティを両立させながら「時代劇」を再解釈

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遊べば「新しい文明」の鼓動を味わえるオープンワールドの横浜。タイムスリップして観光気分

『Rise of the Ronin』の初報映像を見たときに、「幕末なのにグライダーを使えるのか!」と驚いたのを覚えている。

本作では水中を泳げるほか、地上は馬で移動可能。そして、高所から落下する際にはグライダーのようなからくり「アビキル」を使用して飛行することができる。「何もない更地」は殆ど存在しないマップ密度なので、陸・海・空と心地よく探索可能だ。

また、取材に際して実施された合同インタビューで伺ったところ、マップの広さは27平方キロメートルほどで、充分な広さと密度を有している。

本作で登場するマップは横浜・江戸・京都の3つ。ゲーム冒頭は神奈川県の郊外と思しきエリアから幕を開けるのだが、ウェザリングの表現などによりちょっとした村にも趣がある。

『Rise of the Ronin』先行プレイレポート。「ただの侍ではないが、壁を走ったりはしない」絶妙な脚色_019

マップに関して何より注目したいのは、「幕末の横浜」がちゃんとカッコいいという点だ。

筆者は横浜生まれ横浜育ちで、小学生の頃には開港150周年のイベントが実施されていた。これにより、横浜市歌をアレンジした謎の楽曲およびダンスなどを通して、「開港」という歴史のターニングポイントの存在を半ば強引に体験としてインプットされている。

しかし、現代の横浜に目を向けても「赤レンガ倉庫」といった非常に‟それらしい”建物しか残っていないし、沿岸部にはブルジョワな趣の建築物が並んでいるだけ。日光江戸村みたいな再現施設も存在しない。少なくとも校外学習などで連れていかれたエリアで「横浜を通じて西欧の息吹が流れ込んできた」というドラマを感じることは一切なかった。

『Rise of the Ronin』先行プレイレポート。「ただの侍ではないが、壁を走ったりはしない」絶妙な脚色_020

ところが『Rise of the Ronin』が描く横浜は、「マジで新しい文明が入ってきている」という、おそらく当時の国民が感じていた劇的な驚きを味わえるロケーションになっている。

そびえ立つ時計塔や、街を行き交うドレスやスーツの人々。それらは日本の建築物の中でモノリスのように異質な存在として存在感を放っている。ゲーム冒頭からドンピシャな横浜中心部が描かれない仕様により、自分の足で進んでいくことでより一層「新たな文明の中心地にやってきた」という驚きを身をもって体感できた。

『Rise of the Ronin』先行プレイレポート。「ただの侍ではないが、壁を走ったりはしない」絶妙な脚色_021
(画像は『Rise of the Ronin』 |「World」紹介トレーラー – YouTubeより)

なお、横浜の中心地以外にも随所で西洋風の馬車が放棄されていたり、ロケーションとして外国人墓地が存在したりと、随所で「西洋の息吹」を景色から感じられる。

また、「西洋」とあまり関係の無い寺社や敵キャラクターの拠点なども存在し、一定のリアリティを維持しつつ、デフォルメをすることでマップ全体にメリハリがある。なので、オープンワールドゲームとして「幕末の日本を浪人として旅する」気分もバッチリと味わえるだろう。

主人公は、実はふたり。友達みたいな距離感の偉人たちがストーリーに誘い込む

ちなみに、本作の主人公はゲームの冒頭では浪人ではなく、とある出来事をきっかけに浪人となるのだ。ゲーム冒頭でプレイヤーは、忍術や剣術を仕込まれたふたり組の戦士「隠し刀」としてゲームをプレイしていく。

そのため、ゲーム開始時にプレイヤーは‟ふたりの主人公”を制作することとなる。

『Rise of the Ronin』先行プレイレポート。「ただの侍ではないが、壁を走ったりはしない」絶妙な脚色_025

キャラクリエイトは体格や筋肉量、ほうれい線やおでこの皺などを設定でき、従来の「Team NINJA」の作品よりかなり自由度が増している。なんならマニキュアやペディキュア(爪紅)を施せたり、ヘアカラーにはインナーカラーやメッシュといった現代らしいオシャレなアクセントを施すことも可能だ。

ちなみに、筆者は「こんなヤツいたのか?」というイケオジ浪人を制作したが、案外ゲームの雰囲気が崩れることはなかった。冒頭のキャラクリエイトは「本作は必要に応じて嘘を付くことで、最高にクールな時代劇を描きます」という宣言のようになっている。

キャラクタークリエイトのカスタマイズ機能を使って細部までこだわり、自身が納得できる塩梅の「嘘」をつけるのも本作の魅力だろう。

ひょんなことからプレイヤーは浪人となり、「もうひとりの主人公」を探す旅として物語は動き出す。主人公の個人的な人探しが「倒幕派」と「佐幕派」と絡み合い、物語が展開していくようだ。

注目のポイントとしては、主人公が「倒幕派」と「佐幕派」のどちらに力を貸すのかを選択できる点だ。作中には「坂本龍馬」や「吉田松陰」などさまざまな実在した人物が登場し、主人公は偉人たちと交流しながら歴史を動かす戦いに身を投じていく。

最初に出会う偉人は坂本龍馬で、やたらとセクシーな彼となんだかんだ仲良くなり、みるみるうちにマイメンとなる。

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(画像は『Rise of the Ronin』 |「The Cause」 Behind the Scenes(メイキング映像3) – YouTubeより)

正直、筆者はメジャーでセクシーなビジュアルの登場人物がそろっていることや史実を踏まえて「余裕で倒幕っしょ」と倒幕派ルートを選択した。

しかし、いざゲームをプレイすると、佐幕派で最初に交流する人物は「村山たか」という実在した佐幕派のスパイで、まさに峰不二子みたいな女性キャラクターなのだ。

佐幕派の物語は冒頭では「村山たか」を通じて進行するようで、思想と関係なく彼女の依頼を受けたくなる。結果として「倒幕派」と「佐幕派」、どちらの味方になるのかつい迷ってしまう設計になっているのだ。

また、本作では友好関係のある人物との間に「因縁」というステータスが存在し、基本的にメインキャラクターが登場するクエストをクリアすることで「因縁成立」として関係性が築かれていく。

さらに、「因縁」はプレゼントをあげたりしながら、より深めることも可能だ。日常的な会話なども楽しめるため、幕末志士をはじめとする登場人物との交流や、関係性そのものを味わえる

歴史上の人物といえば、出来事と結びつけて暗記する記号的な存在になりがちだ。しかし、主人公というプレイヤーの分身を通じてコミュニケーションし、彼らと共に戦い生き抜くことで、強い実在感を持って登場人物を認識できる。

このように、歴史には残されていないが、歴史の真っ只中に存在したかもしれない架空の人物を主人公に設定することで、間近で見つめるかのように歴史上の人物の人柄や思想、魅力を前のめりに表現している

だが、それぞれの人物の思想は異なり、主人公が全員の思いや欲望を引き受けて生きることは、恐らく不可能だ。

対立する思想の人物たちと出会い、誰を選んで生きていくのか。そんなことを考えながら本作をプレイすれば、かつてなくドラマチックに歴史を体験できそうだ。実際にプレイする際には、ぜひさまざまな人物と交流し、思い入れを持った上で激動の歴史を見届けよう。

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編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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