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『タルコフ』系なのに、優しい。PvEvP型ダンジョンクロウラー『ダンジョン・ストーカーズ』インタビュー。優しさの理由と狙い、セクシーなキャラデザの意図もしれっと聞いた【gamescom2024】

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PvEvPのダンジョンクロウラーゲームと言えば、やはりクラシックなアートワークで、血と絶望に濡れた戦いが繰り広げられるイメージがある。

そんな中、徹底的に親しみやすさを追求し、なんならキャラクターも現代的かつセクシーな装いの作品がある。

その名も『ダンジョン・ストーカーズ』だ。

いわゆる『タルコフ』ライクと称されるジャンル──「エクストラクション」【※】でありながら‟カジュアルに遊べる”と聞けば、矛盾しているように聞こえるかもしれない。

しかしながら、本作は2月のSteam Next Fesにて実施されたプレイテストにて、参加人数が12万人を突破するという華々しい盛り上がりを見せている注目の作品だ。

さらに、本作のパブリッシングを務めるのは、BTSやNewJeansを擁するHYBEのゲーム事業部門を担うHYBE IM。異色のゲームが、韓国の大手エンターテイメント企業から繰り出される。この布陣も相まって、同作の今後の展開が非常に気になるところだ。

『ダンジョンストーカーズ』インタビュー。『タルコフ』系なのに、なぜカジュアルなのか_001

このたび、欧州最大規模のゲームイベント「Gamescom 2024」にて、本作のプロデューサーを務めるハン・デフン氏、パブリッシャー・HYBE IM のPC・コンソールビジネスチームリーダーであるキム・ウォンモ氏にインタビューを行う機会を得た。

本記事ではズバリ、本作がどのように、どのような狙いで「ハードコアなゲームジャンル」「楽しみやすいカジュアルさ」を両立させているのかをお届けする。

本記事を通じて、『ダンジョン・ストーカーズ』のバックグラウンドに存在する「ジャンルの魅力を幅広く伝えたい」という純粋な想いや、魅力的な後ろ姿へのこだわりが伝われば幸いだ。

※エクストラクション(Extraction)
PvEvP(Player vs. Enemy vs. Player)、つまり対人要素に加えモンスターなど共通の敵が存在し、フィールドやダンジョンを探索しながらリソースを収集、生存して戦利品を持ち帰り、装備やキャラを強化してまた次の冒険に繰り出す……というサイクルを楽しむゲームジャンル。日本語では「脱出」と訳されることが多い。この手のジャンルの代表的な作品である『Escape from Tarkov』は”Extraction Shooter”(脱出シューター)とも呼ばれる。なお、本作のジャンル名は「3人称エクストラクション(PvEvP)ダンジョンクロウラーゲーム」と公称されている。

取材/実存竹中プレジデント
文・編集/りつこ



──本日はよろしくお願いいたします。

『ダンジョン・ストーカーズ』は、『Escape from Tarkov』や『Dark and Darker』といった作品と同じジャンルのゲームです。高難度なものが多いジャンルでありながら、本作は徹底的にカジュアルな作品になっている点が印象的でした。

ハン・デフン氏(以下、ハン氏):
私自身がエクストラクションというジャンルが大好きなのですが、ジャンル自体が大衆受けするわけではないという評価を受けていたことも認識していました。

ですから、このジャンルの楽しさをより多くの人にも伝えたいと考えたことが、『ダンジョン・ストーカーズ』の開発をはじめたきっかけです。

──今回試遊させていただいたPvEのモードのみに着目しても、かなり遊びやすいように感じました。同モードに置ける難易度はどういった調整を行ったのでしょうか。

ハン氏:
実際にプレイテストを何度か実施してみると、ユーザーはPvEの戦闘のみでもかなりストレスを感じてるようでした。なので、本作ではPvEvPモードにおけるモンスターの強さをある程度やさしく調整しています。

ですので、まだゲームに慣れていないプレイヤーでもPvEvPモードを楽しみやすくなっていると思います。

『ダンジョンストーカーズ』インタビュー。『タルコフ』系なのに、なぜカジュアルなのか_002

──いっぽう、本作のようなエクストラクションジャンルの作品において、ある種の「ストレス」は欠かせない要素であると思います。
カジュアルに遊べる楽しさとハードな楽しさを、本作ではどのように共存させているのでしょうか。

ハン氏:
ゲーム業界では「最初は簡単な難度に設定し、ゲームシステムに適応させてから、プレイヤーがハマった段階で難しくする」ことがセオリーだとされています。

その言葉通り、本作の序盤では装備などが充実していないため、気軽にプレイできる難度に設定しています。

そして、装備が整うことで強い敵と戦うこととなりますが、その時点でプレイヤーはすでにゲームに慣れている。なので、その段階では若干のハードコアさをゲームに導入しても、特に問題はないと考えております。

コンテンツの難度と獲得できる報酬に関しても力を入れて調整していますが、ユーザーさんが本作のプレイヤーとして長く遊べるように、今後もゲームバランスの調整には注力していきたいですね。

──最初からハードな環境に放り出されるのではなく、しっかりとプレイヤーがゲームに慣れながら遊べる。そのことで、やがてプレイするハードなコンテンツも楽しみやすくなると。

キム・ウォンモ氏(以下、キム氏):
エクストラクションジャンルのストレスに関しては、長い時間をかけてダンジョンで探索をしたものの、結局脱出できずに全てを失ってしまうストレスも大きいですよね。

本作では1マッチをできるだけコンパクトに収める設計になっており、最大でも1マッチ24分ほどで遊べます。テンポよく出撃と脱出を繰り返せる設計により、脱出に失敗した際のストレスを軽減していると思います。

──脱出に失敗した際にも格納したアイテムを持ち帰れる「安全バッグ」なども用意されており、確かに失敗した時のストレスもあまり感じずに済む印象でした。

『ダンジョンストーカーズ』インタビュー。『タルコフ』系なのに、なぜカジュアルなのか_003

キム氏:
現在遊んでいただけるバージョンでは安全バッグのインベントリーがひとつになっています。

アーリーアクセス版のリリース後には、ゲームを進めることでインベントリーの容量が増えるようになる予定です。

──また、本作においては『Dark and Darker』や『Dungeonborne』など、ライバルとも取れる作品が複数存在します。他の作品を踏まえて、改めて本作の特徴や強みをお伺いしたいです。

ハン氏:
まず、我々としてはライバルだとは思っていないんです。
というのも、「エクストラクションジャンルの魅力をより広く伝えたい」という想いが本作の原動力なので、このジャンルそのもののパイを、共に広めて行ければと思います。

本作の特徴においては、やはり美しいキャラクター、アーマー破壊、難度の調整により親しみやすくなった点がひとつ。

くわえて、従来のエクストラクションジャンルの戦闘は実力ベースで進行する印象がありますが、『ダンジョン・ストーカーズ』においては「運」が重要な要素になっています。

ですので、まだレベルが高くないユーザーでもハイレベルなユーザーへ挑む予知がありますし、差別化をできているポイントになっていると思います。

──2月に実施されたSteam Next Fesでは参加人数が12万人を突破したと伺っております。
この反響を受けて、「エクストラクションというジャンルを広める」ことの手応えはいかがでしょうか。

ハン氏:
最初に実施したテストでは「既存の同じジャンルのゲームのようにしてほしい」「なぜ違う作風を目指しているのか?」といったフィードバックを多くいただきました。

ですが、2度目のテスト以降では、本作ならではの長所を見てくれる人が増えたんです。さらには、我々の作品のスタンスを踏まえた提案やアイデアをいただく機会も増えました。

ですので、着実に本作の作風にマッチしたゲーマーの方々が遊んでくれはじめていると感じます。

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──12万人が参加するとなると、多数のフィードバックが寄せられていると思います。フィードバックにはどのように向き合っているのでしょうか。

ハン氏:
基本的にフィードバックの意見はかなり参考にさせて頂いております。

各テストが終わり次第、まずユーザーさんたちからどんなフィードバックが届いてるのかをチェックして、データとしてリストアップし、調整を行っています。それを踏まえて、従来のコンテンツを制作するかたちになります。

現在行われてる3次テストにおいては、改善点を映像化して公開しました。その映像をユーザーさんたちが見てくれて「私が言ってたのが直ってる」とDiscordで反応してくれました。開発者としても、非常に嬉しかったですね。

キム氏:
3次テストを踏まえた改善点としては、このジャンルを初めて触った方々がよりスムーズに本作をプレイできるように、チュートリアル機能を追加しました。

具体的な名称は「訓練場」で、自分の攻撃やスキルを試すことができるモードになります。

また、「全体マップの確認機能」という全体マップの中で自分が居る位置や、パルス(生存範囲円)がどれくらい狭まってきているかを一目で読み取れる機能も用意しました。

こういった施策により、初心者の方でもより本作を楽しみやすくなったと思います。

──HYBE IMさんがSteamで展開しているゲームは『星になれ ヴェーダの騎士たち』であり、『ダンジョン・ストーカーズ』と同じくダークファンタジー調の作品です。パブリッシャーとして、どのように販売を担当する作品を決定しているのでしょうか。

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(画像はSteam:星になれ ヴェーダの騎士たちより)

キム氏:
弊社がパブリッシングを行っている作品として、ふたつの作品以外では『BTS Island:インザソム』『Rhythm Hive』というカジュアルで明るい雰囲気の作品があります。

ですので、あくまでも「ダークファンタジー」にこだわっているわけではありません。ファンの皆さんにとって面白く、楽しい作品であれば、特定のジャンルや世界観にとらわれずにパブリッシングを行いたいと考えています。

──また、昨今では音楽の文化とビデオゲームのコラボも盛んです。HYBE IMにおいても、HYBEに所属するアーティストとゲームがコラボする計画は予定しているのでしょうか。

キム氏:
残念ながら、現段階ではアーティストとゲームがコラボをする計画は無いです。

いっぽう、現在のゲーム市場ではアーティストとのコラボだけでなく、アニメとのコラボ他のゲームとのコラボなども盛んに行われている状況だと思います。

私たちも様々なルートでコラボできるIPを探していますので適切なタイミングで、素敵なIPとのコラボを発表できるように努めます。

──本作はゲームプレイの親しみやすさのほか、現代的なキャラクターのグラフィックも特徴となっています。アートワークはどのような経緯で現在のスタイルになったのでしょうか。

ハン氏:
基本的に、同ジャンルの他のタイトルの場合は、欧米圏のクラシックなゲームの影響を受けていると思います。

その点で『ダンジョン・ストーカーズ』は、アジアのクラシックな作品の影響を受けています。

日本のクラシックな作品の多くは、ダークな作風でありながらも派手でかっこいいキャラを登場させていました。その影響を踏まえて、本作では煌びやかな衣装を纏ったキャラクターを採用しています。

──アート面で言いますと、やはりゲームをプレイしていると、後ろ姿に目を奪われてしまいます。後ろ姿に関する情熱や美学に関して、お伺いしたいです。

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ハン氏:
もちろんキャラクターの後ろ姿に愛情があります。そして、キャラクターにおいてプレイ中に一番目にふれる部分としても、こだわっています。

そういった点で、他社さんの作品にはなりますが『勝利の女神:NIKKE』も素晴らしいと思っております。

──確かに3人称視点のゲームでは後ろ姿を一番見ることになるので、納得の仕様ですね。

ハン氏:
キャラクターに装備できるデコレーションに関しても、正面だけでなく後ろ姿用にも用意する予定です。

現在はキャラクターの背中にあるタトゥーや、翼のようなデコレーションを計画しております。

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──ゲームのキャラクターの後ろ姿にも、引き続き熱く期待させていただきます。本日はありがとうございました。


PvEvP型のダンジョンクロウラーゲームで、キャラクターがセクシー。そう聞くと一見‟色物”な作品かと思ってしまうかもしれない。

しかし、実際にお話を伺えばそれらの仕様には明確な意図があり、エクストラクションという新たにゲーマーの注目を集めるジャンルへの愛情も垣間見える。

まさに「難しくて苦しい」という理由でエクストラクションジャンルの作品に触れていなかった方は、ぜひ本作から、ダンジョンへ挑み、生還を目指してみてはいかがだろうか。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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