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なぜネクソンが今「死にゲー」を作るのか。英雄の復讐譚を描く新作ゲーム『The First Berserker: Khazan』の開発者に聞いてきた。意外にも『ソウルライク』という意識ではない

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オンライン向けのアクションRPGである『アラド戦記』と同一の世界観でありながら、いわゆる“死にゲー”の高難度なアクションRPGとして開発されている作品が『The First Berserker: Khazan』だ。

そもそもオンライン向けの運営型ゲームの印象が強いネクソンが「死にゲー」のパッケージゲームを手掛けるという点が実に新鮮であり、興味をそそる。

そして、実際に本作を試遊すると「死にゲー」のアクションRPGに求められるビジュアルの美しさ、重厚な戦闘の魅力をすでに獲得している点にも驚かされる。

このたび、韓国最大級のゲームイベント「G-STAR 2024」にて、本作の開発陣に合同インタビューをする機会をいただいた。

インタビューでは率直に『アラド戦記』からなぜ『The First Berserker: Khazan』のような作品が生まれたのか、その狙いを伺うことができたため、本作に関心がある方は楽しんでいただければ幸いだ。

復讐の旅路を描く『The First Berserker: Khazan』。ビジュアルもアクションもしっかり高品質

まず、本作の概要を紹介しておこう。

『The First Berserker: Khazan』は2005年より韓国でサービスを開始したオンライン向けのアクションRPG『アラド戦記』と同一の世界観を描くシングルプレイ用のアクションRPGだ。

物語の主人公は『アラド戦記』に登場する職業・鬼剣士の祖であるとされるカザン。プレイヤーは無二の大英雄でありながら、反逆の濡れ衣を着せられたあげくに追放されたカザンとして、復讐の戦いに挑んでいくこととなる。

『The First Berserker: Khazan』合同インタビュー。『アラド戦記』から死にゲーが生まれた理由とは_001

ゲームプレイは、行ってしまえばフロム・ソフトウェアが手掛ける『SEKIRO』に近い基本システムになっている。敵の攻撃をジャストガードなどで弾き、敵の体制を崩してチャンスを生み出すことができる。

また、ガードで凌げない攻撃に関しては「予兆」が表示され、ジャンプなどで回避しつつ戦う必要がある。

くわえて、攻撃スキルやカウンター攻撃のようなスキルも存在。全体的にキャラクターのモーションは非常に重さを感じさせる仕上がりだ。

敵の攻撃に対してしかるべき行動を行う判断力はもちろんのこと、ウェイト感のある動きを厳密にコントロールしていくことが求められるハードなアクションRPGとなっているだろう。

なお、攻撃によってはダイナミックなコンボ攻撃になっており、ハードかつ重厚な作風を基調としているものの、突発的にド派手な連撃も繰り出せる。記事末尾のインタビューでも語られているが、これは『アラド戦記』らしさを踏襲した表現となっている。

『The First Berserker: Khazan』合同インタビュー。『アラド戦記』から死にゲーが生まれた理由とは_002

ちなみに『アラド戦記』本編を知らずとも充分に楽しめる作品となっているため、未プレイだがハードなアクションゲームが好きな方も要注目だ。

ちなみに、「G-STAR 2024」では超巨大なネクソンブースにて『The First Berserker: Khazan』の試遊展示が実施された。

同じく『アラド戦記』のスピンオフ作品である『Project Overkill』と同様にこちらも盛況。

ネクソンが多くのファンに愛されていることはもちろん、展示された各タイトルが、発売前から大きな注目を集めていることが窺えた。

『ソウルライク』という意識ではない。『アラド戦記』を3Dのパッケージゲームで作ったら?というコンセプトで生まれた重厚な作品

『The First Berserker: Khazan』合同インタビュー。『アラド戦記』から死にゲーが生まれた理由とは_009
▲右からNEOPLE CEOのユン・ミョンジン氏、『The First Berserker: Khazan』のクリエイティブディレクターであるイ・ジュンホ氏

──オンライン向けのアクションRPGである『アラド戦記』のスピンオフとして、いわゆる『ソウルライク』の作品群を彷彿とさせる『The First Berserker: Khazan』が誕生した経緯を教えて頂きたいです。

ユン・ミョンジン氏:
まず、我々としては本作を『ソウルライク』の作品であるとは認識していないんです。もちろん、『ソウルライク』の作品であると感じる方がいらっしゃることも十分理解はしております。

もともと『アラド戦記』はハードコアなゲームを作りたいと考えて開発されていて、サービスを続ける中で難易度を下げることとなり、現在のRPG形式になっているんです。

『アラド戦記』の魅力である装備、スキルのコンボといった要素も非常に似たかたちで『The First Berserker: Khazan』で表現されています。ですから『The First Berserker: Khazan』は、3Dで表現されていること、パッケージである点が原作との大きな違いですね。

そして本作の開発のきっかけも『アラド戦記』を3Dのパッケージゲームで開発したらどうなるのか?というコンセプトでした。

──本作にはジャストガードやカウンターなど、複数の特殊防御が用意されています。この仕様はどのような狙いで採用されたのでしょうか。

イ・ジュンホ氏:
また、私はこのゲームを作り始める段階からハードな難度のゲームを作りたいと思っていたんです。というのも、作中ではとても苛烈な状況に置かれたカザンの復讐譚が描かれるため、高難度の方がシナリオにマッチしているからです。

そうして『The First Berserker: Khazan』のアクションを作る際に一番重視したのは、鮮明で精巧な攻防です。

このコンセプトのとおりのアクションを作るためには、敵がプレイヤーを狙っている、放たれた攻撃が当たっている、攻撃を避けられていることなどを、たしかなシグナルとしてプレイヤーに伝える必要があると思い、意識して開発を行いました。

というのも、ハードな内容であるからこそ、プレイヤーが「なぜ失敗したのか」ということを理解できる環境を提供しなければならないからです。少しずつでも理解と成長によって達成感を得なければ、ゲームを遊び続けることが難しいですよね。

これを踏まえて、『The First Berserker: Khazan』のアクションを設計する際に最も重視したコンセプトは、挑戦、そして挑戦で得ることができる達成感です。

──いっぽうで、本作は特殊防御の種類も多く、かなり操作が複雑でハードコアな作品になっていると思います。そういった要素に対するユーザーからのフィードバックはいかがでしたか。

イ・ジュンホ氏:
さまざまなフィードバックをいただきましたが、操作が難しいという意見は全体的に少なかったですね。

また、頂いた操作に関するフィードバックは、オフライン会場で実施した試遊展示と、オンラインで実施したテストプレイとでかなり違っていた印象です。具体的には、オフラインで実施する試遊展示でははじめてゲームに触れるかたが多く、難しいというフィードバックが多かった印象です。

しかし、オンラインで実施したベータテストではとくに難しさを指摘するフィードバックは少なかったんです。

この違いに関する明確な理由は分からないですが、ユーザーさんがご家庭でゆっくりプレイして頂くことで、難しさがこれといったストレスにならずにゲームを楽しんで頂けたのかもしれません。

──操作以外のフィードバックに関しては、どんな意見があったのでしょうか。

イ・ジュンホ氏:
最初は「難しすぎる」「スタミナが少なすぎる」といった意見が多かったんですが、ユーザーさんがゲームをどんどんプレイしていくことで「このシステムは理解したから、もう改善をする必要がない」「スタミナの仕様について理解できた」といったフィードバックが増えていったんです。

先ほど述べたように、やはり我々としてはゲーム内での挑戦と、それを経て得られる達成感というものが最も重要だと考えています。

ただ、我々の開発チームはコンソールゲームの開発に携わった人があまり多くないんです。

ですから、ゲームの難度が充分にユーザーへ達成感をもたらせるものなのか、我々が感じている面白さと、ユーザーさんが感じる面白さは一致しているのか、といった問題について工夫しながら開発に取り組んでいます。

現在では様々なフィードバックを基にして、ゲームの完成度を上げている段階です。

──本作は『アラド戦記』を3Dのアクションゲームとしてパッケージ化するというコンセプトがあるというお話が先ほどありました。

その上で、本作は原作以上にダークな雰囲気が強化されているように感じます。『アラド戦記』らしさを残すためにこだわったポイントや『アラド戦記』らしくなくてもあえて追加した要素があれば教えてください。

ユン・ミョンジン氏:
『The First Berserker: Khazan』は、たしかにダークな世界観です。ですが、実は『アラド戦記』も一見明るい雰囲気に見えるものの、実際のストーリーは世界が滅亡したり、人が亡くなったり、戦争が起きたりとダークな世界が描かれているんです。

ですので『The First Berserker: Khazan』でダークな世界観を描くうえで、別途に何かを追加する必要はありませんでした。

むしろ『The First Berserker: Khazan』では『アラド戦記』に設定上などは登場していたものの、あまり掘り下げられていなかった要素を表現することに努めました。

なので『アラド戦記』のプレイヤーは世界観をより理解する楽しさを味わえるし、知らなくても『The First Berserker: Khazan』の物語として楽しめると思います。

──ありがとうございます。最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願い致します。

ユン・ミョンジン氏:まず『アラド戦記』のシリーズ作品に多くの関心をいただき有難うございます。

『アラド戦記』は日本でも長年サービスをしていて、多くの方に愛されている作品です。そして『The First Berserker: Khazan』『Project Overkill』といった新たなプロジェクトにもご期待をいただいていることにも感謝を申し上げます。

私たちとしても、期待して頂いている方にもっと良い作品を届け、より多くの方に我々の作品を遊んでいただけるように、開発に取り組んでいきたいと思います。

イ・ジュンホ氏:
日本の方にも興味を持っていただいて、本当に嬉しく思います。東京ゲームショウ2024で出展した際には「すでにこのゲームに慣れているんじゃないか」と思うほどプレイが上手な方が多く、本当に多くの方にプレイしていただけて大変嬉しかったです。

また、日本でもさまざまなフィードバックを受けたため、ゲームをより改善して参ります。リリース時に期待以上のゲームとして皆さんに楽しんでいただけるよう、これからも開発に取り組んでいきたいと思います。


『アラド戦記』を元にした3Dの死にゲーと言われると、一見突飛な印象を受ける方も少なくないだろう。

しかし、実際に開発陣にお話を伺うと、そこにはあくまでも『アラド戦記』の世界をオルタナティブな手法で表現するという明確な意図が窺えた。

『The First Berserker: Khazan』はネクソンより2025年にPC (Steam)、Xbox Series X|S、PlayStation 5にて発売予定だ。

本作に興味があって『アラド戦記』の世界を別のかたちで楽しみたい方、「死にゲー」ジャンキーの方は、発売を楽しみに待とう。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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