映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) Beginning.』(以下、『ジークアクス』)は10日で興行収入「14.3億円」を突破、2週間で観客動員数「100万人」を記録し、爆発的な盛り上がりを見せている。
この一連の話題をさかのぼると、メインスタッフが発表された際の熱狂に突き当たるはずだ。
そして、実際に視聴した本作は、やはり鶴巻和哉氏や庵野秀明氏をはじめとした「制作陣の特色」が存分に発揮されていた。だからこそ『ジークアクス』は「新しいガンダム」と形容すべき作品となっているのだ。
とはいえ「そもそも制作陣は何を得意としているのか」「何をしてきた人なのか」といった疑問を感じる方も決して少なくないだろう。
そこで、本記事ではまず鶴巻和哉氏をはじめとする制作陣が、どのような作家であるのかを紹介する。
そのうえで、制作陣による過去の重要作品、先行上映で明らかになったことを参照し、「彼らが何を目指しているのか」を探っていこう。
これらを通じて『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) Beginning.』の“新しさ”はもちろん、各制作陣の才を改めてお伝えできれば幸いだ。
文/otaku can cahnge world
編集/りつこ
※この記事には『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 』のネタバレが一部含まれています。あらかじめご注意ください。
新たなる『ガンダム』の幕開け
新たな『ガンダム』シリーズとして世間の注目を一身に集めている『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』。
そもそも本作は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などヒット作を多く手掛けてきたスタジオカラーと、『機動戦士ガンダム』シリーズを長年に渡り手掛けてきたサンライズという、夢の共演によって生み出された作品だ。
情報解禁当初から大きな話題を呼び、SNSでは多くの「考察」が展開され、誰もが新しいガンダムの行く末に期待を募らせている。
まず、本作を視聴した人の多くはファーストカットから度肝を抜かれたことだろう。
PVの時点で示唆されていた「宇宙世紀感」は、いかにも庵野秀明らしい形で回収された。
『ギレンの野望』や小説版を想起させるようなファーストガンダムのIfを描ききった前半40分。ここでは、シャアの登場から始まり、細かいところをあげるとキリがないほどガンダムオタク向けのネタで満ち満ちており、衝撃と多くの考察の余地を残していった。
そしてそんな衝撃の前半40分から打って変わって、場面はシャアの失踪と共に5年後にジャンプする。
物語の舞台はスペースコロニーで、主人公は平穏な日常を楽しんでいた女子高生マチュ(本名、アマテ・ユズリハ)。彼女は戦争難民の少女ニャアンと出会うことで「クランバトル」と呼ばれる非合法のモビルスーツ決闘競技に参加する。
そこで、失踪したシャアがかつて搭乗していた「赤いガンダム」を操る謎の少年・シュウジとの邂逅を果たす。
「宇宙世紀のif」を描いた前半を踏まえて。ガールミーツガール、あるいはガールミーツボーイともとれる後半の物語は、いかにもキャッチーかつ劇的に‟全く新しいガンダム観”が提示されたていた。
この大ジャンプを「見れるもの」にする手腕も、やはり鶴巻監督の手腕あってこそだろう。
安彦良和氏が手掛ける劇画調のキャラクターが、リデザインされたガンダムを経由することで、竹氏が手掛ける伸びやかでスッキリとしたキャラデザに変貌する。
そういった白眉な演出は先行上映で公開された範囲においても多く見掛けられ、『GQuuuuuuX』本編への期待をさらに高めてくれた。
なお、今回の記事で取り扱うのは巷を騒がせている「考察」を楽しむといった側面ではない。
上記のように、映画で確認できた画面、現段階で公開されているスタッフなどの情報を基に、鶴巻和哉というクリエイターが「ガンダムをどのように調理していくのか」を紐解いていこうと思う。