優勝チーム「Good 8 Squad」選手インタビュー
──「G8S」の皆さん、優勝おめでとうございます! まず、何よりも気になっていることをカワノ選手にお聞きしたいんですが、2巡目の大将戦で、LeShar選手のSA3のミスがありましたよね。あそこの逆転がその後にも影響したんじゃないかと思うのですが、カワノさん側の心境としてはどんな感じだったんでしょうか?
カワノ選手:
いや、もう……真っ白でしたよ。イヤホンは外しちゃってましたし。
もし、練習中に同じことが起こったら「このコンボ繋がらないな」って分かりそうな場面なんですけど、やっぱりこういう本番ではこっちも気づけないみたいな感じでしたね。
でも、あのとき席を立たず、しっかりボタンを押せて良かったなと……。本当にボタンを押すだけで良いんですけど、それでもすごいプレッシャーだったので。
──立ち上がっていたら、それこそヲシゲさんの事件【※】の再来だったかもしれませんね。
※「EVO 2015」にて、当時『ギルティギア』シリーズの強豪プレイヤーとして知られていたヲシゲ氏が、1ラウンドを取得した段階で喜びのあまり立ち上がってガッツポーズをしてしまった事件。近日、この事件をモチーフにしたと思われるエモートが『ストリートファイター6』にも実装された。
カワノ選手:
紙一重の差で、天国と地獄ですよね(笑)。あれで流れもこっちに向いたと思うので、良かったです。
![「ストリートファイターリーグ グランドファイナル」レポート。G8Sへのインタビューも_031](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/30.png)
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
──少し抽象的な質問で恐縮なのですが、REJECTに対してダブルスコアで勝利した要因として、何か思い当たることはありますか? 「これがあったから勝った」というような。
ガチくん選手:
分かりやすいところで言うと、やはりLeShar選手のコンボミスで生まれた流れはあったと思います。もともと、どれだけLeShar選手に勝てるかどうかをチームの中でもすごく大事にしていたので、そこで勝てたというのは大きかったのかなと。
実はカワノ選手が直前まで、ケン戦にすごく悩んでいたんですよ。でも、昨日の夜くらいに「たぶん行けます」と言ってくれて。そういう背景もあって、いいオーダーが組めたのも勝因のひとつだと思いますね。
──さて、では今日のオーダーについてお聞きしたいです。「G8S」は1巡目がアウェイでのスタートで、2巡目以降のオーダーには1巡目の結果も影響していたかと思いますが、どんな戦略を立てられていたんでしょう?
ガチくん選手:
1巡目については、まずぷげら選手がディージェイを出すのは決まっていました。相手もディージェイ戦はそれほど練習していないだろうと思ったので、大将で出てもらったという感じですね。YHC-餅選手はダルシムだとキツいマッチアップがあるので、自分とカワノ選手が出ることにしました。先鋒と中堅の順番はそれほど深いこだわりはなかったです。
1巡目でぷげら選手がLeShar選手に良い内容で勝っていれば、2巡目のホームでも当てるつもりだったんですけど、ちょっとキツそうだったので。大将はカワノ選手に出てもらいました。僕自身は1巡目であきら選手に勝ってはいたんですが、もとはときど選手の相手をすると決めていたので、そこは変えずにオーダーを組みました。
──最後の4巡目、あきら選手にぷげら選手を当てることにした決め手は何かあったんでしょうか? 今日の戦績だけみると、1勝1敗で五分でしたよね。
ガチくん選手:
そこは単純に勝率が高そうだったので。あと、その後にときど選手が控えていたので、そちらに自分が出られた方がいいなと。
──2巡目以降、「ぷげら選手vsあきら選手」と「ガチくん選手vsときど選手」、「カワノ選手vsLeShar選手」という同じマッチアップが連続しましたよね。ぷげら選手、ガチくん選手については初戦は負けてしまったかと思いますが、2戦目以降で何か修正できたところがあったんでしょうか?
ガチくん選手:
僕は正直、あんまり修正できていなかったですね。ただ、最後は起き上がりのタイミングに強パンチをよく食らっていると言われたので、「だったら無敵技を撃とうか」みたいな気持ちでやっていました。
個人的には内容はそれほど良くなかったんですが、ときど選手にも焦りがあったんだと思います。そこで噛み合って勝ちを拾えたのかなと。
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ぷげら選手:
自分は負けてしまった理由としては、シンプルに普段の動きができていなかったというのが一番大きな要因だと感じていましたね。最初のLeShar選手戦、あきら選手戦ではいつもの考え方からズレた動き方をしてしまって、ドライブゲージの運用がおかしくなっていたんです。
で、自分からバーンアウトしたりとか、普通ならしないようなミスが出ちゃったりして。なので後半戦は相手の動きにあわせる意識も多少持ちつつ、自分のやってきたことを出す方にフォーカスして、何が一番大事なのかをあらためて考えながら動きました。
──なるほど。カワノ選手にもお聞きしたいのですが、グランドファイナルでの対戦が決まる前、LeShar選手とはすごく頻繁に練習をされていたんですよね。それを聞いて試合を見ると、人読み【※】が冴えたのかなという印象を受けるんですが、実際のところはどうだったんでしょうか。
※人読み:相手のクセや行動のパターンを把握し、それに対応する戦術。『ストリートファイター6』ではオンライン対戦のリプレイが公開されるため、特にSFLのような大きな大会期間中は自分のクセを学習されないよう、オフラインで練習するプレイヤーも多い。
カワノ選手:
最後にLeShar選手と練習したのはもう1か月以上前なので、人読みという意味ではそれほどなかったです。でも、他のエド使いには「こういう対策が機能するな」みたいな部分も、対LeShar選手を想定すると「通用しないな」ってなったりするので、その点は意識して、細かく綺麗に練習していました。
──あと壇上のインタビューで「中版の『豪波動拳』が機能した」というお話があったんですが、その点についてもう少し詳しく教えていただけますか。
カワノ選手:
いま、豪波動拳自体のやられ判定が残るようになったのもあって、しっかり前に歩いてガードされると、強版の「豪波動拳」だと反撃を受けてしまう場面もあるんですよね。LeShar選手とか、ときど選手レベルの相手を想定すると、そういうリスクがあって。練習相手の方にも、それを意識するようにお願いしていました。
そうすると「豪波動拳」があまり撃てなくなっちゃったんですよね。強版は反撃を受けるし、弱版は発生までが遅いから弾抜け【※】されてしまう。でも中版だと、確定反撃もあんまりなくて、絶妙に弾抜けもしにくく、ジャストパリィもされにくかったりで、良い感じのノイズになってくれたと思います。
※飛び道具に対して無敵時間のある技を使い、波動拳などの飛び道具を避けながら反撃するテクニック。
──なるほど。ところでカワノ選手は今回、結婚を発表し、お子さんもご誕生されたとのことでしたが、こうした環境の変化が競技シーンへの向き合い方に影響をおよぼした面はありましたか?
カワノ選手:
環境の変化で言えば、それこそ夜泣きなんかもありますし、大変ではありましたね。これを先に言っちゃうとちょっと言い訳っぽくなっちゃうので黙っていたんですが……。とはいえ、そこはしっかり時間の管理をできたのがよかったのかなと。
──ちなみにSNSでは「だから幸せ太りしたのか」とか言われていますが、実際のところはいかがでしょう?
カワノ選手:
いや、それはただお酒飲んでるだけですね(笑)。
![「ストリートファイターリーグ グランドファイナル」レポート。G8Sへのインタビューも_033](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/32.png)
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──(笑)。続いてYHC-餅選手にお聞きしたいのですが、試合終了後にREJECTの鶏めし選手とちょっと会話されていましたよね。どんなお話をされたんでしょうか?
YHC-餅選手:
自分も鶏めし選手も、今回グランドファイナルを通して試合に出ることはなかったわけですが、こういうオーダーになる可能性は正直あったよね、みたいな話をしていました。勝ちに徹するための最善はこうだと思って組んだオーダーですし、我々としては結果的に価値に結び付いたので、それで良かったのかなと。
あと「今度、ダルシムの話でもしようか」とか(笑)。
──ちなみに、もし鶏めし選手が試合に出てきた場合、YHC-餅選手が相手をする想定だったんでしょうか?
YHC-餅選手:
いや、ダルシム同士よりも勝率の高い組み合わせがあるので、お任せすることになっていたかと思います。特にガチくん選手のラシードなんかは、対ダルシムでかなり有利なので。もちろん、他の選手の組み合わせも考えるといくつかパターンはあったと思いますが。
──となると、YHC-餅選手が出場する想定はあったんでしょうか?
ガチくん選手:
LeShar選手に対して、他の3人がダメそうだったらお願いするつもりでした。
YHC-餅選手:
いつ出ても良いようにエド対策はしっかりしてきた、という感じですね。
──試合終了後でいうと、ガチくん選手もLeShar選手に声をかけられていましたよね。あそこではどんなお話をされたんでしょうか。
ガチくん選手:
LeShar選手とはカプコンカップの舞台でも対戦することになるので、「またすぐに対戦できるね」みたいな話をしていました。
あと、僕はもともと個人的にエド戦で苦しんでいて。それでも今回は自分の中で納得できるくらいの準備はしてきたつもりだったので、当たることがあれば楽しみだな、くらいに思っていたんですけど、カワノ選手が勝ってくれたおかげで出る幕はなかったんですよね。そういうのもふくめ、「エド戦やってきたから、いい練習できると思うよ」みたいな話でした。
![「ストリートファイターリーグ グランドファイナル」レポート。G8Sへのインタビューも_034](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/33.jpg)
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──では最後に、これから控える「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ」に向けた意気込みをお聞かせいただけますでしょうか。
ぷげら選手:
そうですね、まずは「G8S」というチームが優勝できたのがすごく嬉しいです。一方、個人的には勝って嬉しい部分もありつつ、負けて悔しい部分もあるので。その分をワールドチャンピオンシップにぶつけるつもりで、もう少しがんばろうと思います。やはり、カプコンカップにも出たいですし。
カワノ選手:
「G8S」は2022年度のワールドチャンピオンシップで優勝していまして。それもあってか、僕は勝手に「このチームは海外プレイヤーに対してけっこう強い」みたいなイメージを持っています。そんな調子でやっていけたらなと思いますね。
YHC-餅選手:
自分はダルシムという、比較的レアなキャラクターでやらせてもらっているので、そこがもしかしたら海外プレイヤーに刺さるかもしれないなと考えていますね。引き続き、その強みを活かした活躍ができるよう、がんばりたいと思います。
ガチくん選手:
「G8S」って、実はずっとチームメンバーの誰かがカプコンカップに出場するというのが続いていたんですよ。それが今年で途切れてしまって、ちょっと悔しいんです。来年のカプコンカップには僕たち4人で出たいので、次のステージを目指して進んでいきたいと思います。(了)