スクウェア・エニックスより発売予定のマーダーミステリーアクションゲーム『KILLER INN』。本作は、最大24人のプレイヤーが参加するオンライン対戦ゲームで、8人という少数精鋭の狼チームと、16名の羊チームに分かれて、それぞれが勝利を目指して戦ってゆく。
殺人事件の関係者となって犯人を捜す「マーダーミステリー」的な要素をもっており、いわゆる「人狼」のような正体隠匿系ゲームの派生作品のひとつだが、本作の基本システムはTPS(3人称シューター)。
つまり、「狡猾さ」だけでなく「暴力」も本作の重要なポイントだ。
ほとんど情報が出ていなかった「人狼」系のゲームということもあり、「議論のフェーズが面倒くさい」「コミュニケーションスキルがないとダメなんでしょ?」といった意見も散見されていた。
結論から言えば、そうした心配はご無用だ。本作には「議論や投票」といったまどろっこしいシステムはない。敵を見つけたら戦って倒すだけ。有史以来人類が繰り返してきた、至ってシンプルかつ明快な解決方法があるだけである。もし邪悪な殺人鬼としての正体が暴かれてしまったとしても、思う存分に暴れて血の狂乱を引き起こすことだってできる。
「じゃあ結局暴力がすべてを解決するってこと!?」というと、そういうわけでもない。羊チームは狼陣営の倍の人数がいる一方で、羊側からは誰が狼チームかはわからないからだ。

狼は羊を慎重に孤立させる必要がある一方、羊たちは死体に残された「証拠」から狼を特定することで、血祭りにあげるべき対象を特定できる。単にアクションに強い人だけが勝つというわけではなく頭脳プレイも重要な、絶妙なバランスになっているのだ。
7月26日からは、Steamでクローズドβテストが開始されるが、それに先駆けて各メディアを集めた体験会が開催された。今回は全部で4戦ほどゲームを遊ぶことができたのだが、そこからわかったゲームの特徴や魅力をご紹介していく。
異なる特徴を持ったキャラを活かして、騙し騙されの狂乱の宴へ
今回プレイしたバージョンでは、全部で25人のキャラクターが選べるようになっていた。見た目もいろいろと異なるのだが、それぞれレベルを上げていくことで特別なアビリティを解放していくことができる。
いくつか例をあげると、絵本作家のデブラは、レベル2でほとんどのクエストが簡単になる「特権」が解放される。また、ギャングスターのアーロンは、レベル4まで上げることで追跡中のプレイヤーに与えるダメージが50パーセント増加する「狙い撃ち」という能力を獲得することができるといった感じだ。
もちろん、そうした能力とは関係なく見た目だけで選んでもいいし、あるいはランダムを選んでプレイすることもできる。最初のうちは、どのキャラクターが自分のスタイルに合っているのかわからないこともあるので、いろいろと試してみることをオススメする。

ゲームの基本的な勝利条件は「相手チームを全滅させること」。ただし後述するが羊チームには別の勝利条件もあり、展開次第ではそちらを狙っていく方が良い場合もあるようだ。
ゲームでは、狼側8人と羊側16人に別れるが、これはランダムで決定されるため、始まってみないとどちらになるのかはわからない。
だが、いずれの場合もゲーム序盤の流れは概ね同じだ。キャラクターを選んだ後マッチングが開始され、その後ゲームがスタートする。最初は、それぞれ異なる部屋からスタートするのだが、まずはその部屋の中にある引き出しなどを開けてアイテムを集めていくところから始まる。

ざっくりアイテムを集めたら、次に向かうのがホテルスタッフのいる場所だ。スタッフは何人かいるのだが、自分の居る場所から一番近いところに行けばいいだろう。このホテルスタッフからはアイテムが購入できるほか、クエストを受けることができる。
クエストを受けると、画面上にルートを示すガイドが表示されるので、基本的にはそちらを辿っていけば目的の場所にたどり着くことができる。クエストは目的地に向かうだけの単純なものから、絵合わせなど様々な種類が用意されているが、いずれもクエストを達成した時点でトークンとXP、ゴールドを入手することができる。そのため、とくにクエストを受けたホテルスタッフの場所まで報告に戻る必要はない。


▲クエストは目的地に向かうだけのものから、絵合わせなど様々な種類が用意されている。

XPを稼ぐことでレベルが上がり、キャラクター特有のアビリティが使えるようになる。また、クエストをこなしてトークンを集めることで、宝箱が開けられるようになる。この宝箱には武器などが入っているので、何はともあれそちらを入手しておかなければいけない。そのため、ゲーム序盤はいくつかのクエストをこなして、この後に待ち受けている展開に備えるようなフェーズとなっている。

入手した武器などのアイテムは、マップ内の施設でアップグレードすることができる。同じ武器でも素の状態よりもアップグレードしたほうがより有利に戦うことができるのだ。ちなみに、このアップグレードにはゴールドが必要になるので、ゲーム序盤はとにかく積極的にクエストをこなしていく必要がありそうだ。

死体から証拠を集めて狼を特定! 中盤から徐々にゲームが動き出す
なかには好戦的なプレイヤーもいるが、序盤では狼側でも羊側でも様子を見つつクエストをこなして自身の強化を進める人が多く、両者ともあまり派手に動く人はない。だが、ある程度クエストをこなして装備品が整ってくると、徐々にゲームが動き出す。
たとえば羊が倒され死体が発見されたときは、その情報がすべてのプレイヤーに共有される。ここから、それぞれの役割に応じて取るべき行動が異なってくるのだ。

誰かが死んだときに重要なのが、その遺体に残された「証拠」だ。マップを開いて死体の場所を確認するか、あるいはマップを開くボタンを長押しすることでクエストのときと同じようにガイドを表示することができる。
自分が羊側ならば、この死体を調べることで犯人を絞り込むための証拠を集めることができる。逆に狼側は、証拠を隠滅することが可能だ。この証拠には、髪の毛や布切れ、指紋などがある。ここからある程度犯人が誰なのか絞り込むことができるのである。
たとえば、キャラクターの中には髪の毛がないものもいる。その場合は、指紋や布切れを残すといった感じだ。ちなみに、ゲームによっては使用キャラクターが被る場合もあるが、そのときは髪や服の色などが異なる物に自動で調整されるため、必ずしも毎回同じになるというわけではない。


この辺りからゲームがどんどん加速していき、次々と排除されていくプレイヤーが現れてくる。ちなみに排除されてしまった場合は、同じチームの他のプレイヤーの視点で観戦することが可能だ。
今回のクローズドβテストのバージョンには含まれていないが、今後は死んだ後もただの観戦者で終わらないよう、少しだけゲームに参加できる要素が開発中であるという。ひとりでゲームに参加しているときはともかく、友人などと一緒に参加しているときは「死んだら抜けて別マッチへ」とはいかないので、実現すれば嬉しい工夫になりそうだ。
最終的にどちらかのチームが全員排除された時点でゲームは終了となり、最後にリザルトが表示されるというのが一連のゲームの流れだ。

羊チームは「脱出ルート」から勝利を狙うことも
羊側または狼側のどちらかが全滅した場合とは別に、もうひとつの勝利条件として用意されているのが「脱出ルート」と呼ばれるものだ。こちらは、鍵を集めてゲートを開き、時間内にすべての錨を上げて脱出するというものである。
もう少し具体的に説明すると、マップ上には黄金の鍵を守る「ガーディアン」がうろついている。そちらを倒すことで黄金の鍵を入手することができるのだ。今回のマップでは全部で4つの鍵を集めてゲートに届けることで、ゲートが開くようになっていた。
ゲートが開いた後は、制限時間内にハーバーエリアに移動して船の錨をすべて上げると羊側の脱出勝利となる。逆に狼側は、その間に羊を排除するか錨を下げるなどして阻止すれば勝利だ。
このガーディアンだが、結構固くひとりで戦ってもなかなかダメージを与えることができない。そのため、ある程度武器をカスタマイズで強化していた方がいい。また、仲間の羊たち(狼が紛れている場合もあるが)と協力しながら倒していくというのもありだ。




理解が深まることで、ゲーム自体がより面白くなっていく
今回は、ほぼ初見プレイで4回ゲームを遊んだのだが、終わってみれば「もっとああしていれば良かったな」とか、「あのときはこのように立ち回るべきだったな」という反省点がいろいろとあった。失敗したと感じた行動の多くは、ゲームへの理解度が浅いことから起こるものばかりだ。
単純な例でいうと、最初にクエストを受けるためにホテルスタッフの場所に行くのだが、マップを全く覚えていなかったためかなり迷ってしまった。もちろんマップも見られるのだが、ゲーム内の建物の構造を理解していないこともあり、なかなか頭の中に入ってこないのだ。

自分が狼のときは羊を倒す場所やタイミングも重要だ。たとえばホテルスタッフがいるエリアは相手も油断しており狙いやすいのだが、その殺人の犯行現場もしっかりと見られてしまい、あっという間に全員に身バレしてしまう。
また、中途半端な状況で羊を狩ろうと銃を撃っても倒しきれず逃がしてしまい、それが身バレに繋がることもある。いかにタイミングのいい状況で、ほかのプレイヤーにバレずに倒していくことができるのかということも、経験を積んで学んでいく必要があると感じた部分だ。

これまた需要なポイントながら、なかなか気が回らなかったのが、狼側でプレイしているときに「仲間や自分の誰が身バレしているのか」を把握しておくことだ。このあたりは通常の「人狼」ゲームなどと変わらない。
当たり前だが、周囲に気取られないように動くには、その時々の状況に応じた行動をとらなければならない。プレイ中は意識することがなかなか難しかったが、この部分もゲームを繰り返しプレイしていくことで、より狡猾に立ち回ることができるようになっていくと感じさせられた部分である。

ボイスチャットでの味方同士でのやりとりや情報の共有も重要だ。最初に触れたように高いコミュニケーション能力が必要というほどではないが、「バレちゃったかもしれない」など、うかつなことをボイスチャットで話してしまうと、その音声が全員に共有されてしまうなんてこともあるのだ。
狼側でプレイしているときは、お互いが仲間であることがわかる。そのため意を合わせて結束して行動することが、有利な展開を導く近道になるだろう。どんな展開が起こるのかはその時々のプレイヤーや状況などでも変化する部分だが、同じルールであっても毎回異なる体験ができるのは面白いところだ。

今回の体験会の総括だが、「マダミス」×「アクション」という部分が頭の中であまり融合していなかったということもあり、最初に公式サイトなどを見たときと、実際にゲームをプレイした後では、印象が異なると感じたところがいろいろとあった。
「人狼」ゲームのように言葉で相手をやりこめるようなことはほとんどないのだが、様々なアクションをしているなかで、状況は常に変化していく。それを把握したうえで自分がどんな行動取るか考えるところなどは、まさにマダミスのように参加するメンバーによって変化する部分でもあるため非常に面白い。
それに加えて、1ゲームあたり15分から20分ほどでプレイできるので、何度も繰り返し遊べるところも嬉しいポイントだ。今回のクローズドβテストにどれぐらいの人が参加できるのかはわからないが、クローズドβテストは今からでも応募可能なのでぜひ多くの人にこのゲームの魅力を体験してほしいと感じさせる1本である。