「ドラクエの一番の魅力って、なんだと思いますか?」
そう尋ねられた筆者は確信を持ってこう答えた──
「“ぱふぱふ”です!」と。
8月某日。筆者と電ファミの編集KはHD-2D版『ドラゴンクエストI&II』の先行プレイ取材のため、スクエニ本社がある渋谷を訪れていた。取材本番のゲームプレイに向けて、割とおしゃれなカフェで綿密な打ち合わせを行っていたのである。

ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)版の『ドラゴンクエストI』では、当時の限られたROM容量にプログラムを収めるために、開発チームは多数の台詞やイベントの実装を諦めたという。
しかし、そのなかで“ぱふぱふ”は残された。なぜか?
筆者:
それは、「ドラクエは“ぱふぱふ”から始まったから」だと思うんです。ファミコン版の“ぱふぱふ”には、なんの効果もありませんでした。でも、そこがいいんです。昨今ではコスパやタイパが声高に叫ばれますが、そういったなか、まったくの無駄に一喜一憂する贅沢。このワビサビこそ、ドラクエなんですよ。
編集Kは神妙な顔をしながら、黙って深くうなずいた。
こうして、おじさん2人の先行プレイという名の「ぶらり“ぱふぱふ”の旅」が幕を開けたのである。
それは“ぱふぱふ”から始まった……?
HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』は、10月30日に発売を予定している、「ドラゴンクエスト」シリーズの第1・2作をリメイクした作品だ。
2Dのドット絵と3Dの背景を融合させた独自のグラフィックス表現「HD-2D」をはじめとしたゲームの基本システムは、今年5月に掲載した取材記事でも紹介しているので、ぜひ本稿と合わせて参考にしてほしい。

まずは『ドラゴンクエストI』。つまり、ぱふぱふだ。
「『DQI』の“ぱふぱふ”は特別な存在なんです。初めてだから、たどたどしい感じ? 原初の“ぱふぱふ”っていうんですかね。それが堪能できる唯一の作品なんですよ。」
早口でまくしたてる筆者。
それに対し編集Kは、
「ぱふぱふ嬢がいるのは、ファミコン版ではリムルダールの町、スーパーファミコン版ではマイラの村です。だから取材が始まったら、何はともあれ速攻でキメラのつばさを2枚買いに行きましょう」
取材慣れしたベテランらしい見解を示した。
ところが……。
スクエニのスタッフさん:
「今回の『DQI』取材では、あらかじめ用意したセーブデータでプレイしていただきます。行けるのはガライの町と、ダンジョン1か所です。」
膝から崩れ落ちる2人。
【DQI】おっさんが同時にハモる衝撃「カンダタきたー!!」
セーブデータから開始すると、いきなり見慣れないイベントが発生した。
悪徳商人という名前のNPCが登場し、80万ゴールドで「とうぞくのかぎ」を売ってくれるらしい。
べらぼうな金額に苦笑。
……というか名前がストレートすぎない? キミ、そんな名前でいいの?
悪徳商人はどこかへと去り、メインクエスト「『とうぞくのかぎ』を手に入れよう。」がスタートした。
また、クエストの具体的なステップとして、「悪徳商人の滞在先に向かおう」という“目的”もメニューに登録された。しかも次の目的地がミニマップに登録されるという、至れり尽くせりな仕様だ。
「NPCと話すときの方向」すら、コマンドで入力する必要があったあの初代『ドラゴンクエスト』が、今風のシステムやUIにカスタマイズされていることに感動。
フィールドに出て進むと、ほどなくバトルが発生。
HD-2D版『DQI』のバトルにおける最も大きな変化は、複数体の敵と同時に戦うことだ。
だが、ロトの勇者は一方的に袋叩きにされるわけではない。ブーメランやムチや系の武器が装備できるほか、呪文だけでなく「とくぎ」も使用可能で、複数の敵に対しても渡り合えるのだ。
そのため、毎ターンを大切にするために、単体攻撃と複数攻撃の両方を準備しておくことが重要だと思えた。「単体攻撃用の武器+全体攻撃用のとくぎや呪文」あるいは、「全体攻撃用の武器+単体攻撃用のとくぎや呪文」といった風に、それぞれの攻撃パターンを準備しておくと良いだろう。
目的地に向かってずんずん進むと、「街道の宿屋」という原作版にはなかった拠点を発見。
HPも減っていたので一休みするかと思ったところ、なんと、先ほどの悪徳商人が床にぶっ倒れていた。
話を聞くと、「覆面を被った裸の男」に奪われたという。
覆面で裸……? まさか……?
その悪徳商人の話を聞いた宿屋の主人曰く、「そりゃ、カンダタにやられたね」
「カンダタきたー!!」おっさん2人が同時にハモる。
ちなみに「ドラゴンクエスト」シリーズでカンダタが初登場したのはファミコン版の『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』で、その後の多くのシリーズ作に登場するマスコット的なキャラだが、『DQI』や『DQII』には登場していない。図々しいにもほどがある。
カンダタの居場所として示されて到着した先は「岩山の洞窟」である。
これは原作版にも登場するが、地下2階のシンプルな構成のダンジョンだ。クリアに必須でもなく、存在すら知らない人もいるかもしれない。
まさかこんなに立派になるとはなぁ……。
ダンジョンに入ると、いきなり見慣れた緑のマント姿を発見。
まごうことなき緑の覆面、ゴリマッチョのカンダタである。
これほど新鮮でデジャブーすぎる光景は世界中探してもそうはあるまい。
そして、おもむろに戦闘開始。
カンダタは子分を2人連れており、ちょっとした中ボスくらいの手強さだった。
そして戦闘終了後には……
「許してくれよ! な! な!」
お約束に思わず爆笑の2人。
すかさず「いいえ」を選択し無限ループする筆者。
“世界を救う”とか大それた冒険もいいけど、こういった部分も“ドラクエ”なんだよなぁ。
命乞いをしたカンダタは、ちょっと興味深い話をしてくれた。
というのも、このカンダタは、ロトの勇者の存在を知っているのである。
それどころか、「ロトの勇者はカンダタの先祖の一番弟子だった」という言い伝えもあるとのことだ。そんなわけあるかい! とツッコミを入れる2人。
……いや、あるいは、勇者ロトの物語にカンダタが深く関わってくることもあり得るのか? 真相というか、このオチが最終的にどこへ向かうのか興味津々である。
「ようじゅつし」との激戦
カンダタから子分の救出を依頼されたロトの勇者は、ダンジョンを奥へ奥へと進んでいく。
筆者が知るオリジナル版の「岩山の洞窟」とは打って変わって、今回のリメイク版はボリュームが大幅に増している。連戦が続きボロボロになり、ついには「やくそう」のストックも尽き、あえなく途中でやられてしまった。
しかし驚いたことに、死亡後は「冒険の書」の選択や教会からの再開だけでなく、「この戦闘開始時から再挑戦する」「オートセーブから再開」が用意されていたのだ。かなりライトな仕様となっていて、これは大変ありがたい。
洞窟の最深部とおぼしき場所に到達すると、「ようじゅつし」に追い詰められたカンダタの子分を発見。このようじゅつしが、ダンジョンのラスボスのようだ。
この敵は、主人公の生命線であるホイミをマホトーンで封じ、その後は執拗にベギラマを叩き込んでくる強敵である。初戦は、なすすべもなく敗退。その後にリベンジしようとするも、かなりの苦戦を強いられた。
「次のターンは「こうげき」するか?」
「それともホイミを使うべきか?」
1対1によるヒリヒリとした戦い。これでこそ、初代『ドラゴンクエスト』である。
「こっちからマホトーンを使って魔法を封じる?」
「いや、成功率は低そうです。それより、道具袋に予備の「やくそう」が入ってないですか?」
「あ、3つあった。それにいま気付きましたが、道具袋に「てつのやり」も入ってますね」
「それだ!」
強敵とのバトルに熱くなるおっさん2人。
そして激戦の末、3度目の挑戦でついに、ようじゅつしを撃破。
この時点で、取材として設けられたゲームプレイの残り時間は2分だ。
ところが……、ようじゅつしを倒した先では、思いもよらぬ展開が待ち受けていた。
ここから先は、キミの目で直接確かめてほしい!!