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「『ガンダム』の常識を覆す」のが、『ガンダム』の伝統。『ガンダムUC』プロデューサーが語る『ガンダム』の歴史と、2029年のシリーズ50周年へ向けた歩み【CEDEC+KYUSHU 2025】

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『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は独立した作品でありながら既存ファンが深堀りできる作品に

テレビ向けにはあえて『ガンダム』シリーズの常識を崩してでも、その時代の若者が受け入れられる作品を作る。同時に、ファン向けには従来の作品を深掘りできるものを劇場作品として作る。

このふたつの理想を体現したのが、2025年の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』だ。

小形氏によると、本作で最重要としたことのひとつは、日本国内において全国同時放送とすること。これは「アニメの放送時間を楽しみにしながら、見終わった翌日学校で内容について話す」という体験を、現代でも再現するために必須だと考えたそうだ。

また放送直後、全世界同時配信をおこなうことも優先事項だったという。これはテレビで一度視聴した人が内容を検証できる場を提供しつつ、海外のユーザーも交えたSNSでの盛り上がりを狙うためだ。

『ガンダムUC』プロデューサーCEDEC+KYUSHU 2025講演:「『ガンダム』の常識を覆す」のが、『ガンダム』の伝統_014
🄫創通・サンライズ

当事者として情報の制御がとても大変だったとしつつも、小形氏自身もその世界的な盛り上がりを楽しみながら制作していたそうだ。

自身が内容を知っているにも関わらずそこまで楽しめた理由として、小形氏は共同制作を行ったスタジオカラーの中にある「ガイナックスのDNA」と、監督である鶴巻和哉氏の手腕のすさまじさを挙げていた。

ここで松山氏から「スタジオカラーとの協業において、最初から鶴巻氏を監督に考えていたのか」と質問を受けた小形氏は、そもそものきっかけとして『機動戦士ガンダムUC』制作時、スタジオカラー制作の杉谷勇樹氏から連絡をもらったエピソードを明かした。

というのも『機動戦士ガンダムUC』は当初全6話とされていたものが7話に増えたこともあり制作が難航。業界内でも話題になっていたそうで、杉谷氏がそれを承知で7話目の制作を手伝ってくれたことがスタジオカラーとの縁の始まりだったそうだ。

講演の前半で触れた、アニメ業界における相互援助の文化や、小形氏が『機動戦士ガンダムUC』の制作に携わり、会心の4話を作りながらも尺が伸びたことが、めぐりあいながら『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の制作に繋がったということだろう。

そして小形氏が『機動戦士ガンダム 水星の魔女』を企画していた頃、「ガンダムの監督を鶴巻氏にお願いしたい」と考え杉谷氏に相談したところ、1日で庵野秀明氏含めカラー社内全体を纏めてきたという。このエピソードには松山氏も驚いていた。

続けて主題歌を担当した米津玄師氏との接点について松山氏から尋ねられると、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』のおよそ1年前に、関係各社で相談した中でオファーをしたという。

「そんな簡単に口説ける相手ではないと思うけど……。」と苦笑いする松山氏に対し、シナリオを読んで主題歌「Plazma」を生み出した抜群の仕事を挙げつつ、米津氏自身が『ガンダム』好きだったこともあったのではないかと述べていた。

また、米津氏の一番好きなモビルスーツが「ケンプファー」であるというエピソードについて、同機体が登場する『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は富野氏以外が監督した作品であることを指摘。

また、鶴巻監督からも「『ガンダム』を見たのがアニメ業界を志したきっかけのひとつ」と言われたことや、小形氏自身の経験も振り返り、幅広い作品をきっかけにさまざまなクリエイターが『ガンダム』の制作に関わってくれる流れが出来ていることが、制作陣としてもありがたいと述べていた。

そして会場の聞き手に向けても、ゲーム関係の経歴を持つクリエイターが『ガンダム』シリーズの映像作品に携わっている実例を挙げつつ、「これを聞いているなかにも、いつか『ガンダム』を作ることになる人もいるかも知れないし、いつか『ガンダム』を作ってもらえるとありがたい」とした。

バンダイナムコグループならではの強みと実写映画をきっかけに海外での認知を高めていく

本講演では最後にあらためて『ガンダム』シリーズを取り巻く現状と、今後の課題について提示された。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』など新規参入の障壁を下げた作品と、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』や『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』といった従来作を深堀りする作品。

これらによって日本及びアジアでは好調としつつも、北米市場にはまだまだ伸びしろがある状況だという。そこで北米展開の起爆剤と期待されているのが、アメリカの映画制作会社LEGENDARYと共同して取り組んでいる実写映画版『ガンダム』である。

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LEGENDARYといえば『ゴジラ』から『バットマン』、『Minecraft』や『名探偵ピカチュウ』の実写映画、そして『パシフィック・リム』などそうそうたる作品を世に送り出してきた映画製作会社だ。🄫創通・サンライズ

こうした課題やバンダイナムコグループ内でのIP別売り上げをグラフにしたもの提示され、その内容に松山氏が「大丈夫これ! 社内資料じゃない!?」と慌てる一幕もあった(決算用に公開されている資料とのことなので、ご安心を)。

小形氏によれば、伸び傾向にある上位3つのIPに共通することはグローバル展開が有効にできているかどうかだという。

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小形氏からも説明があったが、これらは決算用に開示されている資料とのこと。『ガンダム』シリーズは2019年以降好調に推移していることが見て取れる。🄫創通・サンライズ

次のスライドで紹介されたのは、バンダイナムコグループ内での立ち位置と『ガンダム』シリーズのIPとしての特徴だ。

『ガンダム』シリーズは「ガンプラ(プラモデル)」「ゲーム」「映像ソフト」「リアル」と4つの柱の上に成り立ったコンテンツ。グループ内でも最重要のIPとして位置づけられていることもあり、さまざまな連動がしやすいという。

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なかでも、映像ソフトとの両輪として『ガンダム』を支えるのが「ガンプラ」だ。

ガンプラは新作アニメの開発と並行して制作を進めているそうで、アニメの新作がなくてもガンプラの新作が出ることで、作品と連動したプロダクトの側面からストーリーを楽しんでもらえることも、『ガンダム』IPとしての大きな強みとして挙げた。

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「ゲーム」などのデジタル分野に関しては、2025年にサービスが開始された『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』が好調とのこと。

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「リアル」に関しては、先ほども風向きが変わるきっかけとして取り上げていた「実物大ガンダム立像」の話題に再度触れていた。

松山氏が「これを最初にやろうと思った人がすごい」と反応すると、小形氏は「アニメ制作会社だけではできないことができるのが、バンダイナムコグループの強み」と返していた。

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また、2025年の10月まで開催されていた「大阪・関西万博」におけるパビリオンについても紹介された。

こちらは実物大の立像だけではなく、映像や展示を通じて『ガンダム』の世界観を体験できるもので、そこで放映されていた映像作品は「Unreal Engine」を用いた内製の完全新規映像で、『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』で培ったノウハウが活きているそうだ。

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また、グローバル展開にかかせないウェブサイトやSNSのアカウントについても紹介があった。

興味深いのが、YouTubeのチャンネル登録者数では海外が上回っている一方で、累計再生回数は日本国内が上という点。

投稿されている動画数にも差があるので単純比較は出来ないが、一人あたりの再生頻度が高いことからも日本国内のファンの熱量の高さを感じ取れるし、登録者数の多さから海外向けにはまだまだ伸びしろがあるとも言える。まさに現在の状況を示した数字なのではないだろうか。

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最後に、あらためて『ガンダム』シリーズの現状を見てみよう。かつては「映像作品」と「ガンプラ」というふたつの軸をメインとし、映像を見て登場するモビルスーツのプラモデルを作るというのがIPとしてのサイクルだった。

そこに加えて現在は、ゲームなどのデジタル分野と、実物大立像や直営店舗といった「リアル」で体験を交えることで大きなサイクルとバリエーション豊かな組み合わせの体験を作れるようになっている。

先ほども触れられていた「バンダイナムコグループならではの強み」がここでも発揮されている形だ。

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ここまで紹介した4つの軸に「国・地域」と「ターゲット層」という立体的な軸を加えることで、IPとして進化・拡大をしていくとのこと。

また、現在の『ガンダム』シリーズは、テレビを含む各映像プラットフォームをライト、コア、ロイヤルと分け、そこに応じた作品を展開することで認知度の上昇と、映像体験の価値を拡大する狙いがあるそうだ。

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また、50周年に向けたさらなる拡大のための足がかりとして、2025年には「バンダイナムコフィルムワークスアメリカ(BNFA)」が設立されている。このアメリカ支社と実写映画をきっかけに海外での認知度向上に挑んでいくという。

講演の最後では松山氏が「まだまだ伸びしろがある」と考えを明かすと、小形氏は「自分も『ガンダム』はとてもいいIPだと思っている」と自信を見せつつ、まずはそれを知ってもらうことが重要であり、認知度の向上を映像制作という側面からおこなっていくという決意を語り、講演は終了となった。


今回、記事の冒頭で「45年以上も続くシリーズにおいて、従来の伝統や常識を崩すような展開はしにくいのではないか?」と述べさせていただいた。

しかし実際のところ『ガンダム』シリーズは、原作者である富野由悠季監督自身が前作のアンチテーゼとなるような作品を続編で描いたり、早い段階で原作者以外が監督をするなど、シリーズの常識を崩し続けてきた歴史を持っている。

つまり、『ガンダム』シリーズは長い歴史を持つ作品でありながら、シリーズの常識を打ち崩すことをいとわないのではなく。そもそも常識を打ちこわしながら歴史を紡いできたIPということだろう。

その結果として、『ガンダム』というシリーズにはバリエーションの豊かな作品と、それに触れてきた数多くの世代が生まれ、その集大成となる『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が出来上がった。まさに半世紀に及ぼうとする歴史の重みを感じる講演だった。

そんな『ガンダム』シリーズは、劇場版アニメの最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が2026年1月30日に公開予定。また、アメリカのレジェンダリー・ピクチャーズとタッグを組んで挑む実写版『GUNDAM(仮)』も時期未定ながら公開予定だ。

2026年は「ガンプラ」を用いたミニチュアゲーム『GUNDAM ASSEMBLE(ガンダムアッセンブル)』の始動を控えるなど、留まることを知らない『ガンダム』シリーズと小形氏の活躍に注目してほしい。

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ライター
アクションゲームとアメコミ映画を愛する三十路ゲーマーで、前職は某ゲーム機のカスタマーサポートとのウワサ。一人用ゲームを好むが、人が好きなものの話を聞くのはもっと好きなので「誘われればどんなゲームでもやる」がモットー。そんなこんなで始めた「スプラトゥーン3」を気づけば1000時間遊んでいたチョロいやつでもありますが、私が書いた文章をきっかけに誰かが「好きなもの」を見つけてくれたらいいなと思っています。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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