戦闘バランスは多くの試行錯誤を経て入念に設計。“ローガン中心”の成熟した物語体験を届ける
──技術の話が出ましたが、技術の進歩によって今作で新たに可能になった表現や機能はありますか?
Mike氏:
私たちは、作るゲームごとに1作ずつ積み上げていこうとしています。それはスタジオとしての強みのひとつですし、私たちがこれだけ多くのゲームを、これだけ高い頻度でリリースできている理由の一部でもあると思います。ですから各タイトルは、前作から一歩先へと非常に丁寧に積み上げられたものになっています。
ただ、私たちが心がけているのは、「こんな技術がある、こんな機能がある!」ということにあまり注目しすぎないことです。むしろ、その技術がこのゲームにおけるキャラクターの表現にどう寄与するのかを重視しています。
ゲームのなかでどんな大きな瞬間を作れるのか、そしてその瞬間をプレイヤーに伝えるためにどんな技術を作れるのか、技術に詳しくないファンにも伝わるように考えています。デモから例を挙げると、プロトセンチネルのボス戦がありましたが、そのなかで、ウルヴァリンとセイバートゥースが物陰にしゃがみ込む場面があります。
Jess氏:
ああ、車の後ろですね。
Mike氏:
そしてボスが目のレーザーでそれを溶かしてしまう。あの溶解のシミュレーションは、私たちがこれまでやったことのない新しいものです。ゲーム内では硬質のオブジェクトであるはずのものが、より物理的な挙動を始めるというシミュレーションです。
これはあくまで一例ですが、私たちが目指しているのは「見たことないようなボス戦の格好いい瞬間」というものになること。単にパッケージの裏面に載る技術的な機能に留まらないように、ということですね。
Jess氏:
さらに私としては、通常版のPS5で滑らかな60FPSを実現できたことも嬉しく思っています。PS5 Proではもう少し見た目が良くなりますね。
Mike氏:
そうですね。それによって、キャラクターと戦闘の流麗さが伝わります。私たちは、プレイヤーに技を繋ぎ合わせ、戦いながら敵から敵へと移動していくような“フロー状態”に入ってほしいと思っています。それを滑らかに描画できることが、あの手触りの良さの理由の一部になっていますね。
Jess氏:
作りたいゲームを60FPSで実現できるようにするというのは、開発の早い段階から重要な部分でした。
──デモでは戦闘が非常に滑らかで、反応も良かったです。戦闘のアクションやメカニクスの設計では、多くの試行錯誤があったのでしょうか?
Mike氏:
戦闘は多くの反復を経ています。ゲーム開発というのは、本当に反復的なプロセスです。ですから、どれだけ多くの試行錯誤をして、より良く、さらに良くしていけるか、ということになります。
Jess氏:
そうですね。Insomniac Gamesでは、外部のプレイヤーによるプレイテストやユーザーリサーチも数多く行っています。開発の全過程を通じて、新鮮な目と手からフィードバックをもらい、手触りがどうかを確認するためです。ですから今日プレイしていただいたものは、何年にもわたる反復の結果です。滑らかだと感じてもらえて嬉しいです。
──スーパーヒーローになった気分で敵を斬り裂けると感じる一方で、敵に囲まれるとやや手強くなるとも感じました。難易度と、プレイヤーの満足感を保つことのバランスについては、どうお考えですか?
Mike氏:
とても良い質問だと思います。まさにそこがゲーム開発の難しさで、ウルヴァリンになりきるためには超人的なキャラクターだと感じてもらう必要がある一方で、これはゲームですから、プレイしていくなかで手応えや成長、戦略も必要になります。
Jess氏:
いま挙げてくださった点は、私たちが戦闘で目指していた側面のひとつです。ウルヴァリンには爪があり、1対1なら問題なく戦えます。おそらく2対1でも戦えるでしょう。彼なら、それくらいは対処できます。
ですが、敵の数が増え始めるとどうでしょうか。冒頭のテランバン【※】をプレイしていただいたときに体験されたかもしれませんが、複数の兵士たちがいて、さまざまな方向から攻撃してきます。
そうなるとウルヴァリンも圧倒され始める可能性が出てきます。そこが、難易度を引き上げたい部分であり、「次にどの技を使うべきか」「この状況からどうやって抜け出すか」とプレイヤーに考えてもらいたい部分です。
Mike氏:
このゲームには良い学習のカーブもあります。完全に理解できた、すべてに対する戦略がわかったと感じた途端に、新しいタイプの敵が現れて、やり方を考え直すよう迫ってくる。あるいは新しい技をアンロックして、それを適用すると、突然戦闘の選択肢が増える、という具合です。
Jess氏:
あるいは、プロトセンチネルと真正面から対峙することになる、とか。
Mike氏:
そうですね、ボス戦も用意されていますから。
──ウルヴァリンがビデオゲームのキャラクターとして完璧だと思う点のひとつは、設定上、何発も銃弾を受けられるということです。アクションゲームでは現実的に感じられない場面もありますが、ウルヴァリンなら何発でも銃弾を受けられます。
Mike氏:
ゲームプレイのなかでも、そこを活かすことができています。それが他のゲームのキャラクターと比べて彼を独特な存在にしている要素のひとつです。
もし彼の「ヒーリングファクター」が、画面の隅で自動回復するUIの体力バーとして表現されるだけだったら、それはもったいない。
そうではなく、受けたダメージによって彼のコスチュームや身体が引き裂かれ、それが再び治癒して戻っていく様子を見せることができます。センチネルのボス戦で、彼が自分の身体を犠牲にし、その能力を利用して仲間を助ける場面がありますが、あれは本当にかっこいいですね。
Jess氏:
私が好きな場面のひとつは、ウルヴァリンが走っている最中にザ・ハンドの構成員たちが背中に飛びかかって彼を刺し、彼が相手を窓の外に投げ飛ばした後、刺さった武器を引き抜いて敵に投げ返すところです。
これはローガンにしかできないことです。ですからおっしゃる通り、彼の能力はゲームプレイと本当に相性が良いのです。
──過去作の経験を、今作にどのように活かしていますか。レベルデザインや探索の体験で、今作に活かされているものはありますか?
Mike氏:
ある意味では、ほとんど逆だと言えます。私たちは、これまで得意になってきた多くのことを一度「学び直す(unlearn)」必要がありました。
一歩下がって、キャラクターとしてのウルヴァリンにとって何が正しいのかを考える必要があったのです。スパイダーマンと同じように動かしたり振る舞わせたりするわけにはいきません。それはキャラクターに忠実ではないからです。
ですから、彼にとって自然だと感じられる形で、彼が移動できるエリアとしてステージを組み立てることが、大きな取り組みでした。
──1周のプレイの規模や長さは、どのように設計したのでしょうか?
Jess氏:
開発を始めた際、私たちの主眼は「どんな物語を語りたいか」でした。結局のところ、常にそこに立ち返ります。ウルヴァリンに合った物語を語りたかったですし、彼が、ファンが認識できるような象徴的な場所を訪れ、自らの過去の謎を探っていくようにしたいと考えました。
ゲームの長さについては、先ほども申し上げたように多くのプレイヤーとプレイテストを重ねてきて、今の着地点にはとても満足しています。9月のリリースに向けて、まだ細かな調整は続けています。
Mike氏:
素材や収集アイテムを見つけるための探索など、楽しめる要素もたくさんあります。「悪夢のドア」というチャレンジ要素もあり、これはブロンズ、シルバー、さらに上位のランクを目指して挑戦できます。
そしてローンチ時には「NEW GAME+モード」も搭載します。獲得した能力やスーツをすべて引き継いだ状態で、もう一度ストーリーをプレイできます。物語の結末を知ったうえでプレイし、ミッションを再び進めるのは、なかなか楽しいものですよ。
Jess氏:
しかも、自分の好きなスーツを着た状態で。
Mike氏:
ちなみに気になったのですが、どのスーツを選ばれましたか?
──私はデフォルトのデザインがとても好きですね。
Mike氏:
それは良いですね(笑)。
Jess氏:
良かったです。同じことをおっしゃる方が何人かいました(笑)。
──『Marvel’s Spider-Man』から入ってくるファンに対しては、この作品が異なる体験を提供するという点を、どう説明されますか?
Jess氏:
『Marvel’s Wolverine』について私たちが重視したのは、これがローガンのためのストーリー重視の体験であり、ローガン中心の物語だということです。
ですから先ほどMikeが言ったように、私たちの主眼は、ローガンにとって正しい物語を語ることでした。「以前に何をやったかではなく、このゲームを新鮮な目で見よう」「どうすればプレイヤーにこのキャラクターになりきってもらえるか」「どうすればこの物語を最もうまく語れるか」といったことを考えました。
そして、ローガンはこの物語を通してさまざまなロケーションを巡るジェットコースターのような体験をしていきます。これらの要素すべてが、私たちが作ったゲームに表れていると思います。
Mike氏:
『Marvel’s Spider-Man』の物語も大好きですが、今作では、感情の深さという点でまた別のレベルに踏み込むことができていると思います。
「大人向け」という言い方は少し違うかもしれませんが、成熟度のようなものがあり、本当に異なる手触りになっています。プレイしていて「これは違う」と感じられたのではないでしょうか。設定上は同じ世界ですが、トーンという観点からは、別ものに感じられると思います。
──ストーリーの出発点となった特定の作品やシリーズはありましたか。それともチーム内の議論から生まれたものでしょうか?
Jess氏:
特定の参照点というものはありません。ウルヴァリンにまつわる作品全体の広がりがあり、そこからMarvel Gamesと組んで、語りたい物語へと絞り込んでいきました。ファンにとって新鮮で独自の物語になるはずです。
Mike氏:
そのうえで、ウルヴァリンのさまざまなバージョンや有名なコミックのコマなどへの視覚的なオマージュや参照は、見つけていただけると思います。
Jess氏:
ファンなら見覚えのあるスーツもありますよ。デモでアンロックできるもののひとつに、「ウェポンXスーツ」があったと思います。
──この作品にはX-MENの世界のキャラクターが多く登場します。どのキャラクターが登場するかはお話しできないと思いますが、登場させるキャラクターたちをどう選んだのか、教えていただけますか?
Jess氏:
本作の世界では、X-MENは存在していません。そのうえでキャストの選定については、まず第一に、ファンが認識できるキャラクターは誰か、設定上ウルヴァリンが普通に遭遇するであろう人物は誰か、皆が知っている名前は誰か、という観点で見ていきました。
ジーン・グレイ、オメガ・レッド、レディ・デスストライクといった面々です。それから、これはMikeも言っていたことだと思いますが、ローガンはストイックなキャラクターで、あまりおしゃべりではありません。ウルヴァリンの興味深い側面を引き出すのは、周囲のキャラクターなのです。
実は彼は乾いた冗談を言うこともありますが、それはミスティークがそばにいるときに限られます。あるいは、彼とセイバートゥースが正面からぶつかり合うときに引き出される怒りや、7フィート(約2メートル13センチ)の巨体と、それより背の低いウルヴァリンという対比などもあります。
ですからキャラクターを検討する際には、ウルヴァリンを押したり引いたりして、そうした物語的な性質を引き出してくれるのは誰か、という観点で見ていきました。
──デモの後半では、ザ・ハンドが登場していました。また、このゲームには東京も登場します。日本のプレイヤーが、ゲーム内の日本という点で期待できるものについて教えていただけますか?
Mike氏:
まだお見せしていないものをお見せできればよかったのですが……
Jess氏:
以前のトレーラーで、通りを少しだけお見せしましたね。
Mike氏:
ウルヴァリンというキャラクターは、その来歴のなかで日本という国と非常に象徴的な関係を持っています。私たちはスタッフを日本に派遣して、リファレンス写真を撮影し、アイデアを集め、さらにアセットや樹木、植物などのフォトグラメトリ用のスキャンも行いました。
チームは、彼が過ごすことになる東京のエリアを構築するのを大いに楽しんでいたと思います。日本のプレイヤーの皆さんが、あの通りを歩き回って、実在の場所そのものではないけれど、文化的な何かから着想を得たものとして見覚えのあるものを見つけてくれるのが楽しみです。
Jess氏:
マーベル流の解釈ですね。
Mike氏:
東京エリアには楽しい要素がたくさんありますよ。
Jess氏:
その渡航の際には音声の収録も行いましたし、SIEの日本チームとも密に連携していて、道中さまざまなフィードバックやコメントをもらってきました。おかげで、探索して楽しい場所にできたと思います。
──最後に、発売を楽しみにしている日本のファンに向けて、ひとことメッセージをお願いします。
Mike氏:
少し繰り返しになってしまいますが、日本とこれほど深いつながりを持つキャラクターに携われることを、私たちはとても嬉しく思っています。
日本のプレイヤーの皆さんが、ご自身や自国、そして東京がゲームのなかに反映されているのを見てくださることを、とても楽しみにしています。そして、プレイして時間を過ごしていただけることに感謝しています。
Jess氏:
良い言葉ですね。私も同じ気持ちです。
──ありがとうございました!








