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「おもしろいゲームが売れないときはプロデューサーがヘボい」──『ケイオスリングス』、『ミリオンアーサー』、『鈴木爆発』安藤武博氏に実況者ksonが訊く、プロデュースのノウハウ “ニコニコ自作ゲームフェスMV作~る放送”第3回

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ゲームの“ウリ”はひと言で!

MC:
 それではいろいろと質問に答えていただきます。安藤さんがゲームを作るとき、いままで手がけた作品で「ここがウリ」というポイントが何だったのかを教えてください。

安藤:
 まずウリはひと言で言えないとダメなんですよ。ksonはいまゲームを作っているでしょ?

kson:
 作っています。

安藤:
 どんなゲームか、人が興味を持つようなひと言で言える? サン、ニー、イチ、どうぞ。

kson:
 ゴクドー。

安藤:
 極道? 極道のゲームを作っているんだ。

kson:
 ああ、ひとこととは、難しですね。それはひとつの言葉ですか?

安藤:
 人はゲームを選ぶとき、長い文章を読みません。見るのは、パッケージの絵やキャッチコピーなど。たとえば『モンスターハンター』の宣伝は「ひと狩りいこうぜ!」って書いてあるだけなんですよ。それを「PSPでワイヤレス通信を使って最大4人でモンスターをハントしていく。そのハントの結果、素材がドロップして、その素材でさらに武器を強めて、またさらに強いモンスターを倒しにいくゲームです」と言うと長い。

MC:
 面倒くさそうです。

安藤:
 でも、「みんなで狩りするゲームなんだよ」とひと言だとわかりやすい。CMの時間も短いし、みんな忙しいから、ひとつひとつの作品に注目してる時間なんてないんです。長い説明や文字は読んだり聞いたりしてもらえないので、パッとひと言にする必要があるんですよ。

kson:
 ひとこと。

安藤:
 極道、であればもうひと言ほしいよね。

kson:
 もっとほしいの。

「おもしろいゲームが売れないときはプロデューサーがヘボい」──『ケイオスリングス』、『ミリオンアーサー』、『鈴木爆発』安藤武博氏に実況者ksonが訊く、プロデュースのノウハウ “ニコニコ自作ゲームフェスMV作~る放送”第3回_005

安藤:
 RPGだったら“極道RPG”でもいい。そんなの遊んだことがないし、「極道がテーマのRPGをするんだ」という感じで、けっこうイメージが湧くから。そういうひと言を考えるのも、プロデュースするうえで、とても大事なことです。

kson:
 OK 勉強になります。

MC:
 安藤さんが、いままで作ってきたゲームだと、どんなひと言になるんでしょう?

安藤:
 たとえば『鈴木爆発』というゲームは、簡単に言うと“バカゲー”です。内容は「爆弾を解体するゲームです。以上」なんですよ。ではどうして「バカゲーです」と言ったのか。

 “バカゲー”って本来は遊んだ人が「バカだな」と思って決めることじゃないですか。でも作っている人が「これバカなんだよ。ヘンなんだよ」と言うことで、ちょっと差別化をしようと思ったんです。なぜかというと、このゲームが出た西暦2000年ごろは、『せがれいじり』などバカゲーが売れたんです。ksonは『俺の料理』というゲームを知っている? アナログスティックで包丁の操作をしたりします。

kson:
 知りません。

安藤:
 そういうちょっとユニークでヘンなゲームをお客さんが求めてる時代があって、「このゲームもそれなんだよ」と言うことがいちばんのウリになったんですよ。『鈴木爆発』というタイトルも、日本人からすると少しユニークさを感じるタイトルなんですね。「鈴木が爆発しちゃうんだ。なんで?」、「それは爆弾を解体するから」という感じだったりとか。

MC:
 先ほどから「この人、頭いい」というコメントがけっこう届いています。

安藤:
 オレはよく「口から生まれてきた」と言われることも多いんです。それはプロデューサーって自分では何もできないから、自然とそうなっていく。オレもいちおうBASIC程度だったらできるけど、いわゆるプログラムは書けないし、絵は自分より上手い人がいるし、シナリオだってイシイジロウさんのほうが絶対におもしろいし、ゲームのプランニングも河野一二三さんのほうが絶対にうまい。

「おもしろいゲームが売れないときはプロデューサーがヘボい」──『ケイオスリングス』、『ミリオンアーサー』、『鈴木爆発』安藤武博氏に実況者ksonが訊く、プロデュースのノウハウ “ニコニコ自作ゲームフェスMV作~る放送”第3回_006

 では「どうやってゲームを作るのか」といったら、それらがすごくできる人を集めて作ってもらうんですよ。そのときにとても大事になるのは、自分が考えていることをわかりやすく説明して、「この人だったらいっしょに作りたいな」と思ってもらえるように魅力的に伝えることなんですね。それを頑張らないといけないから、だんだんとお喋りが上手になるんです。

MC:
 なるほどなるほど。

安藤:
 ではひと言説明を続けましょうか。過去に『ケイオスリングス』というロールプレイングゲームを作りましたが、これは言うなら“スマートフォン最強RPG”です。

MC:
 グッと来ますね。

安藤:
 オレはすでにスクウェア・エニックスを辞めていますが、ぜひ『ケイオスリングスIII』をスマートフォンで遊んでみてください。はっきり言いますが、『ケイオスリングスIII』よりおもしろいスマートフォンのRPGはありません。だから最強で「これ以上はないよ」というのがウリ。そういう言いかたもあるんです。

 「プレイステーション4やVitaなら、『ペルソナ5』のようにおもしろいゲームがある。スマートフォンだったら『ケイオスリングスIII』だよ」というのがウリで、開発チームにも「これ以上ないRPGを必ず作ろう」と言っていたんですね。

 つぎは『拡散性ミリオンアーサー』。これはひと言で言うと、“鎌池和馬オンライン”です。

MC:
 おー。鎌池和馬さんは小説家のかたですよね。

安藤:
 『とある魔術の禁書目録』や『ヘヴィーオブジェクト』など、ライトノベル界のスーパースターですね。「そんなヒット作を書いている人が、世界設定や原作を務めたゲームですよ」ということをわかりやすく“鎌池和馬オンライン”と言ったわけです。スマートフォンにやってきた鎌池和馬さんが手がけた世界が“アーサー王伝説”だったと。

MC:
 なるほど。それで“アーサー”と付くんですね。“ミリオン”の部分は?

安藤:
 アーサー王伝説では、石に刺さったエクスカリバーという剣が抜けたひとりだけが勇者ですが、『ミリオンアーサー』では、100万人以上のプレイヤーみんながスポスポと抜くんです。つまり100万人以上のアーサーがいるから“ミリオンアーサー”。そこは鎌池さんの発明というかユニークなところで、「そういう世界設定やキャラクター、そしてシナリオが気になった人は、ぜひ遊んでください」という作品です。

MC:
 それぞれのタイトルで、すべて売りのポイントが違うんですね。

人を惹き付ける企画の考えかた

安藤:
 ゲームを自作している人には、作りたいイメージがなんとなくあると思います。それを形にするとき、考えるべきものが順に4つあるんです。『ツクール』で自作しているほとんどの人は、「こういうシステムや、こういう遊びを作りたい」など、ゲームのシステムから考えると思いますが、プロデューサーは逆に最初にウリ、つまりテーマから考えます。

 「アーサー王が100万人いるという話を、すごくおもしろいお話を書ける鎌池和馬さんが書いたら、めちゃめちゃ売りになるんじゃないか?」、「スマートフォンで『ファイナルファンタジー』のようなゲームが遊べたら、それはおもしろいんじゃないか?」、「バカゲーが流行っている。『ドラゴンクエスト』などマジメなゲームのイメージがあるエニックスから、『鈴木爆発』というヘンなタイトルのゲームが出たら目立つんじゃないか?」というようなテーマを最初に作るんですね。

kson:
 テーマを作ります。

安藤:
 テーマが決まると、ターゲットが決まるんです。ターゲットとはそのゲームを遊びたいと思ってくれる人。ksonが作っている極道RPGを遊びたいと思う人がいるかもしれない一方で、興味のない人もいるかもしれない。だったらまずはちゃんとそのテーマに興味を持ってくれる人がいるかどうかを考えないといけない。

kson:
 キョウミがある人。

「おもしろいゲームが売れないときはプロデューサーがヘボい」──『ケイオスリングス』、『ミリオンアーサー』、『鈴木爆発』安藤武博氏に実況者ksonが訊く、プロデュースのノウハウ “ニコニコ自作ゲームフェスMV作~る放送”第3回_007

安藤:
 「絶対にパズルゲームはやらないよ」、「シューティングゲームしか遊びません」、「RPGばっかりやっている」など、ゲームにはプレイヤーの個人的な好みがあります。つまりターゲットによって好き嫌いが分かれるので、自分が考えたテーマを好きな人がいるかどうかは重要になる。極道RPGというものを考えるなら、「やりたいと思ってる人がいるかどうか。それはどんな人か?」とターゲットを定めるんです。それは飲食店と同じで、ハンバーガーを食べたくない人に対してハンバーガーを出しても食べてもらえない。ハンバーガーを作るなら、ちゃんとそれを食べたい人がいるかどうかを見極める。

kson:
 お客さんのことを考える。

安藤:
 そう。テーマが決まって、ターゲットが決まったら、そこで初めてプラットフォームが決まります。要するに「プレイステーション4で作るのか?」、「PCで作ってSteamで売るのか?」、「スマートフォンで作るのか?」などですね。極道RPGを遊ぶターゲットの人が、ちゃんといまから作るプラットフォームにいるかどうかを考える。

 スマートフォンに極道RPGを遊びたい人がいるのであれば、そこで作ったらいい。たとえばハードコアなシューティングゲームは、いまでこそスマートフォンでもリリースされていますが、本当はコントローラーで遊びたいものだとしたら、じつはスマートフォンにはシューティングゲームを遊びたいお客さんが少ないかもしれません。だったらそれが好きなターゲットに向けて、「コントローラーで遊べるプレイステーション4やPCだな」という感じで決めるんです。

 テーマ、ターゲット、プラットフォームが決まったら、そのテーマが好きなターゲットがいるプラットフォームで遊ぶ人たちが、遊びたがる形を最後に考えます。それがゲームシステム。

MC:
 まったく逆ですね。

kson:
 まったく逆。

安藤:
 そうしないとウリができないんです。そうやって作らないと、みんなが遊びたいものじゃない“ksonが作りたいもの”ができあがる可能性が高い。“みんなが遊びたいもの”と“ksonが作りたいもの”は、もしかしたら別かもしれない。それをマッチングさせる行為がウリを考えるということです。

kson:
 oh……

安藤:
 マジメに話すとこういう話になりますが、ぜんぜんマジメじゃない話もできます。これでいいですか?

MC:
 はい! ずっとマジメで行きましょう! ただちょっと進行を巻いていきましょう。

安藤:
 わかりました。巻きましょう。

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