安藤氏がツクールでゲームを作るとしたら
MC:
「もし安藤さんがツクールで新しいゲームを作るとしたら?」をお伺いしたいです。予算は50000円以下で、制作は平日2時間と休日のみ。
安藤:
プロに頼めないんですよね? でしたら本当に込み入ったことができないので、ほとんど文字だけで成立するゲームを作ると思いますね。
思いつきですが、たとえばバベルの塔のようなところに閉じ込められていて、そこから脱出するようなゲームを作ります。バベルの塔って人々から奪った言葉が全部閉じ込められているじゃないですか。だから最初はたとえば“あ行”しか言葉が使えないんです。水が欲しくても、あ行しか使えないから、最初は「あう」とか「おう」しか言えない。だけど、それでコミュニケーションしながら少しずつ進んでいく。やがて、ま行を手に入れたら、水の「み」が言えるから、「みう」とか「みい」とかちょっとずつコミュニケーションを手に入れられる。そうやって制限時間内に脱出していくようなゲームですね。それならテキストだけで成立するでしょ? 黒バックに文字だけでもたぶんできると思う。50000円だったら、あえてそういう制限を、ものすごくかけて作りますね、。
覚えておいてほしいのは、ゲーム制作にかかるお金って、ほとんど人のお給料にかかることです。ひとりで作ると安い。100人で作ると100人分の給料が要る。50000円というのは、給料が払えない額だから、そんなにすごいことができない。とくに絵にはすごくお金がかかるんです。だから50000円だったら絵にお金がかけられない。だから文字だけになる。文字だけでも、雰囲気のある文字を作るかな? 辞書があって、少しずつ辞書が埋まり、少しずつ使える言葉が増えていくといいですね。そんなゲームを作るかもしれませんね。
MC:
なるほど。では近い質問ですが、「自作ゲームを制作するうえで何を重視しますか?」というコメントが届いています。
安藤:
やっぱり企画でしょうね。自分で作れるということは、お金が要らないということ。人にお金を出してもらうと、その人の言うことを聞かないといけません。それが1億円かかるという話だったら、1億1円以上にして返さないといけない。ですが自分ひとりだったら、バイトしてでもご飯を食べればいいだけだから、好きなことができると思うんですよ。
先ほどウリが大事である話をしたけど、ひとりで自作するからこそ自分のやりたい尖ったことをウリにしてやるべきと思いますよ。たくさんの大人がお金をかけたときに作れないようなものを作れるのが、自作ゲームのいいところなのではと思いますね。
MC:
そのうえでまさに皆さんが困っているのが、次の「できたゲームをどうやって広めたらいいの?」という質問です。自分のアイデアひとつで、ウリも考えずに好きなものを作ると「これはどうやってプレイしたらいいの?」というものができるんですよね。もちろん最初からウリを考えて計画的に進めるのがベストですが。
安藤:
けっこう難しいですね。でも、タダでできることっていっぱいありますよ。たとえばksonはゲームの実況をしているけど、あれにはお金はかかっていないよね。
kson:
お金をかけません。ゲームを遊んでいるだけ。
安藤:
だよね。それでもたくさんの人が見てくれるでしょ? ksonが片言で喋りながらゲームを遊んでいるのがおもしろいから、ksonだったら自分の作ったゲームを自分で実況するのがまずいちばんいいと思うよ。タダだし、みんな観ると思う。
kson:
オーケー。自分で実況したら自分のお給料もいらないですから。
安藤:
あとksonの友だちにもゲーム実況をしている人が少しずつ増えてきたんじゃない?
kson:
おともだちはひとりもいません。
安藤:
いないの!? ひとりもいないんだ……。でもksonの作ったゲームだったら、「会ったことはないけど、ksonのファンだから実況するよ」という人もいるでしょう。
kson:
ほんとですか?
安藤:
「私のゲームを実況してください」という呼びかけをしてみる。そしてksonのゲームを実況してもらったら、再生数に応じてksonが何かしていくといいよね。やっぱりksonの露出が高まっていくといいのかな。
kson:
先生はすけべだと思います。
安藤:
ksonのゲームの実況者が増えていって、合計100万人になったらksonの肌色の部分が増えていくとかするといい。R-18枠になるかもだけど、お金はかからないよね。昔はそうした番組での告知などは、テレビ局や雑誌社など選ばれた人たちしかできなかったけど、いまは事実上タダでできるから、そこを最大限活かしていくのはいいかもしれないね。あとは頑張ってテレビ……木原実さんとそらジローがやっている天気予報の後ろにksonには映り込んでもらおうかな。『ズームイン朝』方式です。ksonがその格好で、「ksonゲーム作る、極道RPG」と書いたパネルを持って。
kson:
それは無料ですね! 目立ちますね!
安藤:
そのビジュアルだったらすごく目立つので、「そらジローの後ろの、あれは誰?」みたいなことが起こるでしょう。
MC:
ツイッターでRTが広がりそうな感じがしますね。
安藤:
だからできることは全部試してみるといいんじゃないかな。タダでできることって意外とありますよね。ただし、いろいろな人に遊んでもらうのがいちばんだとは思いますけどね。
MC:
確かに。では最後の質問ですが、運営がお聞きしたいだけの話です。自作ゲームを投稿できる場所をドワンゴが作っているんですね。
安藤:
ありますね。
MC:
そこは今後どうしたらいいですかね? お知恵を拝借したいと思いまして。
安藤:
遊んだ後の映像や遊んだ人のリアクションが、サムネイルなどでもっと動的に出せませんかね? ゲームって、動いていないとやっぱりよくわからないんですよ。やっぱり力があるのはゲーム画面自体なので、「そのゲームが動き始めるとこんな感じですよ」とクライマックス部分などをつねに6秒くらいのループで映せるような仕組みがあればいいと思います。それだけでもあれば、全然違ってきそう。
MC:
製作担当がスタジオの奥にいますが、いま完全に目を逸らしていますね。
安藤:
ゲームに力があるからゲーム実況って流行るんです。ゲームの魅力をいちばん伝えられるのはゲーム画面なんですよね。だからそれが短い時間でも動くように変わるといいとすごく思います。ちょっとコストがかかりますけどね……。
MC:
最近だとSteamでも最初にまずムービーが流れますもんね。
安藤:
Apple StoreとかiTunes Storeなど、スマートフォンでもゲームページのトップって動画が置けるようになっていますよね。
MC:
ウチは動画サイトですからね。いちおうは。本当はね(笑)。
安藤:
ついにニコニコ動画も画質が上がりましたしね。
MC:
ようやくちょっと上がりました。
安藤:
実況主としてはたいへんうれしいのですが、この機に乗じて、システムそのものパワーアップをしていただけるとよりいいなと思います。
MC:
先ほど「先生が変わると話も全然変わるね」というコメントが流れました。観ているほうからすると、「全員ゲームを作ってる人だよね」ぐらいの大雑把な感じですが。
安藤:
イシイさんと河野さんとオレとだったら、やっている仕事が違うので、それは全然変わりますよ。話す内容も変わると思います。おふたりともお話もおもしろい方ですもんね。
MC:
では矢継ぎ早に質問です。「最初に触ったゲームは?」
安藤:
最初は何だろうな。最初は5歳ぐらいのときのゲーム&ウオッチですかね。ゲーム&ウオッチの『レスキュー』【※】かな? 上から人が落ちてくるヤツ。ゲーム&ウオッチがとても流行った世代なので。
※ゲームの内容から、おそらく『FIRE』を指している
MC:
「(その金髪は)地毛ですか?」という質問が……。
安藤:
地毛です。このまま金髪を続けていると、「もう5年したらハゲるんじゃないか」とニコ生のアンケートでも言われています。
MC:
「自作ゲーム以外で好きなゲームは?」。
安藤:
スーパーファミコンの『F-ZERO』ですね。じつはMUTE CITYのタイムアタックを3年ぐらいやっていて、1分59秒1ぐらいで走れます。
「もともとおもしろくない人はゲームは作らないのほうがいいのですか?」
MC:
ksonさんから質問はありませんか?
kson:
質問はたくさんありますけど、先生はどんなゲームを作っている人かはわかりましたけど、作る人の性格とできるゲームが全然ちがうと思いますから。もともとおもしろくない人はゲームは作らないのほうがいいのですか?
MC:
すごい質問だ。
安藤:
「もともとがおもしろくない」というのはどういうことですか? 話がおもしろくないということ? それとも人間的におもしろくない?
kson:
お話がへたくそだったり。
安藤:
話は別に上手じゃなくても大丈夫。パソコンは話を聞くわけではなく、インプットしたプログラムしか聞かないので、パソコンときちんとお話ができればいいゲームが作れると思います。
ただ、ふたり以上で作るとなると、お話は上手なほうがうまくいく。けれど決して上手じゃなくていいんです。自分の考えてることをきちんと伝えられて、相手の言ってることをきちんと聞けたら大丈夫。たくさん喋らなくてもいい。ゲームを作ってる人には物静かな人も多いし、オレみたいにおしゃべりな必要はありません。
kson:
私は言葉のかべがあります。だから人と作るが難しいになると思いました。
安藤:
そうだね。だからまずはひとりで作っているうちに、だんだん日本語が上手になってきたりとか。あとksonは英語がペラペラでしょ?
kson:
Oh, yeah.
安藤:
だったら英語でコミュニケーションを図るなど、いろいろな方法があるので、そこは気にしないでいいと思うよ。
kson:
気にしない。わかりました。ありがとうございます。
MC:
というお話をお伺いしてきましたがお時間です。自作ゲームを作っている方も、これまでの作りかたとは違う作りかたのお話だったと思います。ぜひ取り入れてみてください!
せっかく作ったゲームだから、ひとりでも多くの人に楽しんでもらいたい。だがどうすれば? 作り手が純粋にパッション頼みでゲームを作ったときに陥りがちな悩みに対して、“伝え手”安藤氏ならではの視点で有意義な話を語っていただいた。幅広い視点を持って企画し、情熱を傾けたとき、ゲームがスパークするのだろう。
一連の番組はここで一段落だが、たいへん好評につき、ツクール界隈を追う記事は今後も継続していく予定だ。
お知らせ
番組のベースとなっている“ニコニコ自作ゲームフェス”は、今回で7回目を迎える、ゲームを自主制作する人々を応援するニコニコ主催の祭りのひとつ。今回は『RPGツクールMV』で作ったゲームを投稿するというルールだったが、今回から賞金総額が50万円に引き上げられている。選出部門も「その発想はなかった部門」、「その発想はいらなかった部門」、「謎の技術部門」、「期待の新人部門」、「ガチ部門」など多彩。制作のための素材配布なども行われており、この場で取り上げられた『クロエのレクイエム』、『クリーチャーと恋しよっ!』、『Hero and Daughter』などの作品が、現在はゲーム実況などで盛り上がりながら、小説になったり、漫画になったりと、いろいろな方面へ羽ばたいている。締切は2016年12月22日いっぱいまで。番組を見て興味を持った方は、あとひと月、全力を傾けてはどうだろう。
またニコニコ静画では、ドット絵コンテストを同じ12月22日まで開催中。【役に立つ素材部門】、【絶対に役に立たない素材部門】を募集中。詳しくは、コンテストページを参照されたい。