あらゆるVRゲームをプレイし尽くすドワンゴVR部のもとに12月中旬、ついに待ちに待ったデバイスが届いた。Oculus Rift用コントローラー「Oculus Touch」だ。
両手のコントローラーにはアナログスティックとボタンが2つずつあり、人差し指の下と中指の下にはトリガーがついている。両手の位置や向きを正確にトラッキングし、自然な動きで直感的に操作することができる。VR空間上に自分の手が出現することで、没入感が飛躍的に高まるという。
Oculus Rift本体の出荷が2016年3月に始まったのに対して、Touchの出荷は実に9ヶ月も遅れ、ようやく日本にも到着し始めた。同時期に発売されたライバルのHTC Viveは最初からコントローラーを備えており、ようやく追いついたことになる。ドワンゴVR部はOculus Touchにどんな評価を下すのか……?
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VR空間に本物の手が
早速ですが、Oculus Touchを使ってみてどうでしたか?
軽く握っている状態でホールドできて、普段の力を入れていないときの手の状態が再現されているのが気持ちいいですね。相当試行錯誤したんだろうなと思います。
ライバルのHTC Viveのコントローラーに比べてものをつかむ動作が違和感なくできて、VR空間内に本物の手がある感覚を味わえますね。
重心設計もうまいですね。手の中にうまく収まるようになっている。
HTC Viveのコントローラーは先端が重くなっていて、素手を再現するにはちょっと違和感があるんですよね。
Viveのコントローラーはものをつかむ動作や両手を合わせる動作がうまくできないですからね。
まず皆さんにはOculus Touchのチュートリアルをプレイしてもらいました。
このチュートリアル、本当によくできていてびっくりしました。
指先から光線を飛ばしたり、銃を撃ったりといった動作を一通り体験することができます。
Touchコントローラはボタンやジョイスティックを操作していない間も、指の曲げ伸ばしを判別してVRに反映できるんです。人差し指を立てて銃のようにしたり、親指を立ててgoodのポーズにしたり、いろいろなハンドジェスチャーができます。
しかもジェスチャーが正確にVR空間内に反映されるので、本当に手がVR空間内にある感じがしますよね。
このチュートリアルでTouchの良さを実感しましたね。これは革命的ですよ。
指を曲げたり指したり立てたりといった機能がないViveコントローラーは、Touchと比べると急いで間に合わせたんでしょうね。VR空間でのトラッキングを除くと、Viveのコントローラーは従来のゲームパッドの延長線上という印象を受けました。
ヘッドセットも軽快
Oculus Riftのヘッドセットはどうですか?
私は毎日自宅でViveで遊んでいるんですが、Oculusのほうが軽くて、ケーブルが細いんです。
ケーブルが細いのは動き回るVRゲームにとってはかなり重要ですからね。
ただ、メガネ勢には厳しいですね。Viveはメガネのツルが入るところがくぼんでいるんですが、Oculusにはありません。小さいメガネならつけたまま遊べますが、眼鏡のサイズによってはそれも難しいでしょうね。
Oculusのためにコンタクトにしようかな……。今の自分のメガネはフレームが当たってしまって、鼻の所が痛いんですよ。
あと我々のような「平たい顔族」には厳しいかもしれないですね。鼻の隙間から外が見えるんですよ。
クッションを詰めたいくらいですね。
ただ、すぐに外を確認できるのは誰かに呼ばれたときに便利かもしれません(笑)。
9ヶ月の遅れがもったいない
ところでOculus Touchの発売、本体に比べて9ヶ月遅れたわけですが……。
本当にもったいないですよね。この9ヶ月の間にHTC ViveがVR界を席巻してしまったわけですから。Oculus Touchのこのクオリティが初期からあれば、今ごろ一人勝ちできていたと思います。
HTC Viveは最初からコントローラーが付いて、フルセット遊べる状態でした。
Oculusは初期はゲームがCドライブ以外にインストールできないとか、いろいろ不具合もありましたね。少容量のSSDをCドライブに割り当てていると、あっというまにあふれて遊べなくなったり。
Touchがヘッドセットと同時に発売されていたらVR市場が根本から違っていただろうなと、つくづく思います。
Oculusが起こした革命
そもそも現代的なVRデバイスを発明したのはOculusなんですよね。それまでのVRは高価なプリズムをふんだんに使って、光学的に美しい映像を体験できるというのが主流だったんです。でもそこにOculusがは発想の転換を仕掛けてきました。
というと?
タブレット用の安い液晶ディスプレイと安いプラスチックレンズで十分なんだ、そのかわりに超高速トラッキングができるセンサーをつければ、少々映像が粗くても仮想現実を楽しめるぞ、と。
この単純な仕組みでかなり臨場感が出るというのが、OculusRift DK1(最初にリリースされた開発者向け機器)を体験したときの驚きでした。
レンズは安いのでいいから、そのレンズの歪みをGPU(グラフィックスプロセッサ)で補正しようというアイデアはすごいですね。
なるほど。
たとえば色収差(いろしゅうさ)といって、赤色と青色の光は波長が違うのでレンズを通る経路が違うんですが、ふつうは高価なプリズムを使って精緻な光学系を設計し、そのずれを吸収しようとするんですね。
でも、Oculusはそのずれ方をコンピュータでリアルタイムに計算して、ディスプレイにはずらした映像を出せばいいという発想なんです。これは革命的でしたね。
私は20年前からVRの発展をリアルタイムに体験していますが、当時のVRって「四角い窓の向こうに粗いポリゴンが見える。これは戦闘機のコックピットなんだ。今私は戦闘機に乗っているんだ」と自分に思い込ませなきゃいけなかったんですよ。でも最初にOculusを体験したときは「もう自己暗示なしで没入できるじゃん」という衝撃がありました。
これで2強が揃って、いよいよソフトも本格的に登場してくる2017年が楽しみですね。
おすすめはどちら?
Oculus RiftとHTC Vive、今買うならどちらをおすすめしますか?
ハードウェアのクオリティは今のところはOculus Riftのほうが少し上かなと思います。
広くない部屋でプレイするならOculus Riftのほうがいいですね。
ただOculusはUSBポートが大量に必要なんですよ。ヘッドセットに1つ、カメラに2つ。ルームスケールを体験したいならさらに1つ必要です。USB3.0ポート、普通のPCに4つもないですよね。USB2.0ポートでも動きはするんですが、トラッキング精度が落ちると言われていて……。
HTC Viveは他に電源が必要なので、個人的にはUSBポートで完結するならそのほうがいいかもしれないですね。
確かに電源は少なくて済むなら少ないほうがいいですね。わざわざ電源タップを買わなくて済むし、その分Oculusの方が配線が少なくて簡単ですね。
Oculusソフトは高価
先日『VRカノジョ』がOculus Touchに対応すると発表しましたが、対応ソフトは何本くらいあるんですか?
基本的にSteamにあるHTC Vive用のゲームは、Oculus Riftでもほぼすべて遊べるはずです。
指のジェスチャーを使ったゲームはOculus Touchでしかできないですが、デベロッパーがOculus専用ゲームをどれくらいリリースするかはまだ分からないです。
Oculusは12月中にTouch対応ゲームを50タイトル以上用意すると言ってましたが、どうなるか未知数ですね。
現状だとクオリティの高いソフトを出すという方向性で、マーケット(OculusHome)環境を整備している印象を受けます。
SteamのVRゲームは本当に玉石混淆ですからね。起動して5分遊んでがっかり、みたいな。
クオリティを担保するという自信の表れなのか、ゲームの価格はSteamに比べてかなり高価ですね。Steamで売られているVive用ゲームの値段は、普通のゲームなら1,000~2,000円、高いもので4,000~5,000円くらい。それに比べて、Oculusのソフトは3000円くらいからスタートする感じですね。
今のVRゲームの状況だとその値段で売るのはきついと思いますが、かといって単価を下げてしまうとデベロッパーが開発費を回収できませんからね。
PS VRを持ってる人ほど買うべき!
PS VRと比べるとどうでしたか?
ヘッドセットのかぶりやすさで言うと、PS VRがピカイチです。
締め付けてから吊り下げるという形が素晴らしいですね。
ただトラッキングの精度が一段落ちるので、そこに大きな差がありますね。
しかもPS VRのMoveコントローラーは標準装備ではない上に、いまだに品薄ですからね。
コントローラーが足を引っ張っていますよね。
PS Moveコントローラーを探す旅に出ないといけないのが……。
PS VRをもう持っている人でも、Oculusを買う価値はありますか?
PS VRを遊んで、さらに一段上の世界を見たいと思う人なら、買って絶対に損はしません。
おっ、かっこいい発言来ましたね。
ハードウェアのクオリティが安定しているので、家庭でも安心して使えます。
Viveのほうはまだまだ荒削りですからね。無骨なむき出し感というか。それはそれで味はありますが。
あと、日本人にとってはOculusは比較的狭い部屋で遊べるのもいいですね。
一応言っておくと、Oculus Riftを買うならTouchを一緒に買わない理由はないですね。これは強調したいです。
Touch買わないと遊べるゲームの選択肢がほとんどないですからね。
TouchがあるだけでVR空間に入った体験が段違いになります。
というわけで、もうPS VR持ってる人ほどぜひ買いましょう。
うちなんか子供がいるのにリビングにPS VRとViveとOculusがありますからね。子供が学校の友だちを連れてくると「うわ、これニュースで見た!」みたいな反応されます。
さすがVR部、それは壮観ですね……。ドワンゴVR部では今後もさまざまなVRゲームをプレイし尽くしていきたいと思います!
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