支援ツールを配布するStreamElementsが、2018年のビデオゲームライブストリーミング状況を振り返るレポートを発表した。いくつかの統計が出されているが、特に興味深いのはストリーミングサービスごとの視聴時間だ。
レポートによれば、Twitchのユーザーの総視聴時間は93.6億時間にものぼるという。これは年数に直すと、“約106万年”という途方もない時間だ。
2018年次におけるTwitchユーザーの総視聴時間は、2月と9月にやや落ち込みが見られるものの、安定して伸び続けている。2017年と比較すると約5億6千万時間(5万8千年)、25%の伸びとなった。
Twitchに比べればYoutube Liveの総視聴時間は23.3億時間(26万6千年)と少し短いが、2017年に比べて総視聴時間は4億1千万時間にも伸びている。総視聴時間はTwitchの4分の1だが、2017年からの伸び率で見ればTwitchを凌ぐ勢いで成長している。
参考までに、2017年のデータではあるが、動画ストリーミングサービスNetflixは、1週間で10億時間(約11万年)視聴されたというデータを公表している。2018年10月にSandvineが公開したレポートでは、Netflixはインターネット全体の通信量の15%を占める、世界1位のサービスとされている。
ゲーム別の年間総視聴時間の統計から、2018年のライブストリーミングは『Fortnite』の年だったと言えるだろう。全体として視聴時間は2017年から増えていることが確認できるが、『Fortnite』の13億6千万時間(15万6千年)という数字は抜きん出ている。
そんな2018年もっともホットだった『Fortnite』だが、四半期ごとの視聴時間は第2四半期を境に少しずつ減少していることもわかる。2019年は、このランキングにない別のゲームが突然1位に現れても不思議ではない。
また、Influencer Marketingが公開した2017年7月から2018年6月におけるTwitchの統計レポートでは、『Fortnite』で有名なストリーマーNinja氏を見た同期間での総視聴時間は1億5千万時間(1万7千年)となっている。
StreamElementsが公開した統計と時期はずれ、Ninja氏も『Fortnite』のライブストリーミングだけを行っているわけではないため単純計算は出来ないが、双方のデータからはNinja氏と『Fortnite』の人気の高さが感じられるだろう。
一方で、2017年に総視聴時間1位だった『League of Legends』を含め、ほかのゲームは全体的に視聴時間が下降気味。その中で「IRL」という耳慣れないタイトルが視聴時間を大幅に伸ばしている。2017年では1億8千万時間(2万年)だったが、2018年には4億8千万時間(5万5千年)と2倍以上の伸びだ。「IRL」とはIn Real Life、つまりゲームの配信を行わずに生活の風景などを配信するジャンルだ。ただしゃべるだけの配信から、ASMR、食事やスポーツなどがこのジャンルに含まれる。
「IRL」でもっとも人気なのが「Just Chatting」、トークの番組だ。全体の87%を占めており、IRLといえばトークといっても過言ではないだろう。また、「ASMR」も5%とトークに比べれば小さいものの一定の人気を誇っている。ASMRとは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、頭がゾワゾワするといった感覚を生むと言われている現象だ。ハサミで紙を切る音やキーボードをタップする音など、この感覚を味わえる刺激は人によって違う。
成長が続くライブストリーミングサービスにおいて、Twitchの存在は大きい。これまではゲームの配信が多かったサービスではあるが、ゲームによらない配信「IRL」もその存在感を増している。はたして、2019年はライブストリーミングにとって一体どのような1年になるだろうか。
ライター/古嶋誉幸