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1980年代の台湾が舞台の『還願 Devotion』が日本語対応でSteamにて配信開始。『返校』開発スタジオによる新作ホラーゲーム

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 『返校 Detention』の開発元として知られる台湾のインディーゲームデベロッパー「Red Candle Games」による、新たなるホラーゲーム『還願 Devotion』Steamで配信開始された。日本語対応しており、価格は1730円。

 『還願 Devotion』の舞台は、1980年代の台湾のとある家庭。古いアパートの一室で、幸せに暮らす家族が徐々に悪夢に苛まれるのを描く。ゲームは一人称視点の3Dグラフィックで描かれており、アパートの部屋や廊下など、閉鎖的な空間を彷徨うゲームデザインとなっている。

 本作は歩いていると自然に演出が起こる純粋なウォーキング・シミュレーターではなく、アイテムを手に入れ、それを部屋の所定の位置に置くことでゲームを先に進める仕組みもある。アイテムやファイルなどはインベントリから角度を変えることによって、新しいメッセージが表示される。これによって家族にいったい何が起こったのかストーリーを読み解いていくのだ。

 少なくともゲーム序盤では、アイテムをどの場所に置くべきかは自然に考えれば容易にわかるものとなっているので、ほどよい謎解きの難易度といえるだろう。謎解きに迷って、いつまでも先が進めず、状況に慣れてしまって次第に恐怖が薄まっていく……というホラーゲームでありがちな展開ははない。プレイヤーは矢継ぎ早に恐怖的なシチュエーションにどんどん叩き込まれる。

 ゲームの特徴として、トレイラーなどでも示されてきたように、ゲーム内では写真や映像など部分的に実写が使われている。これは前作『返校 Detention』でも使われた手法で、今作でも台湾を舞台にした湿度あるアートスタイルと見事な不気味さを演出してくれそうだ。最近では、Ubisoftの『トランスファレンス』がこのアプローチを使っていたが、実写部分が恐怖に直結しているわけではなく、あまり効果的ではなかった。

 またホラーファンにとって嬉しいことといえば、前作同様に本作が『サイレント・ヒル』シリーズからの影響を顕著に受けているところだ。たとえばアートスタイルや世界観、『P.T.』風のゲームデザインもそうだが、本編で使われているロック・サウンドは『サイレント・ヒル』シリーズの山岡晃氏を想起できるはず。特にトレイラーでも使われていた音楽は、『サイレント・ヒル2』の名高い「Theme of Loura」を思い出すことができるだろう。

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ジャンプスケアもあるが、本来的にホラー演出と不可分なものだ

 軽く触ってみたところでは、日本語ローカライズの品質も高水準に仕上がっている。日本人がプレイすると、台湾の家庭の風景は、日本と似ており馴染み深いのだが、やはり少し違っており、まるで異世界に迷い込んだ錯覚を呼び起こさせるに違いない。この非常に洗練された台湾発のホラーゲームを体感してみてはいかがだろうか。

ライター/福山幸司

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福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman

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