いま読まれている記事

差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた

article-thumbnail-190516e

 ファンがゲームを自由に改造するMod文化は、PCゲームを中心に今や広く知られた楽しみ方のひとつだ。そんな中、Modといえば「きかんしゃトーマス」、モデルの差し替えといえばトーマスという風潮を肌で感じている方は少なくないだろう。

 日本では正式名称をきかんしゃトーマスとなかまたち』という。鉄道模型を使ったアニメとして子ども向けに制作され、現在は3DCGを使ったアニメが放映されている。イギリスのウィルバート・オードリー牧師が描いた汽車のえほん』を原作とし、オードリー牧師の死後はイギリスのマテル社が権利を保有している。

差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた_001
(画像はSkyrim: Thomas the Tank Engine mod – YouTubeより)

 このムーブメントは、2013年に公開された『The Elder Scrolls V:Skyrim』ドラゴンをトーマスに置き換えるMODが始まりとされており、海外メディアThe FaceがModの作者であるケヴィン・ブロック氏にインタビューを行った。

 ブロック氏は、全てが自然発生的だったと振り返る。ある日氏の友人からiPhoneのゲームで使われたトーマスのモデルを受けとり、最もおかしなことは何かを考えた結果、『Skyrim』のドラゴンと置き換えようと思いついたという。すでにゲームのMod制作の知見を持っていた氏は、30分ほどで移植を完了した。

差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた_002
(画像はSteam Workshop『Really Useful Dragons』より)
差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた_003
(画像はSteam Workshop『Really Useful Dragons』より)

 他人の著作物を使用する行為は違法となる可能性があるが、引用の範囲や目的が収益を得ることでない場合、著作権侵害とならないフェアユース(公正利用)の範疇として抗弁することが可能となる。

 今日でもさまざまなゲームで他者の著作物を引用したModが公開されているが、その多くが黙認されているのはフェアユースの概念が大きく関係している。もちろん国によって法律が違うので、あくまで黙認されているというスタンスにとどめておきたい。

 「マテル社は私に死んでほしいと思っているでしょうね。」ブロック氏はマケドニアの法律仲介事務所からトーマスのブランドを傷つけたとして、Youtubeに公開したトーマスModの動画を削除するように申し立てられたことを語っている。1度目は公開停止となったものの、その後、Youtubeが「パロディの範疇である」として公開停止を撤回した。

差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた_004
(画像はSteam Workshop『Really Useful Dragons』より)

 法的問題はさておき、こういった他人の著作物にフリーライドしてオーディエンスの耳目を集めようとするMod作者は、「ミームModder」と呼ばれ軽蔑されることもある。しかし、ブロック氏はミームModder的行為を肯定的に捕らえている。この愉快なバイラルジョークはSNSなどで話題となり、自身の他のプロジェクトを世に広める事になったからだ。

 耳目を集める二次創作ゲームを発表し、それをバネに新しいプロジェクトを周知したり、アマチュアからプロへと転向する例はそう珍しいものではない。

 たとえばTPS『DAYMARE: 1998』は、『バイオハザード2』ファンメイドリメイクから派生した。リメイクプロジェクト自体は中止となったが、カプコンに招待され自分たちのIPを持つべきだと背中を押されたという。

 『Biohazard: RE2』『Sekiro: Shadows Die Twice』『GTAV』、果ては『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など、「きかんしゃトーマス」が移植されたゲームは数多い。

 たとえばゲームコミュニティには、『DOOM』が動く可能性のある機器は全て『DOOM』が動くという信念の元、オシロスコープや関数電卓にまで『DOOM』を移植するものや、フラッシュライトや衣服をニコラス・ケイジにするというような奇妙なムーブメントがある。

 「きかんしゃトーマス」も、間違いなくそんな奇妙なムーブメントのひとつと言えるだろう。

ライター/古嶋誉幸

関連記事:

ついに「草」も。『SEKIRO』の死亡画面に表示される「死」を変えるMod大喜利がにわかに賑わう

『バイオハザード RE:2』タイラントのMod大喜利が止まらない。不気味な人形姿からアヒルの玩具の足音まで

ライター
差し替え先は『Skyrim』から『Sekiro』まで。人類初の「トーマスMod」製作者が当時を振り返る。『Skyrim』のModは法的問題を引き起こしていた_005
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ