1990年代にソニーが開発していたスーパーファミコン向け周辺機器、いわゆる「ニンテンドープレイステーション」。そのプロトタイプのオークションが無事に終了し、オークションを運営したヘリテージオークションへの手数料20%を含む36万ドル(約3700万円)で落札された。
「ニンテンドープレイステーション」は、ソニーが任天堂と協力し1990年代に開発していたスーパーファミコン向けのCD-ROMドライブ拡張ユニットだ。PlayStationビジネスを率いた久夛良木氏が任天堂に掛け合って共同開発にこぎ着けたが、その後、任天堂はフィリップスとCD-ROM機の共同開発を発表。ニンテンドープレイステーションは幻のプロダクトとなった。
しかし、プロトタイプ版が200台ほど生産され、そのうちの1台がわずか75ドルでディーボルト氏の手に渡った(参考記事)。伝説として語られていたニンテンドープレイステーションが実在していたニュースは世間を驚かせた。
世界に1台しか見つかっていない本機はおおやけのオークションに出品されたこともなく、ヘリテージオークションもいくらの値が付くか予想できないと語った(参考記事)。以前ディーボルト氏は、ノルウェーに住むとある人物から120万ドル(約1億3千万円)で購入したいという申し出を断っている。それだけに落札価格は大きな注目を集めていた。
出品者のテリー・ディーボルド氏は記事執筆時点で声明を出していないが、落札者のグレッグ・マクレモア氏は海外メディアForbesのインタビューに答えている。
マクレモア氏はかつて「Pets.com」や「Toys.com」を所有していた、いわゆるインターネット・バブルを駆け抜けたIT長者のひとりだ。海外メディアRobb Reportによれば、このビジネスで得た資金は世界初のアーケードゲームと言われる『コンピュータースペース』を初めとするアーケードゲームの蒐集に充てられたという。氏はオンラインのアーケードゲームミュージアム「The International Arcade Museum」を運営していることでも有名だ。
Forbesに対しマクレモア氏は、ニンテンドープレイステーションをクローゼットにしまい込むようなことはせず、これまでの蒐集品とともに常設博物館を建てる予定だと語っている。現在その第一歩として、外部パートナーと協力し展覧会を開く計画を進めている。
氏は初期のアーケードゲームが後のビデオゲームにどのように影響を与えたかなど、ビデオゲームの進化の歴史に焦点を当て、ニンテンドープレイステーションがその焦点にうまく適合すると考えている。近い将来、世界中の展覧会や博物館で同機を見る機会があるだろう。
かつてニンテンドープレイステーションのプロトタイプに提示されたという120万ドルに比べると、36万ドルは十分に大きな額とはいえいささか現実的な金額だと思える。
とはいえ、ビデオゲーム全体の歴史で考えれば、博物館の建設も視野に入れるほどビデオゲームへの情熱を持った人物が落札したというのは僥倖だといえるだろう。今後どうなるかはまだわからないが、いつか博物館のメインの展示品として本機が展示されることを願うばかりだ。
ライター/古嶋誉幸