19時14分。生放送がはじまった……
内山:
時間も19時14分、生放送の時間となりました。奇妙なことに、まるで事前にプログラムが組まれたかのように、勝手に生放送がはじまってしまいます。
スタジオに設置されたいくつものカメラ、天井とかにもカメラがあるので、すべてのカメラを止めるのは不可能でしょう。
目まぐるしく切り替わりながら、狼狽する君たちの顔を映します。当然、無残な姿のスタッフたちも映します。
コウノスケ:
私、カメラ目線になります、突然。
内山:
そしてそのとき、スタジオの大型モニターにニコニコ生放送の画面が映し出され、大量のコメントが流れて行きます。
なんとそこには、先ほどキエロウの死体が自宅で発見されたという報道が、コメントにも流れて行くのです。
これは初めてのニュースで、君たちも驚きを感じるのですが、全体的なコメントを読んでみると、「はじまった?」「キエロウが死んだって」「まじでソースは」「ついさっきニュースでやってた」「俺も見たわ」「デマ乙」とか、「悲しいけど本当なんだよ」とか。
スタッフも戸惑っていると、君たちのことも言っているようなコメントが、たくさん流れてきます。
はしやん:
本当に流れている。
内山:
ノリがいいですな、皆さん(笑)。
コウノスケ:
「デマ乙って流れてるわよ」(桃園)
内山:
すると、うーぴゃーの肩に、ポンと触れるものがいます。ドヤ顔の加瀬です。
うーぴゃーに優しく微笑みかけながら……。
「精神の正しきときが来たわ。間もなくキエロウを殺した、『黄衣の王』が降臨する。けれど私たちは王を讃えないわよね? それが気に入らないなら、『黄衣の王』よ、キエロウと同じく私たちを殺せばいいのよ。だって私たちの神はキエロウだものね。讃えるのはキエロウしかいないものね。
さあ、この放送を見ているあなたたち、喜びなさい。あなたたちはキエロウの殉教者となるのよ」
……と画面に向かって話しかけます。
はしやん:
「放送事故やんけ」(高橋)
コウノスケ:
「加瀬さんの目的は、ここから助かって出ることじゃなくて、皆もろとも死んでしまうことなの?」(桃園)
内山:
彼女は「黄衣の王」を讃えているわけではないのです。むしろ「黄衣の王」を呼んで、そして怒らせ、ここにいる者ども――いやそうではない――生放送を通じて画面を見ている者ども、すべてをキエロウの殉教者にすることを望んでいるかのようです。
そしてドヤ顔でうーぴゃーに、「あなたも同じ気持ちよね」って言っています。
ろうえなぴゃそみつ:
「うう」(うーぴゃー)
内山:
「どうしたの? さっきのあの気高きうーぴゃーはどこへ行ってしまったの? もっと私を罵って!」(加瀬)
はしやん:
「別の快感が目覚めてるやんけ」(高橋)
内山:
性癖暴露大会になっちゃってる(笑)。さて、
天井の黄色い風も強さを増していますよ。その渦の中心、向こう側には、先ほど桃園が見た、あの夜空が見えます。
この天井がまるで宇宙に繋がってしまったかのようです。
コウノスケ:
「この光景は、さっき曲を聴いたときに見た光景と同じだわ」(桃園)
はしやん:
「ってことは、どんどんやばい状況になってる」(高橋)
コウノスケ:
「そうよ」(桃園)
はしやん:
「俺、さっき聴いたこと、やっぱ言うね、今。さっきプーさんと会ったときに言われたの。『9人の演者を揃えたら、王がやってくるよ』みたいな。
王様が満足しちゃって、王様が舞を披露したら、魂を奪われて……ってなっちゃうから、王様が来ると、やばい状況になる。
たぶん演者っていうのは、さっきの加瀬の言うことを聞いた限り、クニャクニャってなったやつが演者。今8人。あと1人来ると、王様が来ちゃうからまずい」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「やばいじゃん」(うーぴゃー)
内山:
王様が来るのは、もう確定みたいです。ただ、その王様が怒るか怒らないかの2択で、加瀬は演者を揃えずに「怒らせて世界を滅ぼそうぜ」ぐらいの気持ちなんです。
はしやん:
分かった!
「ごめん。俺、さっき王様に言われたことをよく思い出したら、『演者の欠けた舞台では王は満足しない。代わりに王が自ら舞を披露する。その前に民衆の魂は奪われ、誰もが王を讃えるだろう』って言っていた。ということは、逆に9人いないと、王が踊って、俺らの魂が奪われてしまう可能性がある。
つまりもう1人、演者を出せば、王は怒らない。プーさん怒らない気がする」(高橋)
コウノスケ:
「そうね。とにかくもう1人演者を整えないと」(桃園)
はしやん:
「もう1人クニャクニャさせよう」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「誰がいる?」(桃園)
はしやん:
「あいつしかいないだろう」(高橋)
コウノスケ:
「でも彼女は、キエロウに殉じようとしているから、『黄衣の王』に讃える側には立ってくれないわ」(桃園)
はしやん:
「無理矢理バリケードの向こうに蹴り飛ばしてみないか? 実は俺さっき、それをやろうとしていたんだけど、途中で考えを変えちゃったんだ。もう1回チャレンジしたいよ」(高橋)
コウノスケ:
「あなたがそう言うんだったら、私は協力を惜しまない」(桃園)
はしやん:
「デートするぞ」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「私も協力するわ」(うーぴゃー)
はしやん:
「うーぴゃーもちょっと気持ち悪くなってるでしょ。変な快感に目覚めてた、あいつ」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「そうね」(うーぴゃー)
クライマックスの正気度ロール!
内山:
宇宙の向こうから、何か大いなるものが、こちらに迫ってくる気配がしてきます。もう残された時間はあとわずか。
そんな焦燥感と、大いなるものの気配に気づいた君たちは、クライマックスの「正気度ロール」をしていただきましょうか。
せっかくいい作戦を思いついているかのようですが、心が強くなければ実行はできません。では、順番に、今回は逆から行ってみようか。
コウノスケさんのオネエの「正気度」はいくつかな。
コウノスケ:
現在49になってしまいました。
内山:
では、お願いいたします。
コウノスケ:
はい。(ダイスを振って)41です。
内山:
成功。ギリ大丈夫でした。先ほどから鉄のメンタルを見せてる、うーぴゃー。お姉さまの威厳を保てるかどうか、お願いいたしします。何%ですか。
ろうえなぴゃそみつ:
64%。(ダイスを振って)93です。
内山:
全然ダメじゃん。とうとう鉄の女も崩れ落ちたと。では高橋さん、作戦参謀としてはいけますが。心が固いかどうかお願いします。
はしやん:
頼む。49です。(ダイスを振って)53か。
内山:
残念。では、気配を察した君たちは、6面ダイス1個分の正気度を失います。コウノスケさんは成功しているので、マイナス1点で済みます。
じゃあうーぴゃーさん。6面ダイス、四角いダイスを1個、こちらでお願いします。5以上を出したらだめよ。というよりも、うーぴゃーさんは、まだ「不定の狂気」まで12ありますから、5以上じゃなければ大丈夫。お願いします。
ろうえなぴゃそみつ:
はい。(ダイスを振って)1。
内山:
じゃあ、全然心は震えなかったと。オネエに言い寄られて心ざわつく高橋。
はしやん:
絶対、原因それなんだよな。5以上出るとまずいっすね。
内山:
5で「不定の発狂」ですね。ですので、全然だめですね。
はしやん:
頼む。(ダイスを振って)4っす。
内山:
4! ギリギリですね。では残り1点で、しかも狂気には陥らない、ということで。
何という、不満な現象でしょう。宇宙から神がやって来ようとしているのに、全員まともに行動ができるという。
1人、ちょっと性癖に目覚めていますけど(笑)。
はしやん:
危なっ。
内山:
ちょっとキーパーとしてはちょっと不満ですが、君たちは全員、まともに行動はできる。このままだと迫ってきます。今のところ加瀬を力づくで、扉にぶつけてやればいいんじゃないかという作戦が考えられていますが、皆で協力するもよし、「俺はこの作戦を使うぜ」という別のアイデアを出してもよし。どういたしましょう。
具体的に加瀬を投げつけるんでしたら、「組み付き」か、もしくは殴って気絶させるのは……ちょっと戦闘になると長くなるので、単純に「組み付き」か「STR(ストレングス)」の1倍に成功したら、にしましょうかね。
もちろんサポートする人がいれば、その成功率はどんどん上がっていきます。もしくは別の行動をしても構いません。
ちなみに伏線は1つ出してある。解決方法はこのシナリオ、実は4つもありまして、どれを選んだって別に構わない。それはもちろん、プレイヤーのアイデアしだいなのですが、他にもいろいろとアイデアはあると思っても構いません。視聴者からコメントを出してもいいんですよ。
桃園、勇気ある行動に出る!
コウノスケ:
「加瀬さんを突き飛ばすのもいいと思うけど、この、さっき私が描きかけた、この図を完成させるっていうのも? 私、言ってなかったけど、この図からはとってもやばい気配を感じるの」(桃園)
内山:
ただし大いなる代償を払う。
コウノスケ:
「これを完成させた者は、大いなる代償を支払うけど」(桃園)
内山:
今うーぴゃーさん、すごくイイ笑みを浮かべた(笑)。私じゃなくてよかった、みたいな(笑)。
はしやん:
「桃園、それが人に見えるみたいなこと言ってなかったっけ」(高橋)
コウノスケ:
「そうよね。これ、何だか人に見えるんじゃない?」(桃園)
はしやん:
「演者はあと1人必要。もしその印を完成して、演者の代わりになったら……」(高橋)
コウノスケ:
「それがあり得るとしたら、これを描き足した方がよっぽど……」(桃園)
はしやん:
「でも、そしたらお前が犠牲に」(高橋)
コウノスケ:
「そういうことになるの?」(桃園)
はしやん:
「約束しただろ。デートするんじゃねえのかよ」(高橋)
内山:
それ、殺すフラグですよ(笑)。
はしやん:
「一緒に戻ろうって言ったじゃねえか」(高橋)
内山:
これ、もう引き裂かれないとだめです(笑)。
はしやん:
「描きたいって言うなら、描いていいけど」(高橋)
コウノスケ:
「そんな。私にそんな残酷な2択を突きつけるの? でもあなたがそれを望むんだったら、私が描き足してもいいわ」(桃園)
はしやん:
「俺は望んでない、そんなの。俺はお前と一緒に帰る未来を望んでいる。でもお前が描くって言うんだったら、そんなに強く止める気はない」(高橋)
内山:
「そんなに強く止める気はない」ってなかなか聞かない日本語だね(笑)。
コウノスケ:
「まったくあなたって人は、口下手なんだから」と言って、最後の一筆を描き足します。
内山:
描き足した(笑)。
高橋とうーぴゃーが体を張ろうとするも……
はしやん:
時間的に1人1行動ぐらいの時間はある?
内山:
あるよ。とりあえず桃さんは、言われて描く。
コウノスケ:
描き足します。
内山:
うーぴゃーさんがもちろん行動しても構いません。
加瀬を犠牲にした方が早いやっていうんだったら、そのまま作戦実行でも、ダイス目さえよければ、いきなり桃園より先に「ホイッ」とやって桃園が助かるかもしれない。
はしやん:
「うーぴゃー氏、また説得系ないのかな」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「説得しようかしら。どうしよっかな」(うーぴゃー)
はしやん:
「音楽を奏でる感じ?」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「この音楽を聴けば……私の作る音楽って、皆、聴くと美しくなれるのよ」(うーぴゃー)
コウノスケ:
またそんなことを(笑)。
内山:
詐欺師(笑)。
ろうえなぴゃそみつ:
「ちょっと音楽で押していこうかな」(うーぴゃー)
内山:
ただそれだと、近づいてくるだけで、扉には向かわないんじゃない?
ろうえなぴゃそみつ:
確かに。
内山:
扉に行かせるような音楽を考えつかないと。
ろうえなぴゃそみつ:
扉に。
コウノスケ:
めっちゃ考えてる。
内山:
あまり時間も残されていません。
コウノスケ:
放送的にね(笑)。
内山:
高橋さんはどうする?
はしやん:
……俺、ないんだよなぁ。
内山:
「ストレングス」1倍、「組み付き」1倍に賭けても悪くはないと思いますよ。
はしやん:
「桃園を守るために、『ストレングス』1倍で、『組み付き』ぶん投げを、俺は計画している」(高橋)
内山:
分かりました。
ろうえなぴゃそみつ:
「それをするんだったら、私が横から拳で。ちょっとだけ」(うーぴゃー)
はしやん:
「怯みを狙ってくれる?」(高橋)
ろうえなぴゃそみつ:
「ちょっとだけ(笑)」(うーぴゃー)
内山:
分かりました。では、本来ならば「デクスタリティ」順という、「素早さ」順に行動するところなのですが、今回は桃園さんの英雄的行動はイチバン最後に取っといてあげましょう。
その前に前座で加瀬を犠牲にしてしまえば、桃園は大いなる犠牲を払わずに済む。ではまずうーぴゃー。
意外と「拳」が得意なうーぴゃー。まず軽くワンパン入れる――ヤツをピヨらせるということで、「拳の命中率」は何%ですか。
ろうえなぴゃそみつ:
80です。
内山:
まずは当ててください。そのあとダメージが入りますから、お願いします。
ろうえなぴゃそみつ:
せーの。(ダイスを振って)76。
内山:
当たりましたね。そうしたら六面ダイスを振って、出た目の半分だけ高橋さんのストレングスが倍になることにしましょう。1倍、2倍、3倍で。
では、何倍に振れるのか、1D3をお願いします。出た目を2で割ればいいですから。
はしやん:
(うーぴゃーがダイスを振って2が出る。2/2=1)1倍だ。
内山:
1倍でした。
では、このままの流れでストレングス10%の高橋さん、10%でヤツを投げ飛ばすことができます。
ストレングス10、1倍ロールお願いいたします。
はしやん:
その前に、あまりにも言い寄られて俺にも愛の力が芽生え、あいつの命を守るために、俺の力が一時的に増幅する的なことは起きないのでしょうか?
内山:
なるほど。コウノスケさん。1D10振ってください。あなたの愛が1D10ポイント。
はしやん:
愛。愛頼む。愛。
コウノスケ:
(ダイスを振って)10です。
内山:
プラス10%で20%です。
はしやん:
20%!
内山:
ちゃんとデートするんだぞ。
はしやん:
「桃園。どこ行きたい?」(高橋)
コウノスケ:
「ディズニーランド行きたい」(桃園)
はしやん:
「だったら泊まりでシーも行くぞ」(高橋)
内山:
じゃあ20%お願いします。
はしやん:
(ダイスを振って65が出る)今の、出る流れだろぉ!
内山:
残念でした。
加瀬は「辞めなさい。私は黄衣の王を讃えるつもりなどはない。あの音楽に私は殺されたって構わない。それがキエロウの殉教者になる道なんだから」と、目をグルグルさせて、もはや君たちを「フン! フン!」と振り払っているところで、桃園が……。