『No Man’s Sky』は「あなたが想像するゲーム」になったのか? 2年の時を経た宇宙探索ゲームの今に迫る

  「あなたの想像するゲームではないかもしれない。」

 たった15名ほどの小規模なデベロッパーが、大規模なプロモーションにより膨れ上がった期待を受けつつ開発した『No Man’s Sky』。これは、同作の発売時に、Hello Gamesの公式ニュースに掲載された言葉である。

『No Man’s Sky』にマルチプレイや三人称視点が導入。予告トレイラーはタイトル発表時の映像をなぞり、ついに本来のコンセプトへたどり着く?

 あれから2年が経った2018年7月24日(日本時間25日)、『No Man’s Sky』の大型アップデート「Next」の配信が開始された。

 発売当初、プロモーション時に示唆されていた大規模なマルチプレイ要素がないことや、単調で制限の強いゲームプレイで批判された同作。
 「あなたの想像するゲームではないかもしれない」との開発陣の言葉どおり、本作は期待とは裏腹の低評価をプレイヤーとメディアから受けた。

※4年前に公開された『No Man’s Sky』のアナウンストレイラー

 だが、このアップデートでは最大4人でのCo-opといったマルチプレイ要素を中心にすべてのコンテンツが拡張されており、その低評価を取り戻す内容となっている。
 実際にアップデートの配信後には、PC版が発売されているSteamへは8000件近いレビューが投稿されており、そのうち約80パーセントがポジティブな評価を下した。

 はたして、『No Man’s Sky』はかつての「あなたの想像するゲーム」に近づけたのだろうか?
 ここではアップデートでの変更点を記すだけではなく、あらためてアップデート後の新生『No Man’s Sky』を新作と捉えて、その内容を吟味してみよう。

文/古嶋 誉幸
編集/ishigenn


ゲーム開始時から未知の惑星をもたらす「自動生成」

 『No Man’s Sky』は広大な宇宙を舞台に、探索、採集、交易や戦闘を自由に行いながら、思い思いに銀河を駆け巡るアクションアドベンチャーゲームだ。

 発売前からアピールされていたように、『No Man’s Sky』の特筆すべき点はふたつ。ひとつは探索できる惑星の数で、本作の宇宙には自動生成された1800京以上の惑星が存在していること。
 そしてもうひとつは、宇宙と惑星の大気圏、そして地表がシームレスにつながっており、惑星系間の移動の際の演出を除けばロードがまったく挟まれていない点である。

(画像はSteam | No Man’s Skyから)

 まずゲーム序盤の流れを說明しよう。ゲーム開始時、プレイヤーはフレンドや他のプレイヤーのセッションに参加して遊ぶか、あるいは不特定多数のプレイヤーが参加できるオープンセッションを開始するかを選ぶ。
 ひとりで遊びたい場合は、ゲーム開始後にオプションから他のプレイヤーが参加できないようにすることもできる。

 ゲームを開始すると、過去のアップデート「Atlas Rises」で追加されたシングルキャンペーンが始まる。なお今回の「Next」アップデートによって、最初からフレンドと遊ぶことも可能になっている。

筆者プレイ時のスタート地点

 プレイヤーはランダムで選ばれた星で目覚め、まずは壊れたマイニングツールを修理するところからサバイバルを開始する。
 最初のミッションはチュートリアルを兼ねており、マイニングツールやスキャナーの使い方など、ゲームの基本的なシステムを学ぶことができる。自分の宇宙船に乗って他の星に出発するころには、広大な宇宙で生き残るために最低限必要な基本知識を習得できているはずだ。

 開始時点からも、本作の「広大な宇宙」の魅力が発揮されている。大量に生みだされた惑星はプレイヤーに予期せぬ環境を与えており、特にスタート時はゲームの情報がプレイヤーにインプットされていないこともあいまって、手探りで探索する楽しみが増えているのだ。
 たとえば筆者は極寒の惑星で目覚めて、最初はわけもわからず凍死することになったが、灼熱の惑星で暑さと戦ったり、毒の嵐に悩まされたプレイヤーもいるだろう。

 チュートリアルを終えたあとは自由だ。新天地を求めて宇宙を行くもよし、財を成すために交易を始めるもよし、賞金首を追いかけても、シングルキャンペーンの続きを遊んでもいい。

発見から創造まで、幾重にも折り重なる地表でのゲームプレイ

 このチュートリアル後、大別するとゲームは惑星の地表を探索するパートと、宇宙を旅するパートのふたつに分かれる。まずは地表でのゲームプレイがどのようなものかを述べていこう。

地表でのゲームプレイ

 地上にはさまざまな動植物や鉱物が存在しており、地上を歩きまわってスキャンしながらデータを集め、必要な資源を集めてまた別の場所へ向かう。

 文字にしてしまうと単調なゲームプレイに見えるかもしれない。資源を探して地表を歩きまわると聞くと、広大な宇宙を旅する本作のイメージとは異なる印象を抱くだろう。
 しかし少しずつ探索範囲を広げ、宇宙船で地表を移動しながら必要な資源を集めるころには、ほかの多くのクラフト系ゲームと比肩するダイナミックでボリュームたっぷりな遊びを感じるようになっていく。

 たとえば建物を建設するようなクラフト要素に関しては、それなりに長いあいだ木の小屋と付き合うことになり、設計図を手に入れて巨大な基地を建設するまでにはかなりの時間が必要となる。
 生命維持に支障が出るような極限環境の星で、はたして木製の小屋がなんの役に立つか疑問に思ってしまうが、未来の技術で部屋を作ってしまえばどんな環境でも安全に過ごすことが出来るようだ。

発見者の名が付いた登録データ

 ほかにも本作特有の要素として、ゲーム内で自分が発見したモノリスのようなアイコニックなロケーション、動植物、あるいは鉱物は、サーバーに登録されて発見者として名前が刻まれる。
 宇宙は本当に広大なので、最初はまったく気が付かなかったのだが、他人が発見したものにはしっかりとその人の名前が刻まれているのである。

 また最初のロード画面で流れる星の中に、稀に名前が入った星が流れていくが、それは誰かが発見した星だ。
 小さな痕跡ではあるが、この宇宙に自分が存在したという証が残るのはうれしい。ただめずらしいものを見つけただけで終わるのではなく、プレイヤーに上手く満足感を与えていることに成功している。

 このほかにも地表では、出会った動物の種類によっては餌付けすることも可能だ。餌を与えていると、いつの間にかたくさんの動物に囲まれていることもある。
 見た目は珍妙だったりグロテスクだったりするが、懐かれるとなかなかかわいく感じるから不思議である。

初めての基地建造に大喜び

 また今回のアップデートで追加された三人称視点は、地表でのゲームプレイをさらに楽しくする変化を生んでいる。
 普段は一人称視点のゲームを愛好しており『The Elder Scorlls』シリーズでは一人称視点をかならず選ぶ筆者でも、『No Man’s Sky』では三人称視点モードでプレイしている。

 これは広大に広がる宇宙の風景を見る楽しみはもちろん、キャラクターカスタマイズやジェスチャーによるところが大きいだろう。ゲーム開始時には宇宙服を着た人間の姿をしているが、少しゲームを進めるとキャラクターをカスタマイズできるようになる。

 キャラクター自体の外見はゲームに登場する4つの種族から選ぶことができ、宇宙服は部位ごとに形や色を変更することが可能だ。
 今のところ見た目以外で種族による違いはまったくないが、制限なくすべてのパーツに塗装を施すことが出来る。自身のキャラクターと建築物やアイテムを並べて眺めるのは、ジオラマを構築して観察するような楽しさがある。

フォトモード

 三人称視点が追加されたことでさらに面白くなった「フォトモード」は、同じシステムを持つ他の先進的なゲームに比べるとまだまだ発展途上といった感じだが、時刻や太陽の位置、被写界深度など基本的なものは揃っている。
 フィルターはかなり独特なものばかりで、デフォルト以外はなかなか使いづらいと感じたが、これを利用した素晴らしい写真が出てくるかもしれない。フォトモード中はキャラクターにジェスチャーをさせることができない点は、ゆいいつ残念だが。

 だがフォトモードは、探索を主眼においた本作の惑星上のゲームプレイにおいて、目的のひとつになりうるポテンシャルを持っている。資源を探すだけでなく、観光のために宇宙を飛び回るプレイヤーは、このアップデートでさらに楽しみが増えることだろう。

 このように、レビュー当時批判されていた『No Man’s Sky』の単調な世界は、いま本作には欠片も見られない。
 広がっているのは、自動生成によって生み出された誰も立ち入っていない“無人(No Man)”の惑星で、そこで好きなように探索と創造を繰り返すことがプレイヤーには許されているのだ。

宇宙と地表のゲームプレイがつながる瞬間こそ『No Man’s Sky』

 次はもうひとつのパートである宇宙空間でのゲームプレイを振り返ってみよう。

地表と対となる宇宙でのゲームプレイ

 宇宙空間でのゲームプレイは、一般的な宇宙船に乗って戦うゲームとそれほど変わらないが、それだけにそれらの作品を踏襲しており、基本的に宇宙でやりたいと思うことはひととおり揃っている。
 小惑星を破壊して資源を集め、宇宙ステーションで交易やミッションを受注し、宇宙海賊に攻撃を受けている宇宙船からのSOS信号が送られてくる。貨物船も飛び回っているので、逆に海賊として船を襲うこともできる。

 おもに宇宙ステーションで受けることができるさまざまなミッションは、戦闘や貨物の輸送だけはでなく、芸術のために写真撮影を行ったり、地上で動植物の生態調査を行うなど、けっして宇宙空間だけにとどまらないバラエティ豊かなものが用意されている。

近くに見える巨大な惑星

 宇宙でもさまざまなゲームプレイが用意されているが、やはり魅力的に映るのは、惑星への突入や離脱がシームレスで行える点だ。惑星の巨大さを感じながら着陸地点を探して飛び回っているとき。あるいは地表での活動を終え、自分の船に乗り込み、宇宙に向かって大気が燃えるのを窓越しに眺めながら飛び立つと、いつの間にか空の青が宇宙の暗闇に変わっている。
 また、惑星の巨大さを感じながら着陸地点へと向かっていくと、点のようだった生物や拠点が近づくにつれてどんどん大きくなっていく。まさに宇宙を旅することを感じられる、素晴らしい瞬間だ。

 このシーケンスがロードを挟まずに起こり、プレイヤーに制限を感じさせないおかげで、本作は宇宙と惑星を行き来し続ける中毒的なゲームプレイを生みだしている。
 これこそ、『No Man’s Sky』が本来目指していたゲームプレイのひとつであったと感じる。

 しかし、不満点もないわけではない。宇宙船は飛び立つときにエネルギーを消費するのだが、どんな距離を飛ぶにしても離陸には一定のエネルギーを使う。離着陸を繰り返すと何度も燃料となる材料を探し回らなければならない。
 他にも採集用のマイニングツールもエネルギーを消費して動かさなければならないし、スーツの生命維持にもやはり常にエネルギーを消費していく。クラフト系ゲームでありながらも、エネルギーの消費を考慮して行動する必要があり、言葉を選ばずに言えば、どこか貧乏くさく感じるのだ。

 特に宇宙船で飛び回れない上にゲームに慣れていない序盤は、宇宙へ飛び立つことを夢見ながら地上で素材の収集作業に奔走することになる。また、序盤はインベントリの制限もきつく、活動に必要な資源以外は捨てざるを得ない場面が数多くあった。
 クラフト系、あるいは宇宙を旅するゲームの宿命とも言えるが、もう少し緩和しても本作の魅力が完全に失われることはないのではないかと感じる。

地表での戦闘が単調な点も気になるが、そもそも探索とクラフト重視のゲームであるし、敵の習性が把握できれば気にすることはない。右も左も分からないゲーム開始直後には、センチネルに喧嘩を売ったところ、仲間を呼ばれて追いかけまわされた。

『No Man’s Sky』は「あなたが想像するゲーム」になっただろうか?

 ここまで新生『No Man’s Sky』の魅力と問題点を伝えてきたが、初めて『No Man’s Sky』のトレイラーを見たときに私が感じた、たくさんのプレイヤーが広大な宇宙を旅している感覚は、実は正直に言うと「Next」アップデートで完全なマルチプレイが導入された今でも感じることはできない。
 もしMMORPGのようにすべてのプレイヤーがひとつのサーバーに集まったとしても、1800京もの星々の中で他のプレイヤーと出会う確率は非常に低いことはわかるが、だからといって最大4人Co-opというのは広大な宇宙に比べて少ないと感じてしまうのも事実だ。

 現状でも「あなたの想像したゲーム」には足りない。だから私はノーと答える。

※2014年のE3で公開されたトレイラー

※最新の「Next」アップデートトレイラー

 だが、あのころプレイを止めてしまった人にも、購入を迷った人にも、買ったけど積んだままの人にも、オススメしたいゲームになったことは事実だ。

 この2年間の精力的なアップデートが、最初の酷評を覆すだけの力を持っていたことは、冒頭で触れたSteamのレビューを見てもわかるだろう。シングルプレイヤーは魅力的な存在になったし、最大4人でプレイできるCo-opも十分に楽しいものだ。
 ユーザーの批判の声に耳を傾け、2年間にわたり無料でアップデートを続けてきたHello Gamesの姿勢が、ついに実りとなって現れた。そして今後も、Hello Gamesはさらなる『No Man’s Sky』のサポートを約束している。

 『No Man’s Sky』は、いつかあなたや私が想像したゲームになるだろうか。拡張を続けた先に、いったいどこにたどり着くのだろう。発売後も開発を続け、2年の旅を経て次なる一歩を踏み出すHello Gamesの今後を、筆者は追い続けることを約束しよう。

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著者
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
編集
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn
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