3月にシリーズ最新作『モンスターハンターライズ』が発売されたばかりの、『モンスターハンター』シリーズ。『モンスターハンター』シリーズの魅力といえば、巨大で手強いモンスターを討伐する達成感やモンスターごとに異なる弱点を持つなどの細かく作り込まれた生態、複雑な操作や体力バーが表示されないリアルな狩りの表現だろう。
『モンスターハンター:ストーリーズ』は親子でも『モンスターハンター』を楽しむことができるように、との思いで生まれた、主人公がハンターではなく「ライダー」としてモンスターとの絆を深める作品だ。
リオレウスやディアブロスといったモンスターを「オトモン」として相棒にできたり、「オトモン」と絆を深めることで発動可能な「絆技」、なによりハンティングアクションではなく3すくみのターン制バトルを採用したRPGであることからも、それまでの『モンスターハンター』シリーズとは大きく異なったゲーム性を持っているのは明らかだろう。
しかし、物語の舞台となる壮大な自然や、ライダーとは正反対のモンスターを狩る存在であるハンターがしっかりと描かれることで「モンハンらしさ」を失っていないタイトルでもあるのだ。
そんな『モンスターハンター:ストーリーズ』の最新作『モンスターハンター:ストーリーズ2 〜破滅の翼〜』が、7月9日(金)に発売される。
ロゴが一新され、前作よりもキャラクターの等身も高くなるなど「親子向け」を強く感じた前作よりも少し大人びた印象を受ける本作。本作だけの魅力や、過酷さを感じさせるストーリーはどんな風に描かれるのか、そして本作に落とし込まれた「モンハンらしさ」とは何なのか。
そんな疑問点を、実際に開発チームのプロデューサー辻本良三氏、ディレクター大黒健二氏、アートディレクター川野隆裕の開発チームの3人にメールインタビューをぶつけてみた。
より幅広い世代へ「モンハン」の世界観を届ける作品へ
──前作『モンスターハンター:ストーリーズ』では、そもそも「幅広い世代が楽しめるモンスターハンターをつくってくれないか」というお話から開発がスタートしたとお聞きしています。ハンティングアクションゲームをRPGにしようとした経緯や、ハンターではなくライダーという設定になった理由など、あらためて当時のコンセプトをお聞かせいただけますでしょうか?
『モンスターハンター』シリーズを作っていく中で、モンスターの生態や世界観に興味を持っていただけたユーザーが結構多かったのです。そんなモンスターや世界観を強く押し出したRPGの『モンスターハンター』を作りたいとずっと思っていました。
ただ、それを任せるディレクターをなかなかアサインできず、数年構想だけで終わっていたのですが、そんな中、大黒と仕事できるタイミングがあり、ディレクターをお願いしました。そこから一気に開発が進みました。
それが1作目のスタートです。また、ハンターではない目線から『モンスターハンター』の世界を見ることで、より『モンスターハンター』の世界観を描けるのではないかというもあり、ハンターではないライダーという設定を作りました。
また、単純にモンスターに乗って冒険したい、そんなゲームが作りたいと思ったからです。
──当時はおよそ2年間にわたりアニメなども展開されましたが、ターゲット層からの反応は正直なところどうでしたでしょうか?「幅広い世代が楽しめるモンハン」というコンセプトは達成できましたか?
開発チーム:
『モンスターハンターストーリーズ』はゲームだけでなく、アニメなどのメディアミックスを展開することができ、普段『モンスターハンター』をプレイしない低い年齢層や、親子、家族で楽しんでもらえたと感じています。その人たちが新たな『モンスターハンター』のファンになってくれたことが、『モンスターハンター:ワールド』や『モンスターハンターライズ』のヒットに繋がっている要因のひとつだと思います。
──『モンスターハンターストーリーズ2』のトレーラーやいろいろな情報を拝見したところ、キャラクターの等身が前作よりも高くなり少し大人びた印象を受けています。これは何か意図されたものなのでしょうか?
開発チーム:
前作の低年齢層向けのイメージから、より幅広い層の方がプレイしても十分楽しめるタイトルとして進化するために、デザインの情報量や色使いを全て設計し直しました。
──『モンスターハンターストーリーズ2』の狙う年代やターゲット層は、引き続き同じ層になっているのでしょうか?もし前作から異なっている場合、その理由や意図もお聞かせください。
開発チーム:
『モンスターハンター:ワールド』がおかげさまで非常に多くの方に遊んでいただき、世界中でシリーズのファンが増えました。世界中のファンの方々に、さらに『モンスターハンター』の世界を楽しんでいただくために、世界同日発売で、さらにPC版も同時に発売する予定です。
“2”を作るにあたって、前作を遊んでいただいた方、“2”から新たに遊んでいただける方に向けて、どのようなゲームにするかはグラフィックも含め様々な検証と検討をおこないました。結果、非常に満足のいく続編を作れたと思っております。
──『モンスターハンター』シリーズは現在『モンスターハンター:ワールド』、『モンスターハンターライズ』と複数の作品が展開されていますが、それぞれの作品が狙っているターゲット層はありますでしょうか?また、その中で『モンスターハンターストーリーズ2』は特にどのようなユーザーにプレイして欲しいと考えていますか?
開発チーム:
ストーリーズはジャンルがRPG、つまりアクションではない『モンスターハンター』ということになります。『モンスターハンター』をプレイされている方は、その世界観でRPGを楽しんでいただけますし、RPG好きという方にも是非プレイして頂きたい作品となっております。
また『モンスターハンター』はモンスターのキャラクター人気がとても高いタイトルです。そんなモンスターを今度は仲間として遊んでいただけますので、今まで以上にモンスターに関する愛着は持っていただけると思います。これは1作目からですが、シリーズとしてもアクションの『モンスターハンター』ではない、新たな柱として育てていきたいシリーズとなっています。
感情がより「具体的」に描かれるストーリー
──もし前作とは違う年齢層を特定のターゲットにしている場合、前作の作風とは異なる部分や例を具体的に教えていただけますでしょうか?
開発チーム:
シナリオ自体は前作も結構重い内容だったと思います。
今作はカットシーンの中での表現が、前作よりも「具体的」になっているかもしれません。
アクションが激しいシーンはより激しく、悲しいシーンはキャラクターの悲壮な演技をよりクローズアップしています。
──前作の公式サイトでのキャッチコピーは「絆を結ぶ冒険が、今始まる」で、物語も人とモンスターの共存を描くなど、非常に王道を進む展開だったと思っています。本作では「託されたのは破滅か、希望か──」となっており、より過酷な展開を印象させますが、ストーリーのテーマや方向性はどういったものになるのでしょうか?
開発チーム:
世界からリオレウスが消えた後に残されたタマゴ、それは破滅をもたらす伝説のレウス。そのタマゴを託された主人公と追いかけるハンター、様々な思惑と異常事態の真相がストーリーの大きな見どころです。守り育てるのがライダーの宿命として、このレウスとどのように成長していくのかをプレイヤーとしてゲーム体験していただきたいです。
また、前作と変わらず、モンスターと人間の共存を描いています。今回はそこにハンターの少年「カイル」と竜人の少女「エナ」の視点が加わり、ライダーである主人公と、3つの視点にモンスターがどう映るのか?という描き方をしています。
新たに描かれるモンスターの魅力
──「モンスターハンター スペシャルプログラム 2021.4.27」では、怒り状態や部位破壊による落としモノなど『モンスターハンター』シリーズのゲーム性に寄せた要素が多々見受けられました。ほかにもシリーズファンなら楽しめる新しいシステムや要素はどのようなものがありますか?
開発チーム:
新しい要素ではないですが、モンスターの絆技は、モンスターの設定や特徴を活かし、かっこいいものやコミカルなものまで、シリーズのファンにも楽しんでいただける演出になっていると思います。また、モンスターを討伐して素材を手に入れたり、フィールドで採取したりしながら、ライダーの装備を作るといった、『モンスターハンター』のゲームサイクルに近い要素もあります。
──『モンスターハンター ストーリーズ』ではオトモン(モンスター)と一緒に冒険したり何かを体験することが重要視されていると考えています。今回のトレーラーでは、パオウルムーと一緒にお昼寝する様子が写っていましたが、ほかにもモンスターと触れ合う要素や可愛がるような要素はあるのでしょうか?
開発チーム:
パオウルムーのお昼寝の様子は、絆技の演出です。
直接触れ合うような要素はありませんが、そういった演出は各所に感じられると思います。
何度でも楽しめるランダム生成マップが舞台のマルチプレイ
──前作ではプレイヤー同士で戦うことができる通信対戦の要素がありましたが、今作ではどのようなものが搭載されていますか?
開発チーム:
共闘のシステムを追加しました。共闘はゲーム本編と共闘クエストでそれぞれが独立した作りになっています。
ゲーム本編では、ケイナやアルマといった物語で出会う仲間との共闘となり、物語の進行によって出会いと別れがあり、共闘パートナーも変わっていきます。
共闘クエストは、他のプレイヤー1名が参加して、合計2名(ライダー2人とオトモン2体が戦闘に参加)でプレイできます。また対戦では、最大4名(ライダー2人オトモン2体vsライダー2人オトモン2体)で楽しめます。
ゲーム本編のほうで他のプレイヤーと共闘するのではなく、共闘専用のクエストに挑むのが本作でのマルチプレイになります。ゲーム本編の進行にあわせて、遊べる共闘クエストが増えていく構造になっています。
通信プレイの共闘探索クエストではいくつかのテーマが設定されたダンジョンを用意しています。
ダンジョン内部構造は固定ではなく、ランダム生成されます。また巣は一つではなく複数ありますので、一度の探索で多くのタマゴを入手することができ、繰り返し遊んでも楽しめるようになっております。
ひとりでコツコツも楽しめますが(NPCがパートナー替わりをしてくれます)、友達と一緒に協力し合いながら探索するとより一層楽しめます。
『モンスターハンター:ストーリーズ2』に落とし込まれた「モンハンらしさ」
──シリーズは初代『モンスターハンター ストーリーズ』から『モンスターハンター』らしさを散りばめた作品となっていましたが、開発陣が考える「モンハンらしさ」とはどこにあるでしょうか?また、本作ではその「モンハンらしさ」はどのような形で盛り込まれたのか、具体的に物語やシステム面で可能な限りお答えいただけますか。
開発チーム:
「モンハンらしさ」とは、「モンスター」が主人公であることです。
ですので、人間だけのお話にはならない様に気をつけています。
個人的な考えになりますが、ゲームの中で表現しきれなくても徹底的に細かい部分まで設定を作っている部分が『モンスターハンター』の凄さで、『モンスターハンター ストーリーズ』を作るときにも大切にしていることです。
歴代の『モンスターハンター』シリーズを通じて、ゲームの中で生態表現やアクション一つ一つに至るまでのこだわりを積み重ね、多くの人に触れていただいた結果、「モンハンらしさ」が浸透していると思っています。『モンスターハンター ストーリーズ』はRPGということで、これまでとは違う視点で『モンスターハンター』を描けますし、RPGだからこそ掘り下げられると思っています。
モンスターハンター』は人間とモンスターが共存している世界で、それをテーマの根っこにしています。
ここは今作の話ではなくシリーズとして考えていることで、モンスターの存在を中心に色々な人がどういう目線でどういう心境でモンスターに接していくか、というアプローチをしています。
一方でゲーム表現は直接伝えやすいので、「モンハンらしさ」を感じてもらうためにモンスターの生態表現はもちろんのこと、ゲームシステム面でもこだわっています。
たとえば今作のバトルシステムでは、モンスターの行動傾向や部位の概念など、多くの要素を改修しました。そういった要素を上手く戦略に組み込むことで、アクションMHの上級者のような「ずっと俺のターン」の気持ちよい立ち回りが再現できます。
表現のみならず、遊んだあとも「RPGでもモンハン」と感じていただけるように作り込んでいます。
アクションの腕前に自信がなくてもすぐにコツはつかめると思いますし、RPGなのでレベルを上げることで誰でも勝てるようになります。
アクションが苦手な人こそ、このゲームで『モンスターハンター』の楽しさを味わっていただきたいです。
『モンスターハンター:ストーリーズ』は、ハンティングアクションという『モンスターハンター』を『モンスターハンター』たらしめる一番大きな要素をRPGへと変更した大胆な作品だ。
しかし、シリーズの根底にある「モンハンらしさ」を見失うことなく、RPGという異なる視点から『モンスターハンター』を深く掘り下げより多くの人々へ世界観を届けることができたタイトルだからこそ、今作『モンスターハンター:ストーリーズ2』へと続くことができたのだろう。
本作では、より感情が具体的に描かれるというストーリーはもちろんのこと、ランダム生成マップでのマルチプレイや、バトルにおいて部位破壊の要素が追加されるなど、バトルシステムについても前作とは異なる新しい試みがなされていることからも、本作が新たな『モンスターハンター』として歩み出していることを感じさせてくれる。
『モンスターハンター:ストーリーズ2』は7月9日(金)、Nintendo Switch、Steamにて発売される。
5月9日(日)まで、前作『モンスターハンターストーリーズ』が税込500円にて入手できるセールが開催されているので、前作をプレイしながら発売を待つのもオススメだ。従来の『モンスターハンター』とは異なる、進化した新たな冒険に期待しよう。