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『Hot Wheels Unleashed』発売にかこつけて世界でいちばん売れているミニカー、ホットウィールの魅力をコレクターに聞いてみた

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 世界でいちばん売れているミニカー、ホットウィール

 全世界で60億台数以上を販売しているだけあって、手に取ったり、購入したことはなかったとしても、街中やネット上でその独特のロゴデザインを見かけたことがあるだろう。

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 ホットウィールはゲームにもなっており、9月30日にはKoch Media より『Hoy Wheels Umleashed』が発売されている。

集めて走ってカスタマイズして──ミニカーを愛でる楽しさが詰まった『Hot Wheels Unleashed』は子どもも大人も魅了するおもちゃ箱

 どんなにゲーム内容を紹介しても、おそらくホットウィールを知らない人にはなかなか響かないだろう。そこで本稿では、長年にわたってホットウィールをコレクションしてきた収集家にインタビューを敢行。

 ホットウィールの魅力、ほかのミニカーとの違いを存分に語っていただくことにした。インタビューイとして白羽の矢を立てたのは、雑誌『デイトナ』など、クルマメディアを中心に活躍しているフリーライター、ポルノ鈴木氏。

 鈴木氏は2006年から雑誌『モデルカーズ』にて15年ものあいだ、ホットウィールの情報ページ“ホットウィール ファンクラブ”を担当している。自身もヴィンテージを中心にホットウィールを収集しており、今回の企画趣旨にはベストと言える人物だ。

 ちなみに、鈴木氏は元週刊ファミ通編集者。筆者とは元同僚の関係にあるため、ふだんの弊誌インタビューとは異なり、フランクな雰囲気にてお伝えすることをご理解いただきたい。

 取材はコレクション品の写真撮影と合わせて、鈴木氏の自宅にて行わせていただいた。

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ポルノ鈴木:1973年生まれ。クルマ、ゲーム好きなフリーライター。『コールオブ デューティ』は『モダン・ウォーフェア』以降、シリーズ全作をプレイしているほどハマっている。
Twitter:https://twitter.com/porno_suzuki
YouTube:https://www.youtube.com/user/japspeed240z
note:https://note.com/porno_suzuki/

取材/文:豊田恵吾
撮影:小森大輔

※この記事は『Hot Wheels Unleashed』の魅力をもっと知ってもらいたいKoch Mediaさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


──今日はよろしくお願いします。まず、ホットウィールとの出会いと、集めようと背中を押されたきっかけを教えてください。

鈴木氏:
 自分で買い始めたのは1996年ぐらいから。もともとアメリカ車やカスタムカーが好きだったから、その世界観を再現したミニカーがあることを知って、シンプルに「うわ、カッコいい」と思ったのがはじまり。

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 90年代半ばくらいは、古着屋さんが古着の仕入れのついでにアメリカで買ったホットウィールを一緒にお店に並べていたりして、そこで目に入ったロゴのカッコ良さがまずインプットされていた感じ。あのロゴのカッコ良さは、ホットウィールを“知る”大きなきっかけのひとつだと思う。

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 で、1996年ぐらいのまだ日本で正規販売していないころ、自分好みのモデルを数台買ってみたのがコレクションの始まり。

──前提として鈴木さんはそもそも実際のクルマが好き【※】ですもんね。

【※】:鈴木氏は1973年式の左ハンドルS30Zを所有。雑誌『Daytona(デイトナ)』誌上にてカスタムのレポート記事が掲載されるほど、クルマ好きである。

鈴木氏:
 実車のアメリカ車やカスタムカーが好きな人は、間違いなくホットウィールにハマると思う。自分だけじゃなく、実際にそういう人は多いよ。

──たとえばトミカなどの国産のミニカーにも興味を持っていたわけですか? ホットウィールに限らず、ミニカー全般に触れていたとか。

鈴木氏:
 子どものころはもちろん、ミニカー遊びが大好き。兄貴のお古も含めて家にはトミカやいろんなモデルがあったんだけど、そのなかに、タイヤが異常に太くて、エンジンが飛び出してて、ボンネットがないクルマとかが何個かあったわけ。それらはトミカとはまったく違う存在感を放っていて、「あっ、なんだこれ!」と子ども心に思ってた。当時それがホットウィールだってことは、ぜんぜんわかっていないんだけど。

 ホットウィールを集め出したときは、日本で扱ってる店も限られているからいろんな店を回るようになったわけだけど、国分寺の『ラット・モーター・ビート』っていう古着屋さんへ行ったときに、クルマ好きの店主に「こういうのがあるんだよ」って、このプライスガイドを見せてもらったの。

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──ん? なんですかこの本?

鈴木氏:
 中古車情報誌と同じように、ホットウィールの発売年、カラー、車種、そして取引価格が掲載されている、いわゆるガイド本だね。(プライスガイドを手に)これは第5版なんだけど、ホットウィールが1968年に発売されてから以降の、ほぼすべての車種の情報がわかるわけ。

 「レアな色違いだと500ドル、それがパッケージ入りのままだと1000ドル」とか、ベテランのコレクターじゃなくても、プライスガイドがあれば価値がわかっちゃう。

──それはヤバいですね。

鈴木氏:
 その国分寺の古着屋さんでプライスガイドをパラパラ眺めていたときに、そこに載っているホットウィールを見て「あっ!」と思うわけ。「俺が子どものころに遊んでた、タイヤが太いカッコイイミニカーはホットウィールだったんだ!」って。それまで現行品しか知らなかったのに、このプライスガイドのおかげでヴィンテージの世界も知っちゃった。

 もともとコレクター気質だったから、ホットウィールを知れば知るほど、集めれば集めるほど「やべぇーな」ってハマっていった。1998年ぐらいからネットが使えるようになったから、そのタイミングでアメリカのオークションサイトeBayも始めちゃって。やっぱり日本のお店で買うのより安い値段で手に入るし、珍しい物も探せるしで、eBayはもうやりまくった。オークションの終了時間は時差の関係で日本の早朝ってことも多かったから、そういう日は普段めったにしない早起きをしてスタンバイしてた(笑)。

──仕事で海外に行ったときも、おもちゃ屋とかには絶対に立ち寄ってましたもんね。

鈴木氏:
 ただ、出張のついでに立ち寄れる範囲のお店には限界があるし、同行している上司をいつまでも待たせておけないし、「もっと自由に買い物がしたい」と思って、1999年にホットウィールのコンベンションに行ったんだよね。

──コンベンション?

鈴木氏:
 「Hotwheels Collectors Convention」っていう、アメリカのホットウィールコレクターが集結するイベント。当時は年1回開催で、いまは年2回開催かな。ふだんはカルフォルニア周辺でやっているんだけど、俺が行ったときは“モーターシティ”をテーマにデトロイトでの開催だった。主催しているのはさっき話したプライスガイドの著者で、当時は「Hot Wheels News Letter」っていう会報誌を出版していたマイク・シュトラウスって人。

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──ホットウィールコンベンションって、どれぐらいの規模で行われるんですか?

鈴木氏:
 いわゆるゲームショウとかE3みたいな大きなイベントホールを借りるわけじゃなくて、ホテルの催事場を使って開催する感じ。そこでオークションをしたり、ホットウィールデザイナーのサイン会があったりするんだよね。参加者の最大の目的は、会場限定で販売されるマテル公認のコンベンションモデルを買うこと。やっぱり“限定品”はみんな大好きだから(笑)。

 あと、じつはいちばんの楽しみは客室なんだよ。そのホテルにはコンベンション参加者がたくさん泊まっているんで、各部屋でコレクターどうしの売買が行われるの。「ルームホッピング」って呼ばれてて、みんなベッドの上にズラッと売り物を並べて売ったり、トレードしたり、おしゃべりしたりっていう。ホテルの部屋で行われるフリマみたいな感じ。

──すごいですね。上階に行くほど値段が高くなるとか?

鈴木氏: 
 ブルース・リー『死亡遊戯』じゃないんだから(笑)。でも、そのときは舞い上がっちゃっていま思うと失敗してるんだよね。

 初めてのルームホッピングは新品を安く買うことに夢中になっちゃって、ヴィンテージをあまり買ってなかったの。ヴィンテージを直接手に取って買えるという貴重な場なんだから、そこを重視すべきだったのに……。

 「発売されたばっかりのアレがある。日本で買うより安いな」とか、そっちに気が取られてた。ヴィンテージホットウィールは物によってはいますごく値上がりしてるので、あれはもったいなかったね。

──ホットウィールのためにデトロイトに行った、というのもなかなかですね。

鈴木氏: 
 もうデトロイトの治安が悪くなっていたときだったから、日が落ちてからウロウロするのはちょっと緊張したね。

──『ロボコップ』の世界みたいな。

鈴木氏:
 まさに! 夕食食べてホテルに戻るとき、ナビの案内を見間違えて大通りの1本手前で曲がっちゃったのよ。そうすると急に外灯がまばらになって、薄暗くなって、ビルの窓ガラスが全部割れててっていう状況になっちゃって。薄暗いなかに人が何人かたむろっているのが見えて、あれは怖かったね……。

──アメリカ人にとってホットウィールってどういうモノなんですか?

鈴木氏:
 誰もが知っているオモチャであり、ミニカー。ただ1968年に“カリフォルニア・カスタム”をテーマにデビューしたっていうのはインパクトがあっただろうね。“スペクトラフレーム”と呼ばれるピカピカのキャンディ塗装がされているし、それに“走る”がコンセプトだったのも衝撃だったらしい。そんなミニカーはホットウィールしかなかったから。

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──当時そんなミニカーは他にはなかったと。

鈴木氏:
 それまでのミニカーは飾って眺めるか、手でコロコロ押して多少転がせる、っていうものだったのに、ホットウィールは「シャー!」って勢いで猛スピードで走っちゃった。コースセットも併売して、“走らせて遊ぶ”をコンセプトにしたのはホットウィールが初だったんだよ。

 (ミニカーを手に取って)これは1968年製の忠実な復刻版なんだけど、この穴から見えているのがトーションバーのサスペンション。

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 さらにホイール内にボールベアリングも入れて回転抵抗を減らして、こんなに“走る”ためのギミックを仕込んだミニカーなんてなかった。

 マテルの本社がロサンゼルスにあったからかもしれないけど、ホットウィールはカスタム文化発祥の地である、西海岸の文化を吸収したミニカーとして作られたというのがとにかくほかと一線を画していると思う。

 ただピカピカの“スペクトラフレーム”は、金属地をポリッシュしてからキャンディ塗装をしているわけだから、当然手間もかかるし、コストもかかる。で、コストを抑えるために、だんだんとエナメル塗装に切り替わっていくし、凝ったサスペンションやホイールのギミックもシンプルになっていった。塗装がシンプルになった分、タンポ印刷でストライプとかロゴを入れてカラフルにしていくんだけど、オイルショックがあった1973年はコストカットと不景気のダブルパンチで、出た新車種は3台だけだったり、きびしい時代もあった。

 だけどよくある話で、いまはこの1973年モデルがめちゃくちゃ高い。不景気で製造数も少なかったから、いまとなっては希少価値が高いからね。

──ホットウィールは発売当時に“カリフォルニア・カスタム”をコンセプトにしていたってことは、大人にも向けた商品だったんですか?

鈴木氏:
 いやいや、子ども向けでしょう。当時のアメリカの子どもたちの流行モノのなかに、ホットロッドやドラッグレースが普通にあったからね。自転車もホットロッド風が流行ってたし、ホットロッドのコミック誌もあったくらい。そうやって子どもの流行をキャッチしつつ商品化しているので、当然子どもは食いつくけど、子どもたちの流行は変遷していくから、流行の変化があるとホットウィールのトレンドも変わっていくと。

 だからホットウィール自体は年月とともに幅広い商品展開をしていくんだけど、80年代にかけてはより玩具化していくんだよね。

──最初は実在するクルマをミニカー化していたのが、おもちゃ的になっていったわけですね。

鈴木氏:
 非常にオモチャっぽいデザインだったり、ギミックに走ったりしたものも多かった。実車の存在しないオリジナルデザインモデルの発売は、のちのボーンシェイカーの登場にもつながっていくし、ホットウィールらしさのひとつとしてよりブランドを強固にしていくんだけど。

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ゲーム『Hot Wheels Unleashed』のChallenge Accepted Editionには限定カラーのボーンシェイカーが同梱されており、人気の高さがうかがえる。

 70年代前半までの“カリフォルニア・カスタム”なホットウィールで遊んだ世代にとって、80年代以降のモデルはオモチャ化していたし、そもそも青年になってミニカー遊びからとっくに卒表してるしってことで、80年代のホットウィールはある意味正しく“玩具”だったんだけど、1990年にクルマ好きの大人たちもザワつくモデルが登場するんだよね。パープル・パッションっていうモデルで、俺が1996年に買って集め始めたのもこの車種がきっかけ。

 パープル・パッションは“KUSTOM”と呼ばれるジャンルのカスタムカーのフォルムを忠実に再現していて、車高もコースを走らせることをシカトしてべったり低く仕上げてて、とにかく“子ども用”がどっかに行っちゃってるカッコ良さだった。

 パープル・パッションの登場で大人達がホットウィールに再注目したタイミングで、1993年にホットウィール誕生25周年を記念した復刻モデルが登場して、1996年にVWバスっていうとどめを刺すモデルが出てくるの。

 ホットウィールは当時もいまも実売価格約1ドルという価格で売られているけど、VWバスはコスト度外視で作られたかなり凝ったモデルでカッコも良かったから、コレクターのあいだで取り合いになった。そもそもホットウィールはアソートのなかに1個あるかないか、っていう“トレジャーハント”って特別モデルを忍ばせてるんだけど、こういう「見つけられたらラッキー」なお宝の存在が市場を熱狂させたと。

──いま人気のトレーディングカードと同じですね。

鈴木氏:
 これは1995年に発売されたパープル・パッションのトレジャーハント仕様なんだけど、塗装が豪華で、タイヤもプラ製じゃなくてゴムタイヤになってる。つまり1ドル以上のコストが掛けられたモノが、運良く見つけられたら1ドルで買えちゃう

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 アメリカのスーパーやオモチャ屋のホットウィール売り場に行くと、何百という数が壁一面のフックにかかっているから、レアアイテムを探すのはマジで宝探し。こういうマテルの戦略もあって、大人が再注目したことで「懐かしいね」ってことで復刻モデルも出るし、ヴィンテージ品の価値なんかも再評価されるし、現役の子ども用玩具として新製品はつぎつぎ出るしってことで、再びホットウィールはブランドとしての力を強めていったんじゃないかな。

──ホットウィールは、ブリスターパックの印象が強いですが、ミニカーをブリスターパックで売ったのはホットウィールが初になるんですか?

鈴木氏:
 あー、それはどうなんだろう。ホットウィールが初かどうかはちょっとわからないけど、それまでの3インチサイズのミニカーはイギリスのマッチボックス【※】みたいに、マッチ箱みたいな箱に入れられて売られていたから、商品そのものが見えているブリスターパックでの販売は斬新だったのは間違いないね。ピカピカのスペクトラフレームのミニカーを箱入りで売ったら魅力半減だし、そもそもホットウィールは“走るミニカー”だから、とにかくパッケージから出して手に取らせたかったのかもしれない。

【※】マッチボックス:イギリスのレズニー社が発売したミニカーブランド。1997年からはマテル社のブランドとなる。

──ところでゲーム雑誌編集者からどうやってホットウィールライターになったんですか?

鈴木氏:
 『デイトナ』はずっと読者だったんだけど、ファミ通をやめてフリーになったタイミングで、『デイトナ』別冊の家具ムック本のライターを募集していたので応募したの。そしたら対応してくれた編集の人が「フリマでホットウィールを売ってた人ですよね?」って、俺が昔フリマに出店してたときに買ってくれたお客さんで(笑)。そしたらちょうど『デイトナ』でミニカー情報ページを書いていた編集者が異動になるから、そっちを代わりに担当してくれないかと。

──すごい縁ですね(笑)。

鈴木氏:
 そう、だからけっきょく家具ムックでは記事を書いてない(笑)。そんでミニカーのページを書き始めたら「クルマ乗ってるんだね。え? Z乗ってるの?」と話が進んで、実車の記事もやるようになって。気付いたらクルマ系のライターみたいになっていたと。で、『デイトナ』と『モデルカーズ』は同じ出版社なので、『モデルカーズ』のホットウィール新商品情報ページもそのまま担当するようになって15年以上が経過(笑)。

──鈴木さんのライターとしてのキャリアに、ホットウィールが大きな影響を与えていたんですね。ちなみにいちばんコレクション熱が高かったときは、月にどれくらい購入されていたんですか?

鈴木氏:
 eBayで月に60000円くらい買ってた。それが毎月(笑)。しょっちゅう郵便局に行って為替を送ってたねー。「どこどこの郵便局の○○さんが仕事が早いな」、くらいのことがわかるまでになってたよ。

──(笑)。

鈴木氏:
 あれはどうかしてたよねえ(笑)。おかげで仕事が広がったとはいえ。

──コレクションにはゴールがないわけですよね?

鈴木氏:
 そう! 過去モデルが約50年分あって、なおかつ新製品も怒濤の勢いで出てくるから、ホットウィールのコレクションのゴールは自分で決めないと、ない。だから俺は、このパープルパッションっていうモデルに絞って集めようって決めたの。ただ例え1車種でも「コンプリートしよう」なんて考えないほうがいい。ホットウィールは本当に沼なので。

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──そんな沼のホットウィールですが、オススメの集め方はありますか?

鈴木氏:
 とにかく膨大な種類があるので、まずは気に入ったものだけを買うのがいいね。ある程度数が増えると自分の“好き”の傾向が見えてくると思うので、そこからテーマを決めて集めていくと、掘るのが楽しくなってきます。

──いまは海外の情報も集めやすいですし、日本で正規販売もされているのでヴィンテージ以外であれば収集しやすい環境ではありますよね。逆に、ネットが整っていない時代にはどうやって情報を集めていたんですか?

鈴木氏:
 自分の足と、雑誌。とくにこの『ホットウィール大図鑑』という本の存在は大きかった。

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──情報を集めるにはこれしかなかったと。

鈴木氏:
 日本でのホットウィールは、90年代後半にアメトイブームといっしょにめちゃくちゃ盛り上がったの。『スポーン』とか、『スター・ウォーズ』とかといっしょにホットウィールが扱われる感じで。だから日本では大人のホットウィールコレクターが多いし、当時は雑誌がメインの情報源なのでこういうムック本がバイブルだった。

 この『ホットウィール大図鑑』のおかげで、ホットウィールには個性的なデザイナーが関わっているってこともわかったしね。

 ホットウィールの何がすごいって、デザイナーが実際のクルマもデザインできる人が多いってこと。マテルは玩具メーカーでありながら、GMとか、フォードに入りたくて自動車デザインを勉強してきた人たちをリクルートしてるの。つまり、本物の自動車デザインができる人たちを雇っている。だから、実車が存在しないオリジナルのデザインだったとしても、ホットウィールはクルマとして破綻のない、嘘じゃないデザインになっている

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天井部分にデザイナーのサインが入ったホットウィール。サインの主は“Mr.ホットウィール”と呼ばれ、デザイナーの象徴的存在だったラリー・ウッド氏のもの。鈴木氏が参加した1999年のコンベンションのサイン会で入れてもらったもの。

 「こんなデザイン、めちゃくちゃじゃん」と最初に思っても、よく見たら「あれ、ちゃんとした場所にエンジンがあるな」とか、「メカニズム的に走れる構造だな」って気付いたりするわけ。だからホットウィールはおもしろい。これはほかのミニカーとの決定的な違いだね。

──冒頭に「走る」のが新しかったという話がありましたが、ホットウィールは実際にコースで遊ぶ仕掛けもいろいろあるんですよね。

鈴木氏:
 “走る”に関しては、1968年から一貫してブレてない。コースセットはどの時代でも絶対に売っているからね。自由落下で走るやつもあれば、モーター動力のランチャーでホットウィールを弾き飛ばして走らせるヤツもある。やっぱり子どもはそういうギミックが好きだからね。日本のマテルが主催したホットウィールの走行イベントを取材したこともあるけど、子どもも大人も夢中になって遊んでますよ。

──ホットウィールはカスタム文化もありますよね。

鈴木氏:
 あるね。カスタムは日本でもアメリカ並みに盛り上がってるし、技術も高い。カスタムメインの人たちは、ホイール目当てとかで部品取り用で購入する人もいるくらい。日本のコンベンションにカスタムを出品してた人が、審査に来てたマテル本社の人にスカウトされてホットウィール商品のグラフィックデザインを手掛けるようになったりとか、そういう話もあるくらい。

──なるほど。ちなみに、先日『Hot Wheels Unleashed』というホットウィールのゲームが発売されましたが、そちらは知っていましたか?

鈴木氏:
 もちろん。ホットウィールのゲームは、ニンテンドウ64(海外版)の時代から探して買ってたくらいだよ(笑)。

 最近はアプリのゲームも出てるしね。アプリといえば、ホットウィールIDっていう、車体下にチップを入れてそれをスマホで読み取ると、アプリと連動して遊ぶことができるっていうものもいまは売られているんだよ。そういうデジタル方面との連携は、ホットウィールは昔から積極的なんだよね。

──コレクターからすると、どういうところを楽しみにしてゲームを買われるのですか。

鈴木氏:
 やっぱり収録車種でしょ。コレクターはやっぱり「ああ、これが入ってるなら買おうかな」となるんじゃないかな。子どもは普通にレースゲームとして食いついてくれるだろうから、大人のコレクターを取り入れたいんだったら追加配信でもいいから、収録車種が豊富だとイイだろうね。まあ、初回購入版には限定版ホットウィールがついてくるから、コレクター的には買わざるを得ないんだけど(笑)。

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『Hot Wheels Unleashed』初回購入特典には「GT-Scorcher™」と「Track Manga™」が限定でついてくる。

 あとヴィンテージのホットウィールには、際限なく高いのがあるのよ。たとえば、いちばん高いホットウィールは、このとき(プライスガイドを見ながら)で700万円だよ。これは昔の話だから、いまは700万円じゃ買えないほど高くなってるはず。そういう、実物を見ることもできないようなレアな車種がゲームに収録されて、ゲーム内で鑑賞できたりしたらコレクターとしてはうれしいですよ。

──お金の話で言うと、鈴木さんがいままでホットウィールにかけた合計金額っていくらくらいになるんですか?

鈴木氏:
 いくらだろう? 計算してないからわからないけど、3インチじゃなくて、実物大の車が買えるのは間違いない。とにかく蒐集癖があるから、いまも倉庫代だけで毎月3万円かかってますよ……。

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──(笑)。

鈴木氏:
 まあ、とことんやっていたからこそいろんな広がりが生まれたし、集めていたことが縁になって、いまはホットウィールのオフィシャル記事やムックを作っているわけだから、いいかなと。

 今日取材のためにひさしぶりにこうやって並べてみたけど、やっぱりホットウィールは並べるとキレイだよね。時代ごとの特色も含めて。あとデザイナーにスポットがあたるなんて、ほかのミニカーではあり得ないことだよ。ほとばしるデザイナーの才能がミニカーに詰まっている、それがホットウィールの魅力なのかな。

──いい感じにまとめていただいたのですが、お子さんにもお話を聞いていいとおっしゃっていただいたので、息子さんおふたりにもちょっぴり話を聞かせてください。

鈴木氏:
 じゃあ呼んできますね。

──お願いします。あ、こんにちは。

お兄ちゃん&弟さん:
 こんにちは。

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──では、ホットウィールの話を聞かせてください。お父さんのコレクションが家にあったから、いつのまにかホットウィールで遊んでた感じかな?

お兄ちゃん&弟さん:
 うん。

──家にあるホットウィールで気に入ってるのはどれ?

お兄ちゃん:
 僕はこれ。

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──タイヤが大きいのが好きなの?

お兄ちゃん:
 なんか、かっこいいから。

鈴木氏:
 2年前に西武ドームで開催されたモンスタートラックのイベントにも行って、実物を見たしね。青いほうのヤツ(写真右)は、俺がラスベガスで開催されたモンスタートラックの最終戦に取材に行ったときに買ってきたヤツで、イベント限定品だと知った途端に「プレミアつくかもしれないし、開封しなきゃよかったかも」とか言い出すようになっちゃった(笑)。

お兄ちゃん:
 モンスタートラックはイベント会場で実際に観たときに、すごくかっこいいなって。

──なるほど。弟さんが好きなのは?

弟さん:
 これ。透明なやつ。

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──どういったところが気に入ってるの?

弟さん:
 メタリックとかキラキラしてるのが、おしゃれ。

鈴木氏:
 真ん中にあるやつはシャボン玉が作れるギミック付きのモデルだね。

──小さいときから家にいっぱいホットウィールがあったと思うんだけど、触ってみてどう?

お兄ちゃん:
 かっこいいし、楽しい。でも、数がいっぱいあるからビックリした。

──(笑)。「ウチのお父さん、ほかの家のお父さんと違うかも」っていつぐらいに気づいた?

お兄ちゃん:
 えー? いつぐらいだろ。小学校1年生ぐらい?

──早い!(笑)。ほかのミニカーも家にあったと思うんだけど、ホットウィールはどういうところが好き?

お兄ちゃん:
 うーん、トミカだとふつうのクルマしかないんだけど、ホットウィールだといろんなデザインがあるし、カッコいいのがたくさんある。

──ホットウィールのテレビゲームがあったらやってみたい?

お兄ちゃん:
 ホットウィールのゲーム? やってみたい!

──ちなみに、ホットウィールをお小遣いで買ったことはある?

お兄ちゃん:
 フリマで1回買ったよ。めっちゃかっこいいのがあったから。メタリックの金色のシールが貼ってあるやつ。

鈴木氏:
 家にあるし、俺からもらえるから、うちの子は「ホットウィールを買う」っていう感覚はあまりないかもしれない(笑)。あとはいまの時代、いろんな遊びがあるからなかなかミニカーに刺さらないよね。もっとホットウィールとかクルマを好きになってくれたらうれしいんだけども。

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──お子さんがホットウィールにハマったら、そのときはまた取材させてください。


 引っ越したばかりの鈴木氏の自宅での取材だったが、取材1週間前には「今回の取材用に倉庫からホットウィールコレクションを引っ張り出してきてガレージに並べておく」と連絡を受けていたものの、「倉庫の物が多すぎて、奥まで辿り着けなかったから無理」と断念するほどのコレクション量を誇っている。氏のオススメ品を撮影できなかったのは残念だが、貴重な50周年復刻モデルを見せていただくなど、コレクションの一端を伝えることができたと思う。

 アメ車やカスタムカー好きという人以外、ホットウィールに踏み込むのは、なかなかに難しいかもしれない。だが、氏が語っていたように、ホットウィールは並べて飾っておくだけでも十分なほどの魅力を有している。

 集めるのが難しい、何を買っていいのかわからないという人は、それこそ『Hot Wheels Unleashed』をプレイして、ホットウィールの世界の門を開けてみるといいだろう。また、鈴木氏のようにお子さんがいらっしゃる方は、親子で遊んでみるのもいいかもしれない。SNSが発達した時代と真逆をいくが、たまにはアナログなおもちゃで遊んでみるのも一興だろう。

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