「ゲームを作って生きていく」。
それだけ聞くと、「ゲーム会社に就職する」か、もしくは「『アンダーテイル』のトビー・フォックスぐらい有名にならなきゃダメなんじゃないの?」と思われるかもしれない。
しかし、昨今のインディーゲーム市場の拡大や制作環境が整ってきたことで、ゲーム会社に就職せずとも、世界的に大ヒットしなくても、最低限健康で文化的な生活を維持しつつ、ゲームを作れる時代はすぐそこまで来ているのだ。
このたび11月17日に上梓され、早くも重版出来が決定した『インディーゲーム・サバイバルガイド』は、そんな来たるべき日本のインディーゲーム新時代の幕開けに必携となるだろう書籍だ。
今まで、「ゲームの作り方」に関する指南書はいくつも世に出てきた。しかし、「ゲームの売り方」や「ゲームの知ってもらい方」、あるいは「ゲームで生きていくこと」について詳しく書かれたものがどれだけあっただろうか?
本書はまさしく、そうした「ゲームを作ったあと」のこと、そして「ゲームを売って生きていくこと」にフォーカスしている。それだけでなく、非常に現実的で“地に足がついた”内容となっていることも特筆すべき点だろう。
「ゲームを作って生きていく」と言ったからといって、何も100万本レベルのヒットを作らなければいけないわけではない。最低限、自分が生きていけるレベル──たとえば月20万円必要として、2年間制作しながら暮らすとしたら、どれくらい売れればよいだろうか?
このような想定から、本書は「ゲーム開発者として作家活動をサステナブルに継続していく」というポイントに重点を置いているのである。
……と、ここまで本書を推すのには理由がある。じつはこの記事を執筆している私自身もちょうどインディーゲームを開発しているからだ。Steamのストアページを作る作業の真っただなかで本書に出会ったのだが、正直に言って「本当にもっと早く読みたかった!」と思える内容だったのだ。
「Steamのストアページを作る」という作業だけでも、いくつもの壁にぶち当たった。「なんで誰も税金の話をしてくれないんだよ!」と泣きながら区役所でマイナンバーカードを作ったりもした。結局、ストアページを作るだけで2か月以上もかかってしまったのだ。
このように、「ゲームを売る」ために必要な手続きや実務作業に関する情報は世の中にほとんど出回っていないにもかかわらず、事前に知っているのと知らないとでは大きな差が出てしまう。しかも、ゲームを作る前はこんなにやらなくてはいけないことがあるだなんて、想像することさえもできなかったのである。
今回は本書の著者である一條貴彰氏に本書の内容についてのお話を伺った。
一條氏は『Back in 1995』『デモリッション ロボッツ K.K.』などの作品で知られるインディーゲーム開発者でありながら、株式会社ヘッドハイの代表として、国内のさまざまなインディーゲーム開発者のサポート事業を展開する人物だ。本書には氏がそれらの活動を通して培ったノウハウや、先達となる有名インディーゲーム開発者たちの貴重な知見が織り込まれている。
いまゲームを作っている人はもちろん、これからゲームを作りたい人にも必読の内容となっていることは保証しよう。
『インディーゲーム・サバイバルガイド』はインディーゲーム開発者たちの必読書!
──まず『インディーゲーム・サバイバルガイド』がどういう人たちに向けた本なのかということをお聞きしたいです。
一條氏:
ざっくり言うと、自分でゲームを作り始めて「ゲームの基本システムっぽいものが出来てきたぞ」という段階の方がメインターゲットになります。
ゲームを作り始めた方が最後までゲームを作りきって、リリースして、販売し、対価を得る……というプロセスに必要なことを逐一説明したのが、『インディーゲーム・サバイバルガイド』になっています。
──なるほど、「ゲームの作り方」ではなく「ゲームの売り方」についての本なんですね。
一條氏:
その通りです。特に「ゲームはできつつあるけど、次に何をしていいかわからない」という方に読んでほしいですね。
ゲームが完成したからと言って、それをいきなりSteamにドンと置いて1000円で販売して売れるかというと、そういうわけではありません。プレイヤーの元まで届けるための過程にはいろいろな準備が必要であり、それを知っていただく、という方針です。
なので、「ゲーム作りに興味がある」という段階の方向けには、すぐに役立つような話は少ないかもしれません。とはいえ、将来的に必要となるいろいろな手続きや戦略をあらかじめ知っておくという活用はできると思います。
かなり実践的かつ面倒なことが大量に書いてある内容になっているので、「まだゲーム作りは始めてないです」という方が読むと、なんか“恐怖の本”みたいに思われるかもしれません(笑)。
──(笑)。でも、実際にゲームを作っている方は必読の内容になっていると思います。私はいま制作中のゲームのSteamストアページを開設した直後だったんですが、正直に言えばあと2ヶ月早く読みたかったです(笑)。まさかSteamの申請だけでも2〜3ヶ月かかるとは思いませんでした……。
もう一点この本の面白いところは、「ゲームを作って売る」だけじゃなくて、「ゲームを売って生活していく」という部分にしっかりとフォーカスしていることなのかな、と思います。
一條氏:
ありがとうございます。その「ゲーム開発者として作家活動を継続していく」という点は、本書を構想する段階から重きを置いていた点ですね。
やっぱり、「ゲームを作ってみたけど、あまり反応がなくダウンロード数も伸びなかったからもういいかな」ですとか、「やっとひとつ作品ができたけど、大変すぎたからもうういいや」となってしまうと個人的には悲しいですし、もっと「ゲームを作りながら生きていける環境」を整えていくべきだと思うんです。だから、どんな作品でもとにかくリリースできるようにし、そこからある程度の収益を得て、また次の作品に繋げていく……というサイクルを作っていくことが、この本だけではなく、私の会社自体の活動目的でもあるんです。
「選ばれた人、運がいい人」以外がゲーム制作生活を続けにくい環境を変えたい
──一條さんは、「選ばれた人、運がいい人しか生活が続けられない環境」しかないインディーゲーム業界を問題視しているとおっしゃられていますよね。
実際現状はその通りで、面白いゲームを作れる才能があるのにお金の面で諦めたり続けられなくなってしまった方は、本当にたくさんいると思います。
念のためご確認したいのですが、今回の本の趣旨としては、ゲーム会社に就職してゲームを作るのではなく、あくまで個人もしくは少人数チームでのゲームを作るというパターンがメインですよね?
一條氏:
そうですね。はじめに言っておきたいのは、ゲーム会社に入って中~大規模タイトルに関わり、活躍するというのもゲーム産業にとって大きな貢献だということです。数十人のチーム開発で能力を活かせるタイプ方もいますし、私自身もインディーゲームだけじゃなくて大型タイトルも遊びますし。
ただ一方で、「自分が作りたいものを表現したい」という理由でゲームを作りたいと考える方もいるわけです。でも、現状日本ではゲームを生業にしたいと思ったとき、現実的な選択肢は「ゲーム会社に就職する」ということになります。
そして、いまの時代にゲーム会社に入るとなると、多くの場合、制作に関わるゲームはモバイルゲーム、あるいは運営型ゲームになりますよね。そうするとゼロからのゲームデザインよりも、根幹となるゲームループやセオリーはもう完成されていて、魅力的なキャラクターであったり毎月配信するゲーム内イベントの設計であったり、あるいはいかにユーザーを繋ぎ止め続けるか、みたいな「サービス運営」のセンスが必要とされるわけです。
もちろん、こうした運営型ゲームはたくさんの方に愛されていますし、一大ジャンルとして産業を支えています。しかしながら、自分の作りたいと思うゲームを作ろうとしている人とは、会社の求めるスキルや役割と、どうしてもミスマッチしてしまう。
ゲーム会社に入って、数十年かけてめちゃめちゃ昇進することができたら作りたいものを作ることもできるかと思いますけど、それができるのは何千人にひとりというレベルです。
──一般的な企業であれば、ディレクターレベルまで昇進しないといけないですからね。しかも、そこまで昇進するのに何年かかるかもわからない……。
一條氏:
一方で『カニノケンカ』の開発者であるぬっそさんみたいに、自分自身で表現をしたいゲームを作って自分でリリースし、それでご飯を食べていく……というキャリアパスは日本でも徐々にできつつあると思っています。
でもやっぱり、そういう「個人でゲームを作って生きていく」という生き方において何を活動としてやっていくのか、職業像がぼんやりしているんですね。だから現状はまさに選ばれた人か、運がいい人しか生き残れない。本人の表現力や技術力と、生き残れるかどうかが比例していないんですよね。それが非常につらいなと思っています。
なので、この本ではぬっそさんのような先行者の事例を見ていくことで、そのキャリアパスの輪郭をはっきりさせることもひとつの目標となっています。
──本書では「ゲームを作ってご飯を食べていく」ためにどれくらいのお金や売上必要なのか?という点について、かなり具体的に試算されていましたよね。その試算についてもう少し詳しくお聞きしてもいいですか。
一條氏:
まずいちばん大事なのは、ゲーム作りで生きていこうと思ったとき、「自分の生活を維持できるお金はいったいいくらなのか」を試算することだと思います。「食費を切り詰めて、毎日パスタに塩かけて食ってます」ではどうやっても病気になって続けられないですよね(笑)。
そうではなくて、いわゆる“文化的な生活”を維持しながら、いかにしてサステナブルにゲーム作りを続けられるか、という点がポイントだと思うんです。
たとえば都市圏住みなら文化的生活を送ろうとすると月15〜20万円くらいが下限でしょうか。そうすると、では2年間制作にかけたとして、いくら必要になるかをある程度想定することができる。これは開発会社でいう人月計算とは違って、本当に自分が生きていくためだけのお金、「バーンレート」ですね。
ただ、それだけだと生活は本当にギリギリなので、多少副業を入れたりというのもあると思います。本の中では、そのかける開発日数やかかるお金、貯金の話を、『ジラフとアンニカ』の紙パレットさんにインタビューしています。
──生活費が月20万円かかるとして、2年制作にかけるとすると480万円ですよね。すると、ゲームを1500円で売るなら3200本くらいは売らないといけないっていう計算でいいんでしょうか。
一條氏:
実際はその2倍近い本数になりますね。なぜかというと、たとえばSteamの場合なら1500円でゲームを売ったら1500円がそのまま入ってくるわけではないからです。
Steamで販売すると手数料として30%が引かれます。加えて、発売から少し経過したらセールを行うことが一般的です。
セールを行った場合、トータルでの売上は大体2倍ぐらいになると言われています。ですので、セール価格で売れた分は実入りが下がっていくことを考慮して本数を計算します。
たとえばですが、1500円で売ったら、自分に入ってくる金額が平均して750円だとする。だから、目指さなければいけない金額が6500本かなと大体の勘定ができます。
──なるほど。「ゲームを作って生きていく」とだけ聞くと、なんとなく100万本くらい売れないといけない……みたいに思ってしまいがちですけど、「ゲームを持続的に作り続けていけるライン」という想定だとかなり地に足がついたようなイメージができますね。
ちょっと話が戻ってしまうんですけど、そもそも一條さんがこうした状況に問題意識を抱いたきっかけってなんだったんでしょうか?
一條氏:
それは、自分自身で経験して辛かったからです(笑)。前作の『Back in 1995』を販売するときにやっぱりすごく苦労しました。それに加えて、身の回りの開発者さんが同じように苦労していたのですが、一方で「ゲームを作ったあとに何をするか」のノウハウがほとんど共有されていなかったんですね。
「ゲームの作り方」のチュートリアルや書籍はけっこうあるんですよ。今はUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン公式で詳しい作り方をドキュメントや動画で公開してくれています。しかし、「ゲームの売り方」や「ゲームを知ってもらう方法」の情報はほとんど世の中にないんです。だから、もう自分がやるしかないと思って(笑)。
──そこで「自分がやるしかない」と思えるのはめちゃくちゃ偉いですね(笑)。以前のインタビューでもおっしゃられてましたけど、『Back in 1995』は働きながら自習室を借りて開発していたんですよね。
一條氏:
そうですね。昼間はサラリーマンして、夜から終電まで自習室で開発する生活をしていました。自分や周りの開発者さんたちの経験からいって、ゲーム開発を継続するためにはお金も必要ですが、やっぱり「ゲームを作る時間を捻出する」ということがいちばん大事なんです。
今の仕事を続けながらでもゲームを作ることはできます。でも、それをするためには「ゲームを作る」ということを習慣化する必要があって。
──日曜大工ならぬ“日曜ゲーム制作”みたいな感じですか。
一條氏:
そうですね。少し話がそれますが、日曜大工と違ってインディーゲームの場合は「オープンな場所で販売する」というのが異なるポイントですね。
この本の冒頭でも書いたんですけど、個人のゲーム作りは「家庭菜園で野菜を作る」ことに似ているんですよ。ベランダで野菜を育てて、自分で食べるだけならそれはそれでいいんですけども、その野菜を「出荷して売っていこう」となると、途端にやらなきゃいけないことがたくさん出てきますよね。
想像ですが、農作機材の購入・維持や販路の確保、協会とのやりとりみたいな、「野菜を育てること」以外のことをしないと売れるものも売れません。インディーゲームでもそれは同じことなんです。
Q.ゲーム作りで生きていくために必要なことは? A.まず今の学業や仕事を辞めないこと。
──実際にゲーム作りを始めてみると、思った以上にやることが多くてびっくりしたんです。たとえば2Dのキャラを登場させて、歩かせて、退場させるという動きだけでも「こんなにやらなきゃいけないことが多いのか!」と。
でもこれって、ゲームを作る前はなかなか想像ができないことだと思うんです。それは逆に言えば、「仕事や学校を辞めて時間を作ればできる」とも思いがちだということでもあって。私自身も実際そうだったからよくわかるんですけど(笑)。
その点、一條さんはこの本でもTwitterでも「無計画に学業や仕事を辞めないでほしい」とおっしゃられてますよね。
そういう“事故”をできるだけ回避する方法がかなり詳細に書かれているのは、本当にありがたいことだと思います。
一條氏:
「ゲーム作りがどれだけ大変で、どれだけ時間を食うか」というのはおっしゃるとおりで、作る前はほとんど想像できない部分だと思います。
「ゲーム作りで生きていく!俺はやるぜ!」と無計画に突っ走った結果、「会社辞めたけどゲームが完成しなくて諦めました、再就職します」みたいな例は見えないと
ころでたくさん起きているんじゃないかと思ってます。
もっと悲しいのは、そうやって追い詰められた結果、“闇堕ち”してしまうパターンで……。実際、創作に対して歪んでしまった事例を見聞きすることもあります。それだけは回避してほしい、という気持ちはすごくありますね。
──この本でまず最初に予算の話をするのも、その問題意識が大きいからなんですね。
一條氏:
やっぱりそれが大きいです。雑な計算でもいいので、「ある程度見通しを立てる」というのは非常に重要です。「大ヒットすればなんとかなる」では単なるギャンブルですからね。
そうではなくて、「最低何本売ったら、最低限は生活を続けられる」だとか、「何本売れば次の作品が作れるか」、あるいは「何本売れるならもっとグラフィックをよくできるかもしれない」みたいなことを考えていくべきです。
そして、予算を最初に決めてそのとおりに運用するんじゃなくて、ゲームの開発状況に合わせて変化させていくのも大事ですね。たとえばメディアに取り上げられて体験版がたくさんダウンロードされた、みたいな状況になったら「お、もっとダウンロード数は伸ばせるかも」と思えるじゃないですか。
逆に、プレスリリースをしっかり送って、展示会にも出て、パブリッシャーと30社ぐらい交渉したけども、どことも成立しなかった……みたいな場合だったら「うーん、今回の作品では強みを生かせきれなかったな」と思って、ミニマムにリリースして次に行く計画にシフトできます。
とはいえ、そのゲームが売れるかどうかは出してみないことにはわかりませんからね。
だから、「せめてリリースはしっかり行って、足りなかった収入は副業でお金を稼いで次回作を作ろう」みたいに、都度計画を修正していくのが肝要ですね。
──その見通しを立てるうえで、自分の作ったゲームがどれくらい売れそうか?というのはどうやって見積もればいいんでしょうか?
一條氏:
猛烈に斬新なゲームだと予想は難しいのですが、自分の作ってるゲームと類似したゲームの動向を調べることが一番実感しやすいです。ビジュアルスタイルが似ているゲーム、ファン層が似ているゲームというものは必ずあるはずです。
似たタイプのゲームをSteamなどで見つけて、そのゲームの売れ方を参考にしていくというのが常套手段かなと思います。
──なるほど。
一條氏:
考え方としては、パブリッシャーに対するプレゼンテーションと同じですね。
「このジャンルの〇〇というタイトルは何万本売れてます」、「✕✕というタイトルはこういう弱点があるけど何万本売れてます」、「私たちのゲームはそれらのいいところを全部取り込んでいるので、何万本売れそうです」みたいな見積もりができると思います。
とにかくほかのタイトルの、Steamで売れてるほかのゲームを研究してベンチマークにすることで「どれくらい売れそうか?」というのは大雑把にでも掴むことができるはずです。
話を戻しますと、私が口を酸っぱくして「学業や仕事は辞めないほうがいい」と言っているのは、作り始めたゲームを「挫折しないスケールに落とし込む」のが大事だと思っているからなんです。
小規模でも完成するスケールになっていれば、パブリッシャー獲得などのチャンスに恵まれなくても個人でゲームはリリースできるし、そのゲームが刺さったプレイヤーはちゃんと遊べる。そうすると、フィードバックが得られて次回作に繋げる……というサイクルも生まれますしね。
──仕事や学校を辞めてまとまった時間ができたとしても、たとえば週5で8時間みたいなレベルでフルに使えるか?という問題もありますよね。
一條氏:
はい。これも本当に残念ながら人間の性格というか、私もできないタイプなので……(笑)。
もちろん、起きている時間のほとんどをゲーム作りに費やせる仙人のような開発者もいらっしゃいます。ただ、私はそうじゃない人の方が圧倒的に多いと思っています。1日自由に使えるときに、はたしてすべての時間をコーディングして過ごせるのかということです。
もしかしたら、まずお金よりも「自分がゲーム作りにどれくらい集中できるのか」というところを試してみるところから始めるのがいいのかもしれません。私自身の経験からいうと、「自分をあんまり信用しない」というのは大事だと思います(笑)。
──その点でいうと、「ゲーム作りの資金が足りないので、クラウドファンディングで集めます」というパターンもけっこう危険ですよね。
一條氏:
かなり危ういですね。ゲームがまだ動いていないのに資金を集めるケースもありますけど、それが成立するのはほんの一握りの有名なクリエイターだけです。
そうでない場合は、そもそも資金が集まらないですし、仮に資金が集まったとしてもそこから大変な運営フェーズがある。クラウドファンディングって運用コストがすごく高いんですよ。これもゲーム作りと同じく、始める前は想像するのが難しい部分で。
お金を集めたあとが本当に大変なんですよ。毎週進捗メールを配信したり、リワードのTシャツやらグッズやらを作らないといけない。そうするとバッカーに送るための個人情報を管理しなければならない、みたいに「ゲームを作る以外のやらなきゃいけないこと」が爆発的に増えるんですね。その結果開発が遅れたり……。
──やらなきゃいけないことが雪だるま式に増えていくんですね……。
一條氏:
そうなんです。たとえば完成したゲームのSteamキーを振り出すにも、特定の手続きを踏まないといけないですからね。
だから、「事前にお金を集めよう」という目的でやるのは本当におすすめできないです。
ただ、「クラウドファンディングはよくない」と言いたいわけではないんです。しっかりファンディングの目的と専用スタッフ、運営体制を構築したうえで実行するなら、それはそれでゲームのやれることは増えます。それでもやっぱり、個人制作体制だと負荷のほうが大きくなってしまいがちなのかなと。