実際の野球とゲームの投球はまったくの別物
──新しいガチャでどんな選手が出るのかはユーザーにとって大きなニュースです。「ダルビッシュセレクション」のガチャが実装される前に、ダルビッシュさんは『プロスピA』の配信者に実装される選手のヒント【※】を授け、動画のネタにしてもらうように働きかけをしていましたが、そういったこともユーザーたちが盛り上がれば、という狙いからだったのでしょうか?
ダルビッシュ:
僕もYouTubeで動画をあげていた時期があったわけですが、動画のネタを確保するのが難しかったんです。それがわかっていたので、ダルビッシュセレクションのガチャまであと2週間といったタイミングで話題を提供することで、それを動画にしてもらえるんじゃないかと。
球団ごとの選手のヒントを出すことで、たとえば日ハムの選手は誰なんだろう……とたくさんの人を巻き込んで一緒に盛り上がれるかなと。
ヒントを発表するYouTuberの動画を見に行って、その人のことが好きになったり、チャンネル登録をして見続けるかもしれない。そんなきっかけになったらいいんじゃないかと思って、ああいうことを考えました。
自分で動画にしたところで、たとえば20万人の方が見てくれたとしても、入ってくるのは自分のところだけ。でもほかの人にヒントを発表してもらうことで、みんなで盛り上がれて、いろいろな人に良いことが起こるわけですから。
今年のダルビッシュセレクション登場選手のヒントはYouTuberの方にヒントを渡して、それを動画や生放送で発表してもらう形を取ります!
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) October 26, 2021
日本ハム、ソフトバンク、広島は決まっているのでそれ以外の球団の純正されている方で興味ある方はリプください😄#超熱いぜプロスピ
※「ダルビッシュセレクション」での選手のヒント(球団ごとのダルビッシュさんのヒントと、正解の一覧)
ソフトバンク:打者としての対戦経験がない選手、野手かどうかはわからない→斉藤和巳
ロッテ:過去未排出の選手→小林宏之
西武:名字の頭文字がKから始まらない野手、日本人の右打者→中西太
楽天:楽天枠も結構使うと思います、純正必須級(リアタイ)。フェルナンデスではない→岩隈久志
日ハム:現役引退したあと、かなり時間が経ってから有名になった選手→イースラー
オリックス:野茂さんではない近鉄の選手、野茂さんに野手ひとり、投手ひとりを選んでもらって、自分がどちらか選びました、かなり強くなって帰ってきます、対戦経験なし→赤堀元之
巨人:左打者→張本勲
阪神:S→バース
中日:外国人投手、中日は誰も分からないと思います→郭源治
横浜:マシンガン打線→ローズ
広島:1970年代にプレー経験あり→大野豊
ヤクルト:左打ちの外国人→ハウエル
──なるほど。ユーザーとして予想動画を拝見していましたが、オリックスの赤堀元之【※1】選手は意外な選出で驚きました。野茂英雄【※2】さんの意見を聞いたとのことですが……。
ダルビッシュ:
僕は野茂さんのデータがほしかったんですけど、難しかったみたいで、野茂さんに野手と投手をひとりずつ選んでもらって、色々と考えた結果、赤堀さんに決めました。
※1:赤堀元之
1970年生まれ。NPB最多タイ記録となる最優秀救援投手(現在の最多セーブ投手)を5回獲得。大阪近鉄バファローズの守護神として知られる。
※2:野茂英雄
1968年、大阪府生まれの元プロ野球選手。1989年にドラフト1位で近鉄バファローズ入団後、独自の「トルネード投法」を武器に平成初の投手3冠、パ・リーグタイ記録の最多勝4回などを達成。メジャー移籍後はロサンゼルス・ドジャース、ニューヨーク・メッツ、シカゴ・カブス(マイナー契約)、ミルウォーキー・ブルワーズ(マイナー契約)、デトロイト・タイガース、ボストン・レッドソックスを渡り歩き、ノーヒットノーラン2回、最多奪三振2回、新人王など、アジア人初の偉業を成し遂げたパイオニア的存在。
──ちなみに、野茂さんが選出してデータ化されなかった野手は、どなただったんですか?
ダルビッシュ:
これ、言っていいのかな? まあ、いいか。左バッターの新井宏昌【※】選手です。ただ、いろいろなバランスを考えて、野茂さんから赤堀さんの話を聞いたとき、ムービングファストを球種に入れたらおもしろいんじゃないかと思ったので。
※新井宏昌
1952年生まれ。1974年、南海ホークスにドラフト2位で入団。バットコントロールに定評があり、2000本安打に加えて300犠打を記録。1987年には首位打者を獲得している。
──野茂さんはどんな理由で赤堀さんを推していたのでしょうか。
ダルビッシュ:
「近鉄時代に誰がスゴかったですか?」と聞いて、いろいろな選手の名前を挙げていただいたんです。赤堀さんは抑えだったのに規定投球回にのってしまうくらい投げていた、ということでイメージが強かったんじゃないかと思います。シーズン終わりのほうでは、いきなり先発して完封したこともあったんですよ。
──赤堀選手は1992年に22セーブで最優秀救援投手(現在の最多セーブ投手)を獲得し、シーズン50登板したうち先発2回で完封が1回6回3失点。抑えの投手ながら規定投球回を達成して、防御率1.80で最優秀防御率に輝いています。たしかに、あの時代の中継ぎや抑えの投手は、1イニングに限らず長いイニングを投げることも多かったですよね。
ダルビッシュ:
すごい時代に投げてくれた投手がいることで、自分たちの時代につながっているわけですから、ありがたいですね。
──ダルビッシュさんのその俯瞰の目線、ものの見方は、実際の野球の監督やGMとしてのマネジメント力にも活きるように感じますが、もし将来そういうオファーがあったら受ける可能性もあるのでしょうか。
ダルビッシュ:
……ひとつ重大な欠点があって、僕、野球を9イニング座って見てられないんです(笑)。ずっとプロ野球をやってきたから、飽きちゃうというか。もし3イニングで帰ってもいいのなら考えます(笑)。もう少し年を重ねたら、また気持ちが変わるかもしれないですけど。
──それでもいいからとオファーするチームはきっとあると思います(笑)。「3イニングだけの采配」というのも変化が生まれそうでおもしろそうだと感じました。
ダルビッシュ:
どうですかね(笑)。
──ダルビッシュさんが『プロスピA』をプレイした際に、リアルさを感じる部分はあるのでしょうか? たとえばリアルスピードのモードでの投球における、速い球とチェンジアップの緩急などはいかがでしょうか。
ダルビッシュ:
野球の投球などに関しては、まったく別物だと思います。メジャーでも打席に立ってボールを見ていますけど、ああいう臨場感を出すことは難しい。もちろんプロの球を打つのはめちゃくちゃ難しいので、そのあたりを再現したらゲームにならないっていうのはあるんじゃないでしょうか。
──メジャーリーガーの球と比べるのは愚問でしたね。
ダルビッシュ:
ただ、ファンの声援や球場の感じ、解説なんかはすごくリアリティがあると思います。そこはいま『プロスピA』というゲームがリアリティを追求するために力を注げる部分なので、そこが再現されているのはいいなと思いますね。
──『プロスピA』投球時の「ベストピッチ」【※】がなかなか出せない、もどかしさなどは、実際の野球に通ずるところがあるのでしょうか。
※ベストピッチ
投球時、タイミング良くタップすることで「ベストピッチ」となり、コントロールと球威が上がるなど、狙った場所からズレが小さく投げられる。際どいコースを狙うために必要な技術で、猛者どうしの戦いでは必須である。
ダルビッシュ:
うーん、そうですね……。『プロスピA』のベストピッチは慣れればわりと出せるので、違うかな。
でも、球種と投げるコースを決めて、丸いカーソルが真ん中になったときにタイミングよくタップする。その最後の合わせるタイミングがリリースの瞬間だとすると、あのシステムは、実際に球を投げる感覚に似ている部分もあります。
普段投げているなかで、準備をして、足を上げて、腕を動かして、最後のリリースのタイミングでばん! とタイミングを合わせる感覚があるんです。『プロスピA』の投球はそれに少し似ている感覚があるので、あれはおもしろいなと思いますね。
──体のさまざまな部分の動きを連動させて最後に力を集約するタイミングや感覚をシステムに表すと、ああいう感じであると。実際に野球をやったことがない状態でゲームをやっている人も親和性を感じますし、システムを作った人が聞いたらよろこぶお話だと思います。
ダルビッシュ:
もちろん人によって感覚は違うので、狭まってくるタイミングやカーソルの形などはそれぞれ違うんでしょうけどね。
──実際の投球では、1試合あたりベストピッチは何球ほどあるんですか?
ダルビッシュ:
そのときどきでぜんぜん違います。まず「この球がよかった」と自分で感じるのはストレート系統だけなんです。変化球はあまり感覚がないけど、まっすぐだとしっかり指にかかった感触が残る。
まあ、まっすぐ、僕は得意じゃないので、1試合で5球もあれば上出来かなと思います。
──最多勝も獲得した昨年からは、「急速も上がってストレートもよくなった」とインタビューで語っていましたが……。
ダルビッシュ:
力の伝え方がよくなったのかな。メカニクスの部分、いいフォームで投げられていたので、まっすぐも速かったし、コントロールもわりとよかった感じです。
フレッシュではないから自分で自分の能力の査定はできない
──『プロスピA』のご自身のデータについて、自分の能力を具現化するよりもゲームバランスを考えたとのことですが、「実際はこうなんだよ」「本当はこうしたい」といった気持ちはないのでしょうか。
ダルビッシュ:
ゲームなので、そこは割り切っています。「この選手はこの成績でこの数値なのに、なんで僕の数値はこれなんだ」って言うことはできるけど、ゲームでそれを言い出しても仕方ない。
──ではダルビッシュさんに限らず、ゲームの数値は選手の能力を表すものではなく、別物だと考えるべきということだと。
ダルビッシュ:
そこはすごく難しいところで……。たとえば『プロスピA』に出てくる松坂大輔【※】さんの球種はストレート、高速スライダー、ドロップカーブと縦カット、フォーク。間違ってはいないんです。
ただ、リアタイで強い球種がなければ、現実でどれだけすばらしい投手だとしても、ゲームでは弱い投手になってしまう。
※松坂大輔
1980年、東京都生まれの元プロ野球選手。西武ライオンズ、ボストン・レッドソックス、ニューヨーク・メッツ、クリーブランド・インディアンス(マイナー契約)、福岡ソフトバンクホークス、中日ドラゴンズでプレイし、2021年に引退。甲子園決勝でノーヒットノーラン、春夏連覇を達成して「平成の怪物」と注目を集め、プロ1年目には16勝を上げて最多勝、ゴールデングラブ賞、高卒新人としては史上初のベストナイン、新人王などとんでもない成績を残す。パリーグ優勝2回、日本シリーズ優勝1回、ワールドシリーズ優勝1回、日本代表としてワールドベースボールクラシック優勝2回と、世界を股にかけて大活躍した。
──阪神タイガースOBの藤川球児さんが、自分のストレートはこんなに簡単に打たれなかったとゲーム開発者に抗議して、「火の玉ストレート」【※】という特別な球種を実装してもらった件にも通ずる話ですね。
※火の玉ストレート
阪神タイガースOBの藤川球児さんが『プロスピA』にハマり、プレイするうちに、ストレートという球種が打たれやすいことに気付いた。そしてセ・リーグ記録の38試合連続無失点、80登板で防御率0点台など、ストレート主体のピッチングでプロの世界を生き抜いた自身のストレートもゲームでは簡単に打たれてしまうことに疑問を持ち、コナミに直訴。「火の玉ストレート」という特別な球種を開発してもらい、自身がコラボしたガチャキャンペーンで火の玉ストレートを実装した藤川球児を登場させた。投球カーソルの上に球が浮き上がるような軌道のボールになっている。
ダルビッシュ:
あれはおもしろい試みですね。ああいった感じで、本当に強かった、すばらしい成績を残した選手は、ゲームでも強くあってほしいと思うんです。『プロスピA』はリアリティが高く、選手の見た目や動きも再現されている。松坂さんであれば、その投げる姿がリアルで本人そのままなのに簡単に打てる、っていうのはどういうことだとすごく疑問に思っていて。
僕がダルビッシュセレクションで岩隈久志さんや斉藤和巳さんを選出したときも、リアタイ向きの能力になるようにある程度カスタマイズ【※】したという経緯があります。
自分なら、選手として辛いときも一生懸命、プレッシャーも乗り越えてマウンドに立って成績を残していることに対してのリスペクトはほしい、と正直に思うので。
※リアタイ向きにカスタマイズ
斉藤和巳はフォークが2種類になり、変化量が違う同球種の投げ分けが可能になり、リアタイで戦いやすくなっている。岩隈久志は球威Bのツーシームが加わったことで、もともと2球種あった落ちる球に加えて、リアタイで戦いやすくなるカスタマイズが行われた。
──残した成績から機械的に数値を算出するのではなく、レジェンド選手に対しては一定の補正がほしいと。
ダルビッシュ:
そこはまた難しくて。いまの状態だからこそ、そこまで成績を残していない選手でも『プロスピA』において強い球種を持ってさえいれば、ゲーム内では強くなる。現実ではそこまで輝いていなくても、ゲームでは輝ける。そういう選手たちにとってすごくうれしいことがあるので、難しいところですよね。
──『パワプロ』のデータについてはいかがでしょうか。どんな選手でも特殊能力が最大3つである『プロスピA』と比べて、個性を表現しやすい仕様になっています。たとえば『パワプロ2020』のダルビッシュさんのデータは、「キレ◯」や「奪三振」などがついている一方で、「一発病」、「負け運」、「クイックG」などのマイナス能力がついています。そのことに対して「クイックも遅くはないはずです」とツイートされていました。個別に見ていくとやはり気になる点もあるわけですよね。
『パワプロ2020』のダルビッシュ選手データ
キレ◯:変化球の曲がりするどくなる
奪三振:打者を2ストライクに追い込むと能力が上がる(球速+2km、変化量+1)
一発病:失投がど真ん中に集まりやすくなる
クイックG:投球モーションが遅い
ダルビッシュ:
まあ、選手からすれば、赤の特殊能力【※】をつけられたらやっぱりムカつきますよ(笑)。それはどの選手もが感じていることだろうけど、そこを受け入れて、もっといい能力になるようにがんばってやろうと思った人もいるでしょうし。イラッとしても、どこかで受け入れている部分もあるんじゃないでしょうか。
※赤の特殊能力
「一発病」などの悪い特殊能力は赤く表示されるため、「赤の特殊能力」などと呼ばれることがある。
──プロ野球選手のみなさんは、『パワプロ』で自分のデータを気にしているのでしょうか?
ダルビッシュ:
ほかの人たちがどのくらいやってるのかはわからないですけど、たとえば僕が『パワプロ』をやって、変な特殊能力をつけられている先輩がいたら、「こんなんつけられてますよ〜」って見せますけどね(笑)。イジる材料にはなるけど、真剣に怒ってる人は見たことがないです。
──ちなみに野村克也さんの取材をした際には、自身のデータについてひとつだけ「こんなに足が遅くない」と語っていました。
ダルビッシュ:
少し前にあったOBセレクションで出たデータでも、たしかに走力は低かったですね(笑)。キャッチャーだから遅くされてしまうのかな。
──ダルビッシュさんは『パワプロ』のデータについて、過去のインタビューで「牽制は意味がないからしない」と語っていましたよね。もしかしたら「クイックG」だった理由はその辺りにあるのかもしれません。
ダルビッシュ:
クイックに関して、アメリカでたくさん盗塁されていたので、そこは間違っていないと思います。
一発病は、打者有利な球場が本拠地のテキサス・レンジャーズに長くいたこと、いまのシカゴ・カブスの球場も同じであること、球場特性を少しは考えてほしいなと思うところはあります。
まあでも、僕になにかデメリットがあるわけじゃないので、大丈夫です。
2021年4月のアップデートで登場した「覚醒ダルビッシュ」ではマイナスの特殊能力がなくなっている。
──ゲームバランスを考慮しない場合、自分の能力はこれだというデータを考えていただきたいのですが……。変化球も10種類以上投げてきたということで、現在の能力を作るとしたら、どんな数値になるのでしょうか。
ダルビッシュ:
これはすごく難しいんですが、自分で自分の能力を査定することは、たぶんできないです。
──それはなぜですか?
ダルビッシュ:
たとえば前から投げているツーシームが、ここ2年くらいはかなり曲がるようになった。映像を見た人たちもみんなスゴいと褒めてくれるんです。
ただ、僕はその球を投げている側なので、どういうポイントから変化が始まって、バッターがどんなリアクションだったのかを、いちばん近い場所で最初に見てしまっている。つまり、撮影した映像は僕にとってフレッシュではないので、自分の投げた球のスゴさって、一切わからない。だから査定のしようがない。
たとえば山本由伸選手、菅野智之選手はどうですかと聞かれたら、これこれこうだといえる。それは彼らが投げる景色を見ないで、初めて映像で見て、その感動やスゴさを感じられるから。僕が選手を査定するとしたら、投球から感じたスゴさや感動から数字を作っていくと思います。
──投げた際の感覚が残っているから、客観的な数値を作りづらい……ご本人にしかわからない感覚だと思います。
ダルビッシュ:
映像でそのスゴさをフレッシュに感じるから、菅野選手のスライダーが変化量5の球威Aと査定できるわけですよね。自分の投げる球ってそれができないんですよ。
その結果、『プロスピA』でやったように、ゲームバランスを考えた能力査定になってしまうということです。
2021年版のダルビッシュも、データではスライダーがないですけど、実際はスライダーもほかの球種も、もっといろいろと投げていたけど、バランス的に強くなりすぎるし、自分ではスゴさもわからんし、まあいいか……という感じでああなりました。
実際、査定って本気でやると難しいんですよ。適当にやればすぐにでも査定しますけど、僕はピッチングや変化球に対して真剣なので、だからこそ、適当なことがいえないし、嘘がつけないんです。
──査定できない理由がとても真摯で、かつ興味深いです。そして、その査定ができる、できないという感覚も、人によって違うわけですよね。
ダルビッシュ:
そうだと思います。自分で自分のデータを査定できる人が真剣に考えていないかといえば、そうではない。人それぞれ、感性が違うので、そういうことだと思います。
6歳の子が『プロスピA』をプレイしたら日本の野球を覚えてくれると思う
ダルビッシュ:
(お子さんが取材部屋の近くに)あ、少し待ってください。いまお仕事してるから、ダメだよ? ……すみません、大丈夫です。
──オンライン会議あるあるですね(笑)。お子さんとゲームを一緒に遊ぶこともあるんですか?
ダルビッシュ:
14歳の子と『フォートナイト』をやっていたことはあります。6歳の子は、僕が1日中『プロスピA』をやっているのを見て、やり方もわかってきてると思いますね。まだスマホは持たせていないんですけどね。
──6歳のお子さんが『プロスピA』デビューする予定も?
ダルビッシュ:
じつは最近少し考えていて。対象年齢が4歳と書いてることに気付いて、「あ、もうできるんや」と。日本の野球を覚えてくれると思うので、その点はいいことだと思いますね。
──もしお子さんが『プロスピA』を始めたら、いろいろと教えてあげることも?
ダルビッシュ:
聞かれたらもちろん教えますけど、そんなに真剣にやるわけじゃないと思うので。ただ、6歳の子がいい選手を獲得したら、間違って消してしまわないように、何も言わずにロックをかけるでしょうね(笑)。
──親子でリアルタイム対戦をするのも楽しそうです。お子さん相手でも手は抜けないのでしょうか。
ダルビッシュ:
知り合いどうしで接続するルーム戦なら、勝敗や打率は気にしなくてもいいんですけど。もし全国のユーザーとランダムマッチのランク戦で当たったら、子ども相手でも真剣にコールド勝ちを狙いますね(笑)。
──そこはあくまでガチなんですね(笑)。ちなみに課金についてはどのような教育をする予定ですか?
ダルビッシュ:
借金をせずに自分のお小遣いのなかだったら、いくら使ってもいいんじゃないかと思います。
──最後にお子さんの話がうかがえてうれしかったです。やっぱりゲームは楽しんで遊ぶものですもんね。本日はありがとうございました!
ダルビッシュ:
こちらこそありがとうございました。いつも野球の話ばかりしているので、ゲームの話ができて楽しかったです。できたら月イチでやりたいくらいです(笑)。
以上が、おそらく史上初となる、ダルビッシュ有がゲームのみについて語ったインタビュー記事のすべてである。
これまでダルビッシュ選手のロングインタビューを掲載したことのある媒体は非常に少なく、一部のスポーツメディアに限られるため、今回のインタビューは非常に貴重な機会であった。ゲーマーとしての顔を紹介するにとどまらず、ゲームをプレイするうえでも、「上達する過程が楽しい」、「勝ち負けがすべてではない」など、トレーニング方法や試合に臨む姿勢にも通底する、ダルビッシュ選手独特の思考が浮き彫りになる取材となった。
野球であっても、ゲームであっても、上達への近道は存在せず、果てしない数の挑戦と失敗、その修正が必要なのである。時間内に聞くことは叶わなかったが、もしかすると、野球の練習や肉体トレーニングにおいても、“ピースを埋めていく”ようなゲーム感覚を持っているのかもしれない。
じつはこの取材、約3年前に掲載した『パワプロ』のデータを見て野村克也さんにボヤいてもらった記事の続編として企画していたのだが、さまざまな理由から実現は叶わず、ただ月日が過ぎていった。
結果的には、この企画が実現したのがこのタイミングで非常によかったと感じてる。ダルビッシュ選手が『プロスピA』に激ハマりしたことで、彼のゲームに対する情熱が高い状態でインタビューすることができたからだ。
どの質問に対しても、間を置かずに明確な答えが返ってきたため、短時間ながら濃密なインタビューが可能となった。これは普段からあらゆる物事に対して思考を重ね、自分なりの答えを持ち続けているからだろう。
35歳になったダルビッシュ選手は、現在も球速やキレは衰えず、平均球速や回転数は、年齢を重ねてむしろ進化を遂げている。これも日々の思考と鍛錬の賜物だ。
この記事がきっかけで、ゲーム好きの仲間として、ダルビッシュ有の来季の活躍を応援する人がひとりでも増えることを願っている。
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