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ソウルライクとは、アクションの上手さではなく「判断力」を求められるジャンルだ──童話『ピノッキオ』×『ブラッドボーン』なソウルライクRPG『Lies of P』開発者インタビュー

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 韓国のゲーム会社NEOWIZ社による新作ソウルライクRPG『Lies of P』(偽りのP)。11月17日より開催された韓国のゲームショウ「G-STAR 2022」にて、本作が出展されました。

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 本稿では「G-STAR 2022」会場にて開催された、『Lies of P』プロデューサーのチェ・ジウォン氏へのインタビューをお届けします。

取材・文/実存


チェ・ジウォン氏のプロフィール

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チェ・ジウォン氏
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 『Lies of P』のプロデューサーであるチェ・ジウォン氏は、『ダークブラッドオンライン』『アスカーオンライン』『ロストアーク』などのオンラインMMORPGに関わってきたベテラン開発者。
 尊敬するクリエイターは宮本茂、宮崎英高、三上真司、飯野賢治、ニール・ドラックマン、パク・ソジュンだという。
 今回の『Lies of P』はソウルライクRPGへの初挑戦であるとともに、コンソール向けゲームへの初挑戦作品でもあるとのこと。

ソウルライクとは、「判断力」を求められるジャンル

──『Lies of P』の開発を構想しはじめたのはいつごろですか?

チェ・ジウォン氏(以下、チェ氏):
 2019年の春ごろです。

──『Lies of P』は童話『ピノッキオの冒険』をモチーフにしていますが、そのきっかけはなんですか?

チェ氏:
 ソウルライクというジャンルは我々にとって初めての挑戦でしたので、認知度を高めるために、誰にでもなじみのある概念を借りることが重要だと考えたからです。

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──ソウルライクのアクションゲームを作る上で最も重要に考えたこと、最も必要なポイントは何だと思いますか?

チェ氏:
 難易度をどう設計するか、だと思います。ソウルライクは、操作の速さや高い動体視力を必要とするアクションゲームではありません。
 それよりも、ユーザーが「どうやって失敗したか」という経験をいかに蓄積するか、そしてその経験を踏まえて、次はどのような行動を選ぶか? という「判断力」が求められるジャンルだと思います。

 ひとつひとつの戦闘がこのような判断を軸に構成されていたゲームは、『ソウル』シリーズ以前にはなかったと思います。「難度が高い」という評価はこのシステムによるところも大きいと思います。

 しかし、そうした経験が蓄積されていって、ユーザーの判断が正しい結果につながる瞬間、どのゲームよりも大きな達成感を感じられる。これがソウルライクというジャンルが他のゲームジャンルと最も大きく異なる部分だと思います。

──ほかにも本家『ソウル』シリーズに比べ、『Lies of P』でとくに差別化を図った点はありますか?

チェ氏:
 差別化という点では、主人公である「P」の魅力をアピールすることに大きく集中しました。
 キャラクターのコンセプト設定やビジュアルもそうですし、戦闘部分でも既存の作品では感じられない戦闘要素と楽しさを伝えるために多くの努力を傾けています。

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▲「P」のキービジュアル

──本家『ソウル』シリーズのように、オンラインマルチプレイ機能はありますか? もしくは搭載する予定はありますか?

チェ氏:
 残念ながら、オンラインマルチプレイ機能は考慮されておらず、搭載する予定もありません。我々も初めて挑戦するジャンルですので、ゲームの難易度、アクション、レベルデザイン、探索性など純粋なゲーム性のクオリティを上げることに集中したかったのです。

人形である「P」が嘘をつくことで人間になっていく

──原案にならった「嘘」システムはとてもユニークに感じました。このシステムはどのようにストーリーに影響を与えるのでしょうか?

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チェ氏:
 Pは嘘をつくごとに人間性を獲得し、だんだんと人間に近づいていきます。そして、獲得した人間性によってエンディングが分岐したり、NPCキャラの運命が変わっていったりします。

 しかし、単純に会話で嘘をつくことだけが全てではありません。「人形」であるPが人形であることを飛び越えて「人間」のように振る舞うとき、それもまた嘘偽りであって、人間性を得るきっかけとなるのです。

──本作のもうひとつの目玉システムである「武器構成システム」(Weapon Combination)ですが、どれくらいの武器種があり、組み合わせはどのくらい用意されているのでしょうか。

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チェ氏:
 セットアップの武器が約30種類あります。それに加えて、武器は柄と刀身のふたつに分離して、また異なる部位と組み合わせることができるため、組み合わせの総数は100種類以上になります。
 武器の種類は、剣や刀、両手持ちの槍、ハンマーや斧だけでなく、奇妙な形の武器もあります。できるだけユーザーに多様な個性を感じさせられるようなデザインを心がけました。

──「柄」と「刃」を分離して組み合わせるというデザインにはどのような意図があったのでしょうか?

チェ氏:
 新しい武器を手にしたときって、いつも性能を比較して悩むパターンが多いと思うのですが、その悩みがより楽しいものになるように考えた結果です。
 従来使用していた武器の長所だけを取り、欠点を解消するような組み合わせが考案できるようなシステムがあると、それを実現できるのではないかと思いました。また、それに合わせた戦闘スタイルの変化もユーザーにポジティブな変化を与えるようにしよう、という趣旨で制作しました。

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──本作の開発で苦労した点はありますか?

チェ氏:
 制作するために入社した時がコロナが最も流行していた時期だったので、もちろん困難はありましたが、むしろ他の開発会社も同じ状況だったため、逆によい機会になったとも思います。 慣れていない在宅業務とテレビ会議を通じた開発に早く適応しようとした努力は、あとあと大きく役に立つことになりました。

 何より韓国ではコンソール向けゲームを開発してきた歴史がほとんどないので、同じジャンルの経験が豊富な開発者を集めることがいちばん難しかったです。ですので、あらゆる問題に直接ぶつかって解決するしかありませんでした。それでも幸いなのは、コンソールゲームへの憧れと希望を持った仲間が多く、これまでうまく乗り越えてこれたことです。この場をお借りして、感謝の言葉を送りたいです。

──『Lies of P』は特に誰に楽しんでほしい、体験してほしい作品ですか。日本のゲームプレイヤーやゲームファンに向けて、最後に一言お願いします。

チェ氏:
 欲を言ってしまえば、あまりにも尊敬する宮崎英高さんにぜひ遊んでみていただければと思います。フィードバック、お待ちしております(笑)。
 もちろんそれだけではなく、アクションゲームの宗主国といえる日本のゲーマーたちにも是非良い評価を受けられるよう、最善を尽くします。ぜひご期待ください!

──ありがとうございました。(了)


 『Lies of P』は2023年内に発売予定。日本語は字幕対応がなされる予定です。
 なお、電ファミではG-STAR2022で開催された試遊プレイレポート、ならびにアートディレクターによるカンファレンスも掲載しています。ぜひこちらも合わせてご覧ください。

デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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