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ターン制RPGに未来はあるのか?──JRPGを徹底的に研究した『崩壊:スターレイル』プロデューサーと、日本ファルコム近藤社長が語りあう「RPGの可能性」

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 みなさまは、「ひとりのオタクとして叶えたい夢」はあるだろうか?

 いや、なんだこの始まり方は……?

 私自身もそう思ってしまうのだが、たとえば『FF14』のファンであれば、「吉田直樹氏に会ってみたい」。TYPE-MOON作品のファンであれば、「奈須きのこ氏に直接会って話をしてみたい」……。そういう、「一度でいいから自分に感銘を与えたこの作品のクリエイターに会ってみたい」という思いを抱く方は、少なくないのではないだろうか?

 そして、今回登場するのはそんな「自分を感動させた作品のクリエイターに会ってみたい」というひとりのオタクとしての願いを叶えてしまった男、David Jiang氏。彼はHoYoverseの『崩壊学園2』『崩壊3rd』に脚本・プロデューサーとして参加し、現在リリースされている新作タイトル『崩壊:スターレイル』のプロデューサーでもある。

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 電ファミニコゲーマーにある日、David氏から「今度ウチで『崩壊:スターレイル』って新作が出るんだけど、面白いから取り上げてくれない? そして日本ファルコムと対談させてくれ!(※筆者の多大な意訳が含まれています。David氏はもっと誠実な方です。)」という一報が送られてきたらしい。

 そしてその中には、David氏の「『軌跡』シリーズへの愛がこれでもかと書かれたファンレター」が同封されていた……このラブレターが日本ファルコムに届き、まさかの「『崩壊:スターレイル』プロデューサー×日本ファルコム近藤季洋社長」の奇跡の対談が実現してしまったのです。

 なんだこの経緯は!?

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 自分でも書いててそう思ってしまうくらい、奇跡的な流れで実現した今回の対談。そして、「ひとりの『軌跡』シリーズのプレイヤーとしての夢」を叶えたDavid氏。

 ここで一旦説明しておくと、『崩壊:スターレイル』はHoYoverseからリリースされるスペースファンタジーRPG。アクション性が重視されていた『崩壊3rd』とは対称的に、コマンド・ターン制RPGとなっています。そして『崩壊』シリーズの精神的続編ではあるものの、これまでのタイトルとは全く違う世界線で展開される銀河を駆け巡るストーリーが魅力!

 筆者の主観的な例えですが、「『原神』クラスのクオリティのグラフィックでじっくり遊べるターン制RPG」というだけで、かなり期待値が高い!

 そして両者の対談から見えてくるのは、国内外における「コマンド・ターン制RPGの受け止められ方」の違いや、国が違っても共通する「RPG」というジャンルへの熱い思い。そしてベールに包まれていた「HoYoverseのゲームの作り方」と、ある意味HoYoverseとは対極的な日本ファルコムの開発スタイル。

 読者のみなさまには、今まさに「RPG」の最前線に立つふたりの、国境を超えた熱いRPGトークをぜひ脳に焼き付けていただこう!

聞き手/TAITAI
文/ジスマロック
編集/実存


「世界観が偏らないのが魅力」David氏が熱く語る『軌跡』シリーズの面白さ

──まず、Davidさんにお話を伺えればと思います。今回の対談はDavidさんから日本ファルコムへの熱烈なラブコールがあったからこそ実現した部分が大きいと思うのですが、『崩壊:スターレイル』の開発チーム及びDavidさんが、具体的に日本ファルコムのタイトルから影響を受けたところ・リスペクトしているところはどの辺りになるのでしょうか。

David氏:
 私が日本ファルコムのタイトルに初めて触れたのは、大学生の頃に遊んだ『英雄伝説 零の軌跡』でした。当時の中国において、『零の軌跡』は日本ファルコムのゲームの中では数少ない正式にパブリッシングされた作品でしたので、個人的にもすごく印象深いタイトルです。

 その後『英雄伝説 空の軌跡』の3部作もプレイしましたし、『英雄伝説 碧の軌跡』が中国で発売された時もすぐに購入してプレイしました。そのくらい、『軌跡』シリーズにはハマっていましたね(笑)。

 実は私、QQ【※1】のアカウントのアイコンを10年間『軌跡』シリーズのティオちゃんから変えていないんですよ!

一同:
 (笑)。

※1「QQ」
中国で一般的に使用されているチャットアプリのこと。インタビュー実施時のDavid氏は本当に嬉しそうに10年間変えていないというティオちゃんのアイコンを見せてくれていたため、画面越しにその熱意がひしひしと伝わってきた。

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ティオちゃんのアイコンを見せてくれているDavid氏。

David氏:
 あとは、『軌跡』シリーズの「音楽」も大好きです。『空の軌跡』「星の在り処」は中国のファンの間でも大人気の曲で、私は今でも「星の在り処」を作業BGMにしたりしています(笑)。

 加えて、『軌跡』シリーズの10年以上の時間をかけてひとつのシリーズを育て続けていることに尊敬の念を抱いています……!

近藤氏:
 今回の「Davidさんが『軌跡』シリーズが大好き」というお話を聞いた時に、正直驚きました(笑)。こうして国外でもシリーズが愛されているのは、本当に光栄なことだと思います。

 たとえば、「軌跡」シリーズではキャラクターのフィギュアなどの商品化にも力を入れているのですが、最近は「中国のファンの方からフィギュアメーカーに声が届いて企画が動く」というパターンがすごく増えています。

 さらに、今年日本ファルコムに入社した新入社員の方なんかは、実は半数以上が中国出身の方だったりします。Davidさんと同じく、『軌跡』シリーズのファンだったり、影響を受けたりした方が日本ファルコムに入ってきてくれています。

 『零の軌跡』を作っていた時は僕らも必死でしたし、ここまで中国の方と結びつきができるなんて全く予想していませんでした。『零の軌跡』の発売から10年経った今、Davidさんと対談できているのはすごく感慨深いですね。

David氏:
 HoYoverseも現在、『崩壊学園』や『崩壊3rd』のプレイヤーだった方が入社してくれるケースが増えています。やはりHoYoverseのゲームをプレイしていたからこそ、ゲーム作りに対する熱意はみなさん高いです。

近藤氏:
 日本ファルコムと全く同じケースですね(笑)。

 というか、私自身が日本ファルコムのゲームをプレイしていたから入社したパターンですからね。

──Davidさんは、日本ファルコムのタイトルの中ではどれが一番好きなのでしょうか?また、そのタイトルが一番好きな理由もお聞かせ願えればと思います。

David氏:
 やはり一番好きなのは日本ファルコムのタイトルを遊び始めるきっかけになった、『英雄伝説 零の軌跡』の2部作ですね。好きな理由を挙げるとすれば、「ストーリー」になると思います。

 『零の軌跡』のストーリーには「叙述トリック」が用いられており、「ボスに挑み、戦いに敗れる負けイベントかと思ったら夢だった」というRPGの演出に見せかけて、実はそれは「零の至宝」の能力による時間の巻き戻しだった……という世界観に合わせたトリックの部分にとても好奇心や興味をそそられました。

 「このゲームは、次はどんな展開になるのだろう?」というストーリーのヒキの強さに、ひとりのプレイヤーとして惹きつけられたのだと思います。

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『零の軌跡・改』『碧の軌跡・改』公式サイトより

David氏:
 2つ目に、「『軌跡』シリーズ全体の世界観として、SFとファンタジーを上手く融合させている」という点です。日本ファルコムのタイトル以外にも多くのRPGをプレイしてきたのですが、たとえばファンタジーのRPGであれば剣と魔法の世界、SFのRPGであればハードコアでサイエンスな世界観……と言ったように、「世界観がどちらか一方に偏ってしまう」という印象を受けていました。

 一方で、『軌跡』シリーズはSFとファンタジーの両方の要素を活用した上で世界観を構築しているのがとても好きなところです。この『軌跡』シリーズの世界観や設定の面白さは、『崩壊』シリーズにも影響を与えています。

 『崩壊』シリーズは「ハードすぎない、ソフトなSF」という方針の上で設定や世界観を作っており、「この現象はどのような理屈で成り立っているのか?」、「これはどういう原理なのか?」という科学的な考証よりも、「その設定自体が面白くなるかどうか」を重視して作られています。この辺りは、間違いなく『軌跡』シリーズから影響を受けた部分だと思います。

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David氏:
 あとはやはり、「キャラクターが好き」という部分も大きいです!

 特に敵として登場する秘密結社「身喰らう蛇《ウロボロス》」の、「キャラクターひとりひとりの繋がりがしっかりと描かれている大人数の敵組織」という部分に強く惹かれました。

 通常のRPG作品では、大きい敵組織があったとしても実際に登場するキャラクターは数人程度だったりするパターンがあると思うのですが、『軌跡』シリーズの敵組織はちゃんと登場キャラクターが大人数かつ、それぞれの関係性などが魅力的に描かれているところがすごく好きです!

──いやぁ、画面越しにもDavidさんの「軌跡」シリーズへの愛がひしひしと伝わってきます(笑)。近藤さんはDavidさんのお話を聞いてみて、いかがでしょう?

近藤氏:
 『空の軌跡』も『零の軌跡』も、グラフィックはほぼドットですし、現在の『閃の軌跡』『黎の軌跡』に比べたらゲームの表現としては古い作品だと思います。

 実際、開発当時の私たちも「ゲームの表現としては1歩遅れたものになってしまうけど、その代わりにシナリオやキャラクターの魅力で勝負しよう」という様々な制約の中で作り上げていった作品でした。

 それが発売からしばらく経っても手に取っていただいた上で作品として愛されているのは、「あぁ、あの判断は間違ってはいなかったのだな」と誇らしい気持ちになれました。

David氏:
 ホントに大好きです!!

一同:
 (笑)。

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──『空の軌跡』も『零の軌跡』も、日本ファルコムにとってはターニングポイントになる作品だったと思います。『空の軌跡』はこれまでのシリーズとは毛色の違う作品ですし、『零の軌跡』はコンシューマーにも進出した作品でした。やはりこの2タイトルは日本ファルコムにとっても大きな挑戦だったのでしょうか?

近藤氏:
 はい、両作品とも日本ファルコムの分岐点になったタイトルだと思います。

 まず、『空の軌跡』は『英雄伝説』というシリーズ自体がそれまで続いてきたシリーズと大きく切り替わったタイミングで開発したタイトルでした。そこで、「これまで日本ファルコムがやってきたことの何を引き継ぎ、何を新しく自分たちで足していけばいいのか?」ということが課題となっていました。

 過去の『英雄伝説』シリーズの「ちょっとお説教臭い」、「昔の人の親切さ」などのクラシックな雰囲気を引き継ぎつつ、過去の作品にはなかったスチームパンク的な新たな要素を自分たちで加えていった結果として完成したのが、『空の軌跡』でした。実は、この作品は初めて私が企画段階から参加したタイトルだったりします(笑)。

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「軌跡」シリーズ ポータルサイトより

近藤氏:
 次の『零の軌跡』は、「『空の軌跡』を進化させた上で、PCからコンシューマーのお客様に作品を届けていく」ことが課題になりました。

 具体的には、「『空の軌跡』から作中の世界観のテクノロジーが大幅に進歩する」ところ……要は、「日本ファルコムがあまり作ってこなかった科学的な世界観を、いかにユーザーに自然な形で見せていくか」という部分に苦戦したタイトルだったりします。

 その上、日本ファルコムにはこだわりの強いスタッフが多くて、「お客様に見せるために作る」ことは理解していても、「自分たちが納得した設定じゃないとやりたくない」スタッフが多かったりします(笑)。

 たとえば、「この設定であれば巨大ロボットが出てきてもおかしくない」、「この設定であればスマートフォン的なアイテムが出てきてもゲームの没入感を削がない」といった、世界観的に違和感のない設定の見せ方にこだわった上で作り上げていったタイトルでした。Davidさんのお話を聞いていると、その辺りの「設定のこだわり」を汲み取っていただけたようで、とても嬉しいです。

David氏:
 私はプレイヤーとしては、「『零の軌跡』を遊んでから『空の軌跡』に行く」逆の順でプレイしていたので、スチームパンク風の世界観やスマートフォンっぽいアイテムなどの2作品の間にある「作中世界の技術の進歩」はひしひしと感じていました。

 私が今ゲームの制作をしている時に意識していることは、「制作側の考え方とプレイヤー側の考え方を自分なりに切り替える」ことだったりします。この時に、『軌跡』シリーズのいちプレイヤーだった自分の気持ちを思い出して、「どんな大胆な設定だって入れていいんだ!」と勇気をもらっています(笑)。

近藤氏:
 ありがとうございます(笑)。

近藤社長から見た『崩壊』シリーズの魅力。「グラフィックの美しさ」で国内タイトルを圧倒する

──続いては、近藤さんから見た『崩壊:スターレイル』の印象や、率直な感想などをお聞かせいただければと思います。

近藤氏:
 壮大な宇宙を舞台にしたSFらしい世界観と、そこに「宇宙を走る列車」という少しファンタジーっぽい要素が混じっている『崩壊:スターレイル』ですが、先ほどの『空の軌跡』『零の軌跡』でも「SFとファンタジーを上手く融合させる」ことを日本ファルコムは意識していたので、ひとりのゲーム制作者として「こういう世界観、良いよね……」という共感がありました。

 そして、いちゲームユーザーとしてもこの世界観は大好物ですね。この対談が始まる前の午前中に、他の日本ファルコムのスタッフと「このゲーム早くやりたいね!」と盛り上がっていたところです(笑)。

 世界観以外の部分だと、「グラフィックの美しさと演出」に驚かされました。事前に公開されているPVにて、巨大なロボットの体を駆け上がりながら戦うシーンがあったと思うのですが、「コマンド戦闘のRPGでここまでの演出ができるのか!」と、すごく驚かされました。キャラクターのグラフィックもとても綺麗で、純粋に「羨ましい」と思ってしまいます(笑)。

David氏:
 ありがとうございます(笑)。私自身、すごく「ロボット」が好きなので、私の提案で『崩壊:スターレイル』にも巨大ロボットが登場しています。

 この「巨大ロボットという要素を、どのようにコマンド・ターン制RPGのゲームプレイと組み合わせた上で演出していくのか」という部分に、今作は気合を入れています。

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近藤氏:
 個人的に『崩壊3rd』をプレイさせていただいていたこともあるんですが、やはりプレイし始めたきっかけは「キャラクターのモデルの美麗さ」でした。

 当時は『崩壊3rd』のような「アニメ調のグラフィックで、アクション性が高い」ゲームが比較的珍しかったので、そこも含めてプレイしていました。ああいったグラフィックの美しさはかつては日本のタイトルが得意とする部分だったと思うのですが、『崩壊3rd』は既に国内のタイトルを超えてきていると感じました。

 ちょっと悔しい思いをしながらプレイしていました(笑)。

David氏:
 ありがとうございます!

──改めて、Davidさんから近藤さんに『崩壊:スターレイル』の見どころを伝えていただければと思います。加えて、『崩壊』シリーズのコンセプトなどもお聞かせください。

David氏:
 『崩壊:スターレイル』は宇宙を舞台にしていますが、実は『崩壊3rd』の頃から「宇宙」という要素は登場していました。『崩壊3rd』の舞台そのものは地球なのですが、ストーリーやキャラのセリフ内で何度か「キャラクターたちが今いる地球以外にも惑星がある」ことを示唆していました。

 今回『崩壊:スターレイル』を制作するにあたって、この「宇宙」の話を広げていくことに決めました。そこが今作の「列車に乗ってさまざまな惑星を巡る旅に出る」設定の原点になっています。

 今作のメインストーリーで訪れる「いろいろな星」にはそれぞれの文化や歴史が根付いており、さまざまな舞台を楽しむことができます。それ以外にも、人が暮らしている宇宙船なども登場しますので、とにかく「星穹列車に乗ってさまざまな惑星を巡る冒険」というシチュエーションが本作最大の魅力のひとつです。

 そして『崩壊:スターレイル』はこれまでの『崩壊』シリーズの要素を一部受け継ぎつつも、まったく新しい設定と世界観で壮大な宇宙叙事詩を展開します。 プレイヤーは個性豊かなキャラクターたちと一緒に「星核」の秘密を探り、広大な銀河とさまざまな惑星を旅しながら、「星核」がもたらす争いを解決していきます。

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『崩壊:スターレイル』がコマンド・ターン制RPGを採用した理由とは?

David氏:
 加えて、『崩壊:スターレイル』はバトルも魅力的なタイトルです。ご存知の方も多いとは思いますが、今作のバトルシステムは「コマンド制のバトル」になっています。

 HoYoverseは『崩壊3rd』や『原神』を筆頭に、アクションRPGというジャンルに力を入れてきました。しかし、実は「コマンド制かつターン制のRPG」には手を出していなかったため、ユーザーに新たなRPG体験を提供するために『崩壊:スターレイル』でコマンド・ターン制のRPGに挑戦しました。より多くの方にHoYoverseのゲームを遊んでいただけるよう、ゲームジャンルを充実させたかったんです。
 
──個人的な質問になってしまうのですが、「コマンド制かつターン制のRPG」は現在の主流から考えると、ややクラシックなスタイルだと感じました。この「コマンド・ターン制RPG」を中国や世界に向けてHoYoverseから送り出していくにあたって、Davidさんの中ではどのような考えや狙いなどがあるのでしょうか?

David氏:
 「コマンド・ターン制RPGはクラシックなジャンル」という認識は、先入観によるものだと思います。そして我々のユーザーリサーチの結果として、PC・スマートフォン・コンシューマーなどのプラットフォームを選ばずに「コマンド・ターン制RPGが好きな人」は多いと感じました。

 中国国内においてもコマンド・ターン制を採用しつつ成功を収めたRPGタイトルは数多く存在していますし、『崩壊:スターレイル』も受け入れられると考えています。

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『崩壊:スターレイル』公式サイトより

David氏:
 加えて、『崩壊3rd』を制作していた頃に、ユーザーから「アクションの操作の難易度が高くてプレイできない」という声が上がっていたのも大きいです。

 もちろんコマンド・ターン制RPGも全ての人が遊びやすいジャンルではないと思うのですが、より間口を広げて、アクションが苦手な方にもプレイしていただける可能性があると感じました。

 これらのマーケティングやユーザーリサーチの結果によって、「アクションなどの激しい操作を要求せず、じっくり行動を考えられる戦略性に注視したRPG」はグローバル的に成功する可能性があると判断し、『崩壊:スターレイル』の開発に至りました。

 ですので、『崩壊:スターレイル』の今後の方針としても、瞬発的な操作はプレイヤーに要求せず、戦略性を重視して作っていくと思います。たとえば、ゲーム内のダンジョンなどで出会う敵の動きなどもハイスピードにはせず、じっくり考えさせる時間を与えるような方向性で作られています。

──ここまでのDavidさんの話を受けて、近藤さんの中では「コマンド・ターン制RPG」の今後の受け取られ方はどのように変化していくと感じていますか?

近藤氏:
 Davidさんの話は、私たちとしてもすごく励まされますね。

 日本ファルコムのタイトルをプレイしてくださっているお客さんの中にも、「アクションが苦手だから、じっくり自分のペースでストーリーやゲームを楽しめるコマンド・ターン制RPGが好き」という意見をくださる方が少なからずいらっしゃいます。

 私たちはその意見を受けた上で、『軌跡』シリーズや『イース』シリーズを作り続けているのですが……「HoYoverseさんのリサーチの結果としてもコマンド・ターン制RPGが好きな人がいる」ということに、とても励まされました。

 RPGの中ではクラシックなスタイルになったとしても、コマンド・ターン制RPGが好きな方が必ず一定層はいてくださるのが、日本ファルコムがターン制RPGを作り続ける理由のひとつです。

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近藤氏:
 私たちとしても、「コマンド・ターン制RPGは完全に作りきって、プレイヤーに飽きられてしまった」とはまだ思っていません。他社で作られているRPGがどんどんリアルタイムやアクション性のあるものに変わっていく中で、「コマンドタイプのバトルはもっともっと突き詰められる余地があるんじゃないか?」という、半ば意地のような思いで作り続けています。

 「日本ファルコム」というメーカーは秘伝のタレのように「昔からあったもの受け継いで新しいものを作っていく」会社なので、そこを突き詰めて今までになかったバトルシステムやRPGを生み出すことに毎回チャレンジしています。

 最新作の『英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ』は、「ある程度リアルタイムの要素を入れつつ、そこからシームレスにコマンドバトルに突入する」手法を採用しているのですが、このシステムは私たちがコマンド戦闘を諦めなかったからこそ作り出せたものだと思っています。

 これらの日本ファルコムが昔から受け継いできたコマンド戦闘などを諦めずに、新しい要素を融合させていくスタイルでこれからもRPGを作り続けていきたいと思っています。

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『英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ』公式サイトより

近藤氏:
 ここからは半ば冗談の話ではあるんですけど、『軌跡』シリーズはタイトルによってはプレイアブルのキャラクターが30~40人近く登場するので、そのキャラ全員が固有のアクションを持っていた場合、プレイヤーにも開発にも非常に大きい負担がかかってしまいます(笑)。
 
一同:
 (笑)。

近藤氏:
 さっきまで剣を使ったアクションで戦っていたのに、いきなり銃を持った仲間が駆けつけてそこから操作まで銃を使ったアクションになってしまうと大変ですよね(笑)。もちろん開発的にも、「そのピンポイントのシーンのために銃アクションを実装する」ことは難しいです。

 そういった面で、大勢のキャラクターが登場したり、それぞれの群像劇を描いていく作品ではコマンド・ターン制RPGや『タクティクスオウガ』のようなシミュレーションRPGなどが向いているのではないかと思っています。

 それらの開発への負担や、描きたいストーリーとゲームジャンルの兼ね合わせなども考慮した上で『軌跡』シリーズはターン制を採用し、「ターン制をどんどん進化させていくスタイル」になっているのだと思います。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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