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『APEX』や『PUBG』を手がけるLightspeed Studiosの新作サバイバルRPG『Undawn(アンドーン)』は “究極のリアル” を追求したゲームだった。開発者に聞く、いまの時代に適したゲームとは

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 終末世界を舞台にしたゲームや映画で、“人間の怖さ” が描かれている作品は多く存在する。

 勝手に単独行動をしてしまう人、他者にやたらと攻撃的になる人、リーダーシップを発揮する人など、極限状態でむき出しになる人間の本性は、とても興味深い。

 しかし、そういった作品では人間の本性が丁寧に描かれる一方で “省かれがちな行動” もある。そのひとつが「排泄」だ。多くの作品において、人間の心理は描いても人間の排泄は描かれない

 その理由としては、わざわざ排泄を描かなくても物語に支障が出ないからではないだろうか。それはそうである。しかしながら現実世界において排泄はどんな環境下でも欠かすことのできない行動だ。

 そんな排泄の概念もしっかりと取り入れ、究極のリアルを実現したゲームが、Lightspeed Studiosが開発を手がける『Undawn(アンドーン)』である。このゲームは作り込みが尋常ではない。

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(画像はSteam:Undawnより)

 舞台となっているのはゾンビが蔓延する終末世界。探索・バトル・建築・料理といった多彩なゲーム要素に加え、入浴・排泄・体調などの概念が存在する。劣悪な衛生環境により悪臭が発生するとゾンビに気づかれてしまうこともあれば、トレーニングを怠って肥満になると移動速度が遅くなってしまう。

 『Undawn』は終末世界で起こる人間ドラマを描くだけでなく、排泄や体調管理といった省かれがちだけど生きるうえで欠かすことのできない行動までをもプレイヤーに体験させるゲームである。サバイバルゲームは数あれど、ここまで作り込まれているゲームはめずらしいのではないだろうか。

 そこで電ファミは、本作のメインプランナーを務めるMaxyy Zhang氏とパブリッシングプロデューサーを務めるSiyu Luo氏にインタビューを実施。本稿では『Undawn』の多彩なゲーム要素についてお届けしていく。

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左からMaxyy Zhang氏、Siyu Luo氏

聞き手/豊田恵吾
文/柳本マリエ
編集/実存


『Undawn』で現在の市場にない「新しいRPG」を確立したい

──『Undawn』は尋常ではない作り込みに驚きました。探索・バトル・建築・料理といった多彩なゲーム要素に加え、入浴・排泄・体調などの概念があり、ソロでもマルチでも遊べるゲームはめずらしいと思います。構想初期ではどの部分を軸としてゲームを作ろうと思っていたのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 最初は一般的なMMORPGとして作っていました。しかしながら、作っていくうちに「果たしてユーザーはこれだけで満足するだろうか」と疑問に思ったんです。そこで、ユーザーのニーズやいまの時代に適したゲームについて考えるようになりました。

 そう考えたときに、ただ終末世界に入ってもらうだけでなく「この世界を生き抜くためのサイクル」を体験してほしいと思ったんです。そうして現在の『Undawn』の形になりました。

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(画像は【PV】「安息の地を築くために」【建築システム】|『Undawn(アンドーン)』 – YouTubeより)

──サバイバルを題材にしたゲームはたくさんありますが、「お風呂に入らないと体臭でゾンビが寄ってきてしまう」「トレーニングを怠ると肥満になって速く走れなってしまう」など、サバイバルの過酷さをここまで丁寧に描いたゲームはほかにないように思います。こういったアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 サバイバルのアイディアはチームで意見を出し合いながら生まれたものです。よりリアルなサバイバル体験を再現したいと考えたときに、現実世界でも発生する問題が必要だと思いました。

 食事や排泄は生きるために欠かせないことですし、過食などで栄養が偏れば肥満になってしまうこともあります。体を洗わなければ衛生的な問題も起こるでしょう。そういった、この世界で生きるために必要な日々のサイクルを体験してもらうためにさまざまなゲーム要素を増やしていきました。

──ここまで作り込まれたタイトルはそうそう生み出せるものではないと思います。抽象的な質問になってしまうのですが、なぜこれほど多くの要素を内包したタイトルを作ることができたのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 もしかしたらLightspeed Studiosというとシューティングゲームのイメージが強いかもしれませんが、『Undawn』のクリエイターはRPGを作ってきたメンバーが多く在籍しています。そのため、最初にお答えしたように、構想初期は一般的なMMORPGとして作っていました。

 しかしながらそれでは市場に埋もれてしまいます。ユーザーのニーズに応えるための新しいチャレンジが必要だと思いました。だったら現在の市場にない「新しいRPG」を作ろう、と。

──なるほど。たしかにどのジャンルにも当てはまらない気がします。

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(画像は【PV】「安息の地を築くために」【建築システム】|『Undawn(アンドーン)』 – YouTubeより)

ユーザーにはまず「この世界でどうやって生き抜くか」を考えてもらいたい

──クローズドβテストの反響についてはいかがでしたか? どのような意見があったのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 ありがたいことに全体的にポジティブな反響をいただいております。いちばん多かったのは「リアル」という意見でした。排泄や入浴などの人間の行動はもちろん、自然災害や野生動物にも対応していかなければなりませんから。

──そういったリアルな環境下でゾンビが蔓延しているわけですね。

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(画像は【PV】「安息の地を築くために」【建築システム】|『Undawn(アンドーン)』 – YouTubeより)

Maxyy Zhang氏:
 はい。そのほかの反響としては、オープンワールドの探索やキャラメイクの自由度の高さにも驚いていただけたようです。

──マックスさんはプランナーとしていちばん苦労したところはどんなところですか?

Maxyy Zhang氏:
 さまざまなゲーム要素を取り入れているため、それらをどのように融合させるかが課題でした。ゲームのベースとなっているのはサバイバルなので、ユーザーにはまず「この世界でどうやって生き抜くか」を考えてもらいたい。そこからシューティングのバトルなども体験してもらいながらオープンワールドの世界を楽しんでもらえたらと思っています。

──『Undawn』はソロでもマルチでも遊べるゲームですが、開発としてはどちらの比重に重きを置いているのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 どちらを重視するかは決めていません。ストーリーやサバイバルなどユーザーが生きていくにはソロ、さらに強くなりたいときはほかの人と協力するマルチ、というイメージです。

──たとえばマルチが苦手な場合はソロだけでも楽しめる設計になっているのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 はい。マルチを前提とした設計ではないので、探索、建築、料理などのプレイはソロだけでも楽しめます。ご安心ください。

リアルに存在している職業を基準に「バンドマン」というジョブもある

──『Undawn』では、シェフ、漁師、孤児院の指導員など、ほかのゲームであまり見ない個性的なジョブが採用されています。選定の基準みたいなものがあったのでしょうか?

Maxyy Zhang氏:
 ジョブもリアルに存在しているものにしたいと思いました。とくに、サバイバルと関連性の強い職種を意識しています。ユニークなものだと、バンドマンというジョブもあります(笑)。

──(笑)。

Maxyy Zhang氏:
 この終末世界のなかで、人によろこびをもたらす職業があってもいいのではないかと思いました(笑)。今後もアプデでジョブは増やしていくつもりです。

──Lightspeed Studiosは『APEX LEGENDS MOBILE』『PUBG MOBILE』など世界的に有名なタイトルを手がけていらっしゃいますが、そういった世界でもトップクラスのシューターゲームを手がけたことで参考になっているところはありますか?

Maxyy Zhang氏:
 『Undawn』のジャンルはMMORPGではありますが、シューティングを大事にしているゲームです。エイムの補助やオートの実装などの工夫はこれまでの経験が活かされているかと思います。シューティングに慣れていないユーザーにも楽しんでもらいたいので、丁寧なチュートリアルを意識しました。

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(画像はSteam:Undawnより)

──『Undawn』のどんなところがストロングポイントだとお考えですか?

Maxyy Zhang氏:
 MMORPGは長く遊んでいると「強くなっていくだけ」になりがちだと思うんです。強化のサイクルだけになると、どうしてもマンネリ化してしまいます。
 しかしながら『Undawn』は建築などの自由度も高いため、長期的に遊んでもらえるのではないかと考えています。

──プロモーションでウィル・スミスを起用されていますが、サバイバルでウィル・スミス……といえば、多くの方が映画『アイ・アム・レジェンド』を思い浮かべるかと思います。『Undawn』の制作にあたって、参考にされた映画やゲームはありますか?

Maxyy Zhang氏:
 終末世界を舞台にしたさまざまな作品を参考にしました。それでいうと『THE LAST OF US』の影響は大きいかもしれません。というのも、ユーザーには「この終末世界で自分の努力によって生きていく」ということを体験してほしいからです。さらに、自分だけではなく仲間と協力して生き抜いてほしい。そういう要素は『THE LAST OF US』を参考にしました。

──それでは最後に読者に向けてのメッセージをそれぞれいただけますでしょうか。

Maxyy Zhang氏:
 いろんなゲーム要素が入っているので、まずはぜひ遊んでみてください。この世界をより多くの人に体験してもらいたいです。改善すべきところがあればそれも知りたいです。

Siyu Luo氏:
 アンバサダーのウィル・スミスさんはゲーム内にも登場します。

 ウィル・スミスさんのイベントでは限定の衣装やアイテムが手に入るので、そちらも楽しんでいただけたらと思います。また、日本をテーマにした花火大会のイベントや桜がモチーフのアイテムもあるのでぜひ注目してみてください。

──本日はありがとうございました。(了)

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 話を聞けば聞くほど、『Undawn』が「新しいRPG」に挑戦していることを実感するインタビューだった。探索・バトル・建築・料理といった多彩なゲーム要素に加え、入浴・排泄・体調などの概念まであるゲームはめずらしい。

 それは、ユーザーのニーズやいまの時代に適したゲームについて考えたときに、ただ終末世界に入ってもらうだけでなく「この世界を生き抜くためのサイクル」を体験してもらいたいという開発者の気持ちが込められていたからだった。

 極限のリアルを追求した『Undawn(アンドーン)』は6月15日より配信中。プラットフォームは、iOS、Android、Steam、PCとなっている。

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集者
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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