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『プロセカ』が描きたいものとは? もはや「丸ごとリニューアル」と化した3周年に合わせて、「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って制作陣に聞いてみた

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単刀直入に聞きたい。プロセカのストーリーって、何を描こうとしてるんですか?

──何度か「描きたい物語」のお話が出ましたが、近藤さんや開発チーム全体の「『プロセカ』で描きたい物語」の原動力はどこから出てくるものなのでしょうか? 『プロセカ』のストーリーは何年にも渡って展開されるものですし、これほどの規模の物語はおそらく湧き上がるなにかがなければ描けないのではないかと思います。

近藤氏:
 明確な「原動力」と表現していいのかはわからないのですが、やっぱり世の中って……すごく大変じゃないですか。そして今の時代、若い人たちは特に大変ですよね。まぁ、別に若くない僕らもずっと大変なんですけど……。

一同:
 (笑)。

近藤氏:
 でも、「世の中には苦しいことばかりある」とは思いたくないですよね。その「苦しいこと」を乗り越えた先には、より良い未来があるって思うくらいは自由なはずなんです。

 そこに至るまでの道の途中で逃げずに立ち向かうこともあれば、逃げ出してしまうこともあるかもしれません。ですが、そうやって進んでいった先に待っている「より良い未来」の存在を、やはり僕は信じたいです。

 だからこそ、その「苦しいことを乗り越えた先にある未来」を描くためには、キャラクター達が前に進む必要があると思います。ずっと進歩しないままだと、未来までを描くことはできないんです。

──ある種、『プロセカ』で描きたいもののためにキャラが進歩していく部分があるんですね。

近藤氏:
 そして、一度その「終わり」を迎えたあとも、やっぱり世の中には苦しいことがたくさんあります。高校生が経験する苦しさのあとには、必ず「大人が経験する苦しさ」が待っています。

 ここから『プロセカ』が6~7年と続いていく中で、プレイヤーの方も徐々に年齢が上がっていきます。それこそサービス開始時に中学生だった方は、もう高校生になります。そうなると、共感できる物事や感情のステージも大きく変わっていきます。

 だからこそ『プロセカ』が描くものも、そういった時間の流れに合わせて変わっていくべきなのかなと。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_015

──少し話が逸れるのですが、『プロセカ』はYouTubeの公式チャンネルでストーリーのアーカイブを公開していますよね。ああいった動画形式でのアップロードにはどんな意図があるのでしょうか?

近藤氏:
 『プロセカ』のストーリーを「ゲームで読むこと」と「YouTubeで読むこと」には、あまり違いがないと思ったのがこの取り組みの始まりですね。『プロセカ』はストーリーを読むことに課金するゲームではないので。

 『プロセカ』が、ストーリーを読むこと対してお金を払う必要のあるゲームであれば、こんなことは絶対にできません。ですが、『プロセカ』はメインストーリーやイベントストーリーも含め、ほとんどのストーリーを最初から無料で読むことができます。

 であれば、YouTubeで公開してしまっても問題がない上に、それをきっかけとしてキャラクターを好きになってもらえれば、ゲーム全体にとっても効果的だと考えました。

──そういう狙いがあったのですね。

近藤氏:
 加えて、「ストーリーの倍速再生機能が欲しい」とも考えていました。とはいえ、ゲームで実装しようとしたらコストがかかってしまいますよね。ですが、その点も「YouTubeに上げる」という方法で解決できました。

 他にもYouTubeに対応することで、「ゲームを起動するのは面倒だけど、YouTubeなら開ける」「通学中にYouTubeで見たい」といった、日常の様々な場面に対応できると考えました。とにかく、「YouTubeにストーリーを載せてしまう」ということに関して、『プロセカ』はなんのデメリットもないんですよね。

 ……ただ、『プロセカ』のストーリーは3年分の積み重なったボリュームがあります。ひとつのユニットのストーリーを追うだけで、かなりの時間がかかってしまいます。つまり、「あまりにもボリュームが大きすぎて読む気が起きない」という面があるとは思うんです。

 この「ストーリーのボリュームが大きすぎる」問題に関しては、いずれ別途解決する必要があるとは思っていますね……。

なぜ、プロセカは若年層の心を掴めるのか?

──実際、3年前と比べて『プロセカ』のファン層はどのように変化しているような印象を受けますか?

近藤氏:
 3年前に比べると、明確に「中学生以下」の層のプレイヤーの割合が増えているような感覚はありますね。先ほどの「クリエイターズフェスタ」でもチラッと話題に出ましたが、やはりリアルイベントなどでも親子連れの方が増えてきているような印象があります。

──やはりその層のプレイヤーはかなり増えているのですね。『プロセカ』は、その「中学生以下」の層の心を掴むのがすごく上手い印象があるんです。そこには間違いなく近藤さんのアンテナ感度の良さなどがあると思うのですが……。

佐々木氏:
 ちなみに、近藤さんって今おいくつですか?

近藤氏:
 35歳ですね。

佐々木氏:
 あぁ、そうなんですね……。
 ずっと一緒にお仕事させていただいているので「30歳」の印象で止まっていました……。

近藤氏:
 いやもう、本当におそろしいことですよ!(笑)

一同:
 (笑)。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_016

佐々木氏:
 私個人の視点からだと、やはり近藤さんは「現場に立っている」からこそ磨き上げられている部分が大きいような気がします。それこそ『プロセカ』では20代のボカロPの方とも制作を共にしますから、「仕事で向き合う相手」として鋭い感性を持ち続ける必要がありますよね。

近藤氏:
 もしかしたら僕の場合は「ネットにいる」ということが最大の要因かもしれません。少し昔の話になってしまうのですが、僕が中学生の頃は社会人の人とも一緒にオンラインゲームを楽しんでいました。その時、僕と社会人を隔てているものはなかったはずですし、ひとつの共通のゲームを「楽しい」と思えていました。

 そして、現在はSNSを見ていますし、単純に年齢などは関係なく多くの人と「共通のコンテンツ」を楽しんでいる部分が大きいのではないかと思います。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_017

「オーラルケアブランドとコラボするゲーム」って、割とレアじゃない?プロセカがオーラツーとコラボした理由

──楽曲に関して最近印象的だったのが、サンスター オーラツーとのコラボ「MORE MORE スマイル!プロジェクト」です。「オーラルケアブランドとコラボしてるゲーム」って、割とレアな気がするんですが……あのサンスター オーラツーとのコラボは、どんな経緯で実現したのでしょうか?

佐々木氏:
 まず最初に、「初音ミクとのコラボ」としてサンスターさんとは検討をスタートしたんです。そこからこちらが『プロセカ』とのコラボを提案しました。「このタイトルはこんな感じで、若年層の人気もこれくらいあって……」と説明していた中、やはり「若年層も手に取りやすい」という点で「オーラツー」とのコラボが決まったんです。

 やはり「クリーンで、笑顔で、白い歯で……」といった爽やかなイメージをサンスターさんも求めていたので、そこに対して「モモジャンというユニットがいてですね……」と紹介したような形だったと思います。

 それこそ「ポカリスエット」や「カップヌードル」といった、「実在する商品とのコラボ」は1年ごとに続いていましたよね。この流れが止まってしまうのも寂しい気もしたので、今年はモモジャンとサンスターさんのコラボという形で実現できました。

 できる限り各ユニットでのリレー形式にできたらいいとは思っているのですが、なんだかんだ1年ごとに綱渡りで実現しているような感じですね……。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_018
『我らステインバスターズ!』セカイver.(作詞・作曲:真島ゆろ)

──オーラツーとのコラボ楽曲「我らステインバスターズ!」は、作詞作曲を真島ゆろさんが担当されていましたが、こちらはどんな経緯で真島ゆろさんにお願いすることになったのでしょう?

佐々木氏:
 こちらはセガさんと話し合って決めた部分ですね。

 今後の『プロセカ』で予定されているボカロPさんの方向性と照らし合わせていく中で、「明るくてキャッチーな曲調をお願いできる方がいいのではないか」「若手でキャッチーなアイディアを持っている方がいいのではないか?」というニュアンスを固めていきました。そこで、真島ゆろさんにお声をかけた流れでした。

近藤氏:
 すごいダイレクトなプロモーションソングでしたよね(笑)。

佐々木氏:
 たしかにそうですね(笑)。やはりサンスターさん側からも「こういったワードを使ってほしい」という指定はいくつかありました。そのような条件をクリアしつつ、商業案件の独特のハードルもありながらも、真島ゆろさんには素敵な曲を仕上げていただきました。

「どんなゲームかわからない」状態から、ボカロ全体にとっての「良い兆し」となった

──最後に、『プロセカ』というタイトルを3年間作り続けてみて、実際のところいかがでしたでしょうか? それこそ、中学生が高校生になるくらいの期間『プロセカ』は続いたことになります。

近藤氏:
 一口に「3年続いた」と言っても、プレイヤーのみなさんの中には3年間ずっと追いかけ続けてくれた人、それこそ本格的にタイトルが始動する以前から追いかけてくれている人もいるとは思うんです。

 正直、昔からのボカロファンの方々にとっては、「このゲームはどうなるんだ!?」「『Project DIVA』じゃないのか!?」と不安だった頃もあったと思います。

 そんな中で3年間続けてこれたのは、本当にすごく感謝しています。だからこそ、『プロセカ』というタイトルをなるべく長く元気に続けたいとも思っています。その思いが「ひとつのアップデート」という形で、今回の3周年アップデートには詰まっています。

 先ほどから何度かお話していますが、やはり今回のアップデートは完全にゲームそのものが一新されてしまうものではなく、「これからも長く続けていくためのアップデート」となっています。そして、僕ら開発チームもデバッグをしながら「トラブルなくリリースできたらいいなぁ……」と思っています(笑)。

一同:
 (笑)。

近藤氏:
 そのくらい大きなアップデートとなっておりますので、3年目の『プロセカ』も引き続きよろしくお願いします。

小菅氏:
 これから先の4~5年目も引き続き『プロセカ』というタイトルを盛り上げていきたいと思っております。だからこそ、今回のアップデートで「新しいもの」にはなっています。おそらく触った時に、「おお!?」と驚かれる方は多いのではないかと思います。

 決してマイナーアップデートとかではなく、「2023年のプロセカ」を目指したリニューアルとなっていますので、ぜひお楽しみいただければと思います。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_019

佐々木氏:
 それこそ『プロセカ』は、コロナが流行る随分前から企画を始めていたんです。そして今も変わらず『プロセカ』というタイトルが続いているのは……なんだか感慨深いですね。「結構な時間をプロセカと共に過ごしてきた」という感覚があります。

 先ほど近藤さんが「不安だった時期のプロセカ」について触れられていましたが、タイトルが本格的に始動する以前に僕からボカロPの方々にお声がけした時も、みなさん頭に疑問符を浮かべられているような感じだったんです。端的に言えば、「これがどんなゲームなのかわからないからイメージしにくい」という反応が大半でした。

近藤氏:
 一部のボカロPの方には僕から直接お願いしていたこともあったのですが……やはり「どんなゲームなの?」「一言で言ったら、何?」という反応がほとんどでした。まぁ、当たり前ですよね……(苦笑)。

佐々木氏:
 紆余曲折ありましたけど『プロセカ』を通してクリエイターの皆さんが活動してくれていて、若いファンの方たちもついてきてくれて……。

 昔の有名楽曲なども取り上げられつつ、『プロセカ』というタイトルは、渾然一体となって「より良い将来へ向かっていく、初音ミクとボカロシーンの循環」の可能性を示してしている側面があると思います。関係者にとってポジティブな流れを創出できているので、より良い役割を果たせれば良いなと思います。

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_020

佐々木氏:
 いまは、幅広い年齢のクリエイターやボカロPの方が『プロセカ』に参加してくださっています。

 それぞれが思い思いの曲を書き下ろしている中で、今の自分の気持ちを当てはめる方もいれば、若い頃の感覚を『プロセカ』に当てはめた上で書き下ろされる方もいらっしゃいます。そして、それぞれが熱い楽曲になっていますよね。ポジティブな協調関係を上手くバランスしていければ良いなと。

 そして、3周年アップデート以外にも大変なプロジェクトをいくつか進行しているので、近藤さんも小菅さんも、体調にはお気をつけてください……(笑)。

近藤氏:
 そうですね、本当に体調には気をつけます(笑)。

──どうか、体調にはお気をつけてください……。本日はありがとうございました!

「プロセカが描こうとしているもの」を思い切って聞いてみた_021


 大規模すぎる3周年アップデート……やっぱり大変だったようです。

 なんだかサラッと「まるごとリニューアル」という言葉が飛び出すアップデート、すごいですね。どこかで、「コンテンツのピークは3年目」ということをお聞きしたことがありますが……『プロセカ』はこれからも最前線を走る気マンマンなのが、ひしひしと伝わってきました。

 そして、個人的ではあるのですが……やはり2~3年目のストーリー展開に「確かにすごく面白いけれど、この物語はどこへ向かっていくんだ」という一抹の不安を覚えていた面もありました。真実が明かされ、展開は大きく動き、日常は目まぐるしく変化していく。正直、時間が過ぎ去っていくのが少し怖い。

 ですが、そんな中で「苦しいことを乗り越えた先にある未来」を描きたいと言ってくださったのは、すごく嬉しかったです。キャラが進級すると同時に、プレイヤーも歳を取っています。ある意味、「共に生きてきた」キャラでもあるのです。だから……そんなキャラには、良いエンディングを見せてあげてほしいのです。

 『プロセカ』だけでなく、ボーカロイド全体にとっての「良い未来」へと向かっていくこの1年を、より楽しんでいきましょう!

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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