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じつは史実どおりだった『Rise of the Ronin』の登場人物設定──コーエーテクモのシナリオチームには歴史の考証、ネタを抽出して選別するノウハウが受け継がれている。「比翼の契り」はルビーパーティースタッフの協力、ノウハウがあったからこそ実現できた

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Team NINJAのいる市ヶ谷に忍者屋敷がある

──『Ronin』はオープンワールドですから、自由に探索してさまざまな景色を眺めることができます。開発チームとして「ここは絶対に見てほしい」という場所はありますか?

早矢仕氏:
江戸の忍者屋敷ですね。じつは……我々開発チームの所在地にあるんですよ。

安田氏:
Team NINJAのいる市ヶ谷事業所の場所に忍者屋敷があるという(笑)。

早矢仕氏:
「ハッ!」と気付いて、すぐ社内チャットで開発チームに連絡したら「やっと気づいてくれましたね」と返信がきまして(笑)。

『Rise of the Ronin』開発者インタビュー:じつは史実どおりだった登場人物の設定_017

──狙って仕込んでいたんですね(笑)。

早矢仕氏:
あとは、横浜の時計塔ですね。コーエーテクモゲームス本社は横浜にありますので、時計塔をゲームに実装したときにはリアルで見に行きましたね。ランドマークが入ったときも印象深かったです。

安田氏:
京都には実際に足を運んだのですが、ちょうどコロナ禍の影響でお寺や神社にはほとんど人がいなくて。調査や検証を行いやすかったので、腰を据えて取り組むことができました。

江戸、横浜と比較すると京都は規模としては小さいのですが、密度がすごくあります。いまは観光客が多いと思いますので、ぜひ『Ronin』の京都にいらしてください(笑)。

とくに京都の北にある寺社は見惚れるほど美しい瞬間があるので、そういった景色も見ていただけるとうれしいですね。

──京都で「ここは絶対に入れたい」というロケーションはあったんですか?

安田氏:
うーん……そういう意味だと清水寺ですかね。これまで私が作ったゲームは、清水の舞台で戦うことが多くて。『NINJA GAIDEN』のときもそうだったので、「因縁」だと思って「入れなきゃ」と(笑)。

──京都は「阿鼻機流(あびきる)」の特性が活きる、高低差のある地形が特徴的ですよね。

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安田氏:
なので、ぜひ清水の舞台から飛び降りてほしいですね(笑)。現実では絶対にできない、ゲームならではの体験を楽しんでいただきたいです。

アップデートで機能周りの拡張のほか、暗夜の治安が再び悪化

──SIEとタッグを組んだからこそ実現できたこと、助かったことなどはあるのでしょうか。

早矢仕氏:
SIEさんにはテストプレイを何度もしていただき、そのたびにレポートを送っていただいていました。

とくに、プレイヤーのみなさんが遊んだ際に「詰まってしまう」「引っかかってしまう」など、わかりにくい部分のケアがしっかりできたのは、SIEさんの協力のおかげです。

さきほどお話した「猫、多すぎ問題」もSIEさんのテストプレイとレポートがあったからこそ調整できた部分なんです。おかげさまで全体的に整った形でリリースできたと実感しています。

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──それは外部の会社にテストプレイを依頼したとき以上に、Team NINJAがゲーム作りに集中できたということでしょうか。

早矢仕氏:
そうですね。というのも、外部の会社さんに依頼したとして、何度も何度もプレイとレポートの提出をお願いするというのはなかなか難しいんです。

今回は、何十回もプレイしていただき、詳細な意見もいただけたんです。ここまで細かい部分まで調整したのは初めてだったと思います。

安田氏:
「プレイヤーが仕様や遊び方をしっかり習熟できているか」「導入したシステムが使われているか」という部分までレポートをいただけて、本当に助かりました。これまで我々はすごく乱暴だったんだなあ、と実感するほどでしたので(笑)。

──『Ronin』はプレイステーション5専用タイトルですが、DualSenseコントローラーに関してもSIEからフィードバックなどがあったのでしょうか。

安田氏:
ありました。いままで我々も振動を用いた演出を入れていましたが、「ほかのプレイステーション5タイトルでは、こんな使い方で没入感を高めている」と具体的なアドバイスをいただきました。

たとえば、カットシーンで「このタイミングで振動を入れると、プレイヤーがより没入できる」といったアドバイスをいただいたり。そういった細かな部分まで協力いただけたのは本当に助かりましたし、最終的によりよいものになっていると思います。

──アップデートも頻繁に実施されていますよね?

安田氏:
3週間に1回ぐらいのペースでバランス調整やバグ修正のアップデートを行っています。5月22日のVer1.05でいくつか拡張を入れていますが、いったんここで目処をつけた【※】感じですね。

※インタビューは2024年5月中旬に実施。

──暗夜で土地の治安を悪化させられる機能の追加は最高でした(笑)。

安田氏:
そこを楽しんでいらっしゃる方の声をたくさんいただきましたので(笑)。「やることがなくなっちゃった」というご意見にも対応した形となります。

──アップデートがひと段落したということで、バトルに関しての話を聞きたいのですが、『Ronin』は流派ごとに「間合い」がすべて違いますよね? 「頭のおかしいことをやってるな」と感じていて。あ、もちろん褒め言葉です(笑)。

安田氏:
間合いについては、同じ手触り、同じ反応にならないようにと最後までこだわって調整し続けた部分です。「ある程度は一律で」という意見もあったりましたが、一律にすると敵やバトルの個性が出なくなってしまう。

なので、間合いは最後の最後まで調整し続けましたし、発売後のアップデートでもチューンナップしています。

──敵の攻撃を弾くタイプのアクションゲームはこれまでにもさまざまなタイトルがありましたが、『Ronin』は流派の導入とその種類の多さで、一歩先の手触りを見せてくれたと思っていて。「アクションゲームの先」というのはつねに意識されて開発を行われているのですか?

安田氏:
もちろん、そうですね……って言うと、カッコつけている感じですが(笑)。

『ウォーロン』と『FFオリジン』という、パリィに近いアクションがあるゲームを並行して作っていたことも大きいです。ただ、『Ronin』はRPG要素もあれば、ステルス要素もありますので、石火はパリィだけでいいのか、どこまでそのアクションに重みを置くのかはかなり悩みまして、『ウォーロン』のディレクターにも触り心地の意見をもらったりもしていました。

最適なパリィのフレームというか、ベストなタイミングって見極めがかなり難しいんですね。「誰でもできるように」とすれば、もうパリィ一辺倒のゲームになってしまい、敵の行動パターンや流派ごとの「石火」タイミングも覚えなくてよくなっちゃいますから。それは我々としては絶対に避けたかったところでした。

『Ronin』は体験版を配信しなかったので、プレイヤーの皆様からダイレクトに意見を聞けなかったのですが、SIEさんのユーザーテスト、社外や社内のチューニングチームと話を通しながら、最終的に現在の形に落ち着いた感じです。

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──バトルのスピード感も最初から考えた通りの設計なのですか? 決着が着くまでのスピードが絶妙だと感じていたのですが……。

安田氏:
何度もテストプレイをしていく中であのスピード感に収束していったとは思います。ただ、Team NINJAのゲームは毎回「ちょっと早すぎない?」とよく言われるんです。

『仁王』のときもそうだったんですが、侍どうしの駆け引き、ジリジリとした感覚を演出したくてスタミナの概念を入れているんです。ただ、手触りを追求していくうちにドンドンと速くなってしまって(笑)。

──(笑)。

安田氏:
ただ、『Ronin』のバトルは速くなりすぎないように、ギリギリのところまで粘れたと思っています。

──徒党戦のバランスもすごくいいですよね。

安田氏:
徒党は強すぎるとプレイヤーが置いてけぼりになってしまいますし、役に立たないと因縁だなんだと言っても好きになってもらえませんから、気をつけた部分です。

そういえば、徒党に関してはSIEさんから「勝海舟は最高だ!」という声をいただいたことがあって(笑)。

──え?

安田氏:
勝海舟はサブ武器として花火の弾を投げるキャラクターなのですが、それが強すぎた時期がありまして。その強さゆえの「最高だ」というご意見だったわけです(笑)。

もちろん調整を行ったわけですが、我々としては「キャラクターの個性付けはこの方針でいいんだ」という手応えにつながるご意見でした。

──どのキャラクターも個性がしっかり立っていますよね。倒幕派、佐幕派どちらのキャラも突き抜けた個性を感じました。

早矢仕氏:
登場キャラクターそれぞれを魅力的に描くと言いますか、誰かを一方的に描き過ぎないということは脈々とやってきている部分ですので、そこはしっかりとバランスがとれていると思います。

安田氏:
当初から「正義が複数あった時代」をテーマとしていました。それぞれにとっての正義なので間違ってはいないけれども、対立はする。

そこでプレイヤーがどちらに付くのか選択できるおもしろさ、自由度を大事にしていて。キャラクターごとに思惑があるにせよ、それぞれがちゃんと正義であることは徹底して描こう、と。

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──なるほど。ちなみに開発チームの中で人気のキャラクターは誰なんでしょうか。

安田氏:
やはり新選組は妙な人気があります(笑)。ただ、おじさんメンバーの中では勝海舟が好きな人が多い気がしますね。多分、中間管理職的な苦しみがあるからなんでしょう(笑)。暴走できない立ち位置、みたいな感じで。

──早矢仕さんと安田さんにとってのお気に入りのキャラクターは?

早矢仕氏:
歴史って、勝ったほうが未来につないでいくものです。幕末ですと、歴史を学ぶ際にはどうしても倒幕派がメインになりますよね。なので、開発していく中で佐幕側の徳川慶喜を知ることができたのが印象的でした。すごく魅力的な人物だなと。

──たしかに、上様はいいキャラですよね。

早矢仕氏:
もうちょっと将軍として構えているのかと思いきや、すごくアクティブで(笑)。自分の認識とのギャップがいちばんあったこともあって、慶喜がもっとも印象に残っています。

安田氏:
私は中間管理職っぽい勝海舟と桂小五郎に共感してしまいます(笑)。ですが、キャラクターとして誰かひとりとなれば、坂本龍馬です。先ほどの正義の話じゃないですが、今回は夜明け前……幕末の終わりがいちばん暗い、という描きたいテーマもあったんです。

日本が新しくなる夜明けで、本当にその先の未来を見据えていたのは龍馬しかいなかったというのは、今作で描きたかった部分であり、そこに主人公も関わっていたというロマンも入れたかった。そういった理由から龍馬がお気に入りですね。ただ、人気に関しては高杉晋作に圧されていますが(笑)。

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早矢仕氏:
(笑)。

安田氏:
人気でいうと、土方歳三、沖田総司もなんと言いますか……こちらの想像を超えています(笑)。

──権蔵も人気がありますよね。

早矢仕氏:
権蔵はある種、メインヒロインですね(笑)。

──猫を撫でるシーンが発売時期にバズるなど、『Ronin』はSNSでの投稿をよく見かけます。

早矢仕氏:
ベアトさん(フェリーチェ・ベアト)の動画もYouTubeで結構見られていますよね。

安田氏:
料理研究家のリュウジさんがX(Twitter)で「『Ronin』クリアした!」ってポストされていたんですよ。ビックリして「ええ!?」ってなりました(笑)。『Ronin』はこれまでのTeam NINJAのゲームをプレイされたことがない方、アクションゲームのファンでない方にも遊んでいただいているなと感じますね。引き続き『Ronin』をよろしくお願いします。

早矢仕氏:
『Ronin』は、いまのコーエーテクモ、Team NINJAが全力で挑んだタイトルです。

これまで当社タイトルに縁がなかった方も手にとってみて頂いて、ぜひ幕末の『なりきり』を体験してみてください!(了)

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Team NINJAタイトルのファン、アクションゲームのファン以外にも刺さりつつある『Ronin』。

アクションの手触りはTeam NINJAに脈々と受け継がれている「秘伝のタレ」で仕上げ、オープンワールドだからこそのつなぎめのない世界で没入感高く「歴史となりきりの楽しさ」を提供する。コーエーテクモ、Team NINJAだからこそ作り上げることができたタイトルだということがこのインタビューから伝われば幸いだ。

冒頭で述べたようにゲームの評価は難しいし、受動的に情報が得られる時代となり、「このゲームがおもしろかった / つまらなかった」という声は意識せずとも目に入ってくるだろう。

ただ、周囲の声は必ずしも正しいとは限らないし、「合う / 合わない」の好みも千差万別だ。どうか周りに流されず「オレはこのゲームを買うし、オレはこのゲームが大好きだ」と自身の慧眼を信じてゲームを選ぶ感性を大事にしてほしい

『Rise pf the Ronin』発売後初のセール実施中!

5月29日から6月12日まで開催中の“Days of Play”セールにて、『Rise of the Ronin』が発売後初のセール価格で登場。

PlayStation Storeでは通常版が25%オフの6,735円[税込]、デジタルデラックス版が23%オフの7,684円[税込]で販売されているほか、パッケージ版も店頭にて割引価格で購入可能となっているのでお見逃しなく!

※一部取扱いのない店舗もございます。セール内容は地域や販売店によって異なりますので詳細は各店舗にお問い合わせください。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
サブデスク
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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