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公序良俗に反するのはダメ!──『VRカノジョ』の精神的後継作『VRな彼女』が向き合っている、ド直球タイトルゆえの四苦八苦とは? ILLUSIONの意思を受け継ぎ、VR×美少女の可能性に賭ける男たちの夢と苦悩を聞いてきた

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VR人気がなかなか爆発しない……でもVR空間には大勢のユーザーがいるという不思議

──先ほど「VRを盛り上げたい」という一心で『VRな彼女』に取り組んでいると山口さんは仰られていましたが、先ほども「VR元年と毎年言われている」というお話があったように、なかなかVR人気が爆発しないという状況は続いていますよね。

山口氏:
まあ現状、『VRChat』がいちばんVRで盛り上がっているところというイメージですね。

大鶴氏:
それこそVRが最初に出てきた頃は「インターネット、スマートフォンの次にVRが来る!」とすごい持ち上げられた時期がありましたけど、いまは全然ですよね。まだコンシューマゲーム機にも追いつけていないと思います。

ただ、VRユーザーと市場の一定の増大は出ていますので、無くなることはないだろうな、と。インターネット、スマートフォン、そしてコンシューマゲーム機のようにはいかなくても、VRのプラットフォームがどれだけ進化し、ユーザーを獲得できるのかは純粋に楽しみです。

身近にはあまり、VRをやっている人っていないんですけど、例えば『VRChat』のようなVR空間内に行ってみるといっぱいいるんですよね。「この人たちは一体、現実のどこにいるんだろう?」とよく思います。そういった人たちが増え、今後「VR」が徐々に広がっていけばいいなと思っています。

『VRな彼女』インタビュー:『VRカノジョ』後継作が向き合う、ド直球タイトルゆえの四苦八苦とは?_017

──VRならではの体験というのは間違いなくあると思うんですよね。ただ、私たちのようなメディアとしては、基本的にテキストで発信していることもあって、その体験を言葉にするのが難しいところもありまして……。そこを踏まえた上で、御二方があえてVRプラットフォームを選び続けている理由として、VRには何か代えがたい魅力というものを感じられているのではないかと思うのですが、実際はどのようにお考えなのでしょうか。

大鶴氏:
それについてはやっぱり、没入感につきますね。美少女ゲームなら、ディスプレイ越しに女の子を見るのではなくて、同じ空間の中で実際に対峙して、コミュニケーションが取れる。その没入感を味わえて、制作面で追求していけるのがVRというプラットフォームの強みだと思います。

まあ、まだヘッドマウントディスプレイを装着したり、コントローラを使うなどの制約があるんですけど、ディスプレイ越しで見る以上に没入感が増すのは間違いないと思っています。そこがVRをやっていきたい思いの一番の理由になりますね。

山口氏:
自分は純粋に「VRは楽しい!」と思っているんですね。2Dのディスプレイではできない、VRでないと表現できない、縦横に対して奥行きのある世界があることに魅力を感じています。

VTuberさんも、VRで表現すると奥行きがプラスされることによって、より面白くていいコンテンツが作れると思っているんです。それを信じてバーチャルキャストをやっていたんですが、結果的にWEBカメラでLive2Dの平面の方が配信が楽ということもあって、そちらの手法が流行っちゃって。やっぱりセットアップするのが大変なんですよね。

大鶴氏:
いまのお話もふくめ、まだVRはいろいろと制約の多いプラットフォームだとは思います。なので、今はコアな人たちしか残れていないんですが、そこはいずれ技術的な発展でVRに手軽さが付いてくれば、もっと広がっていくんじゃないのかと見ています。

──ちなみに最近、御二方が体験されたVRコンテンツで「面白い!」と感じられたものはなんですか?

大鶴氏:
私は『8番出口VR』です。同作はもともと非VRのゲームですけど、VR化によって違ったプレイ感が生まれて面白くなるんだな、と感じました。

『8番出口』のようにコンテンツとして優秀で、知名度のある作品がVR化するという流れは今後、増えていくといいなと思っています。まだ、なかなかVRだけでコンテンツを作るというのにはハードルの高い部分がありますからね。

山口氏:
私はやっぱり『バーチャルキャスト』ですね! 今もライブ配信をやっております!

一同:
(笑)。

山口氏:
それはさておき、最近に出たVRコンテンツとなりますと『進撃の巨人VR』ですね。あの低価格でこのクオリティはすごいなと感じました。

ただ元開発の人間で、しかも社長業をやっている身としては、「これってちゃんと利益出ているのかな?」とも考えてしまって(笑)。

──ああ……(笑)。

山口氏:
こういうことを考えてしまうの、本当にダメですよね(笑)。

大鶴氏:
ついこの間、ユニバーサルスタジオジャパンで『鬼滅の刃』のVRを体験する機会があったんですけど、私も開発者視点で「どうやっているんだ、これ?」って見ちゃいましたね。VRゴーグルを外したら、何が見えるんだろうって(笑)。

なので、ちょっと純粋に楽しめなかった部分もあるんですけど、これもVRコンテンツとしては非常に優秀で、没入感を追求しているものになっていて面白かったですね。

──元々、身体が動くアトラクション的な要素とVRというのは相性が良いのかなと思っていまして。身体にも刺激が来ると、単純に臨場感が増しますよね。

大鶴氏:
そうですね。没入感を高めるための要素をしっかりコンテンツの中に採り入れているんです。だから、家で遊ぶだけがVRじゃないという可能性は、もしかしたらあるんじゃないのかと考えたりもしますね。

日本のユーザーは変身願望が強いからトラッカーがたくさん売れ、その技術も発展した?

──御二方はVRの黎明期から、その進化の過程を見られてきたと思うのですが、ここ数年におけるVRの進化はどのように捉えられていますか? このようなところが発展した、優れたものになったとか、明確に以前とは違うものになったと感じるものはありますでしょうか。

大鶴氏:
やっぱり、Meta Questに代表されるスタンドアロン型VRヘッドセットの形が進化してきたなと思います。最初の『VRカノジョ』の時は有線で、コントローラもトラッキングも無くて、結構できることに制約があったんです。その当時を思えば、今のスタンドアロンの進化はすごいです。

今、VRを始めている方もスタンドアロンからが多いですからね。ただ一方で、その進化がどれだけすごいのかは、スタンドアロンから始めた人には分かりにくいところもあるんですよ。コントローラを使うとか、その辺の基本は変わっていませんから。なので、その辺りの進化は今後の課題のひとつになっているように思います。

山口氏:
自分はボディトラッキングですね。今、ソニーさんの「mocopi」とか色々出ていますけど、ああいうところが発展しているのはすごいと思います。あと、ボディトラッキングのニーズって日本が一番多いらしいんですね。

──そうなんですか!?

山口氏:
例えばHTCさんが出したトラッカーって、本来はラケットやモデルガンに装着して、コントローラとは違う臨場感を味わうことを目的にしていたらしいんです。

けど、日本人は膝とかにつけて全身トラッキングを可能にするとか、まったく違った方向に活用する人が多かったようでして。それで日本が一番、トラッカーが売れたという話を元HTCの方から聞いたことがあります。

──なるほど、使い方によって遊び方を拡張したわけですね。

山口氏:
ですね。トラッカーってふつう2個ぐらいあればいいんですけど、日本はひとりひとりが5~6個買うんですよ。それでトラッカーが不足した、なんてこともあったみたいです。

あとはフェイシャル機能、目線が分かるというものですね。一部のヘッドマウントディスプレイにあるものですが、本来はスーパーマーケットの棚をVRで再現した時、人間はどのような目線で棚を見るのかなど、そういう目的で使うものだったらしいんです。けど、日本のユーザーの方々は可愛いアバターの黒目を動かしたいがために使うという(笑)。

『VRな彼女』インタビュー:『VRカノジョ』後継作が向き合う、ド直球タイトルゆえの四苦八苦とは?_018

──そういうニーズも日本が特に多いと。

山口氏:
そうなんですよ。それでHTCさんがフェイシャル系の生産を中止にでもしたらヤバいぞってなって、買い占めが起きたりとか(笑)。

だから、本当にVRのキャラクターをリアルに投影する技術はすごく進化してきていますし、手軽になってきているなと思いますね。

──なんでしょう……日本のユーザーは元々実用的だったものをエンタメとして消費すると言いますか、楽しくしちゃおうという考えが根底にあるんでしょうか。

山口氏:
あと、アバターも今ではだいぶ変わりましたよね。Metaさんのアバターって、昔は下半身と腕がなく、手だけというデザインでしたが、あれって、海外ではああいう必要最低限のものがあれば十分というのがアバターとしての基本的な考え方なんです。

でも、日本……いや、アジア圏は違うんですね。実際、下半身があるかないかで没入感が変わるんですよ。脳を騙すと言いますか、自分の足があることによってこの世界に入り込んでいるという実感が生まれやすいんです。自分は「足があった方がVR酔いを起こしにくい」と思っています。

──足があった方がVR酔いを起こしにくい、ですか。

山口氏:
あくまでも僕の勝手な自論です。逆に下半身がないと脳を騙し切れないから、VR酔いが起きるんじゃないのかと思っているんですね。

──なるほど……興味深いです。あと山口さんはVRコミュニティ周りも活用されていると思いますが、日本のVRユーザーの変化って感じられますか?

山口氏:
若い人が多くなったとは思いますね。あと多分、『VRChat』の影響だと思いますが、クリエイターと呼ばれる人たちが本当に増えたと思います。

──確かにクリエイティブな人は増えた印象がありますね。自分のアバターを自分で作ったりして、VR空間が表現の場として確立されてきているように思います。最近ですと、コトブキヤさんのようにアバターを作る企業さんも増えてきていますし。なんというか……皆さん、可愛い姿になりたい思いが強いのでしょうかね。

山口氏:
どうなんでしょうね……って、「お前が言うな!」ですけど(笑)。「だって、みんな美少女になりたいんでしょ?」と思います。

大鶴氏:
実際、変身願望が日本人には強いと思います。VRの話をあちこちで聞いていると、世界ではそれが日本特有らしいんですよ。

『VRな彼女』インタビュー:『VRカノジョ』後継作が向き合う、ド直球タイトルゆえの四苦八苦とは?_019

──確かに幼いころとか、『仮面ライダー』のようなヒーローになりたいみたいな変身願望を抱くことはありますね。その願望と欲求を叶えるプラットフォームとして、VRが成長しているんじゃないのかなと思ったりします。

大鶴氏:
海外だと、自分自身をVRに投影させたい、自分そのままがVRの世界に入り込む願望が強いみたいなんですね。けど、日本人は自分ではない違う人になりたい願望が強いようで。

山口氏:
少し前に目にした考え方なのですが、宗教観とかもあるらしいんですよ。仏教って転生、生まれ変わる概念があるじゃないですか。いま、異世界転生を題材にしたライトノベルやアニメが流行っていますけど、あれもそういうのから来ているようなんです。

まあ、要はみんなリアルが嫌なんですね(笑)。だから異世界に転生してヒーローになりたい、チヤホヤされたいということに繋がるんだと思います。

だから日本はそういう考え方が普通に受け入れられる一方、欧米とかでは受け入れられにくい、理解できない場合もあるらしいんですよね。その関係で、異世界転生が題材のアニメを放映できないところもあると聞きます。

──各所の文化というか、そういう根底になるものがあってのエンタメというわけですね……。

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編集者
オーバーウォッチを遊んでいたら大学を中退しており、気づけばライターになっていました。今では格ゲーもFPSもMOBAも楽しんでいます。ブラウザはOpera

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