桜井さんの若さって……どうなってるんです?
──個人的なご質問となってしまうのですが、桜井さんはいつも変わらずお若いですよね。最終回でも「いままでよりトシを取っているけど……」といったことを話されていましたが、それでもお若い印象があります。なにかアンチエイジングの秘訣などはあるのでしょうか?
桜井氏:
いや、老けてるわ!
──いえいえ、それこそ『ジョジョの奇妙な冒険』作者の荒木飛呂彦先生のように、年齢を重ねても変わらない印象がありまして……。
桜井氏:
うーん、本人としては、やっぱり順調にトシはとっていますよ。だって、ほうれい線を触ると固いですもん。それと、荒木先生は別格です。一緒にすること自体がおこがましい!
たぶん、このインタビューで撮影された写真を見ても、読者のみなさんは「そんなでもねえだろ」と言われるはずです。
──では、なにか健康の面で気にされていることなどはあるのでしょうか?
桜井氏:
そうですね……「炭水化物を控えている」とは絶対言えないなぁ。
きのうもハロウィンアフタヌーンティーとか食べてたし(笑)。
でも、原則的には炭水化物は量を控えるようにはしています。
もしごはんがあっても小盛にするようにしていますね。
──その食生活はずっと続けていらっしゃるのでしょうか。
桜井氏:
まぁまぁ続いてますね。
あとは、ある程度の運動もしています。きのうもおとといもたくさん歩きましたね。
休日だったきのうは、東京タワーを歩いて降りたりしていました。
──えぇ!?
桜井氏:
東京タワーまで散歩に行ったんですよ。上りは流れでエレベーターを使っちゃったけど、下りは歩きで。でも、全然楽ですよ。上るのも、そんなに大変ではないと思います。
──それは桜井さんだからツラく感じられていないだけかと(笑)。
桜井氏:
いや、そんなことないと思いますけど(笑)。
あとは、日に焼けることも、やや避けていますね。皮膚にダメージが入ってしまうし、やっぱりシミとかも抜けなくなります。だから、日焼けはどうしても……と言いつつ、広島旅行でロードスターを借りてオープンで走っていました(笑)。
──X(旧Twitter)で拝見しました。広島まで行かれていたんですね。
桜井氏:
これは雑談なのですが、「マツダ」って広島がお膝元なんですよ。
広島空港に新しくマツダのレンタカーができたみたいで、そこでロードスターを借りたら新車だったんですね。おろしたての、200kmしか走っていないやつ。
「これはラッキー」と思い、走行距離を倍以上にして返しました(笑)。
元々はホンダのビートに乗っていたので、オープンカーはずっと好きではあるのですが……日焼けのこともあり、なかなか選べなくて。久しぶりに乗れて、楽しかったですね。
──さきほどの食生活や運動のお話にも関係するのですが、桜井さんは私生活の中でも「いい習慣」を大切にされているのではないかと感じました。試行錯誤されることもあったと思うのですが、「いい習慣を積み重ねていこう」と思ったキッカケなどはあるのでしょうか?
桜井氏:
ないですね。
それは本当に「階段」みたいなもので、AがあるからBがあり、BをよくしたらCがありという積み重ねの結果だと思うんですよね。たとえば、ある日ある時になにかドンと雷が落ちて、すごくよくなったわけではありません。なんだかんだで積み重ねなのだと思います。
やっぱり、自分も昔は若いときがあり、うまくいかないときや至らないことは山ほどありました。そこから経験を積み、いまに至るということです。だから、全部が最初からできていたわけではないと思うんですよね。なので、すべてが「積み重ね」で構成されていると。
──桜井さんがうまくいかなかったことがあったというのは、いまからは想像できません(笑)。
桜井氏:
……そうだ、「若いころ」で思い出したことがあります。
『星のカービィ 夢の泉の物語』の攻略本で、当時の私の写真が映っているのですが、よく「老けている」と言われるんですね。だから、逆にそれから段々と若返っているように見えるというようなお話も聞いたりするのですが、あのときは撮られたコンディションが超最悪だったんです。
それまでは『夢の泉』の開発で徹夜を繰り返し、ストレスも甚大だったから胃がものすごく荒れちゃって、唇もかゆい! そんな状態で笑え笑えと無理に笑って撮ったものです。病人のようなものだから、あんまりいじらないでほしい…
見た目はコンディションにすごく依存すると思うんですよね。すごく苦労しているときは、やっぱり表面に出てくる。いまも疲れていることもいろいろあるんですけど……でも、対外的には元気にしなきゃね、と思っています。
──現在は最低限のラインを維持しつつ、無茶をしすぎないようにコントロールされているのでしょうか。
桜井氏:
そうですね。
たとえば、『スマブラDX』を制作しているときはめちゃめちゃに忙しくて、40時間仕事で4時間睡眠をしていたような時期がありましたが、あの生活がいまの体に耐えられるわけがありません。だから、「その日の仕事はここまで」をしっかりと区切って、ちゃんと生活をして寝るようなことは、チャンネルの制作中にも心がけていました。
忙しすぎて睡眠時間を削るようなことはしない。仕事を次の日に引きずらない。ただし、そのぶん「普段の平日の仕事がものすごく濃密になってしまった」という弊害もありまして、アクセル全開でやっています!
むしろ超スピードでいろいろやらないと間に合わないし、いろいろな案件をぶん回してやっているので、ものすごく疲れます。スタッフに協力してもらいながら、とにかく自分の仕事やパフォーマンス、費用対効果を最大まで上げるようなことをしないと、とても追いつかない。
──桜井さんの仕事スピードは通常でも早いと思うのですが、現在はさらに超スピードになっているんですね……。
桜井氏:
自分でも「ここまでのスピードで回している人はなかなかいないだろう」と思うくらいには、早いです。
でも、速度重視で迷惑をかけるところもあるんですけどね。本当はもっと丁寧にいろいろなところを見たい時にも、一部をはしょって、時間を区切って効果的に話を進めないといけないようなこともあるので。
番組を通してなにかをしてほしいなんて、言いません
──ちょっと話題を変えますが、「桜井政博のゲーム作るには」が海外の授業で使われたこともあるとお聞きしました。ほかにも大学などの教育機関から「この番組を教材として使いたい」といったお声がけがあると思うのですが、桜井さんとしてはそういった打診は歓迎されているのでしょうか。
桜井氏:
はい。どんどん使っていただければよいのではないかと思います。
そこから、チャンネル内のほかの動画も見ていただければ、かなり濃密になるのではないかと。
でも……まとめ動画って、見ていて疲れないですか?
やっぱりひとつひとつが密度高くやっているのはたしかなので、まとめて見ると、たったの30分なのにかなりのボリュームを得られたような印象になってしまうと私は思っているのですが、傍から見てもそうでしょうか。
──個人的ではあるのですが、ひとつひとつが短いテンポで構成されているので、一度に見てもそこまで疲れるような印象はありませんでした。「密度が濃いけど、飲みやすい」と言いますか。
桜井氏:
翻訳された結果として、海外の授業でもそう感じられるかはわからないですけどね。
でも、おそらくふつうの30分の授業の内容ではないと思っています。密度が山ほど詰まっている。だから、それぞれの人が見やすいペースで見ていただければなと思います。
それと、外部には申し訳ないのですがソラが連絡先を持っていないこと。これがなによりも問題なんですよね。どこかの大学がこれを使いたいと言って連絡を寄こそうとしても、それができない可能性がまぁまぁ高い。
私に依頼したい案件はとにかくみんな手探りでやってきます。ファミ通の編集部などから人づてに話を通してくるとか。
──どうしても連絡のハードルが高くなってしまいますよね。
桜井氏:
これは、自分が個人でやっているからしょうがないのもあるんですけどね。
たとえばソラがある程度の規模の会社化をされているのだったら、窓口を作って、窓口担当の人が振り分けとかを行ってくれればよいのですが、そうではありません。基本は直接私に繋ぐ形になりますし、多少は慎重にしているところもあります。
窓口くらい作ったらいいのかもしれないけど、それをひとつずつ返信するのも結構な作業になったりするし、いたずらしてくる人もいるだろうし。ソラは人材募集という意味で、人を求めているわけでもないですから。
──「桜井政博のゲーム作るには」は、これからも多くの人に見られていくチャンネルだと思うのですが、「こんな形で広がってほしい」といった希望のようなものはありますか?
桜井氏:
さきほども似たような話をしていたけど、やはり「それぞれの人がやりたいことをやる」というのが大事だと思うんですよね。あくまで、自分の話はほんの知識のひとつ、経験のひとつに過ぎない。それを基に、それぞれの人がなにをやるのかが大事です。
なので、「(このチャンネルから)なにかをしてほしい」なんて大それたことは全く言いません。このチャンネルを参考にした結果として、なにかができるかもしれない。その可能性は、それぞれの方々が磨いていただければと思っています。
──「桜井政博のゲーム作るには」は、ゲーム制作に限らず、仕事における「ひとつの正しい例」を提示してくれるものだと感じています。職場でのコミュニケーションや、考えの伝え方なども含め、動画を通して「気づき」を得られるのは唯一無二だと思っています。
桜井氏:
やっぱり、その意味でも【A: 仕事の姿勢】はおすすめですね。
でも、説教っぽくなると、どうしてもうさんくさくなりますよね。そこは、まぁまぁ気をつけていました。どうしても避けられないこともあるかもしれないけど、YouTubeの多様性を想定すると、自己啓発のフリをして罠にかけようとしている人もいるかもしれません。
その人にとって悪気はないんだけれども、結果的にいい方向にならないとかも、もちろんありえるし。それはユーザーも警戒していることだからこそ、発信側は気をつけなければなりませんね。
──そこの塩梅はかなり気を遣っていらっしゃったんですね……。
桜井氏:
まぁ、YouTubeはそれぞれの人が見ようと思ったものがどんどんおすすめされていく仕組みなので、そういう世界に全く関係のないタイムラインが並んでいるところも、もちろん多いとは思うんですよね。
だけど、いざ「なんらかのネガティブを持って注目を浴びよう」といったところに引っかかり始めると、そういうものばっかりタイムラインに並ぶ可能性もある。ある意味、YouTubeを含むSNSのツラいところですよね。
──「桜井政博のゲーム作るには」をすでにご覧になっている人、そしてこれから見ようと思っている方に、桜井さんからお伝えしたいことはありますか?
桜井氏:
欲を言えば、ぜひほかの人に伝播させてほしいですね。
とにかく1回見れば、それぞれの人にとって有効なことがいろいろあるかもしれません。そこをなるべく最大限に活かせた方が、自分がこのチャンネルを作った価値も上がります。ぜひ、いろいろな方におすすめしていただければと思います!
「桜井政博のゲーム作るには」は、なにかしらの「気づき」を得られる番組だ。
それは仕事をするうえで大切なことであったり、ふつうに遊んでいるだけでは気がつかない「ゲームの面白さ」であったり、あるいは意外なゲームの豆知識であったり。
それが260本もあるのだから、全部見れば、確実になにかひとつは「気づき」になる。そこがこの番組のすごさ。ひとつとっても濃密なお話なのに、260本もある。この本数を「ALL CLEAR!」すれば、間違いなくどれかひとつは身になるはず。
その「気づき」について、私はものすごく思い出深いことがあります。
すみません、ちょっとここから個人的なお話になります。
まさに桜井さんがすべての動画を収録し終えていた2年前……そして一度この番組についてのインタビューを実施した時、私はちょうど20歳でした。
あの時の私はライターとしては全然駆け出しで……そこまで正確に「面白い原稿とはなんなのか」を把握していませんでした。そしてこの2年前のインタビューでの「桜井さんとの原稿のやり取り」が、私にとってものすごく衝撃的なことだったのです。
メタなことを言ってしまうと、こういった「校正」は、どうしても「この表現はもうちょっとマイルドに」、「ここは会社的にボカして」といった、原稿のトーンを落としてしまうようなものが多くなってしまいます。それは社会的にも仕方のないことだし、どんなにライターや編集者が「こっちのほうが面白いのに!」と思っていたとしても、そこはルールとして受け入れるしかありません。
だけど、桜井さんの調整は、ちょっと違います。
いや、だいぶ違います。
基本的に、「こうしたほうが、よりよい内容になるのではないでしょうか」と、原稿の面白さをアップさせる形での調整を入れてくださるのです。
しかも、そのすべてが的確なコメント。
もう、私には雷が落ちたような感覚でした。
ここまで的確なコメントを入れてくる方は、桜井さん以外にほとんど見たことがない。それどころか、原稿内についているコメントのひとつひとつから、桜井さんのあの声が脳内に響いてくるような……。
本当に、忘れられません。2年経ってもあのときの修正原稿をたまに見返して、あまりの的確さに謎の笑いがこみあげてくるくらいに、忘れられません。
そして実際に、あの時の経験が、ライターの仕事をするうえでずっと活き続けています。20歳のあの時に桜井さんとお仕事ができたことは、私にとって、一生の宝物だと思います。
そんな「気づき」を、動画を通して誰でも得ることができる。そう考えると、改めて「桜井政博のゲーム作るには」は、ものすごく価値のある番組なのではないかと思うのです。
誰でも、あの桜井さんとお仕事をしたような経験を得られる……かも!
それって、すごいことじゃないでしょうか!?
ぜひ、みなさんも「桜井政博のゲーム作るには」を通して、なにかの「気づき」を得てください。その「気づき」は、あとになって、いつか必ず活きてくるはず。5年後か、10年後か……どこかできっと人生の役に立ちます。
だから、お言葉を借りしてしまい恐縮ですが……
“いますぐやれ!!” “いますぐ見るんだ!!”