「YES」と「NO」の二択だけで国家を運営し、権力バランスが崩れればたちまち悲惨な最期を迎える、手軽でブラックな国政ゲーム『Reigns』シリーズ。
それがアメリカのテレビドラマシリーズ『Game of Thrones』(ゲーム・オブ・スローンズ)とコラボした、シリーズの3作目が公開されました。
『Reigns: Game of Thrones』です。
この作品は現地時間12月6日(日本時間12月7日)に発表されるアメリカのゲームの表彰『The Game Awards 2018』の、モバイルゲーム部門(Best Mobile Game)にノミネートされています。
今年のモバイルゲーム部門のノミネート作は以下の通りです。
・Donut County
・Florence
・フォートナイト
・PUBG MOBILE
・Reigns: Game of Thrones
他の作品は上記リンク先ですでに紹介済みなので、今回は残っている『Reigns: Game of Thrones』を取り上げたいと思いますが……。
ただ、この作品はドラマ『Game of Thrones』を知っているかどうかで、おすすめできるかどうかが変わります。
知っている方には、文句なくおすすめです。
知らない方には、あまりすすめられません。
『Game of Thrones』(ゲーム・オブ・スローンズ)は魔法やドラゴンが存在する西欧ファンタジーの世界を舞台とした物語ですが、中世の叙事詩のようであり、歴史大河ドラマのような内容です。
権力や情事を巡る、残酷で淫靡なシーンが多く、子どもには見せられないハードコアな作品。
そして歴史ものであるため、登場人物が非常に多く、設定も複雑です。
そんな原作をこのゲームは一切、もはや清々しいほどに説明しません。
「プレイヤーは原作を熟知している」という前提でゲームは進行します。
そのため原作を知らない人だと、何がなんだか、誰が誰だが、サッパリわかりません。
「これをやれば『ゲーム・オブ・スローンズ』が好きになる」という感じでもなく、「ファンアイテム」に近いアプリといえるでしょうか。
価格は480円。 買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
Steam版も公開されています。
ゲーム開始時に、まず担当する主人公を選びます。
といっても、最初に選べるのはドラゴンを連れた美女「デナーリス」だけ。
始まると同時に目の前に、王となる者が座る「鉄の玉座」が現れ、座るかどうかを問われます。
原作を知っている人だと、これを見て「おいおい、それってもうラストじゃん!」と驚くことでしょう。
そう、この作品は原作のストーリーを追うものではなく、すでに終盤の状態です。
そこから各登場人物が「もし”王”になったら」という“ifストーリー”が展開されます。
『Reigns』シリーズは王や女王になって国家を運営するゲームでしたが、それは今作でも変わらないということですね。
王となった主人公の前には、次々と謁見者が現れて質問や提言を行います。
プレイヤーはそれに「はい」か「いいえ」で答えていきます。
カードゲームのような演出になっていて、返答は出されたカードを左右にフリックすることで行います。
YES/NOで答えられない質問もありますが、カードを左右に動かして、そのまま指を離さなければ、なんと答えるのかを確認できます。
そして返答により、4つの王としてのステータス「権力・信仰・人々・金」が変動します。
たとえば神殿の建設を要求されて、応じると信仰が増えて金が減り、拒否すれば信仰は減って権力や金は増えます。
このステータスは増えすぎても減りすぎてもいけません。
たとえば権力は、なくなれば他の勢力や北方の脅威「ホワイトウォーカー」の侵攻に耐えられなくなりますが、増えすぎると暴君と呼ばれ、謀反を起こされてしまいます。
常に中庸を保つよう選択しなければなりません。
とはいえ、どう答えればどう変動するのか最初はわからないので、4つのステータスすべてのバランスを取るのは至難の業です。
おまけに今作は突発事故が多く、暗殺されたり、武術大会で負傷するといった、国のステータスにかかわらない死も散らばっています。
加えて戦争が起こることもあり、ここで負けても死が待っています。
『Reigns』らしい死にまくりなブラック展開は相変わらずで、しかも死にざまが集団に袋叩きにされるとか、毒の風呂に放り込まれるとか、今まで以上に凄惨。
それはまさに『Game of Thrones』であり、ブラックの相乗効果で極めて漆黒です。
『Reigns』はできるだけ長く王位を維持する生き残りゲームであると同時に、謎解きアドベンチャーゲームでもあり、特定の回答を行うことで「目標」が達成され、それによってカード(新しい質問)が追加されていきます。
今作の場合、選択できる主人公も増えていきます。
主人公が違えば、開始時の状態も変わります。
ゲームの舞台「ウェスタロス」(七王国)には「スターク家」や「ラニスター家」、「ドーン」(マーテル家)といった領主たちや、最初の主人公であるデナーリスが別の大陸から連れてきた蛮族「ドスラク人」、奴隷の傭兵である「穢れなき軍団」、ホワイトウォーカーを防ぐ北の壁を守る「ナイツウォッチ」など、さまざまな勢力が存在しています。
主人公によって誰が味方で、誰が敵かは異なります。
提案を行ってくる側近も異なり、ときには他国と交渉したり、側近を変えたりする選択を行うこともあります。
しかしそのため、原作に精通していないと誰がどんな役割で、どの勢力にいて、誰と関係があるのかなどがわかりません。
冒頭で述べたように、このゲームに「人物名鑑」や「用語辞典」のようなものは一切ありません。
そして『Reigns』シリーズをやったことがある方ならご存じの通り…… このゲームの謎解きはかなり難しく、それでなくても国家のバランスを取るのが大変なのに、それを維持しながら新展開を探すのは骨が折れます。
「二択なんだから簡単だろう」と思ったら大間違いです。
結果として、原作の知識が中途半端な人が謎解きを進めていくのはかなり困難。
Wikipediaを少し見てどうにかなるレベルではないです。
ゲーム自体はサクサク選択してサクサク死ねる、手軽なシステムなのですが……。
せめてドラマのシーズン1ぐらいは観ておかないと厳しいですが、『Reigns』と『Game of Thrones』はとてもマッチしており、ファンなら間違いなく楽しめるでしょう。
『Amazon Prime』や『Hulu』などで視聴でき、日本でも人気のドラマなので、「すでに観た」という人も少なくないと思います。
もし『Reigns』の戦国版や三国志版が出たら、日本でも多くの方が楽しめるでしょう。
「そんな作品のアメリカドラマ版だ」といえば、知らない人でも想像しやすいでしょうか。
ゲーム自体は他のシリーズ作と大差ないので、『Game of Thrones』を知らない方には『Reigns』の1作目か、2作目の『Reigns: Her Majesty』の方がおすすめです。
歴代の『Reigns』も数々の表彰を受けており、今作がアメリカのモバイルゲーム賞でノミネートされるのは自然ではありますね。
Reigns: Game of Thrones
人気の国政ゲームと人気のドラマシリーズがコラボ
・簡易国政アドベンチャー
・開発:Nerial(イギリス)
・販売:Devolver Digital(アメリカ)
・iOS版480円、Android版440円、Steam版410円
文/カムライターオ
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