【レビュー:アークナイツ】“アズールレーン”で知られるYostarの新ゲームはタワーディフェンス。そのゲーム内容とは?

 『アズールレーン』で日本のソーシャルゲーム界に大きな衝撃を与えた、中国のゲームアプリを日本で運営している会社「Yostar」。
 そのYostarが扱う新タイトルとして注目を集めていた“ソシャゲ+タワーディフェンス”が、今年1月16日より中国以外でも正式にスタートしました。
 『アークナイツ』です。

 電ファミではすでに“世界観”についての記事が公開されていますが、このレビューでは正式版の“ゲーム内容”についてお伝えしたいと思います。

 前述したようにジャンルはタワーディフェンス。通称“TD”。
 徐々に溜まっていくポイントを使い、自動で戦ってくれる味方キャラクターを配置、入口から次々とやって来る敵を出口に辿り着く前に撃退する防衛ゲームです。
 どの味方をいつ、どこに置くかが重要で、忙しい操作がないのでスマホでも遊びやすいジャンルです。

 ソーシャルゲームですから、キャラクターの入手はガチャ。
 こう言うと「高レアが出ないと勝てなくなるんだろう」と思われそうですが、そこは戦略次第。
 このゲームは低レアや確定入手のキャラクターでも固有の特徴を持つ者が多く、使い方次第でどのステージでもクリアできるようになっています。
 実際、YouTubeで公開されている攻略動画は、誰でも参考にできるよう低レアキャラを中心にしたものが多め。
 一方で、高レアがあっても簡単すぎるわけではなく、しっかりバランスを調整しているのを感じます。

 しかも課金なしで欲しい特性のキャラを得られる「公開求人」というシステムがあり、課金圧力はYostarのゲームらしく、かなり低め。
 無課金でも問題なく遊べます。

 ゲームの舞台は、死に至る伝染病が大陸全土で広まり、感染者と非感染者、感染地域と非感染地域の対立が激化する世界。
 どこかで聞いたような話ですが、中国では2019年4月から配信されており、昨今の出来事とは関係ありません。たぶん。

 プレイヤーが属するのは製薬会社を母体とする武装組織ですが、主人公が毎度おなじみの記憶喪失で、どうして傭兵じみた活動をしているのかは謎。
 さらに多くのキャラクターが何らかの組織に属しており、その背景やエンブレムなども作られていて、非常に凝った世界観を持ちます。

 ステージクリア型のタワーディフェンスで、配信時点(2020/2)では序章から四章まで公開されており、それぞれの章に10~20のステージがあります。
 ボリュームは現時点でも相応の量で、すぐに”アップデート待ち”になってしまうことはないでしょう。

 序盤は敵が少ないため短時間で終わりますが、少しゲームが進めば数十体の敵を迎え撃つことになります。ステージの所要時間は5分ほど。
 ソシャゲとしては長めですが、その分しっかり防衛体制の組み立てを楽しむことができます。

 タワーディフェンスに慣れた人だと「5分じゃ短いよ」「たった数十体?」と感じたと思いますが、最大400体の敵が出てくる長丁場の「殲滅戦」も用意されていて、こちらではTDらしい爽快感と、長期的な戦略を楽しめます。
 ただ、現時点では殲滅戦ステージはふたつしか用意されておらず、そこは不満点ですね……。

メインメニュー。漢字が使われたデザインが非常に良いです。
ヒロインにロバウサギの耳が付いていますが、登場キャラはみんな”けもキャラ”になっています。
人物相関図。かなり凝った人間関係や組織図が存在し、詳細に記されたキャラクターのプロフィールも閲覧できます。
主人公は「ドクター」と呼ばれており、問題の伝染病に深く関わっているようですが……。

 タワーディフェンスには敵の進行ルートが固定されているものと、こちらの配置に合わせて変わるものがありますが、このゲームは両方

 大半のステージはルート固定型で、敵は決まった道順で出口に向かいます。
 ただ、一部のステージでは「障害物」を設置することができ、これでルートを塞ぐことができます。
 出口に辿り着けないようにすることはできませんが、配置次第で大きく迂回させたり、有利な場所に誘い込むことが可能。

 敵が進行中の道を塞いだ場合は、移動ルートが出口に向かえる別の道に変更されます。
 これを利用して敵を行ったり来たりさせる、ルート可変型TDの攻略法「ジャグリング」を使うこともできます。

 固有の特徴としては、「敵は後から配置されたキャラクターを狙う」というものがあります。
 このゲームは配置した味方が敵の攻撃を受けるTDで、道の上で近接戦闘を行うキャラだけでなく、高台の上にいる射撃キャラも敵の遠距離攻撃の標的になります。
 よって防御力の低いキャラは先に配置して、盾役は後に置くべきなのですが、早く進行ルートを盾役で塞がないと突破されてしまうことも。
 このジレンマがよくできていて、特有の攻略要素になっています。回復キャラの使い方も重要。

 配置時にキャラクターの「向き」を決め、それによって攻撃範囲が変わることも特徴です。
 敵を押したり引っ張ったりできるキャラもいて、それを使って穴に落とせる地形利用が可能なステージもあります。

中央でロープに縛られている人に注目。このまま穴の中に引きずり落とせば一撃で倒せます。
ステージごとの変化が大きく、様々なキャラに活躍の場があるマップデザインになっているので、余裕ができたらメインの12体以外に、状況に合わせて入れ替えるサブメンバーも育てておきましょう。
ジャグリングの解説1。このままでは”B”の位置から敵に突破されそう!
でも”A”の障害物を撤去して、”B”の位置を塞いでしまうと……
ジャグリングの解説2。”B”を塞がれた敵は、”A”に向けてバックしていく。
敵が”A”に近付いたら、”B”を開けて”A”を塞ぐことで、また敵は”B”に戻っていく。
これを敵が倒れるまで繰り返すのがジャグリング。
使えるステージは少ないのですが、使えるなら非常に強力。先日のイベントでも有用なステージがありましたし、覚えておくと良いでしょう。

 そして今作の要点と言えるのは、各キャラクターが多彩なステータス・スキル・特性を持っていること。
 前述したように低レア(★3)でも最高レア(★6)に負けない能力を持つ者がいて、特定のキャラしか持っていないスキルもたくさんあります。
 よって“タワー”(防衛兵器)の種類は、キャラクターの数だけあります。

 一応ゲーム的には、各キャラクターは”先鋒・前衛・重装・狙撃・術師・医療・特殊・補助“の8種類に分けられているのですが、同じ狙撃タイプでも連射キャラ、範囲攻撃キャラ、スナイパー型など様々で、使用感はそれぞれ異なります。
 近接戦闘キャラも打撃型、守り専門、回復も可能、長射程、すぐに再出撃が可能など色々。
 使用スキルを切り替えることで特性が変わるキャラもいて、多種多様な戦略で戦えます。

 配置したキャラは任意のタイミングで撤退させることができるので、入れ替えも重要で、それは既存のタワーディフェンスにはなかった戦略を生んでいます。

 「ガチャ運が悪いと必要なキャラが手に入らず苦戦するのでは?」と思った方もいると思いますが、冒頭で述べた、必要な特性を選んで人員を募集できる「公開求人」でそこを補っています。
 しかも公開求人に必要なアイテムはデイリーミッションなどで手に入るので、つまりキャラは課金しなくても日々増やしていけます。

 また、負けてもスタミナ(理性)の大半が返却され、スタミナ消費なしで練習できる「演習チケット」もあり、ソシャゲとしては高難度ですが、TDらしい戦略性を保ったままでタワーディフェンスに慣れていないユーザーに配慮しようとしているのが伺えます。

あえて★4以下と確定入手のキャラだけで構成した低レア編成。
フェンとヴィグナは低コストで出撃可能、かつ配置コストを稼げる序盤に便利なキャラ。
メランサは攻撃、クオーラは防御で最高クラスの活躍を見せ、ロボットのLancet-2は出撃可能数に含まれません。
低レアにも尖ったステータスを持つ者が多いので、単純に「高レアの方が強い」とは思わないように。
特に★6には、しっかり育てないと本領を発揮しない晩成キャラもいます。
アズールレーンで知られるYostarのゲームなので、登場するのは女の子ばかりだと思っている人も多いようですが、こんなイケメンキャラもいます。8割は女性キャラですが。
ガチャ(人材発掘)は最高レア(★6)が50回出なかったら、引く度に★6の確率がどんどん上がっていくありがたい仕様。
課金ガチャに必要なアイテムはデイリーミッションや殲滅戦で手に入るので、課金しなくても得られます。おかげで課金の必要性をほんとに感じません。
アズールレーンと同じく、収益のメインは衣装などの方なのでしょうね。
『XCOM』の基地のような、本部を拡張していく要素もあり。
休憩室には好みの家具を自由に配置でき、フレンドの基地を訪問することもできます。
キャラがイスに座ったりベッドで寝たりするのが見ていて面白い。

 ただ、いくつか気になる点もあります。
 ひとつは「ストーリーシーン」の冗長さと解りにくさ。

 本編ステージの開始前とクリア後にはキャラクターが会話するシーンが出てくるのですが、アニメのセリフを映像なしで読んでいる感じがあり、妙な解り辛さというか、不自然さがあります。
 冗長に感じるのは、わかり辛い会話を延々と見せられるからだと思われます。

 もしかすると翻訳の問題であり、原文の中国語版だとそこまで違和感はないのかもしれませんが、中国語がわからないのでなんとも言えません。
 誤訳があったり、文章がおかしかったりするわけではないのですが……。

 もうひとつは「自動指揮」。
 最高評価でクリアしたステージは、そのときのプレイを自動で再現することができ、簡単に周回を行えるようになっています。

 もちろん手軽で良いのですが、「以前のプレイを再現する」ということは、ずっと同じ内容の戦いを繰り返し見ることになります。
 ランダム効果のスキルの影響で自動指揮が崩れる場合もありますが、基本的には同じですから、結果として開始ボタンを押して、ただ待つだけになります。

 「ソシャゲの周回というのはそういうものだ」と言われたらそうですが、「どうせ待つだけならすぐ終わってくれよ」とさえ思ってしまう。

 できれば、エンドレスモードが解禁されてハイスコアを競えるとか、敵の登場ペースを早められて最速クリアを目指せるとか、少ないコストでクリアすることで報酬に少しボーナスが付くとか、なにか手動の周回プレイを楽しませる要素や、記録されるプレイを更新したくなる要素も入れて欲しいのが本音です。

病気に対する恐怖のあまり、健常者が感染者を「出ていけ!」と迫害する世界。
いやー、こわい世界ですねー。フィクションでよかったですねー。
ストーリーはともかく、ステージ間の会話に違和感を感じる人は少なくないと思います……。
自動指揮エラー発生! 手動操作推奨警告。
確率で回避やクリティカルが発生するスキル、標的がランダムな攻撃、どこに来るかわからない敵の特技などで、自動指揮が崩れる場合もあります。
でも、完璧なパターンを構築できたら、あとは見てるだけに……。
一通りのステージをクリアしたらTDとしての楽しみがなくなるので、そこは何とかして欲しいところ。

 私は当初、このゲームに期待していませんでした。
 「タワーディフェンス+ソーシャルゲーム」という作品はスマホでは多く出ていて、そのほとんどが撃沈しているからです。
 兵器の戦略的な配置と計画性のある防衛網の構築、それにより多数の敵を殲滅していく無双感、そうしたタワーディフェンスの楽しさは、短時間で簡単に遊べて、課金ガチャでキャラをそろえていくソシャゲとは相容れませんでした。

 しかし今作は、どのキャラも使いたくなるほどのキャラの多様さと、それによる育成の楽しさ、状況に応じた入れ替えや配置順による狙われやすさなどの新しい攻略要素により、既存のタワーディフェンスにはなかった面白さを作り出しています。
 一方で、敵の進行ルートをコントロールできる『Fieldrunners』、地形を罠として使える『ダンジョンウォーフェア』、近接戦闘で敵を食い止める『Kingdom Rush』など、既存のタワーディフェンスをよく研究し、その長所を取り入れているのを感じます。

 Yostarが扱うゲームの課金圧力の低さもあって、長期的に楽しめる新作タワーディフェンスとして、また『アズールレーン』に続く中国からの新ソシャゲとして、人気の続きそうな作品です。

アークナイツ

Yostarが運営するタワーディフェンスのソーシャルゲーム

(画像はアークナイツ – AppStoreより)

・タワーディフェンス、ソーシャルゲーム
・開発:HyperGryph(中国)
・運営:Yostar(中国 / 日本)
・本体無料、課金あり

文/カムライターオ

著者
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。
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