ローグライクカードゲームのブームを牽引するSteamで大ヒットの話題作がSwitchやPS4を経て、iOS/Androidにも登場。『Slay the Spire』レビュー

 一昨年から人気となっている新興のゲームジャンル「ローグライク・カードゲーム」
 TCGのような戦略性の高いカードバトルと、プレイを通して山札を構築していくデッキビルドのシステム、高いランダム性により繰り返し遊べるローグライクの楽しさが組み合わされたゲームだ。

 その火付け役となったSteamの大ヒット作が、昨年発売のPS4版やNintendo Switch版を経て、ついにiOSにも登場した。
 『Slay the Spire』だ。

 ローグライクカードゲームは、この作品が元祖というわけではない。
 しかし近年の人気と多くの追従作の登場は、この作品が発端であることは間違いない。
 演出のクオリティの高さ、1年以上のテストを経て正式公開され、現在も調整が続いている練り込まれたバランス、そして断片的に明かされていく深い世界観は、多くのプレイヤーを夢中にさせている。

 筆者が特に素晴らしいと感じたのは、その遊びやすさだ。
 深い戦略性と高い難易度で知られるゲームだが、実は他のローグライクカードゲームと比較すると、解りやすくて難しすぎず、思いのほかプレイしやすい。
 それでいて、慣れれば慣れるほど多彩な戦い方を駆使できる、底なし沼のようなゲーム性がわかってくる。
 この優れたバランスは長年の調整の賜物と思われ、人気なのも納得だ。

 先日登場したiOS版は1220円。他機種版の約半額ながら、新キャラも追加された最新バージョンを楽しめる。
 Steam版やNintendo Switch版は2570円、PS4版は2618円
 Android版は現在開発中とのことだ。

 プレイヤーはデッキ(山札)から配られる手札を使ってバトルを行う。
 アタックのカードを出せば敵にダメージ、防御のカードなら受けるダメージを軽減できる。
 初期デッキに含まれているカードはどれもシンプルで、初心者でも悩むことはないだろう。

 敵の頭上には行動マークがあり、攻撃してくるのかスキルを使うのか、攻撃なら何ダメージを与えてくるのかがわかる。
 10ダメージを与えてくるなら、防御カードを使ってブロックを10以上にすればノーダメージとなり、スキルを使うなら攻撃はしてこないので防御は必要ない。
 相手の行動を見てカードを選ぶことができ、結果はきちんと計算できる。

 だが、カードにはコストがあり、その分だけエナジーを消費する。
 そしてエナジーは通常、ターン毎に3しかない。つまりコスト1のカードでも3枚しか使えない。

 攻撃していると防御できないことが多く、防御カードを全部使っても相手の攻撃を防ぎきれないこともある。
 ターン終了時に手札はすべて捨てられるため、カードを溜め込んでおくこともできず、欲しいカードが手元に来ないことも多い。

 ではどうするのか?
 強化カードを使って強くなるまで耐える、毒を与えて防御に徹する、弱体効果を継続して与える、といった戦略が必要になる。

 戦闘に勝つと3枚のカードが提示され、その中のひとつをデッキに加えられる。
 自分の戦法に合わせたカードを選択し、狙った戦い方を常に行える、いわゆる「コンセプトデッキ」をプレイの中で作り上げていくのだ。

基本、このゲームは防御優先。相手の攻撃力に対してこちらのHPは十分ではないので、ダメージはしっかりブロックしよう。
手札のマリガン(配り直し)はないので、相手の総攻撃のときに防御カードがないとピンチになる。
そうした事態を防ぐため、手札を引くカードもデッキに含めておきたい。
カード取得画面。用語の意味は長押しで確認可能。
枠が灰色のカードはコモン、水色はアンコモン、金色はレアで、出やすさに関係している。
カードは休憩所で鍛錬することで強化版になるが、後半になるとすでに強化されたカードが出てくることもある。
欲しいカードがないときは「スキップ」しよう。

 余計なカードを取らないことも大切だ。
 デッキ(山札)のカードが尽きても捨て札がシャッフルされ、新たなデッキとなる。
 つまりカードは(”破棄”されない限り)延々と使い回され、使ったカードもいずれは手札に戻ってくるのだが、デッキの枚数が多くなるほど回転率が下がり、戻ってくるペースは遅くなる。
 必要なカードをまったく引けない手札事故も起こりやすくなるため、あれもこれもと欲張らない方が良い。

 道中にはカードやアイテムを買えるショップがあるが、ここでは余分なカードの除去も行える。
 弱いカードを減らす「デッキ圧縮」も攻略のポイントだ。

 ローグライクでカードバトルであるため、どうしても”運”は絡むが、プレイングでその影響は極力減らすことができ、最終的には戦略と経験がモノを言うことになるだろう。

 戦闘後はマップ画面になるが、そこでのルート選びも重要になる。
 多くの敵と戦ってカードとゴールドを得るか、リスクを冒して“エリート”と戦い強化アイテムの“レリック”を狙うか、それとも戦いを回避してイベントのマスを多く通過し、休憩所での回復とカードの鍛錬を優先するのか。
 プレイヤー自身のスキルと、デッキの状態を考慮して決めなければならない。

ショップ画面。カードやアイテムを購入できるが、カード除去サービスがあるのもお見逃しなく。
初期カードは弱いので、ショップやイベントで減らしておくとカードの引きが安定する。
お金があるときはショップを優先するルートも選ぼう。
マップ画面。このゲームのおかげで、この形式のマップがローグライクカードゲームの定番になった。
まずは攻略のカギとなるカードの強化のため、休憩場所を優先したい。
自信があるならエリートと戦い、レリックをゲットしよう。

 プレイヤーキャラクターは4体用意されており、それぞれ使うカードはまったく異なる。
 もちろん戦い方も大きく変わる。
 最初は1体しか使えないが、プレイを通して自然にアンロックされていき、難しい条件の達成や課金は必要ない。
 早い段階で全員遊べるようになるだろう。

 ここで初心者向けの攻略も兼ねて、各キャラの特徴を紹介しておこう。

 ・悪魔に魂を売り渡した戦士 アイアンクラッド
 攻撃と防御に優れた最初のキャラクター。”筋力”を高めるカードを使って、徐々に攻撃力を底上げできる。ダメージ増加の”弱体化”を付与するカードと併用すれば、強力な攻撃を叩き込める。
 また、防御カードを使いつつ、防御値の分だけ敵にダメージを与える”ボディスラム”を使うことで、攻防一体の安定した戦いができる。
 ターン終了時に防御値がリセットされない”バリケード”があるとさらに安定するが、レアカードなので入手には運も絡む。

 ・動物の頭骨をかぶった女ハンター サイレント
 手数と毒に優れる盗賊のようなキャラクター。攻撃しながらエナジーを増やすカードが多く、連続攻撃を出すことが可能。
 また、次のターンのブロックを増やす”ドッジロール”や、防御しながらカードを引く”バックフリップ”など、優秀な防御カードも多い。
 そして”毒”は、相手の防御を無視して継続ダメージを与えられるため、とても強力。
 最初はこのキャラをメインにするのがクリアへの早道だろう。

 ・自我に目覚めた戦闘ロボット ディフェクト
 自動で戦闘を補助する”オーブ”を発生させる、ちょっとかっこ悪いロボ。オーブの使い方で戦法が分かれる。
 オーブ強化のカードを使い、攻撃オーブを出しつつ自身は防御に徹するか、防御オーブを出して自身で攻撃を行う、もしくはオーブを破壊(解放)しながら、種類を問わずどんどん入れ替えていくかになる。
 使うほど威力が増すコスト0の爪攻撃と、コスト0のカードを手札に戻すカードがあり、コスト0のカードを集めて戦う戦法もあるが、防御を疎かにしないように。

 ・盲目の女修行僧 ウォッチャー
 今年に入って追加された新キャラクター。与えるダメージも受けるダメージも2倍になる”憤怒スタンス”と、他のスタンスに変わる際にエナジーを回復させる”平静スタンス”を切り替えながら戦う。
 ターンが終わっても手札に保持されるカードが多く、普段は平静にしてカードを溜めながらチャンスを伺い、ここぞと言うときに憤怒に変わって攻撃を叩き込んだら、反撃される前に平静に戻るというのが基本。
 憤怒の使い方をミスると即死しかねないので、慎重なプレイングが必要。
 これから引くカードを絞る”占術”付きのカードが多く、手札事故を防ぎやすい。

 それぞれバラエティーに富んだ特徴を持っているのがわかるだろう。
 そして最終エリアに至るには、最初の3人すべてで本編をクリアしなければならない。

 本編は手強いボスが待ち受ける3つの章で構成されているが、慣れないうちは1章のクリアも難しいはずだ。
 思考しながらのプレイになるため、時間も相応にかかる。
 だが、慣れれば慣れるほど先に進めるゲームになっており、経験値が溜まることで新しいカードもアンロックされていく。
 難しいことが、更なる挑戦意欲を湧かせてくれるだろう。

3人目の主人公ディフェクトはロボットだが、オーブを出して戦わせる召喚系。
だがそのままではオーブは弱く、どう扱うかが重要になる。
どんなコンセプトにするにせよ中途半端だと弱いが、欲しいカードが手に入るとも限らないので、経験と柔軟なデッキ構築が必要だ。
忘れがちだが、使い捨てアイテムの”ポーション”もある。
対象を選ぶ必要のあるポーションは使いたい相手までドラッグしよう。
ボス戦やエリート戦はもちろん、集中攻撃を受けそうだけど防御カードがない、といった事故が起こったときの対応にも使える。
そういうときに役立つものを優先してストックしておきたい。
4人のプレイヤーキャラクター。見ての通りあやしい奴しかいない……。 最初が戦士、次が盗賊キャラなのは、この系統のお約束。
最初のローグライクカードゲームが何であるかは諸説あるが、近年のスタイルの最初の作品は2014年の「Dream Quest」であるようだ。
だが、見た目が簡素で、マスで区切られた移動マップがあり、敵もカードを出して戦う形式で、作風はかなり違う。
「Spellsword Cards: Origins」や「Night of the Full Moon(満月の夜)」は、同作の戦闘システムを踏襲している。
2015年に日本で公開された「DeckDeDungeon」は、横視点のバトルシーンや戦闘後のカード選択など、「Slay the Spire」に似た形式を持つ初期の作品で、のちに「DeckDeDungeon2」「DeckDeFantasy」といった亜種に移行した。
「Slay the Spire」は2017年から先行テストが行われており、「Silent Abyss」「Pirates Outlaws」「魔法少女マホのスイーツ争奪大作戦」などはその追従作になる。
また、これらとは違うタイプとして「Card Quest」が2017年に公開され、海外で人気になっていた。

 ローグライクカードゲームはスマホに適しているため、特にiOS/Androidには多くの追従作がある。
 だが、演出はもちろんバランスや世界観、ボリュームなども含め、全体的に他より1ランク上の印象だ。
 意欲的な調整とアップデートも続いており、長く楽しめるゲームになるだろう。

 このジャンルのコツがわかるまでは苦戦すると思うが、思考型のゲームが好きな人なら、創意工夫で攻略を導き出していくのが病み付きになるはずだ。
 近年のゲームを語るのに欠かせない、ぜひ試して欲しい作品だ。

Slay the Spire

大ヒットした”ローグライク・カードゲーム”ブームの火付け役

(画像はSlay the Spire – AppStoreより)

・ローグライクカードゲーム
・開発:Mega Crit Games(アメリカ)
・公開:Humble Games(アメリカ)
・iOS版1220円、Steam版2570円、Nintendo Switch版2570円、PS4版2618円

文/カムライターオ

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著者
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。
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