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何度も死を繰り返し強大な敵に立ち向かう面白さ。コーエーテクモの“無双できない”三国志ゲー『Wo Long Fallen Dynasty』最新バージョンプレイレビュー

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 2023年3月3日、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けに発売予定のゲーム『Wo Long: Fallen Dynasty』
 『真・三國無双』シリーズ、『DEAD OR ALIVE』シリーズ、『アトリエ』シリーズなどの作品で知られるコーエーテクモゲームスによる、西暦184年の後漢末期、すなわち『三国志』で知られる時代を舞台とする、本年注目のタイトルの一つです。

 『デモンズソウル』『ダークソウル』に代表される、いわゆる “ソウルライク” と呼ばれる高難易度アクションゲームである本作。コーエーテクモが開発を手掛けた同系統のゲームとしては、戦国時代を舞台にダークファンタジーが繰り広げられる『仁王』があります。

 今回は、『Wo Long』の最新版をプレイする機会をいただけましたので、そのゲームシステムや魅力についてお話ししていきたいと思います。

『Wo Long』タイトル

文/DuckHead


分かりやすさもありながら骨太なアクション

 本作の大きな特徴は、高難易度のアクションゲームであるということ。まずは、ゲームの根幹を成すアクションなどのシステムについて触れておきましょう。

『Wo Long』ゲーム画面1

 さて、コーエーテクモの『三国志』をモチーフとしたアクションゲームと言いますと、『真・三國無双』シリーズを思い出す方も多いかとは思いますが、この『Wo Long』の開発を行ったのは、『NINJA GAIDEN』シリーズや『DEAD OR ALIVE』シリーズで知られる “Team NINJA”。
 『NINJA GAIDEN』と言えば、これまた難易度が高いことで知られるアクションゲームシリーズです。そして、本作でも『NINJA GAIDEN』のようなキレッキレの難易度は健在。カジュアルに楽しむことができる無双シリーズのように、多くの雑魚敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく体験をさせてはもらえません。ザコ敵相手であったとしても、適当なプレイをしているとあっという間に体力を奪われてしまいます。

『Wo Long』複数敵との戦闘シーン

 そして、このゲームにおけるプレイヤーの目的は、マップを攻略しつつイベントを進め、最奥に待ち構えるボスを撃破すること。ザコ敵でさえ気を抜いてはいけないわけですから、当然ボス敵となると厳しさがより一層増していきます。第一節、つまり最初のステージのボスにもかなりの苦戦を強いられました。

第二節ボス、封豨(ホウキ)
第二節ボス、封豨(ホウキ)

 そんな本作の戦闘の基本となるのは、“体力” “氣勢”。体力は多くのアクションゲームに存在する非常にオーソドックスなパラメータですが、本作の特徴的な要素となるのが “氣勢”でしょう。キャラクターにはそれぞれ氣勢ゲージが設定されており、敵の氣勢ゲージを削りきれれば、完全に動きが止まり無防備になる “氣勢挫かれ状態” にすることができ、“絶脈” という強力な一撃を仕掛けられるなど、大事な大事なアタックチャンスが訪れます。
 しかし、この氣勢ゲージはプレイヤー側にもあり、敵の攻撃により削りきられてしまうと、逆にこちらが “氣勢挫かれ状態” となってしまい、しばらくの間動けなくなり一気に大ピンチに。

絶脈

 つまり、氣勢ゲージを削ることこそが戦闘のキモとなってくるわけですが、氣勢ゲージに大きなダメージを与えることができるアクションが、“化勁(かけい)”
 これは敵の攻撃を受け流す行動で、敵の攻撃タイミングにピッタリ合わせて発動する必要があります。
 特に、敵の体の中心が赤くなったときに繰り出される “秘技” と呼ばれる強力な攻撃を化勁で受け流せれば、相手の氣勢ゲージを大量に削りつつ自分の氣勢ゲージを回復することができるため、非常に有効な一手となります。秘技を化勁で受け流して敵の氣勢を挫き、絶脈により大ダメージを与えるというのが、本作を攻略する上での最短ルート、必須技能と言っていいでしょう。
 しかし、秘技はガードを貫通する攻撃なので、受け流すことができなければ大ダメージを喰らってしまいますし、化勁は氣勢ゲージを消費して行うアクションであるため、むやみやたらに発動していると、敵の攻撃であっという間に氣勢を挫かれてしまうことになりかねないので、乱発は許されません。

一敗塗地(いっぱいとち)
一敗塗地(いっぱいとち)

 化勁を制する者が、『Wo Long』を制す。ボス戦では敵の動きを見て化勁のタイミングを掴むことが何よりも重要であるため、化勁のタイミングをより適切に、より正確にしていくために敵地へと赴くわけですが、一度や二度での習得は難しいのが現実。幾度となくゲームオーバーを繰り返すこととなります。このような、少しずつ攻略法を手繰り寄せていく過程こそがソウルライクゲームの醍醐味とも言えますね。

 ちなみに、ゲームオーバー画面に表示されている言葉は一敗塗地(いっぱいとち)。これは、一戦での敗北を表す一敗と、兵の臓物が泥にまみれた様子を表す塗地からなる、“完膚なきまでに敗れる” という意味の故事成語とのこと。まさにこの状況にピッタリな言葉です。

仙氣による能力強化
仙氣による能力強化

 さて、この一敗塗地には、敵を倒すことで獲得することができ、攻撃力や防御力の強化に使用する “仙氣” が半減したり、キャラクターの戦闘力を表す “士気ランク” が奪われるといったデメリットが存在します。仙氣は、敵を倒すと得られる攻撃力や防御力などのステータス強化に使用する値で、士気ランクはキャラクターの戦闘力の高さを表す数値。どちらもゲームの攻略を進めるにあたって非常に重要であるため、一敗塗地はなるべく避けたいところ。

『Wo Long』複数敵との戦闘シーン
敵の頭上に表示される数値が士気ランク

 ちなみにですが、士気ランクは敵にも設定されているため、フィールド上にいる警戒すべき敵を見極める判断材料にもなります。

報仇雪恨(ほうきゅうせっこん)
報仇雪恨(ほうきゅうせっこん)

 一敗塗地より奪われた仙氣を取り戻す方法はただ一つ、自分を倒した敵を撃破すること。このリベンジを達成することは、“報仇雪恨(ほうきゅうせっこん)” と呼ばれますが、報仇雪恨ができずに一敗塗地してしまうと、仙氣は完全没収。永久に取り戻すことはできなくなってしまいます。

軍旗

 さて、熾烈を極めるマップ攻略。ボリュームたっぷりな道中は危険の連続であるため、一筋縄ではいきません。体力を回復するアイテム “龍癒の壷” には使用回数に上限があるのがまた悩ましいところ。
 そんなマップ攻略に挑むプレイヤーにとって重要となるのが、“軍旗”。これは言うなれば中間セーブ地点。 他のソウルライクゲームで言うところの、“篝火” や “灯り” や “鬼仏” です。

軍旗

 この軍旗を使用することで、プレイヤーの体力は全快し、回復アイテムの使用回数も上限まで回復します。軍旗では他にも仙氣を使用した能力強化やミッション間の移動などといった様々な行動も可能で、プレイヤーにとっては大切な拠点です。そのため、ステージ攻略では、軍旗を立てられるポイントを見つけ、その付近を守る頭目を倒して軍旗を立てていくことが短期的な目標となります。
 ただ、当然のことではありますが、ポイントを守る頭目も中々の強敵。こちらに対しても一敗塗地を繰り返すことに。

標旗

 また、軍旗のような拠点機能を持たない “標旗” という旗もあります。こちらは、立てることで “不屈ランク” を上げることができる旗です。不屈ランクとは、士気ランクの下限値であり、通常であれば一敗塗地によって0になってしまう士気ランクの低下を抑える機能を持ちます。明らかに重要そうな場所に設置ポイントがある軍旗に対し、標旗は脇道の奥の方や、強敵の守る先に設置ポイントがあることも多い印象。一直線にボスを目指すものいいですが、ボスに苦戦するようであれば、マップを探索して標旗を立てて攻略をより優位に進めるという作戦を取ることもできます。
 実際に比較をしたわけではないので、その効果の程度こそ定かではありませんが、間違いなく無いよりはあった方がいいはず。急がば回れ、標旗を立てていくことで結果的にボスとの戦闘が容易になるはずです。

 このように、標旗や仙氣による能力強化といった地道に主人公のパラメータを上げていくシステムがあることで、ボスで詰まってしまったとしても、周囲の探索や雑魚敵との戦闘を進めてプレイヤーのスキルアップとステータスアップを同時に行えるというのが嬉しいですね。

 また、本作においては敵に囲まれないように立ち回ることも重要。背後から気づかれぬように近づき、絶脈により大ダメージを与え敵を少しずつ排除していくこともある程度は可能です。多勢に無勢、正々堂々正面突破するだけでなく、賢く戦っていくことも時には必要です。
 そして、主人公が装備できる武器には様々な種類があり、武器種が変わるとモーションや攻撃力が大きく変わり、プレイ感も大幅に変化します。プレイヤーそれぞれのスキルや好みに合わせてプレイスタイルを変えていくことができるため、様々な楽しみ方があるのではないでしょうか。

背後からの絶脈

 さて、総じて難易度の高さが目立ち、それを大きな特徴としている本作ですが、投げ出したくなるような理不尽さを感じるということはなく、「もうちょい上手くやれてたらクリアできてたな」と思わされるような、絶妙でちょうどいい塩梅になっています。
 体感にはなりますが、ソウルライクゲームの中では比較的攻略における重要なポイントを見出しやすいため、初めてソウルライクゲームをプレイする方にもかなり取っつきやすいのではないでしょうか。

絶脈

三国志と魑魅魍魎が混ざり合う世界観

『Wo Long』の世界

 と言うことで、ここまではゲームシステムについてお話ししてきましたが、続いては『Wo Long』の世界観に触れていきたいと思います。
 これは個人的な意見ではありますが、ソウルライクというゲームジャンルにおいて、世界観というのは、戦闘システムと肩を並べるレベルの重要な要素ではないかと思います。プレイヤーがドップリとその深みにハマっていけるような世界観が構築されていなければ、難易度の高いゲームに挑み続けるモチベーションが失われてしまうことにもなりかねませんからね。

『Wo Long』カットシーン

 さて、リード文でも述べましたように、本作の世界観のベースは『三国志』。物語は『三国志演義』と同様に、“黄巾の乱” と呼ばれる戦いから始まります。

荒れ果てた村
これぞ乱世

 本作のストーリーは “丹薬” と呼ばれる秘薬を主軸に据えて展開されるオリジナルのものとなっていますが、ゲームプレイを進めていくと、『三国志演義』の武将が頻繁に登場します。

趙雲
趙雲

 そういった武将の中の1人が、こちらの趙雲。彼は三国志に登場する国、蜀の有名武将であり、『真・三國無双』の前作に当たる格闘ゲーム『三國無双』では、蜀の主人公のような立ち位置でした。

趙雲との同行

 彼は主人公の旅にしばし同行してくれる仲間キャラクターでもあります。こういったゲームにおける仲間キャラクターたちは、その能力によってプレイヤーにのしかかるストレスが大きく変わってきますが、趙雲の場合は、主人公がピンチになっているときに敵を引き付けてくれたりするなど、しっかり優秀。
 もちろん、彼の体力は無限ではありませんので、敵と闘っている最中に戦闘不能になってしまうこともありますが、状況次第ではかなり頼もしい存在です。少なくとも、彼の行動が邪魔で不快になるということは一度もありませんでした。

麒麟
麒麟です

 また、ストーリーを進めて旅の仲間との絆を深めると、神獣の力を入手することがあります。授かった神獣の力は戦闘中にゲージがたまっていれば使用可能で、敵に強力な攻撃を放つ “神獣招来”と、味方全体に良い効果を付与する “神獣共鳴”の二種類が存在します。 

“神獣共鳴”
“神獣共鳴”

 『三国志』の武将が味方として登場するならば、敵にも『三国志』の武将が登場するというのもまた当然の理。今回のプレイでは、『三国志』ファンにはお馴染みの、張角張宝張梁が登場しました。

張宝、紅晶
画像左から、張宝、紅晶

 いいですねー。こういうデザインは非常に好みです。この画像からも分かりますように、張宝は少し人間離れしたようなデザインをしていますが、彼は特例。敵全員がこのような見た目というわけではなく、張角と張梁は、主人公や趙雲のような一般的な人間キャラクターとしてデザインされています。
 ちなみに、画像右にいる張宝に拘束されている女性は、本作のオリジナルキャラクター紅晶です。

紅晶

 本作には彼女以外にも何人かオリジナルキャラクターが登場しますが、彼女たちが今後のストーリーにどのように絡んでくるのか、非常に気になるところ。ストーリーがどのように展開していくのか楽しみです。

巨大な怪物

 さて、『三国志』の時代を舞台とする本作ですが、あくまで『三国志』はベース。ゲームを進めていくと、雑魚敵やボス敵として “妖魔” と呼ばれるゾンビのような兵士や巨大な怪物も多数登場します。

巨大な怪物

 敵武将との戦闘も手に汗握るものではありますが、巨大な敵との戦闘は本作のような高難易度ゲームにおける華。正直なところを言えば、こういった敵を最初に見た時はかなり面喰ってしまいましたが、妖魔の存在が本作のこれまでにない『三国志』の世界を演出し、ゲームの面白さを高めています。

カットシーンで反映される装備品

 ちなみに、作中で挿入されるムービーでは、身に着けている装備によって主人公の見た目も一緒に変化。私の場合、入手した装備アイテムから使いやすそうなものをファッション性無視で選んでいるため、上の画像のように、とても主人公とは思えないダサさがにじみ出てしまっています。
 ……これは意外とテンションが下がりますね。ムービーが綺麗であるだけに、そこはかとない残念さが際立ちます。黄巾党の衣装はダサいという知見を新たに得ることができました。
 気持ちよくムービーを見るために、お気に入りのファッショナブルな装備で挑む縛りプレイのようなことをして楽しむのも一興なのかもしれません。

カットシーンで反映される装備品

 さて、主人公の見た目はキャラメイクで詳細に決めることができます。男性キャラクターだけでなく女性キャラクターを選ぶことも可能で、各パーツのバリエーションはかなり充実。
 今回はゲーム本編のプレイがメインということで、キャラクターの見た目にはそこまでこだわらずに必要最低限の性癖のみを残してキャラメイクを終えてしまったのですが、本格的に取り組めばここだけでもかなりの時間を費やせるでしょう。

 ちなみに、主人公の見た目はゲームを進めれば再変更が可能になるとのこと。カッコいい、かわいいキャラクターはもちろんのこと、ネタに走った見た目を色々と試してみるという楽しみ方もできそうですね。

終わりに

『Wo Long』タイトル

 さて、今回は第一節と第二節の最初のステージまでをプレイさせて頂きましたが、それぞれのマップは中々のボリュームがあり、ボス戦は歯応えのあるものでした。

 しかし、マップ探索において重要なこと、ボス戦において重要なことは分かりやすく、ゴールへ向かって積み上げていくべきものがハッキリと見えるため、途中でダレることはなく一気にクリアまで持っていくことができました。
 「氣勢は挫かれても心は挫けない」。そんなスローガンをひっそりと掲げつつ攻略を進めた本作。ボスの氣勢を挫きクリアすることができた時には、確かな満足感と達成感がありました。
 
 しっかりとした難易度を有しながら、ゲームプレイの分かりやすさも兼ね備える本作。ソウルライクゲームの中では初心者にもオススメしやすい作品ではないかと思います。
 発売の折には是非とも購入し、プレイしてみてはいかがでしょうか。

 また、『Wo Long: Fallen Dynasty』公式より、本作の物語の一端に触れることができるストーリートレーラーが公開されています。紹介した紅晶はもちろん、劉備・曹操・孫堅なども登場しますので、ぜひチェックしてみてください。

ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW

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