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ターン制RPGで、今の覇権って取れるの?リリース1年前から『崩壊:スターレイル』を追い続けていた男が本気で考える「スタレが世界トップに立った」理由

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 『崩壊:スターレイル』は、超人気タイトルである。

 IOSとAndroid共にセールスランキング1位を獲得。全世界8000万DLを突破。

 おそらく、「2023年上半期で最も注目を集めたゲームのひとつ」と言っても、全く過言ではない。というか、事実なのだ。『崩壊:スターレイル』は、瞬く間にトップタイトルのひとつに躍り出た。

 だけど私は、正直ここまで人気が出るとは思っていなかった。

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 もう少し追って経緯を話そう。私は『崩壊:スターレイル』の案件を、今作のリリース約1年前から聞いていた。そうか、1年……1年か……1年って早いな……。

 電ファミニコゲーマーに掲載された今作のプロデューサーを務めるDavid氏と日本ファルコム近藤社長の対談や、アトラス橋野氏との対談なども含めて、大体1年くらい前からお話を聞いていた。

 最初は、「えっ、HoYoverseとの仕事ですか!?めっちゃ光栄です!ぜひ、ぜひに!!」と息巻いていたものの、いざリリースが近づくにつれ、段々と不安になってきた。対談も頑張った。ファイナルβも遊んだ。ゲームの完成度には、何の文句もなかった。「これは間違いなく2023年のトップタイトルになりうる」という、ゲーマーとしての第六感が働いていた。

 だけど、やっぱり不安になってきた。

 「こんなに頑張ったのに、めちゃくちゃスタレがコケたらどうしよう」と。

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HoYoverse公式サイトより

 確かにHoYoverseには『崩壊3rd』『原神』の実績がある。間違いなく世界トップレベルのゲーム会社。だけど、ゲームはいつだって「時の運」なのだ。ヒットするかしないか。それはもう最終的には「運」としか言いようがない。他の大型タイトルに潰されたらどうする。たまたま他の巨大タイトルとリリースが激突したらどうする。

 正式リリースまでの間、私はかなりの回数「崩壊スターレイル」「スタレ」といったワードを各SNSでパブリックサーチしていた。確かに、ちょこちょこと期待の声は上がっていた。だけどそれでも「圧倒的に期待度の高いタイトルだったか」と言われると……そこまで日本国内でリリース前の期待値は高くなかった気がする。

 なんなら、私の周囲はどちらかというと『ゼンレスゾーンゼロ』に期待している人が多かった。だからそういう友達を捕まえては「今度HoYoverseから『崩壊:スターレイル』ってゲームが出るんだけどさぁ……ちょっと遊んでみてよ。あ、そうそう。原神とかゼンレスのとこ」と、草の根運動をしていたのだ。なんとか3人くらいプレイヤーを増やした。果たしてこれは「草の根」と言えるのか。

 それくらい、私は「このゲームをみんなが遊んでくれるかどうか」が心配だったのだ。

 何気にこの記事も、リリースの半年くらい前から「全6回に渡って連載される」ことが決まっていた。そういう意味でも本当に心配だった。なぜならこの手の連載企画はゲームそのものが全然ウケなかったら撤退戦の様相を呈することが目に見えているからだ。私だって6回全部ヒットさせたい!

 そして実際、4月にリリースされてどうだったか? 4月にリリースされて夏真っ盛りを迎えた現在に至るまで、『崩壊:スターレイル』はどうなったのか?

 みんな、遊んでいた。

 私の不安をよそに、いつの間にやら世界トップタイトルに躍り出ていた。

 …………なぜだ?

 今回の記事は、そんな「なぜ『崩壊:スターレイル』はここまで多くの人にプレイされているのか」という根本的な疑問に迫る記事となっている。既プレイの方も、未プレイの方も。いちプレイヤーの視点から「『崩壊:スターレイル』というゲーム及びコンテンツを徹底分析してみた」この記事を楽しんでもらえると幸いである。

文/ジスマロック
編集/実存

※この記事は『崩壊:スターレイル』の魅力をもっと知ってもらいたいHoYoverseさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


超徹底したキャラクター戦略

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 まず、「ガチャを回す」ゲームにおいて、最も求められるものはなんだろうか。

 間違いなく求められるのは、「キャラクター」である。

 もう少し厳密に言えば、「キャラの魅力」だと思われる。そのキャラの性能やゲームを円滑に進行するためのユニットとしての起用を目当てにガチャを引くパターンもあるかもしれないけれど、それでも「魅力的でないキャラを引きたいか」と言われると、そんなことはありえない。

 ガチャにはお金がかかる。無課金であっても、頑張って貯めたリソースが大して魅力を感じないキャラに吸われていくのは流石に厳しい。ガチャを回すゲームにおいて、「ガチャを回したいと思えるキャラクターであるかどうか」は絶対条件である。

 こういったゲームにおけるキャラは、ある意味「商品」としての属性を持っている。お店で商品を買うように、お金を払うか、代替コストをかけて、キャラを手に入れる。極論、「そのキャラに対してコストを払えるかどうか」が、こういったゲームにおいては最も重要だと思う。

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 そして「コストを払いたい」と思わせるには、どうするのか?

 端的に言えば、「キャラに価値を持たせる」ことだと思われる。
 「このキャラであれば、お金をかけてもいい」「このキャラになら、コストをかけてもいい」……そう思えるキャラこそが、「価値のあるキャラ」だろう、と私は考える。

 そして「キャラに価値を付与する」ことには、さまざまな方法がある。ビジュアルを良くする。ストーリー上で活躍させる。性能を強くする。人気声優をつける。本当に、多くの「価値を付与する」方法がある。

 『崩壊:スターレイル』は、この「キャラに価値を持たせる」ことを、ものすごく徹底的にやっているゲームだと思われる。

 今回私は、周囲の『崩壊:スターレイル』プレイヤーに「実際のところ、なにをモチベーションにこのゲームを遊んでいるの?」という秘密裏なアンケートを実施した。すいません大層な言い方してるけど10人くらいの友達です。超小規模アンケートです。その際、およそ半分くらいの人が「キャラが良いから」と答えていた。あまりにシンプルだけど、これはこれで、ひとつの真理だとも思う。

 キャラが良ければ、ガチャが回る。キャラが良ければ、ストーリーも楽しくなる。キャラが良ければ、ファンアートや二次創作が続々と生まれる。そしてそのキャラを見た誰かが、新たに『崩壊:スターレイル』を始める。

 もう初っ端で答えが出てしまったかもしれないが、『崩壊:スターレイル』が世界中で遊ばれている理由は、「抜きんでてキャラクターに価値があるから」ではないだろうか?

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 まず大前提として、「キャラクターをこれでもかと魅力的に見せる」

 すごい極論かもしれないけれど、『崩壊:スターレイル』はストーリーを全スキップして遊んだとしても、なんとなくキャラの魅力は伝わるはずなのである。まずビジュアルがいい。かわいいやつがいる。カッコイイやつがいる。美少女がいる。イケオジがいる。超絶適当にプレイしていても、「なんとなく好きなキャラ」が絶対に生まれるはず。とにかく、ビジュアルがいい。

 そう、このゲームのキャラの魅力の出どころには、「圧倒的なビジュアルの良さ」がまず第一にある。

 ものすごく単純。あまりにもシンプル。ひっくり返るほどオーソドックス。だけど、これほど効果的な手段もない。「人は外見が9割」みたいな怪しい自己啓発本があった気がするけれど、ゲームにおいては何も間違っていない。なぜなら見た目が良いなら、欲しくなるのは当たり前のことである。

 ストーリーに興味はない。なんとなく入れてみた。とりあえず友達に勧められて遊び始めてみた。それくらいの超カジュアルスタイルなプレイでも、「キャラの見た目」だけは絶対に目に入る。どんな遊び方をしていようが、『崩壊:スターレイル』の顔面偏差値の高さからは逃れられない。

 つまりこのゲームは、「キャラのほとんどが美男美女」という戦法を実行に移している。

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 そう、ほとんどが美男美女。圧倒的な顔面偏差値。とにかく、美男美女が揃っている。どいつもこいつも顔が良い。ロボットのキャラもいるけれど、そのロボットすらなんだか顔面偏差値が高いように見える。この「美男美女ばかりが登場する」という手法、ある意味ものすごく合理的である。

 全員を美男美女にしてしまえば、必ず誰かは引っかかる。「まず素が美しい」という前提があり、その先に「真面目系な美男子なのか」「セクシー系な美女なのか」と細かいニュアンスを持たせていく。そうすれば、必ず誰か「性癖<ニュアンス>に引っかかる人」が現れる。一度癖に引っかかってしまえば、そのキャラに「価値」を見出さざるを得ない。「引きたく」なってしまうのだ。

 そう、「価値」というものは、持たせるものでもあり、こちら側が見出すものでもある。さまざまな希望に応えられる美男美女を取り揃え、どこかしらに「価値を見出せる商品」を配置する。『崩壊:スターレイル』はある種、合理的に生み出された「キャラのデパート」のようなゲームだと思う。

 そしてその戦法が行き着いた先、起こる現象が……「全部のピックアップを引きたい現象」である。

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 ここから突然私の主観が入ってくる。申し訳ございません。でもこれ一応「日記」という体裁の記事なんだ。本題に戻ろう。そうそう、ピックアップの話。まず、リリース開始時はゼーレのピックアップがあった。その次に景元、銀狼、羅刹と来て、今は刃ちゃんがピックアップされている。

 今のところ、私は全てのピックアップにおいて「これは引いておくか」と思わされている。

 結局羅刹は引けなかった。けど本当は羅刹も欲しかった。キャラの魅力を徹底的に持たせたがゆえに、「ほとんどのピックアップを引きたいのに石が全く足りない」という現象が発生している。なんと恐ろしい問題だろうか。全キャラ、欲しいと思わされている。めちゃくちゃこのゲームの術中にハマっている。

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 だけど、『崩壊:スターレイル』のいやらしいところは「ガチャの仕組み」にもある。

 なんと、今作のガチャは「持ち越す」ことができるのだ。まずキャラPUの場合、最高90連で星5キャラクターがひとり確定で排出される。その際の「恒常か、限定か」の確率はおよそ5分。そこから180連でPUキャラが確定排出される。

 要するに、「とにかく90連引けば50%の確率でPUキャラが手に入る」という仕組みなのである。

 だけど、この「90連」はスタックさせることができる。たとえば銀狼のPUを40回引いたとしよう。銀狼が排出されず、そのまま羅刹のPUが始まった場合……その「40回」はスタックしたままなのだ。したがって、あと50回引けば「星5確定チャンス」が回ってくる。

 つまりガチャが、無駄にはならない。回したぶんが無駄にならないからこそ、「出るかわからないけど、とりあえず引いておく」という小手調べのようなガチャができてしまう。

 私はこのシステムを、『原神』を遊んだ時からあまりに画期的だと思っていた。良く言えば無駄がない。悪く言えば「ランダム性」「射幸心」といったガチャの快感を潰しかねない。これはある種、「戦略的に回すガチャ」なのだ。戦略的に遊べば、「欲しいキャラ」を必ず手に入れられる。どんなに価値がついていても、「ちゃんと遊べば」手に入る。この「無駄のないガチャ」、私はちょっと恐怖すら感じる。

 そしてPU対象キャラも、およそ1ヶ月くらい前から予告されている。これも、他タイトルと比較しても異例のことだと思う。ある程度の予告や匂わせはあったとしても、「1ヶ月先のPU対象」を予告するタイトルはそこまで多くない。本当に、プレイヤーが「戦略を立ててキャラを手に入れる」ことができる。

 ここまでキャラに価値を持たせれば、もはや完全ランダムでガチャを回させたっていいはずである。だけど『崩壊:スターレイル』は、ある意味「(半分くらい)運を撤廃した」ガチャシステムを搭載している。誰でも、欲しいキャラが手に入る。しかも、継続的に手に入る。

 キャラに価値を持たせたうえで、「手に入れさせる」ところまで完全に導線を引いているのだ。

「性癖のないゲーム」なんて、つまらない

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 だけど、ゲームには「性癖」が必要だと思う。

 大勢の人に遊ばれるように作るのは結構。合理的に作るのも素晴らしいこと。だが、「ただ大勢にヒットするためだけに」作られたものは、私は面白くないと思う。「全人類向け」なんて、あまり好きではない。どこかしら「情念」や「性癖」が乗っていてほしい。そうでなければ、「刺さる」という感覚は味わえない。私はあの「刺さった」感覚がほしくて、ゲームを遊んでいる。

 その点、HoYoverseはとんだスケベ企業だと思う。

 『崩壊:スターレイル』はここ最近、2つ目のストーリーである仙舟「羅浮」編がクライマックスを迎えた。そこでは、「飲月」という新キャラクターが登場する。

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 これが「飲月」である。

 どうだろう、とんだスケベ企業だと思わないだろうか。

 キリっとした目。赤いアイシャドウ。艶めかしく露わになる肩。絶妙に開いた胸元。端的に言おう、エロすぎる。ここまで世界中でヒットしながら、全世界8000万DLを記録しておきながら、未だ「癖」が留まるところを知らない。大勢の人間に向ければ向けるほど、その過程で「作家性」「属人性」のようなものは振り落とされていく。これは大衆向け作品によくあるガッカリパターン。

 そう、「味が薄い」というパターンである。独自性がない。「癖」を感じない。大衆向けであるがゆえに、こちらを向いていないような感覚を覚える。だけどHoYoverseはどんどん先鋭化している。落ちるどころか、年々極まってきている。ここの「独自性と大衆受け」のバランスは、多くのコンテンツが悩むところだと思われる。だけどHoYoverseはどんどん先鋭化している。

 飲月のビジュアルが発表された時、私は流石に「とうとうやりやがったなこのヤロ──ッ!!!」と絶叫したものである。とうとうやりやがったなコノヤロ────ッ!!!!!

 なんかもう……「ここまでされたら付いていきたくなる」ような感覚を『崩壊:スターレイル』では覚えてしまう。最近公開された『君たちはどう生きるか』なんかが、その良い例なのではないだろうか。もう作家性とか万人受けとかは置いといて、原始的に「ここまでされたら付いていく」と思わせられる。

 実際のところ、『崩壊:スターレイル』はこの「(性癖に)刺さった」状態を生み出すのが上手い。

 いや、上手いというかあっちからジャパニーズヤンデレナイフを持ったまま突撃してきて、逃げる間もないまま串刺しにされるようなゲームである。「沼にハマる」というより、最初に立った場所が安全な足場に偽装された毒沼のようなゲームなのである。一度刺されたら、一度足を取られたら、もう沈みゆく意識の中「とうとうやりやがったなコノヤロ────ッ!!!!!」と叫ぶしかない。

 だから全部のピックアップを引きたくなる。合理的にキャラクターの魅力を出している側面もあれば、その上に他所では絶対に真似できない「性癖」を乗せてくる。極論、私はこれがあるからHoYoverseのタイトルについていっている。絶対に真似できないドロドロした何かが溢れ出しているから、『原神』や『崩壊:スターレイル』を遊び続けている。その点に関しては、ものすごく信頼している。

 まず最初の敷居は低くして、入ってきてくれたら独自性で刺す。
 性癖で刺し殺す。

 これは「コンテンツにハマるまで」の基本的なパターンと言えよう。『崩壊:スターレイル』もまさにそう。「大勢が楽しめる敷居の低さ」がすごいのではなく、「大勢に入らせて、大勢に刺しに行く」この過程が最も鋭い。そういうゲームだ。だから、「刺されてしまった人間」を世界中で生み出し続けているタイトルでもある。

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美少女と並ぶ美少女。

「中国のRPG」だからこその、唯一無二の面白さ

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 その「スターレイルの独自性」のひとつに含まれるのが、「中国のRPG」であるところだと思う。

 私は結構、「JRPG」というジャンルが好きだ。ドラクエも、FFも、ペルソナも。人並みには「JRPG」をよく遊んでいる。やはりJRPGの好きなところは、「日本のRPGだから」という部分が大きい。日本人の感覚、日本独自のゲーム文化、日本の「アニメ」的な表現……。やっぱり「日本のRPG」は、良いものだと思う。

 『崩壊:スターレイル』も、そんなJRPGからかなりの影響を受けて作られたタイトル。だけど、それと同時に「中国で生み出されたタイトルであるがゆえの唯一無二の魅力」もたくさんある。まさに「CRPG」といった感じだろうか。JRPGではあまり味わえない独自の面白さを、このタイトルは数多く持っている。

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 先ほどもちょろっと触れた仙舟「羅浮」。これは今作のふたつ目の舞台として登場する「人間が暮らしている巨大な宇宙船」。仙舟「羅浮」は「シルクパンク」という古代東アジアのテクノロジーを取り込んだSFジャンルをひとつのモチーフとして取り入れており……まぁ、平たく言うと「古代東アジア風サイバー宇宙船」みたいなステージなのだ。

 なんかもう……この時点でJRPGではあんまり見ない感じの世界観である。

 だいぶ新鮮味がある。「人間が暮らしている古代東アジア風のサイバー宇宙船」ってなんなんだ。これがSF×古代東アジアの最先端。

 そしてこの「仙舟」と呼ばれる宇宙船は、合計で6艘存在している。仙舟「羅浮」は、そのうちの1艘でしかないのだ。「羅浮」だけでメインステージになるくらい巨大なのに、設定上はこれクラスのものがあと5艘も存在しているらしい。スケールが大きすぎてクラクラしてくる。

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 だけどこの「仙舟」は、元は9艘の宇宙船だったらしい。
 仙舟の民の祖先が暮らしていた国の皇帝は、ある時「自身の老い」を憂いた。その問題を解決するべく、「不死の仙薬」を手に入れようとした。そして不死の薬を宇宙のどこかから探し出すべく、9艘の宇宙船を作り出した。スペース徐福?

 そして9艘の宇宙船は、苦難の果てに星神「薬師」から不老長生の摩訶不思議な力を得た。その力は、「建木」という“木”だった。この木になる果実を食べることで、人々は不老長生となった。一時はその力を大いに喜んだものの━━ある時、仙舟の民は気がついた。「不老長生って地獄じゃね?」と。

 不老長生によって起きる人口の急激な増加。資源の欠乏。まず誰も死なないので、ただひたすらに人口が増えていく。資源を奪い合い、人々は争い合った。多くの代価を払い、仙舟の人々は理解した。「不老長生」は賜物などではなく、過酷な試練の始まりなのだと━━。

 ……この世界観も、このストーリーも、まずJRPGでは中々見ない。独自すぎる。独自性が高すぎてちょっと理解が追い付かないところまで含めて面白い。『原神』の「璃月」もそうだったけれど、HoYoverseが自国モチーフを取り扱っている時は中々の切れ味がある。いろいろな意味で「切れ味」としか言いようがない。

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 ゲームを遊んでいる時、ふと「気づいてはいけないこと」に気がつく瞬間がある。

 それは、「世界の薄さ」である。

 たとえばRPGを触っている時、何の前触れもなく、確固たる根拠もなく、さしたるキッカケもなく、「世界の底」が見えてしまうことはないだろうか? 「あぁ、この世界<ゲーム>は、今自分が見えているところまでしか作られていないのだ」と、勝手に限界を見出して失望することはないだろうか?

 要は、「常に自分の期待を超え続けてほしい」という「やり込みがい」の話である。単にゲーム的にレベルを上げていくだけではなく、ストーリーの考察やキャラの解釈など……多角的な方面で「やり込めるだけの“厚み”」が用意されていないと、それはそれで萎えてしまう。特に、大作RPGは。

 常に、「世界に興味を持たせ続けてほしい」のである。

 さっきあれだけ「敷居の低さ」だの「遊びやすさ」だの言っておきながら今度は「やり込み要素がほしい」「世界の厚みがほしい」とは……人間に絶望したラスボスが生まれる理由がよく分かりますね。

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 この「世界の厚み」を出すには、さまざまな方法があると思う。

 まず「フィールドそのもの」を広大にする。世界を大きくし、ありとあらゆるところに情報やインタラクトできるものを配置すれば、それだけ「世界のディティール」を増やせる。昨今のオープンワールドタイトルなどは、ここが圧倒的な強みである。

 だけど、『崩壊:スターレイル』は別にオープンワールドではない。フィールドとフィールドは区切られているし、別に世界を駆け回っているかのような爽快感があるワケではない。本当に、従来の「コンシューマーJRPG」を彷彿とさせる作りをしている。なのに、どこかに「世界の厚み」を感じる。「まぁ、こんなものかな」と見切りをつけてしまうような“浅さ”を感じない。

 じゃあ、何をもって「厚み」を出しているのか?

 それはおそらく、「テキスト」である。

 『崩壊:スターレイル』は、ハッキリ言って異常な量のテキストを繰り出してくるゲームなのだ。街中でふと拾った本に、何千文字ものテキストが書かれている。街中に置かれているちょっとしたゴミ箱にインタラクトすると、わけのわからない情報がひたすら流れ込んでくる。世界のありとあらゆるところに、「この世界を彩るテキスト」が配置されているのだ。

 先ほどの「仙舟の民が不老長生を得るまで」のストーリーも、ゲーム内テキストをしっかり見て把握していくしかない。ぶっちゃけあのバックボーンも、そこまで把握せずともそれなりにメインストーリーは楽しめる。だけどその分、しっかりテキストを読み込んだ者にはそれ相応の「世界の厚さ」を提供してくれる。

 ここの「フィールドの広大さに頼らない世界の厚みの出し方」は、個人的に好きなポイントである。そしてこの「テキストの膨大さ」は、キャラクターにも適用されている。ふとしたところに推しキャラの新たな情報が書かれていたり、一見どうでもいいサブクエストで推しキャラの重要な情報が開示されたりする。「世界に厚み」があるということは、「キャラに厚みがある」ということでもある。

 つまり、敷居を低く入り込ませ、そのまま性癖で一気に刺したのち、「掘れる情報」を大量に散りばめているのが『崩壊:スターレイル』なのだ。

 この世界を知りたい人は、やり込んでみればいい。あのキャラをもっと知りたい人は、やり込めばどんどん情報が出てくる。この「世界の厚み」に関して、オープンワールドとは全く違った角度の物量作戦を仕掛けているのが、『崩壊:スターレイル』でもあると思う。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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