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『SIREN』の出演者や制作スタッフが大集結したイベント「異界入り万博」最終日に起きた奇跡。藤澤プロデューサーをはじめ、イベント出演者が何度挑んでも歯が立たなかった「神代淳」を驚愕の早さで倒した人物とは?

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 8月2日から5日にかけて新宿ロフトプラスワンおよびオンライン配信にて「【異界入り万博】-SIREN 20th ANNIVERSARY-」(以下、「異界入り万博」)が開催されました。オフラインでのプレミアム席は3秒で完売してしまうほどの争奪戦となり、連日すべて満席という大盛況を収めた本イベント。

 「異界入り万博」の主催は『SIREN』の主人公・須田恭也役を務めた篠田光亮さん。最終日にあたる8月5日のフィナーレは会場を「ボーカゲームスタジオ」に移し、総勢10名以上もの『SIREN』シリーズの出演者や制作スタッフが一堂に会する豪華な回となっています。

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 篠田光亮さん(須田恭也 役)
 満田伸明さん(宮田司郎・牧野慶 役)
 細川聖可さん(高遠玲子 役)
 コミナミさん(四方田春海 役)
 小代恵子さん(美浜奈保子 役)
 土倉有貴さん(神代淳 役)
 えどさん”さん(石田徹雄 役)
 中村英司さん(阿部倉司 役)

 藤澤孝史さん(プロデューサー)
 佐藤直子さん(設定・シナリオ)
 佐藤一信さん(キャラクターデザイン)

 タイガー原さん(SIREN展プロデューサー)

 今回電ファミは特別に、会場となる「ボーカゲームスタジオ」にて取材をさせていただく機会をいただきました。会場にはイベント出演者だけでなく当時の関係者が続々と集まり、『SIREN』20周年を祝うべく、“大同窓会” 状態に。

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 本稿では「異界入り万博」フィナーレの様子をお届けいたします。また、『SIREN』シリーズにてディレクターを務めた外山圭一郎さんは残念ながら本イベントに参加できなかったため、改めてメッセージをいただきました。ぜひ最後までご覧ください。

文/柳本マリエ


“生” へのアンチテーゼだったマナ字架

 冒頭は『SIREN2』にて阿部倉司役を務めた中村英司さんがシークレットゲストとして登場。「はっぴいばーすでい」を披露します。

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 そして、『SIREN』シリーズにてプロデューサーを務めた藤澤孝史さんの乾杯でイベントが始まりました。

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左から篠田光亮さん、佐藤一信さん、藤澤孝史さん、佐藤直子さん、満田伸明さん

 まず最初の企画は、「『SIREN』知識王決定戦」の答え合わせと解説。
 これは8月2日に開催された「異界入り万博」の「『SIREN』知識王決定戦」にて出題された『SIREN』にまつわる35問の問題をひとつひとつ振り返りながら答え合わせと解説をしていくというもの。

 たとえば第1問はこちら。

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 正解はD。『SIREN』のキャッチコピーは「どうあがいても絶望」です。

 プロデューサーの藤澤さんによると、ゲームの難易度としての “絶望” だけでなく、さまざまな登場人物を操作していくことで「つぎの苦難」につながっていく群像劇の “絶望” から「どうあがいても絶望」に決まったとのこと。

 なかには、選択問題ではなく筆記問題もありました。

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 正解は「宇理炎」。当て字は佐藤直子さんが考案したそうです。宇理炎といえば、ナンジャタウンで9月3日まで開催されている「SIREN in NAMJATOWN 宴」に「宇理炎アクリルキーホルダー」が販売されているので、宇理炎好きの方はお見逃しなく。

 反響が大きかったのは、マナ字架のエピソード。

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 マナ字架は「生」という漢字を逆さまにしたもの。つまり、「生きる」の逆で「生きない」となります。会場やコメント欄は「“生” へのアンチテーゼだった」と盛り上がりました。『SIREN』はひとつひとつの設定が細やかなため、あとから知る情報も多いのではないでしょうか。

 こうして「『SIREN』知識王決定戦」の答え合わせと解説は、イベント出演者も抜き打ちで答えていく形で全35問を振り返りました。

 最後は、知識王決定戦の優勝者である屍人Tさんをお招きしての表彰式。佐藤直子さんと藤澤孝史さんより、賞状とTシャツが授与されました。

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 屍人Tさんは35問中33問も正解されたそうです。佐藤さんからは「狂ってる(笑)」というお褒めの言葉も送られました。

「どこ淳」「ちか淳」「いる淳」連呼でトゥルーエンドに到達

 つづいての企画は「ゲーム実況プレイ」。こちらは「異界入り万博」のイベント出演者が『SIREN』をプレイするというもの。8月3日からリレー形式でゲームが進んでいきました。今回のフィナーレでは「いんふぇるの」に到達した状態からトゥルーエンドを目指します。

 しかし、佐藤直子さん→土倉有貴さん→藤澤孝史さん→えどさん”→細川聖可さん→中村英司さん→満田伸明さんの順でコントローラーが渡されていくものの、だれもクリアすることができません

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トップバッターは佐藤直子さん
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つづいて藤澤孝史さん

 神代淳がトリッキーに現れるので、会場やコメント欄では「どこ淳」「ちか淳」「いる淳」など語尾 “淳” が溢れかえっていました。神代淳役を務めた土倉有貴さんしか言えない「俺淳」も飛び出しましたが、攻略は難航します。

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すぐ近くに現れる「ちか淳」になると悲鳴があがる

 あまりにも難しいステージのため、ここでこのステージを制作した大倉純也さんが登場。全員が息をのみながら見守ります。キャッチコピーのとおり “どうあがいても絶望” だった状況だったにも関わらず、驚愕の早さで倒していきました。

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 そして見事にトゥルーエンドを達成。このとき大倉さんはお酒も飲まずに待機していたそうで、見事なプレイに会場が湧きました。『SIREN』主演者と制作スタッフが見守るなかエンドロールが流れます。

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 こうして「ゲーム実況リレー」はトゥルーエンド達成という最高の盛り上がりで幕を閉じました。

怖すぎてCMが中止になったときに出たスポーツ新聞も披露

 つづいては『SIREN』ファンから事前に募った質問に開発スタッフが答えていく企画です。

 まず最初に、恭也と美耶子が青空のもと赤いポストの前に座って会話をするシーンについての質問が寄せられました。

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 設定・シナリオを担当された佐藤直子さんによると、該当シーンのシナリオではポストは指定していなかったとのこと。アートディレクターを務めた高橋功さんが設定されたそうで、お話のうえでの設定というより、メインビジュアルから持ってきているそう。印象的なシーンなので覚えている方も多いのではないでしょうか。

 さらに、プロデューサーの藤澤孝史さんからは「『SIREN』のCMが怖すぎて放送中止となったときのスポーツ新聞」も披露されました。

 当時のゲームソフトのCMといえば、実写などゲームとは違うイメージからゲームの楽しさを伝えることが主流だったそうです。しかしながら『SIREN』はゲーム画面を出したうえでおもしろさを伝えたかったとのこと。

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 その結果として「怖すぎる」などの理由から放送中止になってしまったものの、それがホラーゲームとしての “口コミ” となり、SNSがあまり発達していなかった時代にも関わらず評判が広がったそうです。

 そして、最後はイベント出演者からメッセージが伝えられました。本稿では設定・シナリオを担当された佐藤直子さんとプロデューサーの藤澤孝史さんのコメントをピックアップしてお届けいたします。

佐藤直子さん:
 私は『SIREN』のシステムがすごく好きなんです。『SIREN』ではひとりひとりがちょっとした変なことをすることにより絶望の世界線に影響を与えていたと思いますが、それは現実でも同じだと思います。

 人生のなかで絶望的なことが起きたら『SIREN』を思い出してください。「だれかが凍らせた手ぬぐい【※】がいつか役に立つ日がくる」と私は思っています。だから、手ぬぐいを凍らせてがんばりましょう!

※凍らせた手ぬぐい
作中のとあるシナリオにて「濡れた手ぬぐい」を凍らせておくことで別の時間帯に別の登場人物が「凍った手ぬぐい」を使い屍人を陽動することができる。

 『SIREN』は藤澤さんがプロデューサーでなければできなかったと思っています。めちゃくちゃなことを提案しても「やろう」と決断してくれたので。狂ってると思います(笑)。ありがとうございました。

藤澤孝史さん:
 『SIREN』の制作は、苦労もたくさんありました。取材や収録など、ひとつひとつ積み重ねていったことで表現できた “本物感” が結果に結びついたと思っています。報われた気持ちになりました。制作者冥利に尽きる一作だったと思います。

 20周年でこのようなイベントができるとは夢にも思っていませんでした。いろんな幸運が重なって、いまにいたると思っています。制作者や出演者はもちろんのこと、『SIREN』を遊んで盛り上げてくださったみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。

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 こうして、約2時間30分におよぶイベントは終了しました。

 SNSを中心とした “異界入り” が行われるたびに、いまもなおファンを増やし続けている『SIREN』。
 ユーザーベースで始まったという “異界入り” の現象は、ファンの熱量だけでなく『SIREN』出演者および制作スタッフ陣の苦労とアイディアと挑戦があったからこその盛り上がりなのかもしれません。

 11月6日に20周年という節目を迎える『SIREN』は、これからもファンを増やし続けていくのではないでしょうか。

 大盛況を収めた「異界入り万博」は現在アーカイブが視聴可能となっております。

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イベント終了後の土倉有貴さん
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左から細川聖可さん、満田伸明さん、小代恵子さん

「異界入り万博」主催・篠田光亮さんよりメッセージ

 イベント終了後、電ファミは篠田さんにお話をうかがう機会をいただきました。ここからはインタビュー形式でお届けいたします。

──「異界入り万博」のイベントを終えられて、率直な感想をお聞かせください。

篠田さん:
 まずは感謝の気持ちと、そして「やり切った」という気持ちでいっぱいです。もともとこのイベントをやろうと思ったきっかけは、“恩返し” でした。毎年SNSを中心に盛り上げてくださるファンのみまさまと『SIREN』を作ってくださった制作スタッフのみなさまにどうやって恩返しができるだろうと考えたとき、僕にできることは「異界入り万博」を開催することだと思ったんです。

 20周年の節目にこうして集まってみんなで一緒に盛り上がることができたのは、本当によかったと思いました。いまはただただ感無量です。

──みなさんの楽しそうな姿が印象的でした。久しぶりにお会いした方もいらっしゃるかと思いますが、いかがでしたか?

篠田さん:
 毎年会えている人もいれば、何十年ぶりに会う人もいました。とくに制作スタッフの方々は、20年ぶりという方もいらっしゃいます。

 ホラーゲームの『SIREN』がこれだけ楽しい雰囲気を作ることができるのは、作品に魅力があるからだと改めて思いました。

──コメント欄の反響もすごかったと思います。ファンの方々の熱量は年々盛り上がっているように感じますが、篠田さんは「『SIREN』ファンの盛り上がり」をどのように感じていらっしゃいますか?

篠田さん:
 「20年前からファンです」と言っていただくこともあれば「先月からファンになりました」と言っていただくこともあるので、盛り上がりが増している実感はすごく感じています。最近は親子2代で異界入りを楽しんでくださっている方も多くいらっしゃるようです。

──父親や母親が『SIREN』で楽しんでいる姿を見ていた子どもたちもファンになっている、と。

篠田さん:
 はい。いろいろなきっかけで『SIREN』を知っていただき、楽しんでくださる方が増えたらうれしいですね。

──『SIREN』は11月6日で20周年を迎えますが、ファンのみなさまや今後の異界入りに向けて、最後にメッセージをお願いいたします。

篠田さん:
 ここ数年は「20周年をどうやって盛り上げるか」を考えてきましたが、『SIREN』も異界入りも終わることはありません。30年後も50年後も盛り上げてくれたらうれしいです。そして僕自身もその力になりたいと思っています。本日はありがとうございました。

──ありがとうございました。

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『SIREN』シリーズのディレクター・外山圭一郎さんよりメッセージ

 『SIREN』シリーズにてディレクターを務めた外山さんは残念ながら本イベントに参加することができなかったため、改めてメッセージをいただきました。

外山圭一郎さん:
 大変残念かつ、申し訳なさを感じながら、イベント出演を見合わせ、家族の健康上の理由により実家に帰らせていただきました。楽しみにされてくださった方には、深くお詫びいたします。

 強行軍での疲労困憊で深い眠りについた翌朝、役所が近い事から極めて大音量で、サイレンが鳴り響きました。8月6日でした。山に囲まれ、霧の降る都城で育った幼少期、度々聞いたこの音は、この土地の風景も併せて、『SIREN』のイメージの原点でした。

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外山さんよりご提供いただいたご実家付近の写真

 状況がやや落ち着いて、出演するはずであったイベントのアーカイブ映像を視聴し、この記事を読ませていただきました。懐かしい顔ぶれを見て、制作当時のエピソードに触れ、これまでの様々な出来事が思い出されました。
 この地を発ってから35年、そして『SIREN』から20年……想像していたのとまったく違う形で触れて奇妙な感覚でしたが、とても感慨深い思いでした。

 まずは支えてくださるファンのみなさま、今も盛り上げてくださる出演者のみなさま、そして未知のタイトル創出に悪戦苦闘した制作スタッフのみなさま。心の底から感謝いたします。本当にありがとうございました!


 「異界入り万博」終了後、イベント出演者の方々に非売品パンフレットにサインをいただきました。

 篠田光亮さん(須田恭也 役)
 満田伸明さん(宮田司郎・牧野慶 役)
 細川聖可さん(高遠玲子 役)
 コミナミさん(四方田春海 役)
 小代恵子さん(美浜奈保子 役)
 土倉有貴さん(神代淳 役)
 えどさん”さん(石田徹雄 役)
 中村英司さん(阿部倉司 役)

 藤澤孝史さん(プロデューサー)
 佐藤直子さん(設定・シナリオ)
 佐藤一信さん(キャラクターデザイン)

 外山圭一郎さんのインタビューにてスタッフコメントもお寄せいただいた堀川直美さんの私物を特別にご提供いただいております。こちらのパンフレットをプレゼント。

©2003 Sony Interactive Entertainment Inc. 

編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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