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ゲームメディアが「よし記事を書くか!」と思うとき

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 本日、電ファミでは『スカーレットネクサス』関連の企画をこれでもか!と展開している。

 発売から2年以上が経過しているタイトルを、なぜいまのタイミングで大々的に取り上げるのか? 疑問に思う読者も多いかもしれない。
 電ファミが、ここに来て本作に注目する理由はいったいなんなのかッ……!

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 ……いや、なんでだろう?(汗

 というわけで、今回は、ゲームメディアで働いてる人間が、ふと「よし記事を書くか!」と思うときのことを、少しだけ語ってみたい。

 結論を先に書いてしまうと、目先の利害などを抜きにして、「このゲームは応援せねば!」という衝動に駆られる?ことは、こういう仕事をしていると、ままある。

 筆者でいうと、『十三機兵防衛圏』などがまさにそうだったし、少し昔だと、初代『ダンガンロンパ』なども、何か使命感を掻き立てるような、不思議な魅力をまとった作品であったといえる。

 いちおう説明しておきたいが、今回の『スカーレットネクサス』も、バンダイナムコからお金が出ているわけでもなければ、何か正式に依頼を受けたものでもない。

 ことの始まりは、『スカーレットネクサス』のディレクターを務める穴吹健児氏から届いた、一通のメッセージに遡る。

ご相談をさせて下さい。

2021年に「SCARLET NEXUS」というタイトルをリリースしたのですが、1人でも多くの方に知って頂きたく、発売前から毎日スクリーンショットを投稿したり、キャラクターのコスプレをして東京マラソンにチャレンジしたりしたのですが、こういった取り組みに触れつつ、タイトルのことを記事として取り扱って頂くことって可能なものでしょうか?

私自身、開発の人間で宣伝の人間ではないため、メディア様に記事を依頼する際のお作法や配慮が足りず、不躾なご相談をしてしまっていたら大変申し訳ないです。

何卒、宜しくお願い致します。

穴吹健児氏から届いた一通のメッセージ

 実は『スカーレットネクサス』自体は、発売された直後に購入はしていて、クリアはしていないものの、途中までプレイはしていた。

 所感としては、めちゃくちゃ凄い名作か?と言われるとそうではないかもしれないが、丁寧に作られているゲームで、とても「頑張ってるゲーム」だという印象を持っていた。なので、何か記事をやりたいなと、少し考えた記憶もある。

 とはいえ、当時の電ファミは、まさにドワンゴから独立した直後の混乱時期。新しいことをやる余力はなかった。

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 そんな発売直後にあまり協力できなかった申し訳なさや、クリアしてない後ろめたさなどを抱えつつ、実際に穴吹氏から直接話を聞いてみると、彼がいかに孤軍奮闘しているかが伺えた。

 そのやり方が決してスマートだとは思わない━━むしろ、びっくりするくらい不器用だ━━が、それでも、一人でも多くの人にゲームを遊んでほしい、という気持ちは伝わって来たのだ。

 バンダイナムコのような大きな会社で、“合理的でないこと”を実施するのは、とても難しいことだ。
 それは、筆者もサラリーマンとして、ソフトバンクグループやKADOKAWA&ドワンゴのような会社に勤めていた経験からも、凄くよく分かる(筆者が真っ当な会社員であったかはともかく)。

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 繰り返しになるが、『スカーレットネクサス』は発売から2年以上経ったタイトルだ。当然、チームは解散されているだろうし、何か新しい予算が付くわけでもない。

 このタイミングで、本作についての取り組みを行うことは、決して”合理的”なことではない。つまり、会社組織としてはなかなか動きづらい状況にあるわけだ。それでも━━。

 自身の開発者人生を費やして本作を作り上げた穴吹氏は、何かをせずにはいられなかったのだろう。

 彼自身、すでに新しいゲームのプロジェクトに参加し、多忙な日々を送っているなか、ひたすらゲームの画像を投稿し続けるという、それが正解かどうかも分からない不器用なやり方で、行動を起こし続けたわけだ。

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 彼の行動を、少しでも「正解」にしてあげたい。

 話を聞いているうちに、そんな気持ちがムクムクと沸き起こってきた。早速、その場でインタビューを逆提案して、後日取材を実施。その取材を踏まえて、改めて関係者を集めた打ち合わせが行われることになった。

 集まってみると、社内同人的なノリというか、正規の仕事というわけじゃないけれど、いっちょみんなで協力するか!という雰囲気で、あれもやろうこれはどうだ、という話で盛り上がった。

 なんのことはない。キッカケさえあれば、バンダイナムコ側のメンバーも、『スカーレットネクサス』で何かをやりかったのだ。

 かくして、穴吹氏のスクショ投稿1000日めを軸にして、いろいろな企画をやることになっていった。

 この記事の冒頭で、ゲームメディアが「よし記事を書くか!」と思うとき、と書いた。ただ、よくよく考えれば、別にゲームメディアがどうこうという話ではなく、

 「人が他人のために動くとき」ってこういうもんだよね

 というだけの話かもしれない。

 ゲームに限らず、コンテンツ自体が溢れかえる昨今。
 ゲームを始める理由は、なにも「凄いゲームだから」「名作だから」というだけではないと、個人的には思う。

 「頑張ってるゲーム」を応援することも、ゲームの素敵な楽しみ方&はじめ方なのではないだろうか。

 というわけで、本日掲載された穴吹氏へのインタビューや、本稿などを読んで、『スカーレットネクサス』に少しでも興味が出た方がいたら、ぜひ手に取ってみてほしいと思う次第だ。

編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999

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