「オープンワールドサバイバルクラフト」系のゲームの人気は根強い。
サンドボックス系の代表作である『マインクラフト』を筆頭に、2Dながら独自の奥深さがある『Terraria』、マルチプレイが人気を博す『RUST』、近日では爆発的な人気を獲得した『パルワールド』……などなど。とはいえ、やはり話題になる作品は何かしら“尖った”部分を持ち、同じジャンルの中でも独自の魅力を引き出している場合が多いだろう。
今回ご紹介する『オメガクラフター』の特徴は、ずばり「プログラムを自分で組み、相棒・グラミーを働かせる」構造である。
「プログラミング」というワードで一気にハードルが上がってしまう方もいるかもしれないが、その点に関しては心配いらないと言える。というのも、『オメガクラフター』のプログラミングは未経験者にとっても非常に取っつきやすいものであり、同時に本格的に作り込める自由度も兼ね備えているからだ。
というわけで、今回はプログラミング要素に焦点を当てつつ、『オメガクラフター』を彩る様々な要素についても紹介していこう。
文/植田亮平
※この記事は『オメガクラフター』の魅力をもっと知ってもらいたいPreferred Networksさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
制作したのはゲーム会社……ではなく、ゴリゴリのAIベンチャー
まず本作の開発元である「Preferred Networks」は、ゲームの開発元としてはちょっと異質なところだ。恥ずかしながら、私自身もいざ『オメガクラフター』を遊ぶまで知らなかったのだが、同社はもともと機械学習・深層学習(ディープラーニング)などの最先端のAI技術等を専門的に扱い、産業向けのソフトウェア開発などを主な事業としている。
いわば、ゲーム会社というよりはゴリゴリのAIベンチャーなのである。
スマートフォン向けに配信されているアプリをのぞけば、本格的なゲームタイトルも今回の『オメガクラフター』が初。ある種、ゲーム業界では新進気鋭のスタジオとも言えるPreferred Networksだが、ゲーム中にもそんな背景を持った企業ならではの特徴が色濃く反映されている。
中でも代表的な要素が……そう、冒頭でも述べたプログラミング要素だ。
学べて遊べる本格的なプログラミング要素。知識と熱量次第で可能性は無限大
さて、本作の最大のセールスポイントであるプログラミング要素だが……これがかなり奥深い仕様になっていたのでさっそく紹介していきたい。
まず本作のシステムは「プログラミング」とは謳っているが、本格的なコードを書いたりするわけではなく、ジグソーパズルのようにブロック状になったノードをパズル感覚で繋いでいくというものになっている。代表的なところで言えば任天堂の『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』と似たプレイフィールだ。
この「簡易化されたプログラミングをゲームシステムの中心に据える」タイプのゲームに多く言えることだが、本作はゲームであると同時に、プログラミング未経験者や子どもに向けたプラグラミング教材としても有用なものである。
特に『オメガクラフター』のプログラミング要素は直感的なUIとその豊富な機能性が特徴で、ゲーム内に存在するプログラムのピースを組み合わせるだけで、非常に多くのことができるようになっている。
では、実際のプログラムを組む画面を見ながら紹介していこう。ちなみに私はプログラミングの知識には疎く、もしかすると間違っている箇所もあるかもしれないが、その点についてはどうかお目こぼしいただきたい。
本作のゲーム内では小さな相棒「グラミー」に、自分で書いたプログラムやプリセットのプログラムを指示することで、彼らを自由に使役することができる。
画面右側の2分割されたUIがお分かりいただけるだろうか。このUIの左側が各種プログラムのノードの役割を果たしており、右側が実際のプログラムとなっている。上部の再生ボタンを押すことでグラミー達はプログラムを実行し始める。
まず驚いたのは、用意されたプログラムの種類の多さだ。例えばこのスクリーンショットではグラミーに「畑に植えている木を切り倒し、そこで得た木材を近くのインベントリに運ぶのを繰り返す」という行動を指示しているが、これを実現するために右のプログラムでは繰り返し処理(for文、while文)や条件分岐(if文)を多用している。また、行動の対象とする目標物(変数)も細かく指定可能であり、ここでは一帯の畑と特定の木箱を指定している。
UI左側を見ればわかるように、何の行動をとるのか、行動に一定の条件や回数を設けるかといった項目は多数用意されており、それを補うための論理演算子まで用意されている。一見すると頭が混乱しそうになる画面だが、内容自体は「ずっとくり返す」、「もし~なら」とすべて日常言語で表現されているため、未経験者でも理解することは非常に簡単だ。
オブジェクトの指定も直感的に行えるため、慣れるのにはそれほど時間を要さない。また、各項目はそれが属する階層にそれぞれ色分けされており、行動や条件などの階層構造は実際のプログラムコード記述にかなり似た配置になっていながら、どれが何を表すのかが視覚的に分かりやすくなっているため混乱しない。
そして面白いことに、この階層構造が原因で「グラミーがちゃんと動かない」ということもある。これは実際のプログラミングでのミスの感覚を非常にうまく再現していて思わずニヤリとした……エンジニアの方ならヒヤヒヤするかもしれない要素だが、どこが原因で動いていないかもしっかり表示されるようになっているので、安心してほしい。
非常に親切、かつ快適にプログラムの基礎を学べるこのシステムだが、ここまで出来がいいのにはしっかり理由がある。実はこのシステムはPreferred Networks社が開発した学習教材、「Playgram(プレイグラム)」のシステムを流用したもので、元は学生向けのプログラミング教育ソフトとして出来たものだ。
ちなみに、元となったPlaygramは文科省後援の2021年度日本e-Learning大賞を受賞している。本作のシステムはお墨付きとも言えるだろう。
さて、このシステム自体が素晴らしいということは言わずもがなだが、私が個人的に良さを感じたのは「このシステムをどう運用するか、ユーザーにある程度の自由度がある」という点だ。
例えば、本作のプログラムにはあらかじめ多くの「プリセット」が用意されている。ものを集める、木を切り倒す、岩を削るなどなど、各種行動を指示するためのプログラムがあらかじめゲームに取り揃えてある。プログラムや自動化にあまり興味がない、純粋に探索やクラフトを楽しみたいというユーザーは、ほとんどこのプリセットを使うだけで不自由なく遊べるようデザインされている。
一方で、本作のプログラム要素を骨の髄までしゃぶりつくしたいという生粋のプログラマーにとっては、果てしない自由度が約束されている。
カスタムでイチからプログラムを作ることはもちろん、グラミーとグラミーを組み合わせてより複雑な行動を指示することや、特定のメッセージを条件分岐でプログラミングしておくことで、さながら町にいるNPCのようにセリフを喋らせることだってできる。
まさに「可能性は無限大」というわけだ。『オメガクラフター』体験版期間中に開催された「Omega Crafter AWARD (γ)」では、ユーザーの想像力豊かなプログラミングのアイデアが多数受賞しているので、気になる方はぜひそちらもご覧になっていただきたい。
🎊 Omega Crafter AWARD受賞作品決定 🎊
— Omega Crafter (オメガクラフター) (@omegacrafter_jp) February 28, 2024
Omega Crafter AWARD(γ)受賞作品が決定いたしました!!!
AWARD受賞者の皆さん、おめでとうございます🥳
受賞作品はコチラ:https://t.co/bqVQMozd0r
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AWARD受賞者一覧(敬称略)
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1. matatabi_midori
2. ほっしー
3. さぁのすけ
4.… pic.twitter.com/hj3ClIvWbl
シンプルかわいいデザイン……なのに水の表現にはやけにこだわりを感じる
ここまでの紹介ですでにお気づきの方もいるかもしれないが、この『オメガクラフター』というゲームはかなり「知育ゲー」的な側面を持っている。かといって子ども騙しのようなシンプルすぎるものでもなく、「すべての年齢層が楽しく遊べるように」という理念で設計されていることは間違いないだろう。
ゲームの舞台設定は「開発途中のゲームからバグを取り除きゲームを完成させる」というものであり、そこには流血や過度な暴力表現とは無縁の世界が広がっている。
加えて、ゲーム内の全体的なデザインも非常に「健全」そのものな仕上がりだ。その健全さがある種のシュールさを醸し出しているというのもまた事実だが、「そこが好き」というユーザーも少なくはないだろう。
個人的に興味深いのは、やたらと風景描写にこだわりを感じる点だ。マップ全体の表現は『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』などに見られるトゥーン調とフォトリアルの中間を目指したものになっているが、特に“水面のテクスチャ”はかなりリアル寄りな表現になっている。水の描写には力を入れたい、ということなのだろうか。
また、デフォルトの設定段階からかなり強めの被写界深度が設けられている点や、昼から夜へ、夜から朝への転換タイミングで朝日と夕日がしっかりと識別できるほどに差異化されている点など、風景に関するグラフィック描写には気合が入っているように見えた。
敵味方ふくめ、キャラクターは絵本のようなかわいらしいシンプルなものにまとまっている分、このこだわりが逆に気になってしまったが、画面があまりにもファンシーすぎるとどうしても子ども向けの作品に見えてしまうことも考えられる。なので、これは「大人のユーザーにもぜひ遊んでほしい」という開発者側からのメッセージだと私は解釈している。
プログラミング要素が特徴の作品だけに、少し本筋とはズレた楽しみ方になってしまうかもしれないが、もし本作の世界を旅することがあれば、ちょっとだけ風景にも目を向けてみて欲しい。プログラムを組むのに疲れたとき、きっと良い癒しになってくれるはずだ。
ユーザーの“お願い”も聞いてくれる柔軟なアップデートに期待
最後に、戦闘とゲームのアップデートについて少しだけお話しよう。
本作には巨大なボス敵をはじめ様々な敵が登場するが、彼らとのバトルは意外にもシビアな難易度調整が施されている。と言っても敵の行動パターンが多いとか、アクションが難解だとかいう話ではなく、単純に敵の火力が高くてプレイヤーの耐久値が低く、そこがキツイ。
また、強敵ほど大群で押し寄せてくるという状況がなかなか多いので、新天地に繰り出して無事に帰ってこられるのは稀だった。特に、最初のボスが雑魚敵を召喚するタイプのボスだったのには驚かされた。
ただ、バトルの難易度はワールドのサーバーを立てる段階で設定できるので、クラフトや効率化をメインで楽しみたい人にはしっかり救済措置が用意されている。また、本作は恐らくマルチプレイを主に楽しむユーザーの方が多いタイトルとなることが予想できるので、戦闘バランスの調整具合もそれを加味したものと考えられる。
調整というワードが出たので、ゲームのアップデートに関する柔軟性についても書いておこう。
開発元のPreferred Networksはユーザーのフィードバック、コミュニケーションに対してかなり開放的な姿勢だ。実際、すでにゲーム内にはユーザーの要望によって登場したいくつかの調整・追加アイテムがある。中でもありがたいのは一瞬で拠点に帰れる「ポータル」の存在で、これはユーザーの希望によって生まれたアイテムなのだ。
本作が今後、どんな方向性を目指しているのかはまだ分からないが、恐らくこれからもユーザーの要望に応じて柔軟に変化していくことが予想される。リリース以降、どのようなゲームに進化していくのか、これから楽しみなところでもある。
「ゲームを楽しみながらプログラミングの楽しみにも目覚めていく」。それが『オメガクラフター』最大の魅力だろう。
あまり“教育”という文脈でゲームを捉えすぎると堅苦しくなってしまうかもしれないが、プログラミング要素が本作のもっとも大きな強みであることは間違いない。本格的でありながら未経験者にもやさしく、誰でも簡単なプログラムを組めると同時に、プレイヤーのこだわりや知識によっては無限の可能性も感じさせる、絶妙なバランス感覚は特に優れたところだ。
『オメガクラフター』はPC(Steam)向けの早期アクセス版が3月29日より配信を開始する。発売後に多くのプレイヤーが想像力を働かせ、「オトナの本気」でどんなすごいものを生み出すのかにも注目したい。