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『ソニックランブル』は超カジュアルなパーティーロワイヤルなのに「ソニックらしさ」で構成された、ファンも初心者も嬉しい作品。マニアックな登場キャラにも期待、クリームは“まだメジャーな方”

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今年は『ソニック』シリーズがアツい。

来たる10月22日(火)発売予定の『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』をはじめ、12月27日公開予定の映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』、そして今冬配信予定の『ソニックランブル』など、関連タイトルがズラリと並ぶ2024年末。

そんな「ソニックイヤー」な本年の東京ゲームショウ2024において、『ソニック』シリーズプロデューサーの飯塚隆氏と、『ソニックランブル』ゲームディレクターの田勢誠氏のお二方への合同インタビューが行われた。

インタビューでは飯塚氏と田勢氏の『ソニック』に込める想いや、本作ワールドワイドを見据えた展開や“ソニックらしさ”の追求など、モバイル版での展開について興味深い内容となっているので、ぜひ最後までお楽しみいただければ幸いだ。

さらに、セガのブースでは『ソニックランブル』の試遊も行うことができたのでその様子もあわせてお届けする。

文・取材/fab
編集/anymo

 

『ソニックランブル』試遊レポート。「ソニック」おなじみのアクションをスマホで体験

『ソニックランブル』は、最大32人のプレイヤー同士で対戦を行い、3つのステージを勝ち抜いて優勝を目指すパーティーロワイヤルゲームだ。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

東京ゲームショウの試遊ではモバイル版とPC版の両方がプレイ可能、筆者は本作のモバイル版のチュートリアルを体験することができた。ジャンプやダッシュ、ホーミングアタックなど『ソニック』おなじみのアクションを駆使しながら大量のリングを集め、ステージをクリアしていく。

「ソニック」と言えば、目にもとまらぬスピードでステージを駆け抜けていく爽快感あふれるキャラクター像が思い浮かぶ。しかし本作では、「おもちゃの世界」が舞台ということで、「ソニック」らしさを保ちつつも、速すぎてコントロールを失わない絶妙な調整が施されていた。

ソニックらしいスピード感とともに障害物を乗り越えたり、リングを集めたりといった多彩なギミックが凝らされたステージは、初めて本作を触った筆者でもすぐに楽しむことができた。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

今回プレイした範囲だけでも、シリーズ独自の爽快感を強く感じた本作。スマートフォンへの対応や「おもちゃの世界」といったカジュアルな要素で、「ソニック」の名前だけ知っているユーザーでもハードルなくプレイを始められそうだ。

後述のとおり、日本でのプレイは2024年冬のグローバルローンチより可能。『ソニック』の新たな展開に期待しよう。

飯塚隆氏・田勢誠氏インタビュー。『ソニックランブル』誕生秘話

先述のとおり、今回の東京ゲームショウでは、『ソニック』シリーズプロデューサーの飯塚隆氏と、『ソニックランブル』ゲームディレクターの田勢誠氏に、本作の魅力やワールドワイドを見据える『ソニック』の今後の展開などを伺うことができた。

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▲左が田勢誠氏、右が飯塚隆氏

──まずは、今回の『ソニックランブル』を企画するに至った経緯をお聞かせください。

飯塚氏:
皆さんご存じかと思いますが、「ソニックブランド」自体がマルチプレイに弱かったんです。『ソニックフロンティア』はひとりでのプレイですし、「ソニック」シリーズは基本ひとりで遊ぶゲームでした。

なので、モバイルに進出する際には「ソニックファン同士が交流できるようなパーティーゲームスタイルのタイトルがほしい」という考えがあり、セガのインターナショナルモバイル開発チームといっしょに開発を進めていきました。

──「バトルロワイヤル」というゲームデザインも当初から考えられていたのでしょうか。

飯塚氏:
そうですね。モバイルの新規タイトルを立ち上げる際に、いくつかアイデア出しを行ってその中から「マルチで楽しむスタイル」という今回のコンセプトを選んでいます。

──本作のゲームデザインをするにあたって気を付けたポイントなどはありますか?

田勢氏:
本作のように色々な方が触ることができるパーティーゲームにありがちな点として、操作がもどかしくて、モタモタしてしまうことがあると思います。

本作では「通常の速さ」と「ものすごい速さ」になる箇所のメリハリを入れています。

今回は『ソニック』をモチーフにしているということで、おなじみの“爽快感のあるスピード“という要素は最低限担保した上で、幅広い方がプレイできる難易度に落とし込むのが、かなり大変でした。

さらに、「ゲーム中手に入るアイテムで攻撃を当てると、逆転できる」などすこしのランダム性を入れることによって、必ずしもプレイが上手な人が勝ち続けるということもありません。ちょっとした上振れや下振れの要素で、逆転が起きやすくなるような形に落とし込めるように意識して制作しました。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──『ソニック』といえば「ワンボタンで遊べる」といったような印象もあります。そのあたりの、原点に立ち帰っている感じなのでしょうか。

飯塚氏:
一応、本作はジャンプボタンとホーミングボタンに分かれていますので、決してワンボタン操作という訳ではないです。ですが、極力難しい操作は入れないようにしています。

田勢氏:
基本的には自動でロックオンして、ボタンを押せばその敵の方角に飛んでいきます。そのうえで、自動ロックオンが思った方向にいかないといった問題が起こらないようにうまく制御しています。

飯塚氏:
本作はソニックたちがデフォルメされて丸く、かわいくなっていますよね。イメージ的には『ソニック』のゲーム自体が「ミニチュア化」している感じです。当然走ったりもしますし、ホーミングアタックもあります。

田勢氏:
比較的アクションが上手な方や苦手な方、「ソニック」ファンの方、最近知った方……といったような、どなたでもゲームを楽しめることを強く意識して開発しています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──本作のジャンル名はどういったものになるのでしょうか。

田勢氏:
今は「パーティーロワイヤルゲーム」という風に記載しています。ですが、このような対戦ゲームのジャンルは難しいと考えていて、ワールドワイドに展開する際に海外で伝わりやすいワードに見直すことはあるかもしれません。

ただ、変更するにしてもパーティー感や、マルチ感が伝わるワードを選定したいと考えています。

──基本的にはみんなでワイワイ遊べる雰囲気が伝わるようなジャンルで、先程お話にあったように『ソニック』ならではの要素も残されているんですね。

田勢氏:
はい。スピード感あるギミックや、アタックして相手からリングを奪ったりする要素も、もちろんあります。リングは「ソニック」の中でもかなり印象的なアイテムですので、最終ラウンドでは「リングをいちばん多く持っていた人が優勝」というルールにしています。

これは、ほかの生き残るサバイバルゲームにはない、「ソニック」らしさを大事に設定に入れるということを重視しています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──ちなみに、『ソニックランブル』というタイトルはどなたが発案したタイトルなのでしょうか。飯塚さんは、本作においてどのくらい監修に入っていますか?

飯塚氏:
セガには優秀なモバイル開発チームがいるのですが、今まで一回も『ソニック』タイトルを制作したことがありませんでした。

なので、今回は『ソニック』チームとセガモバイルの内部チームがタッグを組んで、モバイルタイトルを作ろうというところから本プロジェクトが始まりました。その際に、どのジャンルでどのようなゲームにするかを話し合いながら、本作の企画に絞って開発を進めていきました。

先程も上がったデフォルメ具合やステージの構成も、最初は頻繁にやり取りをしながら調整しました。そしてその中で、わちゃわちゃ争っているランブル感や、「ソニック」らしいハイスピードなテンポのちょうどいい塩梅を探りました。最初の頃は、何回もステージを作っては壊してを繰り返していたんです。

田勢氏:
かなり初期に北米のファンに向けてベータテストを実施しました。その際も、私達と飯塚さんで、「どこまで崩してもいいのか、プレイヤーは受け入れてくれるのか」といったお話もしていました。

ベータテストではファンの方も本作をかなり受け入れてくださって、それを踏まえて方向性が定まった経緯があります。

──初期のころから飯塚さんが携わっていたおかげで、北米のファンの方も納得したということですね。

飯塚氏:
北米のファンの方たちは本当に濃い人が集まっているので、その中でベータテストを実施して、デフォルメされたキャラクターを受け入れてくれたり、「ソニック」らしくて楽しいと言ってくださったりして、かなり自信をもらいました。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

「目の前の友達と遊んでほしい」。カジュアルだけど“ソニックらしさ”を追求したゲームシステム

──操作キャラクターによる性能の違いの有無はありますか?また、試合のなかでキャラクターが複数存在してしまうことはあるのでしょうか。

飯塚氏:
『ソニックランブル』の舞台は「おもちゃの世界」です。実際のゲームの中に登場するキャラクターたちはすべてフィギュアなんですよね。

なので、キャラ毎の性能やできることは同じです。「ソニック」が何体いても問題ないですし、「エッグマン」もソニックと同じスピードで一緒に走ったりします。リアル世界のエッグマンとソニックが、フィギュアを通じて競争しているようなイメージです。

おもちゃの世界ならではの部分を活かして、自由度の高いキャラクターの設定が可能となっています。

──1回のプレイにかかる時間はどの程度になるのでしょうか。

田勢氏:
試合のテンポにもよりますが、10分以内で終わることもあれば、長い時は15分ほどかかる場合もあります。脱落すれば1戦目で終わってしまったり、2戦目で終わってしまったりするので、サクッと終わってしまう時もあります。

ゲーム設計としては、10分くらいで1セットが終わるように各ステージの調整をしています。

本作はパーティーゲームということで、実際のゲーム性自体はかなりシンプルです。これを長い時間繰り返すのはゲーム的にも難しいところがありますので、10分というちょうどいい時間で終わらせられるように設計しています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──本作は32人から優勝を目指していく作品ですが、なぜ32人という人数なのでしょうか。

田勢氏:
本作を立ち上げたとき、「10人ぐらいの規模より、もっと多い人数でわちゃわちゃしたゲームにしたい」と考えていました。しかし人数が増えれば増えるほど1位は取りづらくなりますし、少ないラウンド数で勝負をつけるには50人では多いだろうと思いました。

くわえて、「目の前の友達と遊んでほしい」という思いもありました。4人1組でチームを組むことを想定したときに、チームの数は最初の8チームから4チームに、そして最終ラウンドで2チームになる「32人」という人数が最大数かつ、バランスがいいと考えました。

──「目の前の友達と遊んでほしい」とのことですが、例えばここで4人集まってスマホで同時接続したらチームが組めるということでしょうか?

田勢氏:
はい、組めます。普通のバトルでいっしょにマッチング(合流)することもできますし、チーム同士で着順を争うモードなどもゲーム内では登場します。

──カジュアルに遊べるゲーム性と、32人の中から1位を目指し続けるストイック性の両立は可能なのでしょうか。

田勢氏:
基本的には32人のうち1人しか1位になることはできないので、全員が毎回1位を目指すゲーム設計も、なかなかストイックすぎると思います。

なので本作では1位を取らずとも、ファーストステージ突破ですこしのボーナスが入ったり、3ラウンド目に到達した8人は報酬が豪華になったり……といった要素を入れています。

「まずは。ファーストステージ突破を目指そう」といった目標設定ができるように設計しているので、毎回ストイックに1位を目指し続けなくても報酬をもらうことができます。

それから、何回も継続してプレイすることで順位に関わらずゲーム内の要素が進捗し、色々なモノを受け取ることができるようになっています。幅広いユーザーの方に、続けて遊んでもらえるよう考えて開発しています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──シングルプレイ用のモードをプレイすることによる報酬や、この中で展開される物語はあるのでしょうか。

田勢氏:
まず物語についてですが、本作はどなたでもすぐに遊べて楽しめるようなタイトルですので、あまりストーリー要素は入っていません。

シングルプレイの「ステージチャレンジモード」は、バトルに登場するステージを1分でクリアするといったミッションを進めていくモードになります。

そして報酬ですが、「レッドスターリング」と呼ばれる課金で手に入るアイテムをいくつか無料で手に入れられるようになっています。なので、あまり課金をしていなくても、いくつかのアイテムを購入できるよう設計しています。

あとは、ずっと対戦ゲームをするとどうしても疲れてきてしまったりするので、“味変”的な要素として、ある意味「逃げ場所」のように息抜きのためのモードといった側面もありますね。

また、「ステージチャレンジモード」を進めていくと、障害物がいつもより多い「ハードモード」にも挑戦できます。なお、こちらも4人で挑戦することができるので、自分が上達しつつ友達ともワイワイ楽しめるようになっています。

──エッグマンの企みみたいなものはあまり存在しないということですか。

田勢氏:
ゲーム内ではそんなにないですね。

飯塚氏:
あと、大した企みじゃない(笑)

田勢氏:
今回ワールドワイドに展開するタイトルということもあって、日本ライズされているストーリーやアセットを大量に入れないようにしています。

本作はカジュアルタイトルということもあり、ストーリーはなかなかゲームに入れづらい部分ではありますね。ゲームの外側で紹介などする機会はあると思いますが。

飯塚氏:
後はこういうゲームでストーリーを深くしてしまうと遊ぶ人を限定してしまうので、気軽に「このキャラクター知らないけど可愛いからやってみよう」みたいな感じで遊んでもらえるタイトルを目指しています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──集めたリングとの交換、ゲームの進行によってアイテムが手に入るパス、ガチャといったさまざまな方法でアイテムが手に入ると思うのですが、それぞれの手に入るアイテムなどの違いを教えていただけますか。

田勢氏:
基本的に、スキンやエモートは様々なところで手に入ります。

パスの場合は現時点で1.5ヶ月ほどの期間を1シーズンとして目玉のスキンを実装するなど、長期的に目標となるアイテムを配置しています。

リングショップは1日1回更新予定です。リングが溜まったら気軽に覗いてアイテムを購入できます。ここではコスメアイテムが購入でき、パスの方ではコスメアイテムの演出を強化できるようなアイテムが手に入る……といった分け方になっています。

そして「ルートボックス」(ガチャのようなもの)が、1日に何回か無料で引けます。ここでは『ソニックフォース』のアバターのようなキャラクター達が手に入ります。

また、ルートボックスを引くことでアイテムが溜まっていき、目玉のスキンと交換できる要素もあります。

毎日当たりを目指してルートボックスを回してもらう継続性や、コレクションの楽しさを感じてもらえるかと思います。

──作中に登場するバディにはどんな機能があるのでしょうか。

田勢氏:
まず、コスメティック要素──「かわいい装飾」がベースにあります。くわえて、バトルのスコアを重ねていくことでゲーム内で良いことがある、収集要素も兼ねています。

──カスタマイズ要素が豊富にあるというお話でしたが、具体的に現時点で決まっている課金要素についてお聞かせください

田勢氏:
本作はいわゆる「重課金」、ガチャをいっぱい回す要素はありません

シーズンパスやバトルパスといった、最初に購入して徐々にいろんなものがアンロックされていくものをお手頃な値段で販売する予定です。

もちろん無課金でも楽しめますし、パスを買っていただくことで“楽しみが増える”という位置に存在しています。例えば、特別なスキンなどはガチャに入れるよりも、買い切りで用意しています。

高額のものを多く用意するより、少額の課金や定額課金でも楽しめるように、ゲーム設計自体もカジュアルかつ、ワールドワイドなものにしています。

──ではPay to Win要素はないのですね。

田勢氏:
はい。お金を払った人が1位になりやすいという要素はないです。

飯塚氏:
日本やアジアの市場って、「課金で何万円も使って手に入れたキャラを使わないと先に進めない」ということがたまにありますよね。グローバルで見ると、そのシステムは時に異質です。

特にアクションゲームの場合は、みんながイーブンで楽しめないといけません。なので、今回はグローバル基準のゲーム設計にしています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──先程ガチャの要素は避けているとお話がありましたが、それは開発初期から念頭においていたものなのでしょうか?理由もあわせてお聞かせいただけますか?

田勢氏:
日本ではいまだに根強い「ガチャ」ですが、海外などでは懸念される側面もあるので、今回のジャンルに適していないと判断しました。

飯塚氏:
本作はスタート時点で「グローバルで売れるモバイルタイトルプロジェクト」として企画していました。

ですので、課金モデルに関してもグローバル基準で最初から設計していました。

──少し前に行われたベータテストで得たユーザーからのフィードバックはどのようなものがありますか。そこから得られた反省や改善点などがあればお聞かせください。

田勢氏:
ベータ版は『ソニック』のファンの方も多く参加していただいたんですけど、基本的にはかなりいい評価を得られて、我々としてはとても手応えがありました。

しかし一部で上がったご意見として、逆転しにくかったり、展開が似通ってしまったり……というものが当時のバージョンにありました。

そこからより幅広い方に楽しんでもらえるように見直しを行い、パーティー的に楽しめるようなバランスへ近づけていきました。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──ベータテスト後、ファンの間ではBGMも話題になっているように見受けられました。曲選びやアレンジについて詳しく伺えますか。

田勢氏:
今回はステージモチーフを過去の『ソニック』タイトルから色々持ってきています。ゲームステージのBGMをベースに、本作の雰囲気にあわせてアップテンポにしたり、楽しい雰囲気にしたりするアレンジをかけています。

また、チームの方で制作したものを飯塚さんにお渡ししています。

飯塚氏:
基本的には、皆さんが馴染みのあるソニックミュージックに、競争を盛り上げるような殺伐としない楽しい雰囲気を持った曲作りをしてもらっています。

──「ケミカルプラント」とかも収録されていましたね。

田勢氏:
そうですね。ちょっと懐かしいニュアンスもお楽しみいただけると思います。

──本作を制作していくにあたって、“ソニックらしさ”をゲーム内に落とし込むために、追求した点はありますか。

田勢氏:
まずはゲーム内のステージ案や、ステージのビジュアルやギミックといったものを作成して、飯塚さんや『ソニック』チームの方に繰り返し見てもらいながら“ソニックらしさ”を追求していきました。

さらに自動で高速で進んでいく場所や、リングを大量に拾うような場面など、ステージ設計としては余計かもしれないけど、「これってソニックだよね」と感じられる部分を意識してゲーム内には入れています。

3Dのマップで複数のルートから選択して進んで行くようなステージもプレイヤーに“ソニックらしさ”を感じてほしいと思って設計しています。

──実際にプレイして思ったのですが、32人が個別に動くゲームでのカメラワーク処理は大変ではなかったですか?

田勢氏:
調整はかなり大変でした。

やっぱりスマホでアクションゲームをプレイするのって難しいです。なので、本作は珍しくデフォルトで右手によるカメラ操作が無いんですよね。

『ソニック』らしいスピード感あるアクションを体験してもらうためにはどこかで引き算が必要だろうと考えていまして、カメラが自動で最適化されるような設定を頑張って作りました。

飯塚氏:
本当に最初に作ったステージとかは、“ソニックらしさ”のソの字もないような運動場だったんですけど……。

そこから「もっとソニックらしく」というリクエストを繰り返して、試行錯誤してくれて、ギミックやカメラワーク1つ取っても“ソニックらしく”なったと思います。

田勢氏:
チームもかなり『ソニック』を勉強していて、動画やブラウザで参考になるものをすぐ探していました(笑)。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──飯塚さんがオーダーした部分や、ファンに見てもらいたいところはありますか。

飯塚氏:
本作の“ソニックらしさ”というのは、あくまでも「バトルロワイヤルのモバイルタイトルの中で」のものです。

それは、キャラクターの見た目から想像できるスピードで走れることであり、「モダンソニック」のようにブーストで移動するとこのゲームは成り立ちません。

なので、見た目を変えることによってスピード感を連想させることが最初に調整したところですね。

あとはステージに関してですが、単に走って穴に落ちる……というようなものではなく、ちゃんとソニックらしいギミックが登場します。遊び終わった後に 「気持ちよかった」、「面白かった」っていう一言が出るようなステージ設計もお願いしています。

田勢氏:
飯塚さんともお話をさせていただいた中で、最終的にチームとして目標にしたのは他のパーティーゲームには無い「気持ちいい」瞬間ですね。

リングを沢山拾う瞬間や攻撃を当てる瞬間などの爽快感は、どの「ソニックタイトル」にもあるはずなので、そういった要素を残しつつ、パーティーゲームとして成り立たせることに意識を強く置きました。

本作も他のタイトルと遜色なく「気持ちよかった」と言われることを目標にしているので、そこをファンの方に見てもらいたいですね。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

今後の『ソニック』全体の展開予定とRovioと協業する『ソニックランブル』に期待すること

──『ソニック』はグローバルではすごく盛り上がっています。ですが一方で、日本国内の子供向けのリーチとしてはまだ難しい状況にあるのかなと思う中で、『ソニックランブル』に期待しているところはありますか。

飯塚氏:
そうですね。やはりどうしても「ソニックタイトル」はまだアジア地域に弱いところがあります。

フリーでみんなで遊べる、本作の今までに無かったかわいいスタイルが、アジア地域、特に日本の方々に楽しんでいただけるのではないかと考えております。

──本作はRovioさんと協業する形になると思うのですが、協業するにあたって『ソニック』というIPに新しく加わった部分などはありますか?

田勢氏:
「ソニックタイトル」はもちろん欧米で人気がありますけども、1つのタイトルをとにかくワールドワイドに広めるプロモーションは、Rovioさんにノウハウを見てもらっています。

我々はコアなゲームを作りがちな会社でもあるので、ものの伝わりやすさの監修を受けつつ、最終的にはマーケティングなどの部分をRovioさんにやっていただくような流れで進めています。

インゲームのゲームデザインというより、最終的に初めてゲームを触った人にも伝わりやすい表現のアドバイスなどもいただいています。

──では、ゲームの中身はセガさんが担当し、プロモーションやマーケティングをRovioさんが担当しているのですね。

飯塚氏:
完全に開発はセガが内職で行っているので、Rovioさんにはちょっとしたアドバイスやマーケティング、PR、コミュニティ運営を担当してもらっています。

我々が従来弱かった部分を、Rovioさんには担当してもらっています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──本作では、Rovio社のアングリーバードなどとのコラボは将来的にあるのでしょうか。

田勢氏:
現時点で確定的なことはお伝えしづらいのですが、もちろん社内IPや全く違う会社のIPであるキャラクターとも積極的にコラボレーションして、多くの方の目に留まるようにしていきたいと思っています。

さらに、コラボキャラクターとソニックが一緒に走っている姿や、違うゲームのモチーフのステージを走っているだけでも、今までにない『ソニック』IPの展開を表現できるのではないかと考えており、現在目下仕込み中です。

飯塚氏:
何せ「おもちゃの世界」ですので、リアルでキャラクター同士のマッチング相性を深く考える必要もありません。気軽に幅広くコラボレーションを探していきたいと思っています。

──プレローンチテストをフィリピンや南米で実施されましたが、日本が対象外になった理由などはありますか?また、リリースまでの間に日本でのテスト予定はありますか?

田勢氏:
日本が対象外となった理由としては、やはり「Rovioさんのノウハウ」が大きくあります。

プレローンチテストでは、例えば技術的な検証──大人数での検証が足りなかったりする、ゲームとしては不安定なものを出しているので、国を絞ってテストを行っています。

『ソニック』であれば、北米やヨーロッパのファン規模が大きいので、多少プレイ傾向が似た国をチョイスして、ある程度の反応を予想しながらテストしています。

──日本はそこには入らなかったのでしょうか。

田勢氏:
日本はちょっと難しいんですけど……。

今回、遠く離れた国を選ぶ際にサーバーの位置をどこに設置すればいいかといった問題、日本も大事な市場なのでもう少し安定した状態でテストを行いたいなど、さまざまな理由から今のところ日本ではまだプレイを開けていないという判断です。

日本でのプレイは、冬のグローバルローンチまでお待ちいただければと思います。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──ローンチ時点でのキャラクター数やゲームモード、ステージ数などについて教えてください。

田勢氏:
まずステージについては、プレローンチ時点で35ステージ存在しています。本番のローンチではもっと増やす予定で、40かそれ以上はベースに考えています。

「スクワッドモード」のような4人で協力するモードであったり、金土日だけのイベントとして普段と違うルールで遊べるようなモードも実装予定です。

32人全員で協力するステージもイベント開催するなど、いつもとは違う楽しみ方ができるモードも3つ、4つは登場させたいと考えています。また、これらのステージは専用のものになるので、ローンチ時点でのボリュームは結構あると思います。

あとは、「カスタムマッチ」と呼ばれる知り合いだけでマッチングして好きなステージを選んで遊べるモードも存在します。

──そのように、ルールが変わることについても踏まえたうえでゲームデザインをしているのでしょうか?

田勢氏:
中々難しい側面もあるのですが、限られた日数での開催であれば、ゲームデザインとして荒い部分があっても、お祭りとしてパーティーゲームを楽しめるのではないかと考えています。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──トレーラーでは「クリーム」の姿が確認できましたが、本作では普段あまり出番がない・見かけることが少ないキャラクターたちにスポットは当たるのでしょうか。

飯塚氏:
モバイルタイトルに関してはキャラクターをいっぱい登場させていきたいと思っています。

クリームはまだまだメジャーな方で……、もっともっとマイナーなキャラまで掘り下げたいと考えています。「本当にこのキャラまで登場するのか!」といった驚きをたくさんのキャラクター実装によってプレイヤーの皆さんにお届けできればと思います。

具体的な話はまだできませんが、本当にマイナーで初めてプレイアブルになるキャラクターや、ヴィラン側の人気はあるけどプレイアブルになっていないようなキャラも登場する予定です。

──先日PC版も発表されましたが、クロスプレイの予定はあるのでしょうか。

田勢氏:
はい。今回はモバイル版PC版共に同時にサービスを開始する予定です。マッチングもクロスマッチングに対応しています。

クロスプレイに関しては、やはり操作性が違うことによる有利不利が生まれるのではないかと我々も考えました。

ですが本作は「パーティーゲーム」ということで、ガチガチの競技感というよりかは、まずはゲームとしてわちゃわちゃ感を楽しんでもらいたいという思いがあります。

くわえて、プレイできる手段を多く用意することによって、身近な人とも一緒に楽しい体験をしていただきたいという点を重視して、クロスマッチングを導入しました。

また、モバイル版のデータとPC版のデータは共有が可能です。プレイスタイルに応じて遊び方を選べるようになっています。

──PC以外のプラットフォーム展開は考えていますか?

田勢氏:
具体的な内容は現時点では申し上げられないのですが、遊ぶ手段が増えるということはプロジェクトに対してもプラスのことです。

可能であったり、機会があればどんどん検討していきたいと思っております。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──映画の公開も近いということで、年末は「ソニック」の季節になりそうだと感じています。お二人はそのあたりの期待感はありますか。

田勢氏:
そうですね。今回「イヤーオブシャドウ」という大きな盛り上がりの中で、『ソニックランブル』も映画の時期に近しい形で全世界リリースしますし、コンシューマータイトルもありますし、IPとして足並みが揃ったというか、一緒になって盛り上げたいですね。

ゲームの中のどこを見ても同じ盛り上がりを感じる展開は、ゲーム内にちゃんと仕込んでいきたいと思っています。

飯塚氏:
まさに「ソニック映画」にあわせて『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』も作りましたし、『ソニックランブル』も作りましたし、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』では映画コンテンツを使ったDLCが発表されています。

なのでこの映画公開にあわせてソニックファンの方には存分にシャドウを楽しんでもらおうと思っています。

キアヌ・リーヴスさんにも、映画コンテンツ用に音声収録していただきました。

──今後の『ソニックランブル』を含め、『ソニック』全体の展開予定についてお話いただけますか。

田勢氏:
『ソニックランブル』はですね……。今プレローンチを実施してこれからグローバルローンチに向かっていく佳境なので、「とにかく立派な子供を産むんだ!」という気持ちでかなり頭を持っていかれていますね。

ただ、ノウハウを何か活かせるのなら、ローンチ後うまくいって皆さんに受け入れられた上で考えていければと思います。

飯塚氏:
『ソニックランブル』は運営タイトルなので、臨機応変にキャラクターやルールを追加したり、新しい要素を追加したりすることができる強みがありますよね。

ユーザーベースでローンチして、その反響次第で色々発展できるところが本作の良いところだと思っています。

一方『ソニック』全体としては、コンシューマータイトルは開発に2年、3年かかりますし、アニメーションや映画の制作もそれなりに時間がかかるので、今回「イヤーオブシャドウ」で前から仕込んでいたものをかなり放出する形になりますね。

なので今からまたエネルギーを補充して、次のチャレンジに向けて仕込んでいけたらと思います。

──では2025年以降も変わらず期待できますね。

飯塚氏:
はい。何かしらのお知らせはできるのではないかと思います。

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▲(画像は『Sonic Rumble』セカンドトレーラーより)

──最後に全体への一言メッセージをお願いいたします。

田勢氏:
先程お話にもありましたが、現在日本のファンの方にはお待たせしている状況で申し訳ないです。

もう1回テストを重ねて、最終的に設計やゲームバランスを最適化して、冬のグローバルローンチを迎えたいと思っています。

グローバルローンチでは、コンシューマータイトルの発売や映画の公開など、『ソニック』全体が盛り上がっている瞬間だと思います。

今までソニックに興味なかった方々にもぜひ本作を体験していただいたいて、ソニックの輪を日本中にもっと熱く広めて、ぜひ遊んでいただければと思っています。

飯塚氏:
ローカルでルームを作って友達だけで遊ぶ……なんてこともできますので、忘年会や新年会のゲーム大会などで活用していただきたいですね。

田勢氏:
ネットを介して、目の前にいる人だけでコードを発行して簡単にルームを作成できます。

飯塚氏:
今年は「イヤーオブシャドウ」ということで、本当に我々も寝る間も惜しんで全力で、コンテンツ作りを重視してきました。

映画の公開に向けて現在色んなコンテンツを用意しています。

まずは『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』のダークビギニングのアニメーション。私もチェックしながら涙を流してしまうくらい感動的なアニメーションです。ゲームも10月22日にリリース予定です。

さらには映画のコンテンツもプレイできるようになり、『ソニックランブル』も発売され、そして映画へと続くと。

本当にこの年末に向けてソニックファンの方は隙がないくらいコンテンツが目白押しです。ぜひ、我々の渾身のコンテンツを楽しんでいただければと思っております。よろしくお願いします。


飯塚氏、田勢氏のお話にもあったように、『ソニックランブル』は、開発初期からワールドワイドに展開を見据えて設計していることがわかる。

『アングリーバード』で知られるRovio社とタッグを組んだことで、従来のセガの弱点だった国外のマーケティング面でも盤石の態勢だ。

基本無料プレイのモバイルタイトルだからこそ実現できる柔軟性の高い運営スタイルや、『ソニック』をあまり知らない人でも遊べるカジュアルながら“ソニックらしさ”を感じることができるゲーム性へのこだわり。

今回のインタビューの中でもお二人の『ソニック』にかける並々ならぬ想いが伝わってきた。

10月22日(火)に発売する『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』を皮切りに、映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』や『ソニックランブル』の配信など、関連作品が続々と登場する。今後の『ソニック』シリーズの展開からも目が離せない。

ライター
気になったゲームは古今問わず遊ばずにはいられない性格。シリーズ物も大好き。 中学生の時に東方Projectに触れてからゲーム音楽へ目覚め、アトリエシリーズと出会い覚醒。普段聴く音楽が9割ゲーム関連となってしまった。 幅広いジャンルのゲームを遊びながら、まだ見ぬゲーム音楽との出会いを求めて日夜探求し続けている。
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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