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猫は「ニャー」、レ・ダウの声は「ズィーンメンギョー」──『モンハンワイルズ』のモンスターサウンドのコンセプトはオノマトペだった。カプコンスタジオツアーでわかったあれこれ

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11月下旬に開催された『モンスターハンターワイルズ』(以下、『ワイルズ』)のメディアツアー。試遊、開発陣インタビューに加え、希少なスタジオ見学も実施された。本稿では、その模様をお届けしていく。

取材・文/電ファミニコゲーマー編集部

アクターが社内に常駐しているからこそ可能な「動きの追求」

最初に案内されたのは、モーションキャプチャースタジオ

現実世界における人物や物体の動きをデジタル情報として記録する「モーションキャプチャー」は、いまやゲーム開発において欠かせないものだ。『モンスターハンター』も例にもれず、リアルで多彩な表現をモーションキャプチャーを駆使して追求。従来のような人型だけではなく、モンスターなどの人外キャラクターでもモーションキャプチャーを利用する頻度は高まっているそうだ。

『モンハンワイルズ』スタジオツアーレポート:「RE ENGINE」と連携したモーションキャプチャーで世界を創り出す_001

スタッフの方から説明されたモーションキャプチャーを使う利点はふたつ。ひとつは、よりリアルな動きの表現のデータが作成できること。もうひとつは手付けモーションよりも早期のゲーム実装が可能となり、確認も手早く行えるというものだ。

2023年に設立されたカプコンの「クリエイティブスタジオ」は、ふたつのモーションキャプチャースタジオを備えた最新鋭のスタジオで、国内最大級の撮影範囲(11m×15m×5m)に最新型の超高解像度カメラを含む150台を設置

また、撮影空間密度を高めることで10人の同時収録やフルパフォーマンス撮影が実現可能となっている。さらに、カプコン独自の開発エンジン「RE ENGINE」によるゲーム開発環境と連携した収録により、表現力を最大限引き出すことが可能になっているそうだ。

専属のモーションアクターが社内に常駐していることによってノウハウが蓄積しやすい環境を作り、より高品質なアニメーションデータの作成に取り組んでいるとのこと。つまり「動きの追求」が気軽に行える点が強みということだ。プレイヤーとモンスターのモーションキャプチャーを実演いただいたので、その模様は動画でお伝えしよう。

『ワイルズ』のモーションキャプチャーでは、アクターの動きをリアルタイムで再生し、より実装に近い形でアニメーション確認ができるようになっている。これによりリアリティあふれる演技が可能となり、質の高いトライ&エラーが可能になっているとのこと。社内でアクターとスタジオを持っているからこそのトライ&エラーのスピードが得られているという。

ちなみに、撮影の際は感情やテンションを重視し、気持ちをのせるために声を出して演技をされていた。また、足の多いモンスターや胴体の長いモンスターなど、人の動きによるモーション撮影が難しいものは、手作業でモーションを作成していると説明があった。

オーケストラ、民族楽器のほか、シンセサイザーを取り入れた楽曲

続いて案内されたのはサウンドスタジオ。

『ワイルズ』の音楽制作の秘密について説明が行われた。『ワイルズ』のメインテーマ『美しき世界の理』は、フルオーケストラのサウンドに民族楽器などさまざまな楽器を織り交ぜたもので、人もモンスターも包括した、自然の美しさだったり、きびしさだったり、自然そのものの大きさを表現した楽曲。説明をしてくださったコンポーザーの方いわく、「音色の響きに注目して聞いてほしい」とのことだ。

『モンハンワイルズ』スタジオツアーレポート:「RE ENGINE」と連携したモーションキャプチャーで世界を創り出す_002

また、『ワイルズ』ではシンセサイザーも使用しており、電子音を音楽のコンセプトそのものに組み込ことによって、ゲームの舞台である「禁足地」の音として使用している。

『ワイルズ』のフィールドは、飢えた肉食モンスターが群れて争う過酷な「荒廃期」と、 「異常気象」を経て迎える豊かな生命が溢れる「豊穣期」という 二面性を持っているのだが、電子音を変調させることで、音楽的にもシーンの移り変わりを表現しているそうだ。荒廃期では強めの音で異常気象が表現されており、電子音のバリエーションがランダムで再生される。

一方、豊穣期の音楽は、美しさの中にノイズが混じったようなチリチリとした質感。異常気象のあとの静けさが表現されていた。

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モンスターサウンドのコンセプトはオノマトペ(擬音語・擬態語)

最後に訪れたのはサウンドデザインスタジオ。モンスターの声がどのように制作されているのかを詳細に説明いただいた。これまでのシリーズでは「生の動物の鳴き声をいかにモンスターとして表現するか」にチャレンジしていたのだが、『ワイルズ』では個性を表現したいということで、モンスター1体1体にオリジナル楽器を用意したのだという。

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たとえば、煌雷竜(こうらいりゅう)「レ・ダウ」の鳴き声では、スライドホイッスル式のオリジナル楽器を制作。塩ビ管を加工してフィルムをつけたもので、ホームセンターで揃うような素材で制作したそうだ。これには、綺麗な音を録りたいわけではなく「お手軽におもしろい音を」という考えがあったから。

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『ワイルズ』のモンスターサウンドのコンセプトは、オノマトペ(擬音語・擬態語)。「オノマトペで表現できるくらいの個性を作ろう」と開発初期から決めていたのだという。猫の鳴き声をオノマトペで表すと「ニャー」。では、レ・ダウの場合はなんと言えるのか?

これが言えればモンスターごとの違い、かっこよさが伝わると考え、「ユーザーの違和感」が重要であると気付き、オリジナル楽器を用意することになったそうだ。楽器は違和感のあるリズム、キャッチーな抑揚を作りやすく、個性的な音を生み出すのに効果的だったとのこと。

おもしろいことに、レ・ダウの専用楽器には「王様のひとりごと」という名前がつけられていた。王様は人が多いところでも「ジャマだ」といえばみんなが道をあける。レ・ダウも生物的に強いので、落ち着いた泣き声をイメージして楽器を作成したそうだ。

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オリジナルの楽器を作るという取り組みは『ワイルズ』で初めてチャレンジしたそうで、10〜15種類の楽器を用意したとのこと。サウンドデザイナーが求めていた「違和感」と生き物のナチュラルな声が融合し、『ワイルズ』のサウンドが作り上げられているというのはとても興味深い話だった。

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